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2000年10月のdiary

最新の日記インデックス
2000年 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 >>
2000.10.1 /『夏と花火と私の死体』『双色の瞳 ヘルズガルド戦史』
2000.10.2 /『王女グリンダ』
2000.10.3 /『西の善き魔女外伝2 金の鳥 プラチナの鳥』
2000.10.4 /『楽園の魔女たち〜薔薇の棺に眠れ〜』
2000.10.5 /『氷の城の乙女 上』
2000.10.6 /『桐原家の人々3 恋愛統計総論』
2000.10.7 /
2000.10.8 /
2000.10.9 /『パヴァーヌ』
2000.10.10 /『ゆうすげ村の小さな旅館』
2000.10.11 /『楽園の魔女たち〜ハッピー・アイランド〜』『氷の城の乙女 下』
2000.10.12 /『紫蝶の紡ぐ夢 女神の刻印3』
2000.10.13 /
2000.10.14 /
2000.10.15 /
2000.10.16 /『大導師アグリッパ グイン・サーガ75』
2000.10.17 /
2000.10.18 /
2000.10.19 /
2000.10.20 /
2000.10.21 /『銀河おさわがせマネー』
2000.10.22 /
2000.10.23 /『大聖堂の悪霊』『仮面の聖者 女神の刻印4』
2000.10.24 /『ブラックロッド』
2000.10.25 /『魔法探偵、総員出動! マジカルランド』
2000.10.26 /『女王陛下の薔薇4 咲き匂う花たち』
2000.10.27 /
2000.10.28 /
2000.10.29 /『ケルト紀行 アイルランド・コーンウォール(英)・ブルターニュ(仏)へ』『ウォーターソング』
2000.10.30 /『風の白猿神(ハヌマーン) 神々の砂漠』
2000.10.31 /『天使の記憶』
 2000.10.31(火)

 ナンシー・ヒューストン(横川晶子訳)天使の記憶(新潮社.2000.276p.2000円+税 Nancy Huston "L'EMPREINTE DE L'ANGE",1998)読了。

 1957年、パリ。裕福なフランス人フルート奏者ラファエルは、メイド募集の広告を見てやってきたドイツ人の娘サフィーの無口で感情の乏しいところに神秘性を感じ、ひとめ惚れしてしまう。かれの求婚にサフィーはさしたる反応もあらわさずに淡々と同意する。サフィーは結婚してからもあいかわらず無感動なまま、みごもった自分を嫌悪しているようだった。エミールと名づけられる息子が生まれても変化はなかった。あるときラファエルは自分の楽器の修理のためにサフィーに工房までの遣いを頼む。そこにいたのはユダヤ系ハンガリー人のアンドラーシュ。出会ったとたんにふたりは恋に落ちていた。

 フランス語で教育を受け、のちにフランスに渡ったカナダ人作家のフランス語小説。恋愛小説って書いてありますが、こういうのが恋愛小説と呼ばれるものなのでしょうか。恋愛小説をあまり読まないのでわからない。
 文章が変わっている。語り手がまず存在し、その語り手が読者に目の前の状況を説明しているかのようで、登場人物と語り手との距離はどの人物に対しても一定なまま。どれも他人を語っているかのように淡々として冷静で、明晰。
 第二次世界大戦が終わってから十二年後という設定で、三角関係を演じる三人はみな多かれ少なかれ戦争の被害者。かれらの経験してきた出来事は、かれらが語らなければ読み手にも提示されないようになっている。サフィーの無感動なありさまの理由がわかるのは、だからかなり読み進んだ後で、それまではラファエルと一緒に首をひねっていなければならない。なかなか人物のことを理解できないのですこし苛立ちも感じましたが、これって現実の人づきあいのようだなと思います。ここいらあたりの社会状況とのからみは、戦後のフランスなんて知らない私に、新しい知識を与えてくれました。
 ラファエルのおめでたさがすこしあわれだと感じていたところで、とうとうサフィーの二重生活が発覚し、悲劇が訪れる。ラストも事実を提示するだけで、いろいろと考えさせられてしまうお話でした。しかし、普通小説ってカタルシスがないんですよね。たまに読む分にはいいけど、こればかりだとストレスたまりそう。

 2000.10.30(月)

 体調を整えるため、ずっと自粛していたサッカーアジアカップのテレビ観戦。決勝は見るぞと意気込んでいたのですが、午前一時四十分からなんて、遅すぎる。起きてると寒くてしょうがないので、布団の中で本を読みながら時間をつぶしていたら、もう出たくない。テレビ音声をラジオで聞くという暴挙に出ました。
 結論からいいます。ぜんぜんわからん。
 ラジオ中継でもときに首を傾げるサッカー中継です。テレビの音声だけなんて無謀もいいところでした。いちいちプレーを描写したりしてくれないですもんね、テレビの実況アナって。数少ないプレー実況もスタンドの歓声とブーイングにかき消されてよく聞こえない。歓声だとサウジアラビア、ブーイングなら日本が攻めてるんだと思って区別してましたが(苦笑)。
 後半は歓声ばかりが聞こえて、寿命が縮まりました。でも勝ててよかったね。

 というわけで、滝川羊風の白猿神(ハヌマーン) 神々の砂漠(富士見ファンタジア文庫.1995.316p.515円+税)読了しました。
 あるウェブサイトでお薦めと書かれていた本。第六回ファンタジア長編小説大賞受賞作。

 人類と〈機械知性〉との全面戦争〈聖戦〉より100年。地球は三分の一が砂漠化している。
 古城宴は十六歳。聖戦でも生き延びた東京シティが謎の壊滅を遂げてより九年。両親を失ったかれは大槻キャラバンのメカニックの一員として巡回空母「箱舟」に乗り組んでいる。ある日かれは奪い取った蘭州の遺跡の発掘を命じられる。炎熱の中を掘りつづけて発見したものは、「神格筐体」。操縦者の想像力に連動して神の相を帯び、神の力を地上に顕現させる、聖戦のときに核に代わるものとして開発され、地球を荒廃に追いやった究極の兵器である。
 そして神格筐体の操縦席には、記憶を失い冷凍冬眠させられた美少女がいた。

