2005年12月のdiary
■2005.12.25 病の顛末/
■2005.12.29 手抜きつぎつぎ/『アイルランド幻想 ゴシック・ホラー傑作集』
大掃除をするのはやめました。今年は必要最小限のことだけすることにした。
今年のベスト本ページをつくる時期なのですが、自分でページをつくる気力がありません。
そこで放置してあったはてなダイアリーを利用してみたらと思いたち、試しにつくってみました。
「ごく個人的な2005年ベスト」
どういうふうにつくったら便利なのかよくわからなくて、試行錯誤中。タイトルごとのコメントは今回からナシにしました。まだ感想を書いてない本が山積みなので、すでに書いたものを流用しようという魂胆です。
このページ、全体的にありさとさんの『エレホン番外地』を勝手に参考にさせていただいてます。テンプレートまで似ているのは意図したからではなく、使用しようと思ったデザインがなぜかうちの環境ではうまく表示されなくて、消去法で選択した結果です。
ピーター・トレメイン(甲斐萬里江訳)『アイルランド幻想 ゴシック・ホラー傑作集』(光文社文庫.2005.285p.514円+税
Peter Tremayne "AISLING AND OTHER IRISH TALES OF TERROR",1992)[Amazon][bk-1]読了。アイルランドの伝説や妖精譚に材をとった怪奇短編集。
- 石柱
- 幻の島ハイブラシル
- 冬迎えの祭り
- 髪白きもの
- 悪戯妖精プーカ
- メビウスの館
- 大飢饉
- 妖術師
- 深きに棲まうもの
- 恋歌
- 幻影
以上十一編収録。
私にとって欧米のホラーはファンタジーに近い感覚で読むものだったのですが、この作品集はちょっと違いました。
この作品集はすべてアイルランドの、つまりケルトの伝説や妖精譚が材料になっているのですが、ベースにあるのは虐げられてきたアイルランドのひとびとの情念なのだと感じます。乳白色の霧の中につつまれて明瞭にはあらわれないけれど、冷たくて湿ったものがまとわりついてきて、いつのまにか身体はしとどに濡れている。そんな怖さが日本の怪談に似ているような気がする。最後に残るのが幻の不思議さではなく、ひとの想いのつよさとそれをないがしろにする事への警告であるからかもしれません。
近現代にかけての時代が舞台であることが多かったのも、その印象を強めたような気がします。古代が舞台だと恐怖よりも不思議さが勝ってしまいそうだから。
アイルランドの苛酷な歴史は知っていたけれど、私はこれまでは現代の物しか読んでいなかったし、それもイギリス人の視点で書かれたものが多かったみたいです。この本はその歴史をアイルランドにとっての出来事として感じさせてくれました。どうやら私はこの本を時代小説のように読んだらしいですね。歴史小説ほど厳格に事実を追わないけれど、その時代の空気を感じとらせてくれるような、そんなお話だったと思う。
とはいえ、ホラーとしては全然怖くなかったような。えーと、どうやら私の恐怖のツボからはかなり離れていた模様です。私が怖いのは痛いヤツなんで。
でもとても興味深かったです。アイルランドの人々はこんなにつらい体験を共有して生きてきたのかー、という感慨が残りました。
気がつけば、師走も終わりに近づいていたり。
前回、体調が悪いと書いたきり、なんだか長いことご無沙汰いたしました。
現在、一時の絶不調を抜けだし、なんとか日常生活が送れるところまで回復してきました。でも、放置していたのはサイトだけじゃなかったので、いま日常のと年末の仕事が山積み状態。暇がないので、つくってあった先月の著者名索引のみ更新しときます。
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いるかどうかわからないけど、ご心配してくださっていたかた、興味のある方のために、ここ一ヶ月の出来事をかいつまんで書いておきます。
この間私は、げほげほと咳き込みながら、病院に行って血液検査したり、病院に行ってレントゲンとったり、病院に行ってCTを撮ったり、というまさに病院三昧の日々を送っておりました。
途中で誕生日を迎えたせいか、歳月の重みをしみじみと感じましたねえ。これまではソフトがいかれてたけど、とうとうハードが劣化してしてきたのかなあとか。本気でもう復活できないんじゃないかとかも思いました。もう、しんどくてしんどくて。ひとことで言えば、体力なさすぎなんだよー。
咳き込みはじめたのはたしか11月の13日だったかな。最初は風邪かと思っていたのですが、一週間以上もつづく激烈な咳き込みとレントゲンに映った肺の影から、すぐにCTを撮りなさい、と持病の医師に言われてしまいました。
