2005年4月のdiary
■2005.4.7 ビルの中にウルトラマン/『時のかなたの恋人』
■2005.4.11 bk1がリニューアル/『冒険のはじまりしとき 女騎士・アランナ1』
■2005.4.13 bk1その後/『夢見る人の物語』
■2005.4.20 先端機器のある病院/『ふたりのアーサー III 王の誕生』
■2005.4.27 /『伯爵と妖精 あまい罠には気をつけて』
■2005.4.30 四月が終わる…/『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 6』
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- 萩尾望都『残酷な神が支配する 11』[Amazon][bk-1]
- 栗本薫『豹頭王の行方 グイン・サーガ96』[Amazon][bk-1]
- あしべゆうほ『クリスタル・ドラゴン(文庫版) 10』[Amazon][bk-1]
以上、最近購入したもの。
四月はぐちゃぐちゃしているうちに終わってしまいそうです。
ようやく落ち着いたきのう、読んだ分のあらすじだけまとめて書いておこうと思っていたんですが、昼過ぎに嵐(ちびふたり)がとつぜんやってきて予定はめちゃくちゃに。結局、読みかけた本を就寝前に読み終えたのが精一杯。貸出期限が今日だったので、ぜんぶ図書館にいって返してきました。ため込んだ感想は、あらすじなしで書いていくほかなさそうです。あーあ。
渡瀬草一郎『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 6』(メディアワークス電撃文庫.2005.331p.590円+税)[Amazon][bk-1]読了。戦乱の異世界を舞台に描かれるSFファンタジーシリーズ。『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 5』のつづき。
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本を返却してしまったので、あらすじはパスさせていただきます。
あらたな展開……というより、あらたな世界がひらけてきた巻でした。隣国と神殿による陰謀の最中にあることを自覚したアルセイフ王国の面々に、西からやってきたとある人物が意外な事実を明らかにしてくれるのです。これによって、敵対的な大国であることしかわからなかった西の国が、意外な実態とともに表舞台に躍り出てきます。さらに、御柱を通してやってくるビジターたちの世界に関する貴重な情報が。まだ、明確に提示されているわけではないけれど、この設定には意表をつかれました。ううーむ、なるほどねえ。今回は人間関係よりも物語世界のほうに興味津々でした。
それでも、あいかわらず三角関係はつづいてますけどね。リセリナとあんなことになっても、フェリオくんが意識してくれないのではあんまり意味がないのだった。状況的にそれどころではないのはわかるけど、もうすこし葛藤してほしい(苦笑。
いまは、不気味な西の国をささえる技術のルーツを、知りたい知りたい、とっても知りたい。すべては時間差の産物なのでしょうか。
谷瑞恵『伯爵と妖精 あまい罠には気をつけて』(集英社コバルト文庫.2004.275p.514円+税)[Amazon][bk-1]読了。キザな美形伯爵と妖精博士の女の子のロマンティック・ファンタジー。シリーズ第二作。『伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党』のつづき。
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ところはイギリス、時は十九世紀半ば。十七歳のリディアは、妖精博士(フェアリードクター)としてアシェンバート伯爵エドガーに雇われている。伝説の青騎士伯爵の爵位を継ぎ、現在は社交界の寵児となったエドガーが、じつは元強盗であることをリディアは知っている。ある日、いつものエドガーの口説き文句をはねのけて出かけた公園で、リディアは霧男(フォグマン)に襲われ、あやうく拉致されそうになった。エドガーの従僕レイヴンに救われてようよう屋敷に戻ると、妖精博士としてのリディアに意見を求める人物が待っていた。その人物は、ドーリス・ウォルポール男爵令嬢の元家庭教師で、ドーリスが霧男にさらわれたらしい、というのだった。
