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2005.3.1 気になっている曲/
2005.3.4 大雪につき/『オラクル サソリの神1』
2005.3.10 通院/『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 5』
2005.3.13 二十年以上飲んでるしね/『トリニティ・ブラッド Rage Against the Moons フロム・ジ・エンパイア』
2005.3.15 /『沈黙/アビシニアン』
2005.3.19 不満のスポーツ中継/『ぴよぴよキングダム』
2005.3.21 運動不足ときょうだいげんか/
2005.3.26 だらだらと野球三昧/『ねじの回転 FEBURUALY MOMENT』
2005.3.30 /『聖なる島々へ デイルマーク王国史2』
 2005.3.30(水)

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(田村美佐子訳)聖なる島々へ デイルマーク王国史2(創元推理文庫.2004.391p.860円+税 Diana Wynne Jones "DROWNED AMMET", 1977)[Amazon][bk-1]読了。抑圧された現実にいにしえの力が表出する異世界ファンタジー「デイルマーク王国史」の第二巻。

聖なる島々へ <デイルマーク王国史2>

 南デイルマークの港町ホーランドで海祭りの日に生まれたミットは、小作農の両親の笑顔のもとでしあわせな幼い日々を過ごしていた。ある日、ミットは理想の土地、自分のためだけの帰るべきところがあるのだという確信に導かれ、遠出をしたところで兵士に保護された。かれを家に連れ帰ったのはハッド伯爵の三男ネイヴィスだった。ホーランドの領主ハッド伯爵は厳格な圧制者で、領民はひどく抑圧されていた。取り立て人を敵に回した両親は小作料が払えなくなり、父親が出稼ぎに出たものの追いつかず、ミットと母親は家から追い出されてしまう。ホーランドの父親の部屋にころがりこんだが、一家にもう笑顔の日々は戻ってこなかった。不満から反逆者同盟の活動家となった父親は、ある日突然、行方不明になってしまう。

 刹那的に生き急ぐ少年が、苦難と混乱と災難の果てに自分の居場所を見つける物語。第一巻の『詩人たちの旅 デイルマーク王国史1』と同時期の、南デイルマークの住人視点のお話です。

 冒頭の一文を読みかえして思い出しました。そういえば、これってようするに少年テロリストの話なんですよ。突き放した描写で滑稽さを強調してあるので、あまり深刻な雰囲気にはならないのですが、それでも抑圧されたひとびとの境遇は重苦しく、こころが縮こまって循環不良を起こしているような感じで、ハッド伯爵支配下のホーランドがまったく不健康な生活空間であることがひしひしとつたわってきます。この状況下で良識を保って理性的な判断を下すのは、外から考える以上に困難なことなんだろうなー。

 だからミットの両親のだらしないのにも情状酌量の余地はあると思うのですが――それにしても、こんなふうに息子にぶらさがる母親が出てくるこの本が、リアル世界を舞台にしたジュブナイルじゃなくて異世界ファンタジーであるってところにちょっとした感慨が。これってDWJ独特の世界なのか、それともこれからはファンタジーも自然とそういう方向にすすんでいくんでしょうか。現実世界から異世界に移動するファンタジーなら、それほど違和感を覚えなかったんじゃないかと思うんですが。

 でも、シビアな現実があって人びとの心が神話から離れ、祭も力を失っているからこそ、思いがけない幸運によって神秘と遭遇したときの感動は、とてもとても大きいのですよね。
 じっさい、ミットが小さなヨットで嵐に翻弄されるシーンは、心がふるえるような気持ちで読み進みました。うわーうわーうわー、なんてことなの、いまの見た?という感じです(笑。そして、それまでにさりげなく周到に伏線が張られていたことにようやく気づきました。だからぜんぜん唐突な印象は受けないんですけども、やっぱりやられたという想いが。
 たどりついた聖なる島々も、たいへん不思議なところで印象的でした。あすこの支配者と住人の関係って、どうなってるんでしょうね。