翌日、地元診療所でCT撮影の手はずを整えていただき、翌週にCTを撮りました。その後、CT写真を見ながらの診察で医師が真面目な顔をして言ったことを私は忘れない。
「紹介状を書くから、すぐに大きな病院に行きなさい。いまタクシーで行く?」
そう言われてすぐに行けなかったところが、私の動揺を如実にあらわしている……。紹介先の病院の新患受付は金曜の午前中までだったのですぐに行くのは無理だったのだけど、とにかく、こころの準備が……とおもいながらげほげほよろよろと家に帰ったのでした。
このころはほんとうに咳がひどくて、物もろくに食べられないようなありさまでした。食べると咳き込んで、食道から食べ物がせりあがってくるのでむちゃくちゃ気持ち悪くなるのです。そのまま咳き込んで何度吐きもどしたことか。吐いてしまったあとは、あー、もったいないー、せっかくたべたのにー、という思いと、あー、これで気持ち悪いのはとりあえずおさまったーという思いで、複雑かつわびしい気分になるんですよねー。薬を吐いてしまったときには、ほんとうに哀しかった。もったいない上に、溶けかけた薬って衝撃的にまずいんですもん。
発熱はたいしたことなくて、最高でも37.7度くらいまでの微熱状態。でも、全身で汗びっしょりになって咳き込んでいるためか、倦怠感がひどいのです。咳の発作って全身運動なんだ、とおもいました。最初は体中筋肉痛になったし、とちゅうでは脇腹を痛めたり、最後にはあばら骨にヒビが入ったのではないかと思うような衝撃に見舞われました。めりっときたあとでぼきっ、と音がしたんですよ。持病のおかげで骨にたくさん支障が出ている割に、骨折だけはしたことがなくて、初体験だったのであのときはびびったなー。すでにそれまでにたくさんX線を浴びていたので、血痰も出ていないし、レントゲンは撮らなくても大丈夫でしょうといわれたから、実際骨折しているかどうかは不明ですが、いまだに寝返りなどすると痛いです。というわけで、胸にコルセットを巻くことに(ついこのあいだ、腰にコルセットをつけたばかりなのに)。
あとひどかったのは鼻水と痰です。粘度の低くて色のない粘液が、だらだらととぎれなくわきだしてきて、これがまた咳を誘発するのですな。ティッシュひと箱があっというまに消費されていた日々でした。
閑話休題。
というわけでそのまた翌週、CT写真と紹介状を持ってあらたな病院へいったのですが、そこがものすごく混んでいて待ち時間が四時間で、しかも、新患用問診票に「もし重篤な病気だったらだれにしらせるか」などという質問があったりして、自分しかいないのにほかにだれに話してもらうんやー、と悲鳴をあげながら自分にまるをつけたりしてとっても疲れました。
が、とにかくそこで診察を受けまして、「たぶん、マイコプラズマ肺炎だと思います」といわれました。たぶんって、たぶんってなんなんだーと思いましたよ。
じつは、肺炎といってもいろいろと種類があるらしい。原因を特定するのに時間がかかるものもあるらしいです。
→e治験ドットコム>肺炎
マイコプラズマ肺炎については、こちらがわかりやすい。
→愛知県衛生研究所>マイコプラズマ肺炎
結局、正式に診断が下ったのはそのつぎの診察の時。発症後四週間も経ってからでした。肺の影のぐあいと症状から見当はつくらしいけど、血液検査の結果が出るまではっきりとしたことは言えないらしいです。だから、投薬も見当つけながらするらしい。なんておおざっぱな。
病名を告げられて思い出したのは、そういえば、咳をはじめる一ヶ月くらい前に甥っ子がマイコプラズマ肺炎になっていたんだったよー、ということ。甥っ子は可愛いけど、あんまりベタベタしないほうがいいのかも。
しかし、ベタベタしてるのは私だけじゃないのに、なんで私だけがうつされたんだろうとも思う。私よりもはやく倒れていた妹もかなり咳き込んでたのだけど、検査をしてもなんにも出なかったといっていた。だから私も風邪だと思っていたのに。ううむ、納得いかないわ。
けっきょく、症状が一時に比べると和らいできており、レントゲンの影も「痕跡しかわからない」くらいになっていたため、抗生物質などはつかわないままとなりました。でも、鎮咳薬は出してもらいました。だって、とにかく苦しいんですよー。
この鎮咳薬というのがまたくせ者なんですよね。中枢神経に作用する薬だから、飲むと異様にだるくなる。それでなくとも咳でだるいのに、もう、気分は意識朦朧。ただひたすらごろごろとして過ごした不毛な日々だった。外は寒いし、気分はすさむ。奥歯の詰め物はとれるし、おまけにビデオデッキが壊れる。肉体的にも精神的にもしんどかったなー。しみじみ。
そういえば、日々少しずつ体重が減っていたのはひどく咳き込んでいたためだったようです。咳がおさまってきたら、元に戻ってしまいました。
