2000年8月のdiary
■2000.8.2 /『妖雲群行 アルスラーン戦記10』
■2000.8.3 /『法廷士グラウベン』
■2000.8.4 /『摩天楼ドール フェザークィーン』
■2000.8.5 /
■2000.8.6 /『〈骨牌使い〉(フォーチュン・テラー)の鏡』
■2000.8.7 /『半熟マルカ魔剣修行!』
■2000.8.8 /『細工は流々』/『緑の我が家』
■2000.8.9 /
■2000.8.10 /『誓いのとき』/『楽園の魔女たち〜不思議の国の女王様〜』/『コールド・ゲヘナ』
■2000.8.11 /
■2000.8.12 /『将軍の娘』
■2000.8.13 /『天翔けるバカ』
■2000.8.14 /
■2000.8.15 /『グランド・ミステリー』
■2000.8.16 /
■2000.8.17 /『ユルスナールの靴』
■2000.8.18 /
■2000.8.19 /
■2000.8.20 /『ホワイトアウト』
■2000.8.21 /『試練のルノリア グイン・サーガ74』
■2000.8.22 /『すいかの匂い』
■2000.8.23 /『千年天使』
■2000.8.24 /『眠れぬイヴのために 上下』
■2000.8.25 /『桜闇 建築探偵桜井京介の事件簿』
■2000.8.26 /
■2000.8.27 /『屍泥棒 プロファイリング・シリーズ』/『カムナ歌』
■2000.8.28 /『ウィーン薔薇の騎士物語3 虚王の歌劇』/『暁の娘アリエラ 上』/『歌う石』
■2000.8.29 /
■2000.8.30 /
■2000.8.31 /『女王陛下の薔薇1 夢みる蕾たち』/『ネバーランド』
姪がやってきた。今回は泊まりがけ。なにをしても邪魔ばかりしてくれる。
クイックガレージより修理完了の連絡。はやい。まだ一週間経っていません。
三浦真奈美『女王陛下の薔薇1 夢みる蕾たち』(中央公論新社.1999.218p.850円+税)読了。
先週だったか、BS-2で子供向けの映画をつづけて放送していた。そのなかで『小公女』『秘密の花園』を見たんだけど、これ2本とも親がインドで死んでいる。『小公女』は、原作ではアフリカだったような気がしていたけど、とにかく、今回はインド。むかし読んだときはなんとも思わなかったけど、ヒロインたちの親はインドを搾取した側の人間だったわけです。映画は最近の作だったのでそのあたりも少しはフォローが入ってましたが。
で、この本ですが。始まりはイギリス風宮廷陰謀劇を期待させ、そののちは急に展開が変わって『インドへの道』風の異文化への接触テーマかと思わせて、もしかするとこれって顔見せのための長々としたイントロ? と思い至ったところで一巻終了。
舞台は架空ですが、どうみても植民地支配絶頂期の大英帝国。ヒロインの友人女王陛下の境遇は、やはり某女王陛下を思わせます。時代は違うけどね。架空の舞台がよいのは、こうやって、歴史のおいしいところのつまみ食いができるところでしょうか。
そういえば著者の前作『風のケアル』も、ヴェネツィアがモデルでしたね。
貴族の次男坊との婚約が破綻して帰国を余儀なくされるヒロイン、エスティと、彼女を嫉妬のあまり敵視する女学校時代の知り合い。急遽王位についた若い女王。そして藩王の跡取り娘がそろって、これからようやく本筋がはじまろうとしております。おそらく。エスティが自我に目覚めた女性になっていくのがテーマなのでしょうか。意図的にか女性蔑視の男性陣がのさばってるところからすると、女の茨の道が描かれるのか。
恩田陸『ネバーランド』(集英社.2000.268p.1500円+税)読了。
冬休みの男子校。両親が海外赴任の美国は、寮に残ることにする。居残り組は彼を入れて三人。ひとけの無くなった寮でじぶんのそしてたがいの秘密をさらけ出すことになる。
『木曜組曲』の男子高校生版。著者は萩尾望都の『トーマの心臓』をやりたかったそうですが、その名残は体の弱い少年が死んだというエピソードに感じられるくらい。女性たちの告白が現実的で意地悪な感じもあったのにくらべると、やっぱり少年だからかな。このさわやかさは。
不幸な過去や出来事をあまりなまなましさを感じさせることなく、それでもしっかりと体験させて、最後に明るい朝を迎える、きもちのいい物語。
出かけたついでにまたもや攻略本を買ってしまった『幻想水滸伝2』。いまごろ買うやつはほとんどいないと思います。いつもこうやって根性なしを露呈している。しかも、攻略本を買うとどうしても最初からやりなおしたくなるんだよねー。時間の無駄 だというのに。しかしやっぱり、はじめてしまった。
自分用のパソコンがないと夜中に日記を書くことになるんですが、これをつづけると生活リズムが壊れていく。夜あたまを使うと眠れなくなるんです。というわけで、もうやめた。
このまま本をやけくそのように読んでいると、感想がたまりすぎて自分の首を絞めそう。ということに気がついて、きょうは読書も休むことにする。
かわりにしばらくぶりにゲームをした。世間はドラクエなのに、PSソフト『幻想水滸伝2』。買ったのもずいぶん遅いのに、やりかけのまま三ヶ月くらい放り出しておりました。予想通り三ヶ月のブランクはきつい。わからない。わすれてる。どうすりやいいの、きい。これの繰り返しでとうとう、行き詰まってしまいました。ぐるぐるとおなじところを経巡って数十分。ギブアップ。
高野史緒『ウィーン薔薇の騎士物語3 虚王の歌劇』(中央公論新社C・NOVELS Fantasia.2000.224p.857円+税)読了。
バイエルン王御前演奏会の選考会を見学にいくはずが、出場することになってしまった薔薇の騎士四重奏団。選考会を控えてでかけた教会の無料コンサートで舞台にあらわれた男性歌手は、若き日のバイエルン王ルートヴィヒ二世にそっくりで、まわりは大騒ぎになる。選考会にも出場するというかれは本当は何者なのか。ライバル視された薔薇の騎士四重奏団には、不穏な事件がふりかかるが…
ようやく四人そろった薔薇の騎士四重奏団。フランツくんはあいかわらずぼっちゃんぼっちゃんしてますが、四人の個性が明確になって役割分担がはっきりしたせいか、だいぶストーリーがスムーズにながれるようになってきて、いままでで一番おもしろかったです。サイコ系というより霊能者といったかんじのエゴンくんがいちいち危機をおどろおどろにつげるのがたのしい。