 この本を見つけたウェブサイトは、井辻朱美のファンという記述にひかれて読んだのですが、この本はちょっと予想と傾向が違いました(苦笑)。砂漠を舞台に人間の操る巨大な神様が戦いを展開する…巨大な神様というのはロボットと呼んでもよさそう。主人公は両親を失っても、けなげに誇り高く生きる美少年。明るい仲間たち。巨大ロボットものの王道じゃないですか。
 いろんなあらたに作られた用語とそれが意味する概念が、けっこう新鮮。筐体が神の相を帯びるって、なんか神秘主義っぽくないですか。そのシステムの仕組みなんかはぜんぜんあきらかじゃないんだけど、雰囲気的にかっこよい。出てくる神様たちはいまのところインド神話と日本神話などですが、操縦者のメンタリティーとはあまり関係なく、筐体側に条件付けられているらしい。もっともっと地味な神様がでてくると楽しいなあ。
 と勝手に書きましたが、1995年に出たこの本、いまだにつづきが出ていないらしいです。

 2000.10.29(日)

 きのうの疲労の余韻。ぼんやりと過ごす。
 松島駿二郎ケルト紀行 アイルランド・コーンウォール(英)・ブルターニュ(仏)へ(JTB.2000.254p.1500円+税)読了。
 ニューヨークのセントパトリックデイに受けた鮮烈な印象からケルトへの思いをつのらせていった著者が、ケルト文化の残照を求めてアイルランド、コーンウォール、ブルターニュをめぐる旅行記。
 図書館の新着図書の棚にあったので、なんとなく借りてみた本。
 ケルト関係の旅行記としては、標準的なものか。

 竹岡葉月ウォーターソング(集英社コバルト文庫.2000.248p.476円+税)読了。
 ノベル大賞で佳作を受賞してデビューした著者のはじめての文庫本。人類が太陽系外の惑星に入植をはじめた未来を舞台にしたSF短編を二編収録。

 「僕らに降る雨」
 受賞作を加筆、訂正したもの。
 小学六年生のナットの暮らす町には酸の雨が降る。入植がはじまって十年の開拓惑星では、大人たちの思惑もいろいろだが、酸の雨を避けるためにスペーススーツを着て学校に通うナットたちも、クラスで問題を抱えていた。男子と女子でわかれてグループを作り、競争しあうことで均衡を保っていたところ、ある日やってきたひとりの転校生オヅ・アサヒが、このバランスをなんの恐れもなく破壊してしまう。

 学級崩壊を描いた児童向けの物語のような感触ながら、背景のSF的な設定がちゃんと生きる展開をみせるお話。民間に委託した開拓惑星の開発が粗製濫造で…というのは、なんとなく欠陥建売住宅のようで悲しいですね。

 「ウォーターソング」
 カガヤ・アサヒ、八歳。タウ星系の惑星ザイラスの都市ノルンで歌手の母親と暮らしている。ザイラスは40年前に全土を襲った砂嵐のために受けた甚大な被害からいまだ立ち直れず、人々は荒廃した土地でほそぼそと暮らしていた。ザイラスの経済を支えているのはジャンク屋と呼ばれる廃棄物処理業者たち。アサヒの母親カガヤ・セイが勤めているのは、ジャンク屋の元締めゲイルの経営するバーだ。
 ある日、アサヒの家にオヅ・ヒムロなる男が泥酔状態でやってきた。セイは捨てられた動物を拾ってくる癖があったが、どうやらその延長で拾ってきたらしい。
 ヒムロはその飄々としてつかみがたいキャラクターからか、人気者セイがひろってきたせいか、またたくまにバゲットになじんでしまう。じつはかれはジャーナリスト。上からの命令でバゲットについてささやかれているある事実を究明しにきたのだ。ヒムロは正体をかくしたまま、バゲット内部を探り始める。

 カガヤ・アサヒがオヅ・アサヒになったわけ。
 「僕らに降る雨」よりハードでいろいろ考えてあるなと思うんですが、ちょっといろいろ詰め込みすぎたような気も。SFである必然は減少したかも。

 2000.10.28(土)

 友人の結婚式当日。
 駅まで出るためのバスが、道が混んでいる気配もないのに遅れまくったのは、今から思うとこのあとの運命の予兆だったのでしょうか。
 花嫁は予想外(ごめん)に美しかったし、来賓のスピーチもあたたかいものが多く、式全体としてはなかなか良い雰囲気であったと思います。
 会場であるホテル側の手際の悪さをのぞいては。
 名札の置かれた席に行ってみたら幼児用のセッティングがなされていたり、料理を下げていいかやたらとせっつかれたり、赤ワインをテーブルに注いだり…。
 食後のコーヒーと紅茶、どちらがいいか尋ねられたので「紅茶をお願いします」と答えた後、宴がおひらきになっても空のカップに紅茶をそそがれることはなかった。時間切れってこと?
 その他、雰囲気をかもしだそうとしてなのか、やたらに薄暗い建物内は目が疲れるばかりだし、暖房の効きすぎで汗がにじむほど暑い化粧室、配置図を見てもよくわからない部屋割りなど、滞在時間を経るほどに下降していく印象。
 とどめは二次会場に指定されたホテル内のバー。立食パーティーだから椅子はないのだと説明する従業員。私たち以外の出席者は全員、のんびりと腰掛けている状況でよくそんな事が言えたものです。
 貧乏神を背負って一日過ごしたような気分。非常に疲れた。高校時代の旧交をあたためられたのがせめてもの救いです。

 2000.10.27(金)

 PowerBookの帰還をまっているが、なんの音沙汰も無し。このままアップしないで日記を書きつづけていると、11月に突入してしまうおそれが。書いた日記を読んでもらうにも鮮度というものがあるだろう。
 というわけで、古い機械にFTP転送ソフトを入れて、なんとか更新できるようにしました。サイトデータも、バックアップをとってあるzipから取り込んで体裁をととのえ、なんとかアップロードを敢行。
 この際、日記にスタイルシートで行間を広げる設定を入れてみましたが、いかがなものでしょう。
 Macで見ている限り、たいした違いは感じられないのですが。

 2000.10.26(木)

 病院で渡されたアンケートをすっかり忘れ果てていた。ふいに思い出して開いてみると、「通院後二週間以内に返送のこと」と書いてある。危ない危ない。もうすこしで間に合わないところだった。

 三浦真奈美女王陛下の薔薇4 咲き匂う花たち(中央公論新社C・NOVELS Fantasia.2000.238p.857円+税)読了。少女の成長と自立を描く異世界時代ロマン(?)の完結編。