 仕返しすることばかりを考えていたミットが、しだいに自分は不幸なばかりではなかった、自分のことを考えてくれたひとがたくさんいた、と気づいて変わっていく。変わらなかったらどうなってしまうか、というみごとな見本が出てきて、気持ちを奮い立たせてくれたのも大きいと思いますが、勇気を持ってあらたな人生に乗り出していこうとするところで終わるこの話、状況的にはちょっと中途半端でこの後どうなったのさとも思いましたが、雰囲気的には希望のもてるかんじで後味は悪くなかったです。

 そのほかに印象に残ったのは、なんといってもハッド伯爵の孫娘のヒルドリダ。ものすごく強烈ないい性格してますね。軟弱者と父親を切り捨ててしまう彼女を、怒られつつもなかなかうまいこと操縦している弟のイネンくんは、けっこうしたたかな男に成長するかもしれません(笑。

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だらだらと野球三昧 2005.3.26(土)

 以上購入。

 雪のために延期した整形外科に金曜日に行ってきたのですが、そこで風邪をもらってきてしまいました。症状は微熱と関節痛。
 だるくて痛くて、たまらずにおとなしくテレビを見てました。痛いといえば、まだ右肩から上腕部にかけても痛いんだよねえ。こちらはなんとなく原因がわかってきて、どうやら頸椎カラーが身体に合わなくなってたからのようです。2月に頸が縮んだと感じたのは間違っていなかったらしい(汗。

 そんなわけで、野球観戦三昧です。
 パ・リーグの開幕戦はどれも投手戦でおもしろかったです。楽天、初勝利おめでとう。それからセ・リーグのオープン戦と、春の選抜をちょろちょろと眺めてました。

 甲府であった読売×横浜は、じつは今季初めて見る横浜の試合。
 序盤は完璧に相手チームの引き立て役だなと思ったけど、最後のほうで打線が活発になって逆転してましたね。しかし、打ったのは若手投手だし、問題なのはこちらの先発投手のほうが上のような気も。これでローテーション投手の頭数がちゃんと揃うのか、不安です。さらに、このところの印象では今年の横浜打線はしぶしぶな感じです。二、三年前まではオープン戦というと二桁得点がざらだったもんで、余計にそう感じてしまうのかもしれないが。
 というか、オープン戦くらい景気よく勝ってくれよと思うのは、わがままなのでしょうか(汗。

 恩田陸ねじの回転 FEBURUALY MOMENT(集英社.2002.444p.1600円+税)[Amazon][bk-1]読了。二・二六事件を舞台に歴史を修復しようとする未来人と、過酷な運命をなぞらされる将校たちの苦悩を描く、時間遡行SF。

ねじの回転―FEBRUARY MOMENT

 時間遡行を可能にした未来の世界。過去への介入によって改善されるかと思われた歴史だったが、変化はあらたな感染症の爆発的な流行をもたらした。存亡の危機にたたされた人類は、国連主導のもとに改変した歴史を修復するプロジェクトを開始する。そして最後の介入ポイントとして選ばれたのは、1936年2月26日の日本。二・二六事件としてしられる軍によるクーデター未遂事件の起きる東京であった。悲惨な末路を知りながら歴史をなぞる任務を与えられた安藤大尉ら首謀者たちは、次第にプロジェクトに対する不満を募らせ、個々の思惑にしたがって動き始める。

 かなり久しぶりに読んだ恩田陸作品です。
 いつもながら臨場感のある、登場人物たちの心情に寄り添った描写がみずみずしいですね。
 自分たちの試みは成功せず、理解されないままに不本意な死を迎えることをすでに知っているのに、失敗に繋がる行為を正確になぞらなければならない、という過酷な任務を与えられた将校たちの、やり場のない苦悩と怒りが、痛々しい。かれらの登場する、いわば過去の部分はとぎれなくつづく緊張感とともに、ぐいぐいと話に引き込む力強さを感じました。とにかく、おもしろかったです。
 しかし、この状況をつくり出した側のおなじように切実さを持ってことに臨んでいるはずの未来のメンバーのシーンは、過去の重厚さに比べると軽いような気がしました。未来が深刻だからこそ過去に干渉しているはずなのに、過去と未来の重さが釣り合っていない気がするのです。だから余計に、将校たちに課された任務が理不尽に思えるという面もあるんですけどね。