ひかわ玲子『暁の娘アリエラ 上』(講談社X文庫ホワイトハート.2000.228p.530円+税)読了。
〈女戦士エフェラ&ジリオラ〉シリーズの『青い髪のシリーン』につづく続編。
ウィラ山脈の麓の村で姉兄と育ったアリエラは、世の中をよくするために力を欲するような子供だった。母親のジリオラがじつはハラーマ帝国の女帝であり、彼女が王座を捨てたことにいつも疑問を抱いていた。ハラーマ帝国では偽の女帝の夫であるシャーガン公に反感を持つふたつの大公家がジリオラの娘をかつぎだす陰謀を企てていたが、サディア公は長女のディオラと間違えてアリエラを拐かした。修行のためにザーン大陸に赴いていたシリーンが呼び戻され、アリエラ救出が実行されるが…
この話にはファンタジーらしき筋があるのでしょうか。アリエラの物語なんだなということはわかるけど。
O.R.メリング(井辻朱美訳)『歌う石』(講談社.1995.310p.1456円+税
O.R.Melling "THE SINGING STONE",1986)読了。
現代から古代へ。アイルランドを舞台にしたファンタジー。
みなしごのケイトは自分のルーツを求めてアイルランドへ飛ぶ。幼いころから見つづけてきた夢や幻視からアイルランドのウィックロー山脈にあるはずの「歌う石」が、鍵を握っているとわかっていたからだ。たったひとりでめざす場所にたどりついたケイトは、巨石のアーチをくぐりぬけたとたん、紀元前のアイルランドへと迷い込んでしまう。記憶をなくしたアエーンという少女とともに助けを求めて訪ねた賢者フィンタンから、ダナーン族の四つの宝を探すようにと助言を受けるが…
五年前に購入した本(^_^;)。
トゥアハ・デ・ダナーン族がアイルランドを支配していた時代を舞台に、少女たちの成長と神話の時代の終焉を描いている。
現在から異世界へのトリップから始まるお話だけど、ケイトが自分の時代からほとんどなにもひきずってきていないためか、現代との対比がほとんどでてこないせいなのか、ありがちな展開とは裏腹に厳かさや神秘的な雰囲気があふれるような壮大なファンタジーになっている。
ひとつひとつのことばをいつくしみながら読みたいようなうつくしい物語。
さて、つぎの『ドルイドの歌』はどこへいったのやら。
ブライアン・フリーマントル(真野明裕訳)『屍泥棒 プロファイリング・シリーズ』(新潮文庫.1999.361p.629円+税
Brian Freemantle "THE MIND READER",1996)読了。
EU版FBIユーロポールで初めて組織されたプロファイリングを駆使して捜査に当たる行動科学班。その心理分析官クローディーン・カーターが、法病理学者、コンピューター専門家とつくる三人のチームでヨーロッパ中の難事件を解決していく短編集。全12話。
この本も一昨年の暮れに買ったもの。
プロファイリング・シリーズと銘打ってあるとおり、あつかっている事件はシリアルキラーや猟奇殺人やら、とにかく凄惨で気味の悪いものが多いです。でも、短編集なので事件現場だの犯行シーンだのはさらりと書いてあるため、それほどショッキングな描写はありません。それほど構えなくてもだいじょうぶでした。
フリーマントルの本は初めて読んだのですが、短編集にしては贅沢なアイデアをふんだんにつかっていて、気前がいいなあと思いました。
ヒロインのクローディーンの仕事にやたらのめり込む原因や、互いのプライヴァシーを尊重する建前にしばられてなかなか親密にうちとけられない法病理学者との関係など、いろいろとシリーズを通して興味をひくような仕掛けもあり、楽しめました。
そしてぼんやりしているうちに続きの長編が発売されているようです。
図子慧『カムナ歌』(集英社スーパーファンタジー文庫.1998.276p.533円+税)読了。
格闘系アーケードゲームとファンタジーとボーイズラブの三題噺。図子慧の作品としては流して書いたような印象。
年中無休のMacユーザーの強い味方クイックガレージにPBを持ち込む。
電話で問い合わせたときに、二週間くらいかかると言われていた。やはりその場で修理とはならず、お預かりになってしまう。ウリの「対面修理」を見てみたかったんだけどなー。
店で見てもらったところによると本格的な故障らしい。このときは部品を注文する必要があるので10日間くらいかかるといわれた。お、すこし短くなっている。
原因はハードディスクらしいので、データが消えてもいいかと念を押されました。不幸中の幸いというか、動かなくなる直前にバックアップをとっていたので、それほどショックなことにはならずに済んだ模様。だけど環境復元には時間がかかりそうで…うーん。面倒なことになったなあ。この暑いのに。
ブライアン・フリーマントル『屍泥棒』を読む。
サイトはしばらく更新できそうもないけれど、本を返却したら感想が書けなくなるので、いちおう、日記をべつの機械で書いておくことにする。と言うわけで今書いてる。
メールチェックとネット巡回の後、感想日記を書こうとしたら、PowerBookG3が動かなくなった。起動音はするけど、それだけ。ハードディスクが「カラカラカラ」と音を立てている。困惑。暑さでへたってしまったのか。電源を切って冷えるのを待つ間に本を読む。
篠田真由美『桜闇 建築探偵桜井京介の事件簿』(講談社ノベルス.1999.436p.1050円+税)読了。
建築探偵シリーズの短編集。10作品が収録されている。巻末に著者直々の解題とシリーズ作品年表がついています。これを見ると、じぶんがいかにシリーズの流れを無視して読んでいるかがはっきりとわかります。いきあたりばったりに借りてるからこうなるんだよねー。
桜井京介と蒼はアダルトチルドレンだったのか。
あと、このシリーズで建物の描写を読んでいると、頭の中がこんがらがってきます。つくづく、三次元的な思考力が欠如しているのですね。
短編集なので一編読むたびにパワーブックの電源を入れてみましたが、まったく改善はみられず。
ジェフリー・ディーヴァー(飛田野裕子訳)『眠れぬイヴのために 上下』(ハヤカワミステリ文庫.1998.上373p.下341p.各640円+税
Jeffry Deaver "PRAYING FOR SLEEP",1994)読了。嵐の一夜にくりひろげられるサスペンス小説。