 ひろがった風呂敷をどうやってまとめあげるのか、興味があったのですが、骨太な展開で押し切ったって感じですね。はじめはエスティとセシリアのダブルヒロインかと思っていたので、セシリアのストーリーが表面に出てこないまま終わってしまったようなところが心残り。権謀術数うずまく宮廷での陰険な戦いを期待してたのですが(苦笑)。
 個人的にはパガンの藩主の令嬢と彼女を心配しつつ口は減らない年下の少年のコンビが楽しかった。長期間放送されるアニメーションの種本にちょうどいいような気がします。あちこちの脇筋やキャラクターをたくさん膨らませられそうだし。ちょっとヒーローが物足りないけどね。でも今そんな枠はないか。やれるとしたらNHKのBS-2あたりかな。

 2000.10.25(水)

 ロバート・アスプリン(矢口悟訳)魔法探偵、総員出動! マジカルランド(ハヤカワ文庫FT.2000.301p.620円+税 Robert Asprin "M.Y.T.H.INC.IN ACTION",1990)読了。ファンタジーコメディー「マジカルランド」シリーズの?作目。

 元師匠のオゥズを探しに社長のスキーヴは異次元パーヴに出張してしまった。魔法探偵社の面々はポッシルトゥムのヘムロック女王が抱く野望「世界制覇」を阻止するために、退役軍人にして名将ジュリー御大の別荘にて作戦会議を設ける。その結果、あるものは情報収集につき、あるものは女王の軍隊のなかに入り込み、中からの撹乱戦法を取ることになる。果たして、作戦は成功するのか。

 前々作にひきつづき、グィドの一人称で進む文章。組織から出向してきているグィドは心の中もヤクザ調。でも、混乱させようとしている軍隊で、心ならずも昇進しつづけるグィドの心中はかなりおかしい。
 スキーヴとオゥズの出番はほとんどなし。なのにラストでヘムロック女王に青天の霹靂のような要求を突きつけられて、絶体絶命。さあ、どうする? というところで「つづく」。もすこし間隔を短くして読まないと、前作の内容を忘れていてとってもトホホな状況。ギャオンがヌンジオにした仕打ちって、なんだっけ?

 2000.10.24(火)

 裾と袖をなおしたスーツを受け取りに行く。

 古橋秀之ブラックロッド(メディアワークス電撃文庫.1997.230p.490円+税)読了。第二回電撃ゲーム小説大賞、大賞受賞作。伝奇SF?

 積層都市〈ケイオス・ヘキサ〉。
 公安局魔導特捜官は精神拘束によりすべての感情を封印し、黒ずくめの衣装と巨大な黒い呪力増幅杖をもつ。通称ブラックロッド(黒杖特捜官)。かれは降魔局妖術技官、通称魔女のヴァージニア・ナインとともに、心霊工学で業績を伸ばす大手メーカー、マグナス・クロックワース社に関わる事件を追っていた。
 私立探偵を営むビリー・龍(ロン)。現在生き残った唯一の吸血鬼。かれのもとにマグナス・クロックワース社から行方不明の社員の消息を探る依頼が持ち込まれる。

 舞台は魔導的な力で戦われたらしい第二次世界大戦のあと。呪術と科学が混在し結合し、人間と人間以外が混在する、混沌の世界。
 この雰囲気はなんと説明すればよいのやら。『帝都物語』とソーニャ・ブルーとエフィンジャーを混ぜたような感じでしょうか。自分で書いてて少し混乱。
 とにかく個性的なことばが山のようにでてきて、世界になじむのにすこし手間がかかりましたが、おもしろいです。これ。ブラックロッドの物語がすこし陳腐かとは思ったけど、それを補ってあまりある独自性。スピード感。かわいた印象の文体など。どれもよい感じ。つづきを読もうっと。

 2000.10.23(月)

 チャールズ・パリサー(浅羽莢子訳)大聖堂の悪霊(早川書房.2000.340p.2200円+税 Charles Palliser "THE UNBURIED",1999)読了。イギリス時代物ミステリ。

 19世紀後半のイングランド。ケンブリッジ大学の史学教授コーティンは、ある事件を境に疎遠になっていた大学時代の親友フィクリングから大聖堂のある町サーチェスターへの招待状をうけとる。  コーティンは逡巡した末、学術上重要な資料が大聖堂にある可能性を発見し、招待を受けることにする。
 いざ到着してみると、フィクリングの態度は旧交を温めようというにはあまりにもぶしつけで奇妙だった。かれはコーティンに250年前大聖堂関係者に起き、未だに解決していない殺人事件の話をする。殺害された人物が恨みをいだいて夜な夜な大聖堂を歩いているという怪談だ。
 コーティンは大聖堂図書館で目的の資料を探すことに集中しようとするが、意に反して過去の殺人事件について多くの意見を聞かされたうえ、自説を披露させられる。どうやら現在の大聖堂関係者のあいだでも、意見の違いから権力闘争が起きているらしい。フィクリングの立場はかなり危うくなっているようだ。
 そうするうちに事件当事者のひとりが住んでいたとされる家で、自分もあらたな説を提唱していた老人が殺害された。銀行の長で財産家だった老人の死に、町に衝撃が走った。

 コーティンの専門であるアルフレッド大王の時代の謎と、250年前の殺人事件と、物語の主な舞台である19世紀後半の殺人事件とを、コーティンの手記と編者のまえがき・あとがき、そして手記中に出てくる童話であらわした凝りまくった構成の重厚なミステリー。
 著者の出世作『五輪の薔薇』は、あまりの長さに手を着けたともいえないくらいのとっかかりの段階で挫折してたんですけど、今回はそれほどの大長編ではないしと挑戦してみました。
 コーティン教授の年齢にしては素朴で潔癖な人格が、読みはじめはかなり鼻についたものの、他の人物たちの人間くささとくらべれば、いいバランスだったのかもしれない。
 いくつも謎解きの要素があるのでミステリとしてはかなりおもしろかった。はじめは怪奇ものかと疑ってましたが。
 謎はすべて明らかになり、事件はすべて過去のものとなった時点で出版された本の体裁を取っているのに、さいごがなんとも。後味悪いです。でも『五輪の薔薇』にもう一度挑んでみようかという気分にはなった。

 樹川さとみ仮面の聖者 女神の刻印4(中央公論新社C・NOVELS Fantasia.1999.201p.850円+税)読了。
 異世界ファンタジーシリーズの第四作。