そんなこんなで、年末の大事な時間をだいぶ棒に振りました。これから必死に家事を片づけなければなりません(例によって年賀状二家族分を制作中)。というわけで、年内の更新はこれで終わりかもしれません。感想ためた状態で終わりたくなかったんだけど、まだ無理をしちゃいかんと思うので。うーん、何冊ためてるんだったっけなあ。なんだかため息が出てきたぞ……。
九月下旬に強い腰痛に見舞われて身動きができなくなってから、ずっとさえない日々を送っております。
延々と病院通いをくりかえしているうちに十二月になってしまいました。
腰痛のあとは下痢で、そのあとに胃がおかしくなり、風邪をひいて、熱は大したことなかったのに咳が止まらなくて、もう半月以上咳き込みつづけている。おかげで体中が筋肉痛。最初に痛くなった腹筋はもう卒業しましたが、毎日どこかが痛くなっていて湿布薬をベタベタとはりつけています。この間に奥歯の詰め物がとれてしまったのですが、咳が止まらないので危ない気がして歯医者にも行けない。しくしく。
たったひとつ、よいことがあったとすれば、それは体重が減った!ということなのですが、それも体脂肪には変化なしなので、あまり喜べない。むしろ、具合が悪くてごろごろしているのに毎日少しずつ減っていくのは、よくない現象なのかもしれないなあ。
先日撮影したCT画像を見た医師が「なるべくはやく大きな病院に行った方がいい」と紹介状を書いてくれたので、月曜日にはまた病院に出かけます。その次の週は整形外科の予約があって、その次の週にも持病の予約があることを考えると、なんだか頭がぼうっとしてきますな。
そして、今現在の私の最大の不幸は、ビデオデッキが壊れてテレビの録画ができなくなっていることです。せっかくのフィギュアスケートシーズンなのにー。
というわけで、パソコンにむかっているとだるくなるので、しばらく更新はスローペースになる予定。いままでだって十分にスローなんですけど(苦笑。
谷瑞恵『伯爵と妖精 取り換えられたプリンセス』(集英社コバルト文庫.2005.285p.514円+税)[Amazon][bk-1]読了。キザな美形伯爵と妖精博士の女の子のロマンティック・ファンタジー、シリーズ第六作。『伯爵と妖精 呪いのダイヤに愛をこめて』のつづき。
十九世紀半ばのイギリス。十七才のリディアは、妖精国に領土を持つとされる青騎士伯爵エドガーの顧問妖精博士(フェアリードクター)だ。蛍石を産する所領の住人から赤ん坊が取り換え子されたという陳情書が届いた。問題解決のためにエドガーの協力を求めたリディアは、強引に連れてゆかれた知人の婚約披露パーティーでまたしても婚約者として紹介されるはめに。やっかまれた末にトラブルに巻き込まれたリディアを救ってくれたのはクレモーナ大公だった。十七年前に崩壊した公国の大公は、エドガーに自分の孫娘との結婚話はどうなったのかと詰問する。アメリカへ渡る途中船が難破して生死不明だった大公の孫娘は、二年前に青騎士伯爵と結婚するという手紙をよこしたらしい。音信不通の孫娘を案じる大公に、自分は無関係だと言い切るエドガー。かれを信じきることができないリディアは、ニコとともに取り換え子事件の起きたウォールケイヴ村へとむかう。いっぽう、エドガーのもとにはアメリカ時代に知り合いだった女海賊ロタが訪ねてきた。ロタはクレモーナ大公家の紋章指輪とともに姿を消した妹分のベティを探しに来たのだった。
たったひとりと向き合うことへの不安から次第に弱腰になってゆく伯爵の苦悩編。あいかわらず事件とロマンスとがバランスよく配合されていて、さらさらと楽しく読めました。
今回は取り換え子が出てきます。しかしこの話で取り換え子の立場にあるのは実はリディアで、肝は「異界の恋人を無事に現実につれてゆくための約束」をきちんと果たせるかどうか、ってところなのかと思います。そして、昔話や伝説ではたいていのところ、この約束はちょっとした男の隙から果たされずに終わってしまうのですねえ。この話がどう展開するのかはネタバレなので書きませんけど、この過程で前巻でほのめかされたリディアとエドガーの心理的な変化が加速したようです。そして伯爵はさらなる苦悩へと(笑。
ユリシスが青騎士伯爵の血をひいていることが明らかになりまして、血筋的にはまったく妖精と関係のないエドガーが名実共に青騎士伯爵となるときに、この物語は終わるのかもーと思ったり。とすると、主人公はリディアではなくてエドガーなのか。そういえば、『魔女の結婚』でも後半はマティアスの苦悩が中心だったなーとか。エドガーにはしつこくならない程度に悩んでいただけると楽しいかと。
いつものように、エドガーを無意識に突っ込みつづけるレイヴンが楽しいです。