死体と入れ替わり死体運搬車に積み込まれるという巧妙な手口で精神病院からぬけだしたマイケル・ルーベック。妄想型の精神分裂病を患っているルーベックは、どうやらかれが犯人とされたインディアン・リープ事件の裁判で不利な証言をしたリズボーン・アチスンの住まいをめざしているらしい。
ルーベックの脱走を知った主治医のリチャード・コーラー。元警官で精神病院院長がかけた報奨金目当てのトレントン・ヘック。リズボーンの夫オーエン。三人はそれぞれの思惑を胸にルーベックを追いかける。
映画化された『ボーンコレクター』が先頃日本でも公開されたジェフリー・ディーヴァーの邦訳第三作。
第一作目『汚れた街のシンデレラ』は読んだのですが、第二作目があまり好みではなかったので、読もうとは思っていなかったのですが、映画を見た『ボーン・コレクター』が当分借りられそうにないので、借りてみました。
とにかくサスペンスです。ルーベックの逃避行は本人の行動原理がわからないだけにかなり不気味だし、それを追いかける人たちもその不気味さの影響を受けていて緊張しているし、さらに迫り来る嵐が追い打ちをかけます。
緊迫感と恐怖感をたかめるありとあらゆる工夫を凝らしていて、ぐいぐいひっぱられて読み続けてしまいます。
それに謎解きの要素もあります。ルーベックが引き起こしたとされるインディアン・リープ事件は、彼のみならず、証言者のリズにも妹との不和など多大な影響をもたらしているようなのに、どういった事件なのかはなかなか明らかになりません。ゆえに、ルーベックがリズをめざしている理由も、本当のところでは解明されないまま。このあたり、もどかしくてよけいにつづきを読んでしまい、すっかり作者の思うつぼです。バラの栽培を趣味とする教師リズの過去が追跡劇と交互に描かれていき、退屈な回想のように思われていたことが次第に意味を持ってくるところから意外な展開へとつながっていきます。
上を読了した時点で感想を書こうと思っていたのに、つい下巻に手を出して止まらなくなってしまいました。
にしても、アメリカの娯楽小説、とくにホラーやミステリなどの描写は、客観的というか、立体的というか、日本人の書くものとは質感がぜんぜん違いますね。
多民族国家だからなんでしょうけど、人間ひとりをあらわすのに費やされる文字数は断然多い。このあいだの『ホワイトアウト』では登場人物の容姿の具体的な説明は無きに等しかったように思います。
登場人物の中ではまわりじゅうの鼻つまみ者と思われるトレントン・ヘックと彼の相棒元警察犬の…えーと名前は忘れましたが、このコンビが好きでした。
朝めざめてから、夜ねるときまで、ずーっと蝉が鳴きつづけている。うるさい。
小沢章友『千年天使』(角川春樹事務所.2000.280p.2000円+税)読了。現代の闇に聖書の幻視がたちあらわれるような幻想小説。
竜造寺爵の名で幻想小説を書いて生活している藤川秋彦は、死んだ恋人を物狂おしさにおそわれずに思い浮かべられるようになっていることを自覚する。彼女は27年前に善福寺公園の池で死体となって発見された。かれは長い間恋人の死にとらわれて生きてきたのだ。
それを合図とするかのように、かれに「天使を祓ってほしい」と頼む奇妙な青年、天野わたるがあらわれる。一度は断る藤川だが、呼応するように現実とも幻ともつかない、しかし、はっきりと命の危険を感じる出来事と次々に遭遇するようになる。あわやというところで藤川を救う黒い羽根の主はなにものなのか。そして、かれは天野に誘われていったコンサートでチェリストの笠井晃に、天使祓いの願いを受け入れるように要請されるが…
現代を描写するにはやや気障とも感じられる文章で、きらびやかに闇と光、悪魔と天使を描き出しています。罪を犯した天使として人間の間に転生しつづける女性を愛した男の物語。
王朝ものや陰陽師ものと違い、小沢章友の現代物は悪夢のようなものを描いてあまりカタルシスが感じられなかったため、遠ざかりつつあったのですが、この本はラストの哀しいうつくしさが救ってくれました。あちこちで描写されるいろとりどりの植物や、至高の空の色セレステ・ブルーといったことばも、作品全体に明るさをもたらしていると思います。悪魔やその眷属たちの暗々としたイメージと対照的。
ただ、天使・悪魔側の事情があまり明らかにならないのが、不満といえば不満です。天界とは隔絶した一個の人間の物語として語るなら、これが限界かなと思いますけど。
著者の経歴と主人公が似ているのが、興味深いですね。精神的な自伝なのかも。
昨日、駅にたどり着いて電車から降りたとき、とつぜん眼にとびこんできてびっくりしたものがあります。
「GATCHAMAN starring SMAP」
そう、NTT東日本のポスターでございます。横一列、何枚もつながってガッチャマン。壮観でした。
えらい凝った扮装でねえ、SMAPひとりひとりの顔は見分けられたけど、あまりにインパクトが強くて、疲労とあいまってくらくらしてしまったので、立ち止まってしっかり見るということを思いつけなかったため、「白鳥のジュン」はだれがやってんだろう…とぼんやりおもいながらその場を離れたのでした。
今度はしっかり見てやろうと思ってたはずの帰り道は、ホームの半ば過ぎにくるまですっかり忘れてて、「あれ」と気づいたときにはもう取り外されていたみたい。
Webページ巡回の際に、NTTのサイトにリンクをはってらっしゃる方がいたのでのぞいてみました。これは時間があるときにじっくり見た方がいいみたいです。とりあえず、「白鳥のジュン」をだれがやっているのかは判明しました。
江國香織『すいかの匂い』(新潮社.1998.226p.1300円+税)読了。
表題作とあわせて11の短編を収めた作品集。いまは文庫でも出ています。
だれにでもあるような子供の頃の夏の出来事を、美化することなく淡々と、時には毒を含んだ筆で書いています。私は子供の時はほんとにコドモだったので、周囲のことには疎く、内証などもせず、刹那に生きてました。そういうやつでも、なんとなくおぼえのあるような風景が、いま体験しているかのように描写されていると、「ほかのひとたちはこんなこと考えながら暮らしていたのか」と、自分のしあわせくん加減に恥ずかしさをおぼえます。いまさらだけど。