 シィンはグラルデの女領主に雇われて、マム=クランという部族に捕らわれているという息子を救出する旅につきあわされることになる。いつも呼んでもいないのにくっついてくるラダストールはなぜか今回はマム=クランは鬼門なのでと辞退する。
 マム=クランは神を持たず、死肉を喰らうといわれている放浪する伝説の一族。
 シィンはともに雇われたマム=クラン部族出身の女エリンから蔑まれ恐れられているひとびとのことをすこしずつ学びつつ、旅をつづける。その一方で戦の波が周辺に襲いかかり、難民が増大するのと呼応するように「荒野の聖者」と呼ばれる人物が、人々に救いをもたらしていた。

 「楽園の魔女たち」シリーズも楽しいですが、こちらのシリーズは樹川さとみのファンタジーの根っこを見るようなどっぷりと幻想的で重厚な雰囲気がうれしい。かってにあしべゆうほのイメージで読んじゃってますが、これでいいのだろうか。
 今回も人質と勝手に思われてる人物を強引に救出にいくというお話。このストーリーは決着がついてるけど、途中出てきた「荒野の聖者」盲目のロウジュなんて思いっきりあやしいまま、怪異現象の原因もわかんないまま。
 この本が出てからずいぶんと経ってるし、シリーズもこれで終わってるんだろうと思いこんでいたのに、なんだ、続いてるんじゃないですか…。つづきは出るのでしょうね?

 2000.10.22(日)

 美容院に行った。結婚式に出るのにちょうどよくなる時期に切りに行こうと、これまで伸びすぎの髪の毛をつねに帽子で隠して外出していたのだが、もう限界。

 チャールズ・パリサー『大聖堂の悪霊』(早川書房)を読む。

 2000.10.21(土)

 きょうもお仕事。
 でも、プリンタが働きはじめてからは、本が読めました。

 ロバート・アスプリン&ピーター・J・ヘック(斉藤伯好訳)銀河おさわがせマネー(ハヤカワ文庫SF.2000.472p.820円+税 Robert L. Asprin with Peter J. Heck "A PHULE AND HIS MONEY",1999)読了。「爆笑のユーモア・ミリタリー・SF」。
 宇宙軍のジェスター大尉、じつは大金持ちの御曹司ウィラード・フールと、彼の指揮する落ちこぼれの寄せ集めだったオメガ中隊が活躍するシリーズの三作目。
 解説によれば二巻めが出てから7年間のご無沙汰だったらしい。どうりで、なにも覚えてないはずだ(苦笑)。
 出身が災いして入隊時から宇宙軍のお偉方からよく思われていないフール。オメガ中隊の中隊長に任じられたのも嫌がらせだったのだが、やっかいものの集団を見事にまとめあげ、そのあと降りかかる無理難題も独自の手法により綺麗に解決し、ますますやっかまれ、憎まれております。
 今回は巨大テーマパークの新設事業にとりくみますが、理由が平和維持軍として派遣された任務を全うするためなのだから、このお方の思考回路はふつうじゃありません。前二作より長めのお話ですが、よけいな描写もなくストーリーはキビキビ進むし、個性的な中隊員たちもそれぞれ元気なので、すいすい読めました。あらたにネコ型宇宙人ガンボルト人の新兵も入隊し、登場キャラクターのヴァラエティがますますゆたかになってます。

 2000.10.20(金)

 ひきつづきLaVieですが、購入二日目にしてもうフリーズしました。それも何度も。
 インターネット接続設定をして、「パソコンのいろは」なるお勉強ソフトを動かしてただけなのに、突然凍り付き、アプリの強制終了、機械の強制終了と行った後、不安になったのでメンテナンスソフトを延々と動かしましたが、「異常なし」。

 Macのトラブルにはかなりの経験を積んでいるものの、Winはど素人なので取説くびっぴきです。んが、何度対処しても、またおなじ症状が出るんで嫌になってきた。アプリの割り当てメモリが足りないのかもしれない。だがどうやって増やせばよいのだ。

 それにしても、Winの画面で見るインターネットサイトはホントに字が大きかった。このサイトは文字だらけですね。行間がないのには驚きました。Mac用ネスケとの差はあまりにも激しいなー。どっちに合わせても見づらいような気がするです。中間をとってこのままいくべきか。

 2000.10.19(木)

 父親がWin98仕様のノートパソコンを買いに行くのにつきあう。なぜにWinかというと、仕事で使用しているのがWinNTだから。私の役目は、店員の甘言にのってよけいなものまで買い込まぬように見張ること。購入したのはNECのLaVie(?)。型番はPC-LC600J34DRです。

 しかし…Mac一筋の人間にWinのセットアップをやらせるんじゃないよ…。見た目が似てるだけに始末に負えません。とくにインターネット接続設定のややこしさには泣きました。NTよりは楽だったけど(NTの接続設定もさせられた)。OSは一緒でもメーカーでいろいろ変更を加えてる部分があるから説明書通りにならないというのも、なにか腑に落ちないことだよなあ。

 ロバート・アスプリン『銀河おさわがせマネー』を読む。

 2000.10.18(水)

 きょうも仕事。午前中、本を返却しに図書館へ行ったけど、あとは仕事。

 2000.10.17(火)

 PowerBookG3は宅配便でアップルへの旅に出ました。行き先も旅程も帰宅日も不明。
 所有者はきょうは仕事一筋です。

 2000.10.16(月)

 月一通院日。例によって本屋でグイン・サーガを購入。きょうは待ち時間がいつもより長めで、病院で一冊読み終えてしまった。

 栗本薫大導師アグリッパ グイン・サーガ75(ハヤカワ文庫JA.2000.291p.540円+税)読了。
 大長編シリーズの75巻目。筋は語るのもめんどうなのでやめておきます。今回、ヴァレリウスの冒険を楽しく読んでいたのにとつぜんパロに連れ戻されてがっくり。

 2000.10.15(日)

 ネットサーフィンを自粛していますが、メールチェックくらいはしなくちゃと、以前の主力機で久々にwebに接続した。
 いったん接続すると、掲示板くらいは見ておかなきゃと、結局ブラウザを立ち上げてしまう。
 しかし…トロい。もともと機械そのもののパワーが段違いなうえに、モデムの速度が28800。さらにおもたいNN4.7なんぞで閲覧するので、もーっじれったいっ。