 タイムパラドックスものとしての仕掛けに関しては、私にはよくわからなかったです。何度もリセットして歴史をなぞり直しているのを読んでいるうちに、「時間を何度も遡っているうちに、存在が同時点でダブったりしないんだろうか」と気になったりしましたが、この世界では時間軸は一本だけってことなのか。うーん、やっぱり、よくわからん。頭が悪くてすみません。

 というわけで、話の方向性とか結末とかに関してはあんまりすっきりとしなかったのですが、恩田作品は途中経過が抜群に面白く、それだけでも十分に読む価値があると思います。そのうえで着地もきれいに決まればさらにいうことなしですが。

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運動不足ときょうだいげんか 2005.3.21(月)

 体調不良の妹の援軍にでかけてきました。じつは昨日も子守だったのですが、本日は遠征です。ちびふたりの面倒を見るのはけっこうたいへんですが、それ以前に、妹の家までつづく坂道を登っているときに、アキレス腱が石のようになって足がつるかとぎょっとしました。原因はおそらく完璧なる運動不足です。きっと、足がしびれるのもそのせいなんだろうなー。
 その後で買い物につづけて出て、甥っ子と外遊びをしたら疲れ果ててしまいました。つくづく体力ありません。

 ところで、風はまだ冷たかったですが、花粉の飛散はずいぶん多いらしく、先日四歳にして花粉症を発症した甥っ子は、目を真っ赤にしてどんどん機嫌が悪くなって大変でした。怒りにまかせて買ったばかりの棒つきキャンディーを地面に叩きつけたため、キャンディーが割れてしまったのですが、それを見て大爆発。本当にうわーんうわーんと声をあげて泣くので、私の居心地がとても悪かった(汗。一緒に機嫌をとっていた姪っ子は、いくらなだめても泣きやまないのでかんしゃくを起こして、怒りを直にぶつけるし。それでいっそう甥っ子は泣き声を高くするし。とめどない悪循環に、妹が神経すり減らす気持ちがよーくわかったのでした。

 自分が子どもの時にもこんなに喧嘩をしてたかなあと、ちょっと考えてしまいました。たしかに喧嘩は日常的だった気もしますが、私ってあんまり妹に関心なかったからなあ……(汗。

不満のスポーツ中継 2005.3.19(土)

 最近、テレビのスポーツ中継やスポーツ報道が楽しくありません。
 以下、かなり文句がたらたらなので、読みたい方だけどうぞ。→『ぴよぴよキングダム』感想へのショートカット。




 公共放送は日本のプロ野球をほとんど無視しているので、受信料を払うのやめたいと思うこの頃です(今年に入ってからの「七時のニュース」で日本プロ野球に関係して報道されたことって、日本ハムの未成年選手喫煙事件だけのような気が。キャンプもオープン戦も、野球はメジャー一色です)。
 銀行引き落としにしているので、自動的に持ってかれてしまうんですけどね。

 昨日はiBook不調と体調不良のダブルパンチに、モスクワでおこなわれていた世界フィギュアのテレビ観戦に逃避しておりましたが。
 うーんと、選手の方々には精一杯の演技を期待した以上に含むところはないのですが、中継をしたテレビ局には不満爆発です。

 もともと、このテレビ局はスポーツ中継に余計なものを持ち込みすぎると感じておりまして、そういうのがお好きな人も世間にはいらっしゃるのかもしれませんが、私は競技を主役にした放送を期待しているものです。プロ野球中継にタレントゲストは邪魔だし、解説者だってひとりで十分だといつも思っています。余計な要素をくっつけると、そのぶんプレーの映像が減るじゃありませんか。なので、今回、ナビゲーターがひとりになったことはすこしは進歩したのかなあ……などととおもったりしていたのですが。うむむ。