ところで江國香織はメジャーな作家なんですね。児童文学として書かれた本を読んでからしばらく遠ざかっていたので、まったく気づいていなかった。お恥ずかしいことでございます。この本を借りようとして図書館のデータベースで調べたら、他の本は予約が何百も入っていてたまげました。読後感としては、『つめたいよるに』のほうがよかったかなと思います。大人向け、子供向けの違いなのでしょうか。
大都会へ月一のお出かけ。
しばらく比較的過ごしやすい日々がつづいていたのと、予想最高気温にだまされた。めちゃくちゃ暑いではないですか。
ふらふらと本屋によって栗本薫『試練のルノリア』を購入後、目的のビルまでたどり着き、昼食を食べてから病院へ。
予約は二時半なのに診察は三時半過ぎにまわってきて、そのほかもろもろのことをやっているうちに薬をもらって帰るときには四時を過ぎていた。おかげで『試練のルノリア』は、復路の電車に乗るまでもなく読み終えてしまいました。疲れた…
栗本薫『試練のルノリア グイン・サーガ74』(ハヤカワ文庫JA.2000.292p.540円+税)読了。
疲労困憊したナリスには同情するけど、ぺらぺらとよくしゃべるお方だなあと思います。こんなに話せるんなら、それほど重体というわけではないのでは。お母上のご登場には、びっくりしましたけどね。それよりヴァレリウスの冒険のほうが興味深い。もすこしパロの成りゆきをきびきびと書いて、ヴァレリウスをメインにしてくれればいいのに。
真保裕一『ホワイトアウト』(新潮文庫.1998.638p.781円+税)読了。
現在、織田裕二主演の映画が公開中の山岳冒険小説。
雪に閉ざされた日本最大の貯水量を誇る奥遠和ダムが、赤い月を名乗る武装グループに占拠された。彼らの要求は24時間以内に50億円を用意しろというもの。人質にとられたのは電力会社の職員と、ふもとの住民だ。
奥遠和開閉所に勤務する電力会社の職員富樫輝男は、偶然から武装グループの包囲を突破し、ひとりだけ行動の自由を得た。
冬に入ったばかりの山で遭難者の救助に向かった際、事故から友人の吉岡を遭難死させてしまった過去をもつ富樫は、同僚と、見学に来ていて巻き込まれた吉岡の婚約者を救うため、単身困難に立ち向かっていく。
冒険小説の主人公に必要不可欠な不屈の闘志。富樫輝男のぜったいにあきらめない心は、友人吉岡を救えずにひとり生き延びた悔恨からきている。武装グループに襲われてひとりで山に逃げのびたとき、富樫は自分は吉岡の婚約者を救うためにいままで生き残ったのではないかと思いいたる。かれはここから自分の生きている意味をかけてたちあがる。これはいわば、贖罪の戦いというわけです。
大学時代から山岳部で、山の近くで仕事ができるかもしれないという理由から電力会社に入ったかれは、奥遠和の山に対する経験をたよりに、武装グループと渡りあう。ときどき、「そんなにうまくいくか?」と思わせられる箇所もないではないけれど、富樫の前にそびえたつ冬山の圧倒的な存在感がささいなことと忘れさせてくれる。雪の描写は徹底的にリアルできびしい。その冷たさや重み、痛さまでを体感させてくれたあげく、ラストにやってくる吉岡の婚約者千晶が耳にする雪の音のシーンはとても静かでうつくしい。
去年の春に弟の大プッシュで買い求めた後、10ページくらい読んだところで行方不明になってしまっていた本。織田裕二の主演に弟は違和感を訴えていたけど、そう聞かされてから読むと、どうしても織田裕二のイメージで読んでしまいますよねえ。千晶(吉岡の婚約者)も自然に松嶋菜々子でイメージしてしまうし。
あと、冒険小説を読んだ後で必ず思うことがある。「もっと体をきたえねば」
私がいまの状態で武装グループにとらえられた場合、最初に殴られた時点ですでに骨折しているのは間違いないでしょう。
『ホワイトアウト』を読もうと思いつつ、甲子園を見たり、仕事をしたりで(順序が逆?)、思うに任せない。すべてを印刷すれば終わりというところまでもっていって、プリンタの用紙を入れ替える作業だけが残り、気づいたら、すでにナイターの時間。
しかし、読みました。プリンタを動かしながらテレビでナイターを見つつ、『ホワイトアウト』を。半端な読み方ですが、内容のおかげで思ったより集中しやすくてけっこう進んだ。残り五分の一くらいまで読んだところで、夕飯になったのでやめましたが。
こんなことができるのも家内制手工業のおかげですが、こんな時間まで仕事をしなくちゃならないのも同じ理由なので、ありがたいんだか迷惑なんだかわかりません。
きょうはひとりで仕事をしていた。
今回の仕事はモノクロ画像をスキャナで読み込みまくって、その画像から汚れをとりつづけるという、単調なうえに神経を使い、なおかつ、途中からやってる意味を見いだせなくなるいやーな作業がほぼ半分を占めた。眼は疲れるし、腕はだるいし、ああ、うんざり〜。
てなわけで、こっそりネットサーフィンもやっていた。プリンタを動かしてるときみたいに、手が空いてるときだけですが。ファンタジー作家妹尾ゆふ子のサイトでメールマガジンを始めるというので、さっそく申し込む。あとはひたすら素材を求めてうろちょろ。
しかし、この状況ではさすがに本は読めない。今回の発掘作業のめあてだった真保裕一『ホワイトアウト』をようやく本の山から見つけたんですが、まだはじめのほうをかじっている段階。
発掘された本その三。須賀敦子『ユルスナールの靴』(河出文庫.1999.268p.640円+税)読了。
きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。行きたいところ、行くべきところぜんぶにじぶんが行ってないのは、あるいは行くのをあきらめたのは、すべてじぶんの足にぴったりな靴をもたなかったせいなのだ、と。須賀敦子『ユルスナールの靴』冒頭
なんだか自分のことを書いてあるみたいな文章で、とまどいと興味を抱かせられた本。
イタリアに長く暮らし、1991年『ミラノ霧の風景』で女流文学賞、講談社エッセイ賞を受賞。イタリア文学の翻訳でも知られる須賀敦子が、20世紀フランス文学を代表する作家のひとりで、1981年にアカデミー・フランセーズの最初の女性会員に選ばれたマルグリット・ユルスナールの人生を、自分の生い立ちや精神的な遍歴とからめつつ、またユルスナールの著作の登場人物の足跡をたどりながら描いていく、「エッセイとも評伝とも小説ともつかない本」(巻末、多田智満子「須賀敦子の靴」より)。