 だけど、自分のサイト以外は最近ネスケで見てないし、自分のもCGIはチェックしてなかったんで、けっこうお勉強になりました。

 まず、ネスケだととても字が小さく見える。
 WinではMacより字が大きく見えるらしいというのをどこかで読んだ記憶がありますが、ようやく体験いたしました。いままで、PowerBookG3のIEの表示をウインドウズ仕様にしていたのと、文字の大きさは相対値でしか設定してなかったんで気づかなかったんだけど、ネスケにはそういう機能はないので、ダイレクトにWinとMacの違いをうけとることになっているらしい。
 おそらく、Mac使用者がつくったサイトをWinで見ると、「字が大きすぎる」と感じるのでしょうね。
 たとえば自分とこの掲示板を見たら、いつもよりかなり字が小さく見えます。それでも読めないほどではなかったけど、改善するべきかなと思いました。大きさを変更できるかどうか、PowerBookG3が復旧したら調べてみます。

 それからテーブルでのレイアウトって、表示に時間がかかりますねえ。この日記も、なかなか全体が出てきませんでした。
 古くてとろい機械でもちゃんと見えるサイトについて、もっと勉強しなくちゃいけないなあ、としみじみ感じました。

 2000.10.14(土)

 ノート型パソコンとデスクトップとで大きく違うのは、あちこちのコネクタの抜き差しを頻繁におこなうことです。今回私はもっとも抜き差しの多いACアダプタとの接続部を破壊してしまったらしい。いや破壊しました。しくしく。

 自慢じゃないけど私はとても非力です。中学時代の体力測定時でさえ握力が右手14キロあるかないかしかなかった。
 だから、普通の人がふつうの力でできることが、渾身の力を出さないと達成できないのです。力の加減なんてできません。すなわち、ACアダプタの抜き差しも、毎回力一杯ねじ込んで、力一杯引き抜いていたのですな。

 たぶんそれがいけなかったんでしょう。接続コネクタの金属部分が中に落ち込んでいるのが見えます。おかげで接触が悪くなったらしい。通電しなくなりました。このまま使いつづければ、バッテリーが切れたとたんに停止して、その後うごかなくなるだろうことは明らか。

 それでもたいして動じていなかったのは、「クイックガレージに持っていけばすぐ治るさ。コネクタを取り替えてもらえばいいんだもん」と楽観していたからなので、店に連絡を取ってみようとも思わなかったくらいだったのに、運び込んだとたんに谷底に突き落とされることになろうとは。
 「この機種は、うちでは修理できなくなりました」
 「9月12日からアップルさんで集中して修理することになったんです」
 客の都合も考えろ、アップルコンピュータ。
 その場でなおしてもらえるはずだったPowerBookG3は、火曜日まで自宅待機となりました。とりにきてくれるのでその点はましだけど。

 2000.10.13(金)

 月末に結婚式に招待されてます。大変おめでたく、ありがたいことなれど、着ていけるような服など一着たりとも所有していないのが現実。

 というわけで、母親と妹に頼んで、いっしょに選んでもらうことにし、出陣しました。ブティックなどを見てまわる気力はないとわきまえた三人のめざすのは、デパートであります。

 必要なのはまず服、つぎに靴。
 服は、予想していたほど苦労せずに決定しました。なにしろ選択肢が少ないもので、悩むほどのこともなかった。

 しかし、靴は難航しました。「足囲サイズがAだから」です。そんなサイズの靴は、フツーの売場には存在しないんです。どんなに狭くてもD。普段履いてるのは、ドイツ製のコンフォートシューズ。オーダーの中敷き付。そこにたどりつくまでには紆余曲折がありましたが、この靴、ものすごく無骨で結婚式には全く似合いません。

 しまいには店員さんの助言に頼りきりになり、なんとか見た目おかしくない程度のものを購入することができましたが…服探しの5倍くらい労力を費やしました。

 しかし、デパートの商品て質もいいんだけどお値段も大変よろしいのですよね。おりしもそこのデパートでは地元球団の応援感謝セール(!)なんてのを催していたにもかかわらず、それとはまったく関係のないものを買ってしまったので、むこう十年分くらいの買い物をしたような気分になりました。

 2000.10.12(木)

 樹川さとみ紫蝶の紡ぐ夢 女神の刻印3(中央公論社C・NOVELS Fantasia.1998.206p.800円+税)読了。(この本が出たときはまだ中央公論新社になっていなかった)
 異世界ファンタジー。ある乙女を命にかえてまもりつづけると誓った幻獣の生まれかわりの呪師と、乙女の生まれかわりである女剣士の物語。だろうと思う、たぶん。

 がさつな美少女剣士シィンはフォビナ当主トマイアより、メグゼ伯爵アスラン・コンデッサに拐かされた娘を救い出してほしいという依頼を受ける。
 町のかんばしからぬ噂によると伯爵は多くの美しい娘たちをあつめているが、城に行って戻ってきた娘はひとりもいないらしい。
 あやしげな伯爵の居城におもむくシィンと勝手についてくる呪師ラダストール。そこで出会ったフォビナ当主の娘ミルーシュラはかれらに、自分の意志でここにとどまっているのだと主張する。だが、城内には異様な空気がみちていた…。

 読みはじめて思った。二巻まで読んでいたはずなのに、なにも覚えてない…。なにもというのは語弊があるかもしれません。現在の女剣士シィンの生い立ちとかは覚えているのに、シィンと呪師ラダストールの因縁の内容を覚えていないのです。もっとも疑問なのがシリーズ名の「女神の刻印」?
 物語のバックボーンを見ないふりしても読めるので、そうしてみます。するとこれは古風な怪奇物語ですね。ホラーという言葉が定着する前に抱いていた「西洋の怖い物語」のイメージです。雰囲気がデカダンなんですね。なにもかもが不健康な中、ヒロインのシィンちゃんだけが生命エネルギーにみちあふれていてまぶしい。

 2000.10.11(水)

 暑いですねえ。夏に戻ったみたい。なんで出かけるときにかぎって…

 樹川さとみ楽園の魔女たち〜ハッピー・アイランド〜(集英社コバルト文庫.2000.290p.533円+税)読了。
 ファンタジーコメディーシリーズの十二作目。

 虹の谷にある魔術師の塔「楽園」の主とその弟子たちは、魔術師組合から突然呼び出された。本部の用件は、砂浜にうちあげられたガラス瓶の中に入れたあったという手紙を見せられたところから始まった。そこには誤字脱字とりまぜつつ、ドクター・カプラーの病院で起きている怪しげなことを告発し、閉じこめられていること、そしてたすけをもとめる内容が記されていた。依頼主はないからノーギャラだ。しかし弟子たちが介入し、なにかしらの解決を見た場合、昇給資格審査の査定のうちに含めてもよい、というお達しだった。