 日本女子シングルばかりに偏った編成は、予想はしていたのですが、それでも生中継で競技をやっていないときにはほかの種目も放送してくれるのではないかと、ちょっとは期待していたんですよ。でも、そんなときにも流れていたのは、やっぱり女子シングル関係の編集Vなんですよね。
 しかも、その女子シングルのV自体、ほとんどが同じものの使いまわしなんだから、救われません。
 未放送の映像なら、ペアにもアイスダンスにも男子シングルにも、たくさんあっただろうにさー。
 それに、視聴者の興味をそそるためにはしかたないのかもしれないけど、はずかしいキャッチフレーズの連呼はやっぱり恥ずかしい。

 さらに、お昼過ぎにやっていた世界フィギュアの番組宣伝番組中に、突然K1の番宣を何分間も突っ込まれたのには呆然としました。あんまり長々とつづくので、フィギュアはもう終わったのかと錯覚したほどです。私はフィギュアを見たくて番組を見てるんであって、フィギュアのあいまのK1を見たいんじゃありません。もとの番組すらお粗末なのによけいなものをくっつけるんじゃないー。

 ナビゲーターの好感度がいくら高くても、これではねえ。見ているだけでストレスが溜まる中継を、一年に一度のことだからと我慢するしかないなんて。哀しすぎる〜。

 とはいえ、ほかの局の中継に満足しているわけではけしてないので、念のため。
 ほんとうに、スポーツの魅力の伝え方って、まだまだ改良の余地がたくさんあると思うんですけど、そんなことより視聴率って意識が透けて見えるのが、スポーツ中継のつまらない最大の原因かもしれません。

 木村航ぴよぴよキングダム(メディアファクトリーMF文庫.2004.257p.580円+税)[Amazon][bk-1]読了。

ぴよぴよキングダム

 森山拓、山師の父親を持つ高校二年生。ある朝、うるさいヘリコプターの音で目覚めると、突然あらわれた宇宙人がこういった。「わが名はピックルス・ル・チュンチュン三世。これより貴様は我が輩の従者であり、かつ領土である」威張りくさる自称高次元生命体はヒヨコ型をしており、さらにやたらに弱っちかった。未開の蛮地・地球にやってきて使命――一世一代の恋である――をまっとうするのだと宣言するピックル。かれの恋の相手チュルリラ姫の領土兼家来となったのは、ちょっと気になるクラスメート磐座あかりだった。

 『S-Fマガジン』のレビューで興味を持って借りた本。
 ヒヨコ型宇宙人に領土兼家来とされて頭の上に住み着かれた高校生の、おなじ状況におかれたクラスメートの強情っ張りな女の子との、双方対人関係に問題ありでとんがりつつも最後はほのぼのな雰囲気の恋物語。最初は深刻で痛い話かと思ったけど、意外に気楽な展開でした。けっこう、たのしめた。

 この話の肝はなんといっても、高次元生命体ピッチパッチと名乗る宇宙人たちの存在ですね。名前を読むだけで笑えてしまう、ピックルス・ル・チュンチュン三世と、恋のお相手チュルリラ姫、恋のライバルのブラウキス・アバルカス・リリオカリオ・ギーザー・ル・チュクチュクチュリチュリ百三十七世。恋と名誉をかけての重大な試練に臨んでいるのに、全員ヒヨコ。ヒヨコなんだけど本人たちは至って真面目で、高次元生命体と名乗るだけあって賢かったりえらそうだったりして、そのギャップが楽しかったです。
 とくにチュルリラ姫の名前には、みたとたんに頭の中でとある歌謡曲が起動され、エンドレスになって大変困りました。あ、こんな事書くとまたプレイスタートしてしまう。