須賀敦子の本を読むのは翻訳をのぞけば初めて。ユルスナールは、高野史緒の『架空の王国』で興味を持って『黒の過程』を読んでみましたが、えらい苦労をした覚えがあります。とはいえ、本の雰囲気は好きでした。それで『ハドリアヌス帝の回想』にも手を出してみましたが、こちらは何度借りても読み通せずにけっきょく返却しています。(そのうちまた挑戦するつもりはあるけども)
で、この本ですが、須賀敦子とユルスナール、希有なふたりの出会いで生まれた幸せな本、という印象。
靴の話には共感しました。って私が唯一明確に共感できたのがそこですが。靴では苦労しています。足に合わない靴は不幸です。履く人にとっても靴にとっても。
この本で、ヨーロッパのお金持ちの人たちは、出来合いの靴なんぞ履いたりしないことを初めて知りました。たぶん、あちらでは靴屋というのは靴をつくってくれる人、またはつくってくれるところ、のことなんでしょうね。
外出直前に左手親指に違和感。なんだかトゲでも刺さったようにちくちくするのに、指の腹でそっとなでてみてもなんの気配もないので、しようがなくてほっておく。なにかの拍子にちくりとする以外、害はないけど、とても気になる。目で見てもなにも見あたらないし。
突然の雷雨に注意という天気予報を真にうけて、折りたたみ傘を持っていったというのに、ひとつぶも雨は降らない。荷物が増えただけ。
図書館で三浦真奈美『女王陛下の薔薇』を検索。第一巻の予約数が0だったので、予約を入れる。ちなみに最新にして最終の第四巻は、予約数が二桁あった。気長に借りましょう。
バスはお盆で休日ダイヤ。バス停で前に並んでいたおじいさんがわざわざ教えてくれた。ありがとうございます。
- 円山夢久『リングテイル2 凶運のチャズ』(メディアワークス電撃文庫)
- 水樹和佳子『イティハーサ 4』(ハヤカワ文庫JA)
- ジョセフィン・テイ『時の娘』(ハヤカワミステリ文庫)
を購入。
児童書コーナーで、何度も見たにも関わらず忘れてしまう上橋菜穂子『夢の守り人』を頭に刻みつけて帰宅。
須賀敦子『ユルスナールの靴』を読む。
家捜しをした結果、あらたに10冊もの未読本を発見。ふうー。
奥泉光『グランド・ミステリー』(角川書店.1998.588p.2400円+税)読了。重厚な戦時ミステリーSF。
1941年、真珠湾の奇襲に備えて南下する大日本帝国海軍。加多瀬稔海軍大尉が先任将校として乗り組む潜水艦で、艦長室の金庫が紛失した。作戦直前の不祥事に艦内は大騒ぎになるが、金庫と中身の命令書は便所で発見される。ただひとつ、特殊潜行艇の乗組員がたくした遺書をのぞいて。
時を前後し、空母「蒼龍」では整備兵の自殺が発覚。さらに真珠湾の攻撃を終えて帰還した艦上爆撃機の搭乗員、榊原海軍大尉は着艦直前に謎の死を遂げるが、こちらは戦死と処理される。
戦勝気分をよそに親友榊原の弔問におとずれた加多瀬は、未亡人志津子から「夫は自殺だった」と聞かされるが……。
またもやミリタリーです。内容を吟味して借りてきたわけじゃないので、偶然なんだけど、ここまでつづくと自分の無意識が少し怖いです。
「野間文芸新人賞」「芥川賞」とそうそうたる純文学の賞を受賞してきた著者の「剛腕が炸裂する怒濤の1600枚書き下ろし」(帯の宣伝文より)。
海上の潜水艦から物語ははじまり、その描写は波のうねるようにいつまでもとぎれず、こっちまで船酔いになりそうなくらい。とにかく一文が長いです。こういうのが純文学なのか…と思いつつ読んでいると、ストーリーもどんどん錯綜してきて、主人公加多瀬大尉のあじわっている混乱がこちらまで伝染してきそうです。萩尾望都の『銀の三角』を思い出しました。
「人の一生は一冊の本を読んでいるようなもの」。そして2冊目の本を読んでいると気づいてしまった人々の苦闘が壮大な物語の本筋なのですが、主役の加多瀬や自分のことを述懐している貴藤大佐はいいとして、まったくあかされない志津子さんの胸中なども知りたかったなー。
太平洋戦争の真珠湾攻撃から硫黄島玉砕までの時間が流れますが、戦闘の描写はほとんどないにもかかわらず時代背景や当時の社会状態は細部まで細かく描写してあって、読んでて相当に消耗しました。救いは加多瀬の部下の木谷中尉と加多瀬の妹さんの交流でしょうか。といってもホントにちょっとしか出てこないんだけど。
おもしろかった。けど疲れた。これが本音。体力のあるときにお読みください。
ところでアメリカ軍ものと大日本帝国軍ものをつづけて読んで、時代に差はあるものの、雰囲気の違いにはほんとうに驚かされました。なんでこんなに陰湿なんでしょうね。
台風が遠のき風が弱まってきて、暑さ復活。
奥泉光『グランド・ミステリー』を読む。
大洋ホエールズの往年の名投手、秋山登さんが12日に亡くなられた。
もちろん現役時代の秋山さんを生で見たことなどないし、監督時代も知りません。私にはTVKの解説者としての秋山さんがすべてでした。最近画面にお姿が見られないと思ったら、体調を崩されていたのですね。生涯成績は大洋の投手としてはずば抜けたものでした。弱小球団で作った記録だから、もっと評価されていいと思う。いま現在、こんなに頼りになる投手がいれば…とくだらないことを考えてしまいます。謹んでご冥福をお祈りいたします。
須賀しのぶ『天翔けるバカ』(集英社コバルト文庫.1999.242p.476円+税)読了。第一次大戦の空戦ものコメディー。
アメリカの上流階級に育ったリックは子供の頃からなにをやっても鈍くさかったが、飛行機との出会いによりただのバカから飛行機バカになった。ところが婚約者のレイチェルにイギリス貴族に嫁ぐと告げられ、その時の派手な喧嘩がもとでイギリス軍の義勇飛行隊に志願することになる。ひたすらに撃墜王をあこがれめざすリックにとって、しかしそこは理想とはかけはなれた、変わり者の巣窟だった…。
現実の戦記物にはあまり食指の動かない私にとって、第一次世界大戦ものというと、ルース・エルウィン・ハリスの「ヒルクレストの娘たち」のシリーズだったり、キム・ニューマンの『ドラキュラ戦記』だったりします。似ても似つかないふたつの作品ではありますが、戦争についての記述ではそう隔たったものでもありませんでした。印象としては。しかし、この本は…コメディーなんですよ。
始めのうち、時代物の雰囲気がまったくないので少し不安だったのですが、さりげなく当時の世界情勢などをわからせる手法には感心いたしました。〈キル・ゾーン〉シリーズの始めにあったぎこちなさももうないです。キャラクターもそれぞれ個性的。主役のリック以外は裏のある説得力あるバカたちです。リックのバカさ加減には笑わせてもらいました。うーん、うまい。たのしい。