 孤島の怪しげな病院で行われる人体実験。麻薬のサボテン。銃の撃てない私立探偵。ごくちゃんの変身…。いろいろとたのしいネタ満載のバカ話。いつもおバカなんだけど、今回とくにバカでした。探偵ルーファスくんの不幸な人生に笑い涙。

 フィリス・アイゼンシュタイン(井辻朱美訳)氷の城の乙女 下(ハヤカワ文庫FT.1997.301p.640円+税 Phyllis Eisenstein "THE CRYSTAL PALACE",1988)読了。『氷の城の乙女 上』よりのつづき。

「そう、ぼくは出ないぞ。祖父君の城へ行って、アライザの魂を探すことはしない。おまえが行くんだよ。両方の目の色がちがうフェルダー・セプウィンよ、おまえなら、ほかの身体の不自由なものや醜いものにまじって、祖父君に仕えることができるじゃないか。きっと、おまえは祖父君のお気に入ると思うよ。たしかだよ」
フィリス・アイゼンシュタイン『氷の城の乙女 下』p.104〜105

 おいおい。
 思わず口から出そうになったこの言葉。
 そりゃ確かに上巻からずっと、ヘレイン様が「クレイとセプウィンが旅に出る」と言いつづけておいででした。アライザに約束したこともあるでしょう。でも、友人にこの言いぐさはないのでは。少しはへりくだって、お頼みしたっていいんじゃないの?
 その後、セプウィンがアライザの祖父の居城で奮闘する間、クレイはクレイでいろいろとやってはいたので、そうか、そういうことかとしぶしぶ納得しようとしたのです。
 が、最後に氷の妖魔にした約束を果たしもしないで幸せに浸られてしまい、このやろうという気分がまたふつふつと…

 個人的な感情をぬきとってみますと、いや、たいしたファンタジーです。妖魔と妖魔の世界の描写と魔法のつむぎだす物語。氷の妖魔の世界が大きなウエイトを占めるのに、けして硬く冷たくは感じられないないのは、クレイとかれの母デリヴェヴのすまうスピンウェブ城のあたたかくて土のにおいのする描写がべつにしっかりと存在しているから。そして圧巻は、ラスト近くの妖魔たちの壮大な戦いを描いたシーンでしょう。でも主役がな…。

 2000.10.10(火)

 茂市久美子ゆうすげ村の小さな旅館(講談社.2000.164p.1400円+税)読了。
 ほんわかしたメルヘン。講談社の児童書シリーズ「わくわくライブラリー」の一冊。対象は「小学中級から」。

 ゆうすげ村に、ゆうすげ旅館という一軒の旅館があります。
 小さな旅館で、年とったおかみさんが、ひとりで、旅館をきりもりしています。
 おかみさんの名前は、原田つぼみさんといいます。
 
茂市久美子『ゆうすげ村の小さな旅館』p.6

 冒頭を読むだけで設定はあきらか。この小さな旅館に人間以外のものたちが人間の姿をしてやってきて、ふしぎな出来事を運んでくる。というパターンの連作で旅館の一年間を描いています。
 つぼみさんはひとりで旅館をきりもりするほどなので、けしてのろまとか鈍いとかいう人間ではなく、感受性豊かな成熟した女性。しかも、包容力と適応性にも優れていて、お手伝いの正体がうさぎだろうと、お客が山猫だろうと、それで当然という顔をしてにこにこしています。メルヘンの登場人物って、どんなに牧歌的にみえてもあなどれないものですね。

 茂市久美子の本を読むのは二冊目。『こもれび村のあんぺい先生』(あかね書房)をこみねゆらのイラストに惹かれて読んで、のんびりとした雰囲気と、ちいさなでもふしぎな出来事を簡潔なことばでやさしく描いているところに惹かれました。ハードなもの、長いものに疲れたときに読むのに最適。

 2000.10.9(月)

 キース・ロバーツ(越智道雄訳)パヴァーヌ(扶桑社.2000.326p.1429円+税 Keith Roberts "PAVANE",1968)、やっと読了。歴史改変SF。かつてサンリオSF文庫から刊行されたものを底本とし、訂正を加えたもの。

 1588年、エリザベス一世が暗殺され、イギリスはローマカトリック教会の支配下に入った。20世紀、技術は停滞し、封建社会が残り、キリスト教会は異端の教えに神経をとがらせる。だが、大きな時代のうねりが、古びた社会をうちこわす波となって世界を動かそうとしていた…

 1968年からの変化していくイギリスを、それぞれ別の人物を主役とした密度の濃い連作短編のかたちで描いていく。はじめはまったくつながりはないように見えたひとたちが、それぞれの周辺でむすびつきあっていて、読みすすむにつれて壮大な物語がうかびあがってくるのがたのしい。しいてあげれば、第一旋律の主役を務めたジェシー・ストレンジの血統が直接的に物語をむすびつけているものの、かれらが登場しない話もあるし、なにより、ストレンジの血統そのものが話に及ぼしている影響はあまり感じられない。ただ、かれらが生きている世界が生々しく描写されているのと同様に、かれらも人間としてこの世界に生きている。それに伝説や幽霊話のなかだけでなく、物語のあちこちにたちあらわれる「古い人々」の存在。たんなる歴史改変SFというだけでなく、重層的なファンタジーの世界がこの本の中にひらけている。

 と、しかつめらしく書いてみましたが、架空の(といっても、モデルはあるわけだけど)世界をこんなに手触りや空気のにおいまで感じられるように書き込んであることが、いちばん読んでて楽しかったことかな。ただ、文章のリズムになかなか乗れなくて、読みくだすのに労力がかかったのが悲しい。
 1968年にはじまって、何年まで書いてあるのかは不明ですが、ストレンジの家系をみるとどうやら「いまより少し前」くらいまでのようです。イギリス国王は「チャールズ」。ふうむ。ところでこの本が書かれたのは1968年。未来のことを書いてたんですねえ。
 しかし、技術力が教会に抑えつけられていたせいで、街には蒸気機関車が走っているし、信号手なんてののギルドはあるし、領主様がお城に住んでいるし、ものすごく痛そうで吐き気をもよおしそうな異端審問はあるし、雰囲気はまるで中世と産業革命をごったにしたようなんですよ。霜越かほる『双色の瞳』と荻原規子『西の善き魔女』を混ぜてもっとリアルにしたような感じでしょうか。それにウンベルト・エーコ『薔薇の名前』も隠し味で。

 好きだったのは、第六旋律。エリナーと執事との関係はふくみを持たせて書かれないことばかりでしたので、ラストを読んで「そうだったのかー」と思いました。

 2000.10.8(日)