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 2005.3.15(火)

 古川日出男沈黙/アビシニアン(角川文庫.2003.597p.952円+税)[Amazon][bk-1]読了。世界を細部まで描き尽くす圧倒的な筆力。五感に訴える幻想小説。

沈黙/アビシニアン

 第二次世界大戦中に日本軍の特務機関につとめていた大瀧鹿爾は、終戦後、悪夢を逃れてチェンマイに入った。かつて“獰猛な舌”と呼ばれた異国語の才能をもつ大瀧は、だれに見咎められることもなくシャム人に身をやつして日々を過ごす。ある日、金塊を持つ日本人の噂を聞いたかれは、尋ねた鴉片窟で変貌したかつての上司と出会う。そして現代。弟を闇に奪われた美大生秋山薫子は、祖母の遺品にあった手紙をもとにその実家である大瀧家を見いだすが――まぼろしの音楽と、いのちの鼓動と闇の奇譚「沈黙」。

 引っ越しと同時に飼い猫を保健所につれさられたわたしは、中学卒業と同時に過去を捨て、アビシニアンの放たれた公園をめざす。都会に残されたバードサンクチュアリで、アビシニアンと生きていくわたしは次第に野生を獲得し、体内の書物を焚書してふたたびこの世に生まれ出でる――愛と再生の物語「アビシニアン」。

 『アラビアの夜の種族』の著者の、第二作と第三作の合本。奇想天外なマジックリアリズム小説。ふたつの話には物語世界につながりがあります。「沈黙」はホラーテイスト、「アビシニアン」は恋愛ものか。
 とにかく、ものすごく面白かった。そして、たいへんに好みの文章でした。リズムがあって五感に訴えてくる。たたみかけるようにつづく短文で、形容詞はおどろくほどに少ないのですが、描き出される情景はとてもゆたか。頭の中でひびく言葉を追って、再現される世界の既視感をたどっているうちに、いつのまにか物語にひきずりこまれているような、そんな不思議な感覚をもたらす文章です。好き嫌いが分かれる文章かとは思いますが、個人的には、この文章だけでも読む価値がある小説だったと思います。話の奇想天外さを、抜群の筆力による細部のリアリティーが支えている。繊細だけれど、太い小説だと思う。とにかく圧倒されました。

 描写が具体的なわりに話自体はかなり観念的ですが、ふたつの話に共通しているのは、生に痛みを感じつつも自発的に生きていこう、生きて自分なりに世界を感じていこうとする意志のちからだったような気がします。とくに、「沈黙」の、生きのびるための音楽を見いだしていく試みにそれを感じました。闇に対抗する命の律動、その輝きがとても印象的だった。音の描写がこんなにある小説は初めて読んだのではなかろうか。音ファンタジーマニアの私はこれだけでもうっとりでしたが、静寂と哀しみに彩られたラストシーンにはしばらく呆然。放心状態になりました。
 「アビシニアン」はさらに観念的で、象徴的な話。こちらはきちんと理解できているかわかりませんが、印象深い物語であったことはたしかです。

 と、こんなふうに書くと小難しい話のように感じられてしまうかもしれませんが、ところどころの細かいエピソードには楽しいものもたくさんあります。「アビシニアン」だけではなく「沈黙」にも猫が断続的に出演していろんなことをしてくれるのですが、これが愛らしくて。猫の好きな方にはおすすめかもしれない。
 なのに、どうして文庫の装画はウサギなんでしょうかね。これ、ウサギですよね? それとも猫なのか?