作者はあとがきで新谷かおるの『エリア88』にはまったと書いておりますが、たしかに味わいとしてはかなり近いですね。しかし、リックほどのバカは出てこなかったと思うぞ。
今週はなんだかミリタリーづいてるなー。『コールド・ゲヘナ』にも「レッド・バロン」なる人物が出てきたし…『ドラキュラ戦記』にも出てたよねー。第一次大戦の華なんでしょうか、このおかた。
寝ている間に肘を虫に刺されたらしい。真っ赤に腫れあがってもとのかたちがわからない。こんなに長時間赤くて腫れてるということは、蚊じゃないのかもしれない。そのうえ、かゆい。問題はかゆみですね。かゆいと意識の集中が妨げられます。虫さされだけでなく、頸まわりに汗疹も発症しているので、夜中にかゆくて眠れないこともある。夏が終わればすぐに治るんですが、それまでは地獄だな。
ネルソン・デミル(上田公子訳)『将軍の娘』(文芸春秋.1994.444p.2621円+税,Nelson Demille "GENERAL'S DAUGHTER",1992)読了。
アメリカ合衆国フォート・ハードリー陸軍基地。基地の司令官キャンベル将軍の娘で心理作戦学校の教官でもあり、輝かしい軍歴と知性と美貌とを基地中にとどろかせていた、アン・キャンベル大尉が、全裸の絞殺死体として発見された。陸軍犯罪捜査部(CID)のポール・ブレナー准尉は、たまたま他の事件のために派遣されていたため、事件の捜査を任される。パートナーとして指名されたのはやはり偶然居合わせたレイプ専門の捜査官シンシア・サンヒル准尉。かつては恋人同士だったふたりは、おたがいの存在にとまどいながら事件の真相に迫っていく。
「だれが殺したのか」を探る殺人ミステリーinアメリカ陸軍。
なかなか図書館に戻ってこなくて読めなかった本。とってもおもしろかったです。待ってた甲斐はありました。
ポールの一人称が軽妙で、ひとつひとつの文が状況描写だけじゃない含みがあります。事件そのものは陰鬱なうえ、硬直した体制のゆがみが大きく影響をおよぼしているいやーなものなのに、雰囲気が明るいのは文体のおかげでしょう。
基地では公然の秘密と化していたアン・キャンベルの裏の顔を、よそ者のふたりがさぐりだすところや、軍の名誉を守るためどうしても内部で処理したい上層部と、ほかの権力者との綱のひきあいからFBIに事件を引き渡すタイムリミットが設定されてしまい、眠る間も惜しんで捜査をつづける必要が出てきたり、CIDのポールの上官堅物のヘルマン大佐の人となり(このおかた、好きです)など、たのしみがたくさん。
借りたのはハードカバーですが、もう文庫でも出てたはず(とっく?)。たしか映画化もされたんですよね。観ていないんだけど。
久々にネットサーフィンをする。自室で接続できないのでノートパソコンを持って大移動である。
ネットの本屋さんbk1。ここで本を買う気はいまはまだほとんどないんですが、書評やらが充実しているという評判です。
で、なんども接続してみてるんだけどそのたびに「cookieを受け入れる設定にしてください」とでてきてかなり苛立ちました。だって受け入れる設定になってるのにー。それに最初の何度かはちゃんと繋がってたのにー。他のサイトだと大丈夫なのになにがいかんのだ!
そこで今日は思いついてIEではないブラウザ(iCab)を使ってみました。するとすいすいと画面がダウンロードされるじゃありませんか。うぬぬ。IEの初期設定が壊れたか。
そこで妹尾ゆふ子の新刊『NAGA 〜蛇神の巫〜』の立ち読みコーナーを発見。さっそく読みにいってみると…いやいや、お話自体はおもしろそうだし、絶対買うぞと決心しました。ごくごく個人的なことでちょっとね、ちょっとめまいがしただけさ。
それから一時間ばかりOCRソフトで原稿読み取りをつづけました。スキャナに原稿をセットするために立ったり座ったりのくりかえし。汗だく。なんでこんなことしてるのかなー、私。
ゆうべ下がった気温ももとどおり、暑いです。
というわけで本の感想。
発掘本その2。マーセデス・ラッキー(山口緑訳)『誓いのとき』(創元推理文庫.1999.414p.700円+税,Mercedes Lackey "OATHBLOOD",1998)読了。
一族を皆殺しにされた女剣士タルマと、傷ついた女性を癒す魔法の剣に導かれる女魔法使いケスリー、傭兵稼業にいそしむふたり連れの物語。
埋もれては発見されて少し読まれ、を繰り返していたファンタジー短編集。おかげで記憶が新しいのや古いのや忘れたのやで、ちょっと困った。一話ごとの感想はパスです。
タルマとケスリーのふたりは、設定的にはひかわ玲子の「エフェラ&ジリオラ」に似ていますが、物語の世界はもすこし地についていて現実感があって、神話的というより年代記的なかんじです。
個人的にはタルマとケスリーが一族再興ののちにつくった学校の生徒たちが活躍する「誓いのとき」が一番たのしかった。そういえば、おなじヴァルデマールを舞台にした『女王の矢』でも学校が出てきたなあ、うろおぼえだけど。ラッキーは学校を書くのが好きなのかも。
樹川さとみ『楽園の魔女たち〜不思議の国の女王様〜』(集英社コバルト文庫.1999.294p.533円+税)読了。
「楽園の魔女たち」シリーズの10作目。今回はエイザードがなぜか体調不良。弟子たちとマッチョな料理人ナハトールが依頼を受けて出かけるものの、護衛のナハトールが女王様に誘拐されてしまう、というお話。うーん支離滅裂な紹介文。
依頼された「髪切り魔」事件が何とも間抜け。この部分、なくてもかまわないのでは。いままででいちばん、しゃくぜんとしない話でした。ナハトールとエイザードの過去の話と現在のできごとがうまくとけあっていないというか。伝言でんでんはたのしかったけど。
それから、今日読んだのは三雲岳斗『コールド・ゲヘナ』(メディアワークス電撃文庫.1999.218p.490円+税)。
第五回電撃ゲーム小説大賞〈銀賞〉受賞作。シリーズの一作目。
天空に環をいただく砂漠の惑星ゲヘナ。超音速で地上をかける人類が作り出した最強の兵器デッドリードライブ。〈レイジー(なまくら)〉バーンと呼ばれるデッドリードライブジョッキー(DJ)のバーンは、凄腕のドラゴンスレイヤーだ。辺境の村に雇われたバーンはドラゴンとの戦いの後、ひとりの少女アイスをたすけた。彼女をさらってきた奴らはドラゴンに全滅させられていた。戦闘でデッドリードライブを破壊されたバーンは、修理工だという父親の元にアイスを送っていくが…。