 日テレの「特命リサーチ200X」でポルターガイスト現象の解明というのをやってたのを見ました。聖地や古代遺跡が一直線に並んでいるレイ・ラインとか、UFO目撃情報が多い場所とか、いろいろおもしろいことをやってましたが、すべては断層付近に発生する電磁波で説明されるらしい。なるほどねえと思います。しかし、説得力はあってもロマンがないような…。

 キース・ロバーツ『パヴァーヌ』を二章分読む。

 2000.10.7(土)

 仕事をした後、嫌気がさして久々にゲームをした。やっているのはまだ『幻想水滸伝2』。うっかりレストランでの料理対決に巻き込まれてしまったあげく、メニューづくりに不可欠な調味料探しに奔走した。気づいたときにはストーリーがまったく前進しないまま、かなりの時間をついやしてしまっていた。いつになったらラストまでたどりつくのかのう…。

 キース・ロバーツ『パヴァーヌ』を二章分読む。

 2000.10.6(金)

 検索サイト「Excite エキサイト」のサービスの中に「翻訳」というのがあります。文章だけでなく、URLを入力するとサイトそのものを英語から日本語、日本語から英語へと翻訳してくれるシステム。ほかの言語はないもよう。
 ためしにタニス・リーのファンサイト(もちろん英語)を翻訳してもらいました。画面の中にアドレスを打ち込んでボタンを押すだけ。とっても簡単で、これでちゃんと訳せるものなら大感激となるのだけど、結果は大爆笑。テクニカルなものならともかく、文学はやはり機械翻訳は無理ですね。訳された本の題名がおもしろくておもしろくて。フリー画像のサイトくらいなら注意書きなどを読むのにちょうどいいかも。

 茅田砂胡桐原家の人々3 恋愛統計総論(中央公論新社C・NOVELS Fantasia.2000.244p.857円+税)読了。家族コメディー。角川ルビー文庫から刊行された『桐原家の人々3 恋愛統計総論』を大幅に加筆、訂正したもの。

 茅田砂胡の本を読むとよくできた「勧善懲悪」のストーリーを読んだような爽快感が残ります。
 登場人物たちはとくに善行をつんでいるわけではないんだけど、かならずどうしようもない敵役が存在しているからかもしれません。その敵役はたいてい、前時代の遺物というか、社会の嫌な部分でのさばってきた人物で、姑息で不快な手段で圧倒しようとする。それを痛快な理論で喝破し、ときには腕力のものいわせてあかるく撃退する。敵役の事情とか情状酌量するような要素はまったく書き込まれないので、安心して敵をバッシングできてスカッとできます。
 キャラクターはみな超人です。肉体的にすぐれているとか特殊な技能を持っている場合もあるにはあるけど、まず精神が並ではない。ふつうの素朴な人物が状況に流されてというような展開は絶対にあり得ず、ストーリーはいつも過激に疾走していく。
 それがホームコメディーでも見事にあてはまるので、ホントに読んでてたのしいです。ところでいままでは先の展開が予想の範囲内におさまっていたのですが、次巻はどういう話になるのでしょう。零と友人の話ってあとがきにあったけど、想像がつきません。

 2000.10.5(木)

 フィリス・アイゼンシュタイン氷の城の乙女 上(ハヤカワ文庫FT.1997.342p.680円+税 Phyllis Eisenstein "THE CRYSTAL PALACE",1988)読了。1982年に同文庫から刊行された『妖魔の騎士』の後日譚。豊かな想像力で妖魔と魔法使いの世界を描くファンタジー。

 魔法使いのクレイ・オルモルは、日々の生活に倦んでいた。友人で見者の弟子フェルダー・セプウィンを手伝って製作した「人の真の望みを映す鏡」。だが、鏡はクレイにだけはなにも見せてはくれない。それから八年後、思い立ってふたたび鏡をのぞいたクレイは、そこに絵のように動かない六歳の少女を見つける。少女の正体はまるでつかめないながら、年毎に映る姿が成長しているのはあきらか。そして身につける物も変化してゆき、とうとう、手がかりになりそうな物を発見する。クレイは乙女となった鏡の中の人物を捜す決心をする。

 『妖魔の騎士』を読んだときからすでに十ン年が経過。せめて買ったときにすぐ読めばもう少し前作の内容を覚えていたかもしれないなと、いまさらのことを考えたりしてしまう不毛な私。
 クレイ誕生のいきさつはとてもよく覚えているのに、その後のストーリーがすっぽりと記憶からぬけおちてまして、いったいどういう読みかたしたんだろうと自分に不審を覚えてしまいます。
 とりあえず、あらたな物語として読んでみますと、「氷の城の乙女」アライザの頑なさばかりがめだちます。孤独で不幸な生い立ちからきているのは理解できるのですが、なんか不愉快。クレイが大人の態度で接するのもストレスが溜まります。妖魔たちが好き勝手なことをいってくれるので、そこらへんで発散はできますが。まだ途中なんで低レベルな感想しか書けませんね。下巻でアライザは感情をあらわせるようになるんでしょうか。

 2000.10.4(水)

 朝起きたら大雨が降っていた。覚悟を決めて折り畳みでない傘を持って家を出た。なのに、それから一粒の雨も降ってこない。必要のない傘を持って歩くことほど無駄なことはないですな。邪魔で重たくて最悪。

 金蓮花『夏至祭 竜の眠る海』(集英社コバルト文庫)を購入。あとがきによると、「月の系譜」のつづきは「櫻の系譜」らしいです。やっぱり、あの話はまだ終わってはいなかったのね。

 樹川さとみ楽園の魔女たち〜薔薇の棺に眠れ〜(集英社コバルト文庫.2000.256p.495円+税)読了。虹の谷「楽園」で魔術師見習いの少女たちがくりひろげるファンタジー・コメディー。シリーズの十一作目。

 今年最後の配達便で「楽園」の当主あてに運ばれてきたのは、なんと、棺桶だった。得体の知れないものを着払いの料金を支払ってまで受け取ってしまったのは、ひとりで留守番をしていたマリア。みなは棺桶を囲んで思案するが、あまりの重さに一晩広間に置いておくことにする。念のため、中からなにかが出てこないように重石をのせて。その夜、大音響とともに飛び出してきたのは、吸血鬼だった。