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二十年以上飲んでるしね 2005.3.13(日)

 この間の診察で薬が微妙に増えたわけですが、真面目に飲み続けていたら胃に相当負担がきたらしく、土曜日は全体にもわあという感じで一日気持ち悪かったです。折悪しく用事があってでかけたら、出先でぐるぐるしてしまいました。ああ、しんど。一日に六種類も飲んでりゃ、胃も悪くなるよなあ……。このままだと食事が出来ないので、血液循環をよくする薬を中断しました。飲んでいると足のしびれもないし、寝付きもよくなっていたので残念です。そしたら、雪だよ。

 吉田直トリニティ・ブラッド Rage Against the Moons フロム・ジ・エンパイア(角川スニーカー文庫.2001.282p.514円+税)[Amazon][bk-1]読了。遠未来吸血鬼退治アクションシリーズ『トリニティ・ブラッド』の「Rage Against the Moons」開幕編。『トリニティ・ブラッド Reborn on the Mars 嘆きの星』からはじまる「Reborn on the Mars」と対をなす連作短編シリーズ。四編収録。

トリニティ・ブラッド―フロム・ジ・エンパイア

 吸血鬼とたたかう神父たちの活躍を描く、ゴシックな未来アクションシリーズ。
 ボスであるヴァチカンの女枢機卿の指揮の下、それぞれにふたつ名を持ったプロフェッショナルが、「必殺仕事人」のように特技を生かして吸血鬼がらみの事件の解決に挑みます。昼行灯タイプののっぽの神父アベル・ナイトロードがいちおうの主役で、話はだいたいのところかれを軸に進みますが、視点人物というのはいなくて、話によってスポットの当たる人物が変わっていくようです。読んでいて『特捜戦隊デカレンジャー』を連想するのは間違っていますか(笑。回をかさねるに連れてしだいに明らかになる背景と、同僚たちの素顔がたのしいです。
 というわけで、私のお気に入りはいまのところ、〈殺戮機械〉の異名をとる文字通り機械人形のトレス・イクス。無愛想で無口で融通が利かない、逆に言えば律儀で頑固でコミュニケーション能力未発達な、ターミネーターの小型版でございます(笑。
 短編のためもあってかひとつひとつの話が引き締まっており、飽きることなく読み終えました。絢爛豪華なROMよりこっちのほうが好みかもしれません。

 ところで、あとがきには「ROM」と「RAM」は時間軸だけが異なる同世界のはなし、というような解説があるのですが、それってつまり並行世界ってことでしょうか。うーん、よくわからん。時間だけを遡った話ではないのか。

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通院 2005.3.10(木)

 以上購入。
 三枚のうちのどれを買おうかと悩んでいたCD問題は、入った店に一枚しかなかったのであっさりと解決(心情的にはがっくり。谷山浩子の新譜どころか旧譜までが影も形もないなんて;)。諌山実生は「月のワルツ」がらみでかなりプッシュされてました。他のも眺めていてドラマ『動物のお医者さん』のエンディングもこのひとだったんだということに気づいた。気になるひとの所には何故か戻ってくるのね。

 通院。医者には「症状は落ち着いているので、あとは壊れたところがさらに壊れていくだけですね」などと言われる。「頸は手術をすれば治るでしょう」とも。笑顔で言いたいこと言ってくれますね。いずれにしろ金はかかるし、痛みはつづくってことではないか。さらにいまさら(二十年以上も前だ)発症時のことを訊ねられて気分がブルー。正直あのころのことはあまり思い出したくない。
 おかげでいままで忘れて告げずじまいだった「足首から下が冷え切って感覚がなくなり、足の甲に青ぐろく血がたまってくる」という症状を訴える気になる。そしたら薬が増えてしまった。乾燥剤入りのパックに入っていて、開封したら密閉容器で保存しろだって。考えあぐねて、茶筒に押し込んでみる。飲むのを忘れないようにしなければ。

 渡瀬草一郎空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 5(メディアワークス電撃文庫.2004.307p.570円+税)[Amazon][bk-1]読了。SFファンタジーシリーズ。『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 4』のつづき。