未来SF。樹なつみの「OZ」みたいな世界。でもって巨大ロボットもの。つぎからつぎへとくりだされるオリジナルな用語とデッドリードライブと呼ばれるモビルスーツみたいなロボットの戦闘シーンが、ガンダムみたい。
題名は「Called Gehenna」で、極寒地獄ではありませんでした
SF的な設定はしっかりつくってあるみたいです。文系な私にはただのスタイリッシュな用語でしかないですけど。キャラクターは類型的ながらいきはいい。ストーリーはまとまっているものの、悪役があまりにも卑小なのでちょっと食い足りない。シリーズを読み進むともうすこしいろいろあるのだろうけど、次を読むかはまだ未定。
久々に外出。暑さと寒さに参る。
夜はものすごい雷雨。こんどは雷鳴がとどろきわたっていた。すぐ目の前でパアッと明るくなるのと同時にバリバリと音がして、怖かったー。近くに落ちたのでしょうか。四回くらい停電するし。
本の感想2冊分は明日書きます。だるい。
エリザベス・フェラーズ(中村有希訳)『細工は流々』(創元推理文庫.1999.318p.520円+税,Elizabeth Ferrars "REMOVE THE BODIES",1940)読了。
犯罪ジャーナリスト、トビー・ダイク・シリーズの第2作。邦訳は逆さから進んでいるらしい。この本の巻末に著作リストがないので、どうなっているのかまったくわかりませんが。(しかも、図書館の本はカバー折り返しの既刊リストがあるはずのところをすっぱり切り取っているし)
読みながら眠ってしまった。どうしても意識が目覚めてこない。登場人物がぜんぜん殺人事件に興味を持っていないのが、話に切実さがない理由なのかな。被害者のことをだれも心底悼んでいないし。探偵役のトビーとジョージが、なんだかとある漫才コンビみたいです。
小野不由美『緑の我が家』(講談社X文庫ホワイトハート.1997.248p.490円+税)読了。青春ホラー小説。
父親の再婚をきっかけに家を出た高校生の浩志。ひとり暮らしを始めたアパート、ハイツ・グリーンホームは、訪れたときからかれを嫌な気分にさせた。そしてつぎからつぎへと起きる気味の悪い不可解な事件。不愉快な住人たち。とくに同年齢くらいの和泉という少年は、かれに意味不明の忠告を何度もしてくれる。クラスメイトから「あそこは出る」という噂を聞かされる浩志だが…。
積読本を発掘するうちに発見した本。おなじ著者の『過ぎる十七の春』は、購入したときのことをはっきりとおぼえているのですが、こちらは…。(ちなみに、1997年の九月も終わり。シーズン最後のG戦を横浜スタジアムに観に行ったときです。松井秀喜の「超」特大ホームランをライトスタンドで見ました。「でっかいフライだ…」と思っていたら、いつまでも落ちてこない。頭上を越えてく打球にあんぐり。打たれたのは川村)
フェラーズの本よりもずっと感情移入ができました。ホラーというより幽霊話という読後感でした。
ものすごい雷鳴。空が裂かれる音というのはあんな感じ? 派手に鳴り響きつづけたわりに、待ちこがれていた雨はたいしたことなかったですが…。
ディリア・マーシャル・ターナー(井辻朱美訳)『半熟マルカ魔剣修行!』(ハヤカワ文庫FT.2000.364p.720円+税,Delia Marshall Turner "OF SWORDS AND SPELLS",1999)読了。
宇宙船が魔法を動力にして飛ぶような世界が舞台。カリバンで剣の修行をしていたマルカは剣術学校を卒業したとたんに追われる身となり、偶然、超美形のアンドロイドが指揮する船に乗り込むことになる。マルカはなぜ追われているのか、彼女の正体は?
とにかく取っつきにくい話。題名もカバーイラストも、なんとかして読者を獲得しようとして凝らした工夫のようですが、こんなに内容と乖離した衣をまとわせてどうするの、と思います。
取っつきにくさの原因はマルカの一人称。彼女の視点でしか語られないのに、彼女に感情移入ができないからだと思う。仕方なくアンドロイドのロダーに注意を移しつつ読み進みましたが、つかれました。マルカの正体はびっくり仰天とか書いてあったのをどこかで読んだ覚えがありますが、わたしはそんなに驚けなかった。暑さで思考が麻痺しているからなー。
五代ゆう『〈骨牌使い〉(フォーチュン・テラー)の鏡』(富士見書房.2000.508p.2300円+税)読了。芳醇なイマジネーションとダイナミックな文章で描く、探求の物語。
〈祖なる樹木〉と〈旋転する環〉によって生まれた十二の〈詞〉(ことば)によりかたられた世界。
河口の商業都市ハイ・キレセスに住む少女アトリは、亡き母の友人で〈斥候館〉の女主人ツィーカ・フローリスの好意により、占い師として身を立てていた。館の〈花祭り〉の当日、いつもどおり館で仕事をしていたアトリは、不愉快な男にからまれ、誘拐される。男の背後には、彼女を狙う別の人物の意志が働いていた。
彼女の母親とその血筋にはどんな秘密が隠されているのか。偶然から占うことになった青年ロナーの運命は、アトリをいやおうなしに自分の運命に導いてゆく。
なにを書いてもネタばれになりそうなお話だなー。力作。物語世界の力強い生気を感じます。いきいきした想像力と骨太なものがたり。うつくしいけれど、とにかくつよさを感じる文章です。あざやかなイメージが浮かんでくる。登場人物たちもこの世界でちゃんと生きています。ぐいぐいとひきよせられて、よいファンタジーにめぐりあったときの幸せな気分で読み終えました。ふふふ。(意味不明)
今年の夏はなにか静かだなーと思っていた。それは蝉の鳴き声。今日になってうるさいほど鳴きだしました。
暑さに浮かされつつ、五代ゆう『〈骨牌使い〉(フォーチュン・テラー)の鏡』を読む
昨夜録画したビデオを見る。最近、まったく触っていなかったから忘れていたのだが、うちのビデオは突如音声が聞こえなくなるという症状が頻繁に出ます。接触が悪いのだろうか。ビデオの右手前に重たいもの(人間)があると、治ったりします。床がゆがんでいるのかもしれない。足踏みしても効果あり。