 今回のゲストキャラは、自分を見失った吸血鬼のデヴァイン・フロウ氏。読んでるうちに、彼のイメージは及川光博になってしまいまして、最後の「吸血鬼VS吸血鬼ハンター」のデス・マッチには大いに笑わせていただきました。対して吸血鬼ハンターのオーガスタス・デインは、いまひとつ鮮明でなくて、ミッチーいやデヴァインばかり印象に残ってしまった。
 さあ、これで最新巻が読めるぞ、と。

 2000.10.3(火)

 荻原規子西の善き魔女外伝2 金の鳥 プラチナの鳥(中央公論新社C・NOVELS Fantasia.2000.236p.857円+税)読了。

 本編第四巻、第五巻の裏話。グラールの女王候補のひとり、ロウランド家の養女アデイルが親友のヴィンセントとともに侍女のふりをして東方のトルバート国へ出かけ、そこで陰謀に巻き込まれる。

 屈折したお嬢様アデイルの体の弱さと運動神経のなさとに共感し、それでも負けない闘志がなかなか楽しかった。つねに女王候補としての視点を捨てられない彼女の人生は大変そうだけど、読み手としてはフィリエルの話よりもおもしろそうです。
 個人的にはロウランド家の当主と奥方の話がもっと読みたい。大人の話があんまり出てこないんですよね、悪役か、暗躍してるかのどっちか。視点が十代の人物からに固定されていて、俯瞰した状況がよくわからないのが残念です。

 それから、これはこの話に限らず架空世界ものによくあるんだけど、どうして現実の世界地理に似たような地理設定になってしまうのでしょうか。その場合、出てくる民族文化も現実をなぞってしまうことが多いですよね。たんにそのほうが想像しやすくて楽だからなのか。『西の善き魔女』には、「歴史的ないきさつ」というのが裏にあるような気もしますが。

 2000.10.2(月)

 茅田砂胡王女グリンダ(中央公論新社C・NOVELS Fantasia.2000.510p.1200円+税)読了。
 大陸書房から出版されていた「王女グリンダ」シリーズの一巻『デルフィニアの姫将軍』と二巻『グランディスの白騎士』の合本。大陸書房が倒産したため、中途で止まっていた物語をあらためて始めから書きおこしたものが「デルフィニア戦記」。
 「デルフィニア戦記」は、全18巻。架空の世界を舞台に大国デルフィニアとその周辺国との争いと、国王ウォルと異世界からの客人リィ、かれらをとりまく個性的な人々の活躍を描いた群像活劇です。

 作者も前書きで念を押しているように、中央公論新社(当時は中央公論社)から「デルフィニア戦記」として世に出た物語と基本的に同一。
 どこから書いたかと、いつ書いたかという違いが、ふたつの物語の印象に違いをもたらしているんではないかと思う。
 シェラが始めから出ている『王女グリンダ』では、話の軸はリィとシェラです。このまま進めば、「デルフィニア戦記」ではあまり語られなかったリィの元いた世界ももうすこし詳しく描写されていたかもしれません。「デルフィニア戦記」のラストに感じたなんとなくの居心地の悪さも、もとはこうした話であったとわかると氷解します。
 それから執筆に間が空いたことから、時間の経過とともに登場人物が作者のなかで深化していってるのがよくわかる。登場したばかりのティレドン騎士団長の描写は、書いてる本人がイメージをたしかめつつという印象がありますし、ここではシェラがもっと強く、独り立ちした術者として描かれているけれど、リィの命令をすんなり受け入れるような人物としてはすこし大人すぎると思われたのか。シェラとイヴンの関係はそこから変化したのでしょうか。
 というふうに、作者としては当初はそんなつもりはなかったにせよ、「習作」という位置づけになった作品をふたたび世に出すことに抵抗があったのもよくわかります。
 それを読みたいというのは、まあ、ファンだからなんでしょうけど、むごい仕打ちだったのでは(^_^;)。自分も読んでおいてなにをいうかなんですが。

 2000.10.1(日)

 乙一夏と花火と私の死体(集英社文庫.2000.223p.419円+税)読了。
 ホラー短編を表題作を含めて二編収録。解説は小野不由美。

 最近、あちこちで評判なので、借りてみました。乙一は「おついち」と読んで、姓と名の区別はないみたいです。
 「夏と花火と私の死体」は第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞の受賞作品。
ふとしたはずみで友達を殺してしまった九歳の少女とその兄が、死体をなかったことにするために奮闘する四日間の出来事を「殺された少女の視点で」描くという、とんでもないおはなし。
 心理的には抵抗感があるのですが、淡々としていながらしなやかさを感じる文章にひきこまれて読んでしまいました。とても完成度が高くて、これを十七歳で書いたというのが信じられない。才能のある人は常識をかるがると超えてしまいますね。
 二作目の「優子」は、不条理な出来事と思えたものに答えが与えられたにもかかわらず、よどんだ後味が残りました。こちらはミステリーっぽいです。

 霜越かほる双色の瞳 ヘルズガルド戦史(集英社スーパーダッシュ文庫.2000.226p.495円+税)[Amazon][bk-1]読了。
 遠い未来。汚染された大地で興ったヘルズガルド公国と隣国ゾルキエフとの戦争のなかで成長してゆく少女の姿を描く。

 ヘルズガルド公国の東部の辺境コリニア。汚染された環境のためにいつしか出産率が低下している現在、公国では毒の影響をあらわさず健康に育ったものを臣民として俗民と区別し、帝都に集めて特権を与えるようになっていた。十七歳の少女デフィは生まれながらに双色の瞳をしており、目の色を隠すコンタクトレンズを作るために、母から光学の知識と技術を仕込まれてきた。
 念願かなって「選ばれし子」として選定されたデフィは、帝都スコビルで臣民ウナ・ライツとして生きることになる。瞳の秘密を隠すレンズを作り続けるために選んだ軍への道。ウナは技術士官として前線へ派遣されることになるが。

 主人公ウナや友人のエクトラなどの輪郭のくっきりとした人物造形、スピーディーなストーリー展開と、とても力強いものを感じるお話。環境汚染による人類の暗い未来を意識した舞台設定はたんなる雰囲気に終わらず、技術力や社会背景なども手を抜かずに考えられていて、物語世界に厚みを加えてます。欲を言えば、生活空間の雰囲気なども書き込んでほしかったです。
 第三皇子タンバールやその愛人と目されるゾーラ・メックに未だ感じられる謎も知りたいし、ゾルキエフの社会もどういうものなのか興味があります。はやくつづきを読みたいという気分にさせられました。とてもおもしろかったです。


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