空ノ鐘の響く惑星で〈5〉

 御柱(ピラー)と呼ばれる巨大な柱を祀る神殿が大きな権力を持つ世界。西の勢力を驚異と感じるウィータ神殿は、防波堤としてのタートムと手を組み、かれらの望むアルセイフへの侵略を連携して画策しつつあった。
 いっぽう、アルセイフ王国では第二王子による内乱がようやく収まったばかりで、事後処理とともにつぎの国王をめぐってさまざまな思惑が行き交っていた。乱を治めるために活躍した第四王子フェリオを推す声も高まりつつあったが、当のフェリオはあくまで兄である第三王子ブラドーを王とし、補佐にまわる構えである。それをよしとしないブラドーとの幾度めかの話し合いの最中に、神殿に戻ったはずの司祭ウルクが行方不明との報が届く。

 読んでいる途中の本に少し区切りがついたので息抜きに(失敬)読みました。
 第二王子レージクの陰謀が終わり、あらたな展開のはじまりですね。
 来訪者たちの出番が増えて、あちらの世界とのつながりがとっても興味をかき立ててくれますが、そのへんはまだあまり明らかになりません。じれったいなあ……しかし、これが解明されるのは物語も終盤かとおもうので、せいぜい想像力をたくましくして楽しむとします。
 今回はウルクちゃんの受難の展開がかわいそうで、さらにリセリナがフェリオへの感情を意識したところから、やっぱりな三角関係が成立したのでさらにかわいそうでした。フェリオは、あいかわらずすてきな天然朴念仁くんです。田舎から出てきたばかりのエンジュにまで行動パターンを見抜かれてるし(苦笑。
 複雑な政治情勢、設定とともに微妙な心理も追いかけるのは大変なんじゃないかと思いますが、いまのところそれほど無理なことにはなっていないので、今後も期待しております。

 ところで、表紙絵がシルヴァーナと騎士団長だったのでこちらにも期待していたのですが、シルヴァーナはともかく、団長の出番は少なかったです。シルヴァーナの過去となにかあるってことはほのめかされてましたが、本人がやったのってフェリオを気まずい状況に落としいれただけなのでは(苦笑。
 状況説明が多かったぶん動的な印象がうすれましたが、後半のアクションシーンは鮮烈でした。

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大雪につき 2005.3.4(金)

 日本列島整形外科の旅、in東京は延期になりました。
 前日の天気予報を見ていて不安になったけど、一週間かけてつけた覚悟を無にしてなるものかと、予約キャンセルはせずにいたのです。だけど、朝起きてみて「あー、こりゃ歩けねえ」と思いましたね。うちの前はゆるやかだけど坂なんですよ。そこに積雪はすでに五センチ以上(山なんで)。一足の革靴しか履けない身では、危なくて仕方がない。

 ひっくりかえって骨折するのはまっぴらごめんなので、時間を待って病院にはキャンセルと予約取り直しの電話をかけました。なかなか繋がりませんでしたが。こんなに同じ番号にかけつづけたのは、日本シリーズのチケットをとろうと頑張った1998年の秋以来だ、というくらい繋がらなかったです。きっと皆さん雪でキャンセルしていたんでしょう。なにしろ、予約しているのはみんな病人ですからね〜(苦笑。

 気持ちの整理がつかなくなって、こんなものを仮につくってみました→【Reading Diary-MEMO】。サイトすべての再構築をするのは技術的にも体力的にも気力的にも無理だわという結論に達したので、試験的にメモでもつけてみようかと。たぶん、感想はここでこのまま書いていくと思いますが、あまりにも更新速度が落ちたら覗いてみてください。

 キャサリン・フィッシャー(井辻朱美訳)オラクル サソリの神1(原書房.2005.387p.1600円+税 Catherine Fisher "THE ORACLE",2003)[Amazon][bk-1]読了。古代地中海世界風の島が舞台の、象徴と幻想に彩られた陰謀ファンタジー。