しかし、「これで大丈夫」と落ち着いて鑑賞するために椅子に戻ろうとすると、またもや元の木阿弥に。何度か電器屋にも診てもらってるんだけど、そのときには症状は出ない。電器屋さんがうちじゅうの誰よりも体重があるせいだと、私はにらんでいるのだが。きょうは立ったり座ったり巻き戻したり、大忙しであった。はたから見ると、単なるこっけいなヒトだよなー。苦笑。
ちなみに見たのは『トップランナー』でした。
谷瑞恵『摩天楼ドール フェザークィーン』(集英社コバルト文庫.2000.238p.495円+税)読了。「摩天楼ドール」の続編。近未来青春アクションもの(?)。
オムル地区で頻発する転落死の裏にひそむ、謎の昆虫と正体の明らかならぬ麻薬。きよらは知らずに事件の鍵を握る一族にとりこまれるが…。
今回は悠の内面の葛藤がそれは丹念に書き込まれております。謎の生命体銀流を宿して生まれてきた自分への不安、不信は自信のなさへつながり、慕ってくるきよらへの対しかたにいちいち悩んでは落ち込み、落ち込んでは悩み。
感情移入はしやすくなったけど。キャラクターをみせる方向になっていってしまうのがなんか残念。
NHKの朝の連続テレビ小説『私の青空』。ときどき見てるんだけど、プロボクサー「プリンス近藤」をどうしても「プリンス赤坂」と思い浮かべて自分で笑ってしまう。元光GENJIの赤坂晃が演じているからか。
彩穂ひかる『法廷士グラウベン』(講談社X文庫ホワイトハート.2000.348p.630円+税)読了。
十五世紀西欧の架空の法廷都市エッラを舞台に若き美貌の法廷士グラウベンの活躍を描く、法廷サスペンス。
あとがきからすると第6回ホワイトハート大賞期待賞受賞作そのものではなく、書き直したものであるらしい。著者曰く、「ノンストップ・ジェットコースター式・西欧中世法廷サスペンス・珍本ファンタジー版」とのことですが、「〜珍本」のところまではうなずけます。ファンタジーかどうかは、私の基準としては違うといいたいけど。
途中もたつくところもあるし、法廷ではないところでの説明調のセリフや舞台劇みたいな大仰なセリフに困惑するところもあるけど、お話はひといきに読めました。
ヨーロッパ中世に架空の都市を造るというのは並大抵のことではないと思いますが、現実感はないけど、存在感はあります。いろいろ詰め込みすぎのような気もするけど、密度は濃いです。
たまには他のことをしようとは思うのだが、暑さを理由にまたもや読書に逃げている。不毛だ…。でも積読本が減っていくのは嬉しい。素直に。
その積読本の一冊、『妖雲群行 アルスラーン戦記10』(角川文庫.1999.254p.476円+税)読了。架空の王国パルスを舞台にした大河戦記ロマン。
手を出してからはっきり後悔した。暑さ逃れのための読書で中近東のことなんか思い出したくなーい。エクバターナの、ミスルの暑さの描写を目にするたび、大学時代に講師が喜々として語った「ハエも飛ばないバンダルアッバース」の逸話が思い出されて……これはもう条件反射とか言いようがありません。もちろん冬に出た本を今頃読んでる自分が悪いんですとも。しくしくしく。
個人的な事情はともかく、休んでいる間にずいぶんネタを仕入れてきたんだなーと感心いたしました。登場人物ひとりひとりが口にする料理の内容まで説明してくれる親切さ。
もちろん、個性的な人たちも健在。ずいぶんご無沙汰だったのに、これだけキャラクターが立ってるとすぐに思い出せるものなんですね。このシリーズで不満なのは、主役のキャラクターが茫洋としてつかみどころがないところです。その他の人々と比べると存在感が薄くて。たぶん物語をまとめるためにはそのほうが都合がいいのでしょうね。だいたい、ほかとの調和を考えるとどんな人物にすればいいのか想像つかない…。
今回は再開にあたってひととおり登場人物の紹介をしつつ、今後のために種をまいておくといったところでしょうか。
めっちゃ、風が強いー。うちの中が埃だらけです。かといって窓を閉めると暑くて生きていけないし。適度に吹いてくれないものか。
若木未生『ヘヴンズ・クライン ハイスクール・オーラバスター』(集英社コバルト文庫.2000.204p.419円+税)読了。
高校生術者たちの〈妖の者〉との戦いを描いたシリーズ〈ハイスクール・オーラバスター〉の…11作目で、19冊目、ですか。中編ひとつ、短編ひとつの番外編構成の一冊。
最近、このシリーズのストーリー進行を自分が理解できているかが不安な状態です。私、読書中ってものすごくのめりこむんで、いったん読みおえてしまうとその世界を自分が味わった感覚でしか覚えていないことが、しばしばなのですね。そうすると読んだ本の記憶がほとんど残らなくなってしまうので、すこしでも覚えているうちにと、この日記を書いてるわけですが。
若木未生は文章が非常に主観的になってきているような気がする。それでもって、そのことが「これは若木未生の本」とじつにはっきりと主張していて、文章は嫌いじゃありません。しかし、私は出来事を客観的に理解する機会がなくなっちゃって、読んでる最中はたのしい(…というか本にひきずられてる)のに、あとで「いったいなんだったんだ」状態に陥っている。うーむ。
今回は番外編なのでそれほど悩むことはなかったけど。
表題作の「ヘヴンズ・クライン」は、里見十九郎くんと友人の西城敦くん(なぜか「くん」づけ)の夏休みの心温まる出来事。ふたりとも必要以上に理屈っぽくて、饒舌。青春ですねー。
「デュミナス」は、家出を敢行した亮介が新居のアパートで出会う奇妙な出来事。諒と希沙良の漫才付き。
加門七海『呪の血脈』(角川春樹事務所.366p.1900円+税)読了。民俗学ホラー。
高藤正哉は人の死をよく見る。かれは神をまつる家系の末裔だったが、一家は父の代に神事を嫌って村を出てきた。父は自分の血は穢れており、かれもそれを受け継いでいるのだといって早逝した。
諏訪地方の山でまつられていた神木は、薙鎌を封じ込めとして打たれた、ふつうとは違うものだった。民俗学を専攻する研究生宮地が研究欲に負けて薙鎌を抜いてしまったとき、その出来事は始まる…。
疲れた。怒濤の一気読み。加門七海の民俗学についての知識は相当なものですが、ホラー作家としても並ではありませんねー。ときおりあらわれる幻視のイメージの猛々しくあざやかで美しいこと。そして凄惨なはずの死の場面の描写の静けさは、どこからくるんでしょう。ラスト近くの神事も圧巻。ああ、なんて陳腐な紹介文なんだー。
まだ興奮しています。堪能させていただきました。