オラクル―巫女ミラニィの冒険

 ミラニィは、〈島〉の神殿でサソリの神に仕える〈九巫女〉のうち最下位の巫女。日照りがつづき、みなが水不足で苦しむある日、突然最高位の巫女〈語り手〉によって二番目の〈神の運び手〉に抜擢され、〈お告げ所〉(オラクル)での重要な儀式にのぞむことになる。不安と恐怖、そして緊張におののきながらつとめを果たしたミラニィに対し、現世の神の現し身であるアルコンはひそかにしわくちゃにまるめたパピルスを押しつける。「この〈島〉は陰謀だらけだ。気をおつけ、命を落とさぬよう」そう告げたアルコンは、儀式ののち息絶えた。ミラニィの手の中のパピルスには、〈語り手〉ハーミアと将軍アルジェリンによる陰謀の存在が警告されていた。

 地上と地下、光と闇、炎と水、男と女。
 対立するふたつがあらわれては消える、象徴と幻想にいろどられた物語。
 たのしく読んだのですが――とくにラストにむかって突き進んでいたあたりはかなりおもしろかったのですが、なんだかとても感想が書きにくい。しばらくほうっておいたけどやっぱり書けないので、困りました。
 きっと私はきちんと話が把握できていないんだと思う。いまとなってはすべてがあいまいで、つかみ所がなかったような印象が残ってるのに困惑してしまいます。おかしいなあ、おもしろかったのに……。
 理由はなんだったのだろうと考えていたのですが、鮮明で印象深い神々の世界に対し、ひとびとの世界の現実感がかなり不足していたからだろうかと思いました。ヒロインのミラニィは神殿でいってみればイジメを受けている(と本人は思いこんでいる)わけですが、彼女個人の巫女となる以前の歴史というものはほとんどでてきませんし、もっとも高位の巫女であるハーミアと将軍アルジェリンの陰謀が一般人や国にあたえていた損害もあまりリアルに感じられず、だから神託のねつ造もそれほど畏れ多いこととは思われない。さらに、あらたなアルコンはあっけなく見つかってしまう。
 現実のリアリティーが少ないと、神の超越をそれがどんなに幻想的に興味深く描いていても、落差が感じられないために不思議と感動が目減りしてしまう。そういうことだったのかなと思いました。もうすこし、幻想に対抗できる重みが欲しかったのかなと。
 砂漠が舞台であるにもかかわらず、光と闇のコントラストをあまり感じなかったのも、それが理由なのかもしれないと思われます。
 ヒロインと敵役の存在感は希薄でしたが、無鉄砲な無頼派楽士オブレクや、美少年アレクソス、墓盗人のジャッカルなど、脇役はちょっとたのしかったです。
 ラストがけっこうあとをひくので、つづきが気になります。つづきは――この価格では買うかどうかわからないけど(苦笑。

気になっている曲 2005.3.1(火)

 このところ、インストゥルメンタルか英語の曲ばかり聴いていたせいか、無性に日本語の歌が聴きたい気分になっています。
 そこで、最近気になっている曲をアマゾンで調べてみた。

恋愛組曲~ONE AND ONLY STORY~(CCCD)
諫山実生 湯川れい子 安部潤 六ツ見純代

 NHK「みんなのうた」の「月のワルツ」収録DVD付。しかし、CCCD。日本の歌だから輸入盤はナシですね(涙。

月天心
一青窈

 NHK「福祉ネットワーク」テーマの「あこるでぃおん」収録。

 どっちも聴いてみたいけど、二枚も買えない〜。と思ったら、もうこれも出てるんだった。
月光シアター
谷山浩子 石井AQ


 財布と相談して、どれかに決めなきゃ……。

 私は基本的に女性ボーカルが好きですが、ハイトーンで癖のない、天使の歌声系はそれほど好みではない、みたいなんですよね。きれいだな〜よく高音が出るなあ〜とは思うけど、すぐに飽きてしまって。繰り返して聞きすぎなのかもしれないが。
 惹きつけられるのは芯になにかのある声、雰囲気と深みのある声なんですが、かならずしも好みの声が好みの歌を歌ってくれているわけじゃないのが難しい(苦笑。


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