美形伯爵にからかい半分にくどきまくられる女の子が、馬鹿にしないでと反発しながらも惹かれていく、ロマンティックファンタジー。霧男とエドガーの過去が、リディアを危機に誘い込む、というお話。事件とヒロインとヒーローの絡み合いがバランスよく手際よく、するする読めて、あー楽しかったという一冊。
こういう話は、どれだけヒーローがかっこいいかが勝負ですね。ロマンスものはみんなそうだといえばそうなんですが、節操なく口説きつづけても嫌味にならず、自信過剰がそれほど鼻につかない、一見浮ついていて派手だけれども自分の信念をつよく持ち、敵に冷酷だけれど味方には熱い、そういう悪党でないとやっぱり読んでいてドキドキできません(笑。
この話は前作よりもエドガーに華がある感じで、なかなか楽しかったです。拒絶しつつも惹かれていくリディアと、ちょっとした興味から深みにはまりそうで自分でも躊躇が入りつつあるエドガーの、つかずはなれずの距離感が絶妙。感情に理屈をつけないでこのままさらりと進んでくれると嬉しいなーと思います。でも、やはりちょっと理屈っぽいですか。
個人的には、魚のハーブ漬け缶詰のエピソードがたいへん楽しかったです。猫に化けてる妖精ニコのとぼけた行動もお気に入り。ですが、レイヴンは別格(笑。
というわけで、整形外科への通院がつづいてます。
先日はCT撮影をしてから診察、という予定でした。前回は検査だけで、早めについたけどすぐにやってもらえたので、ちょっとだけ楽だったのですが、今回は猛烈に疲れました。早めにつきすぎたのと、診察が予約時間よりも一時間半も遅れたためです。検査はほぼ予約時間通りだったんですけどねー。理由は不明です。
ところで、その大病院は新築されたばかりなのですが、きばってえらい先端機器をたくさん導入してまして、診察の順番がきたことを教えてくれるのも大きなディスプレイによる画面表示なんですよ。
アナウンスはナシで。表示されるのは受付番号だけです。
だから患者は、自分の番号が出てきたときにそなえて、ずっと画面を眺めていなければならないのです。これでは、本を読むことも出来ません。もっとも、待合室がホテルのラウンジみたいに薄暗くて、文字なんか読める状態じゃないんですけども。
予約時間が指定されているので、そんなに待つこともないだろうとこういう仕様になっているのかもしれませんが、私は待ちました。なんにもせずに数字ばかりながめている時間って、ほんとうに空しいです。
その画面も、妙な具合に光を反射してとっても見づらいし。人が前に座ると、やっぱり見えなくなるし。そもそも、見えないひとにはまったく役に立たないのではと思いますが、それについての対策はとられているのでしょう、たぶん。
それから、全病院的にLANを構築して、カルテが電子カルテになってます。
これ、医師が入力画面ばかり見ているので、なんとなくいやーなんですよね。
それでもまだ若い先生の予診のときはよかったんですよ。キー入力の速度に感心したりしたし。
CTやMRIの画像もデータで送られてきて、画面上で3D映像として見ることができたし。これは大変におもしろかった。セカンドオピニオンをとりたいときは、面倒かもしれないとも思ったが。
問題は教授の診察を受けたときです。教授はお年を召しているので、自分でキー入力はなさいません。握っているのはマウスだけ。それでどうするかというと、助手がついていて、口述入力をしてるんです。
だから、診察の間中、教授がしゃべりっぱなし、なんですよねー。カルテに入力する文章だけでなく、入力された内容に対して助手にケチをつけたり、看護婦を呼んだり。質問に答えるとき以外、患者には言葉を挟む余裕がありません。なんとなく疑問に思っても、尋ねるタイミングが計れない。
ぜんぜんコミュニケーションがとれていない気分のまま、診察は終わりました。
次回の予約を取らされました。
まだ、来なきゃならんのかい、と正直思いました。
手術はしなくていい、というのは朗報ですが、だったらもう縁を切りたい感じなんですが。たしかに先生は腕がいいらしいし、説明は明解でした。それに関しては信頼できるかなあと思ってるんだけど、遠いし、不便だし、面倒なんですよー。
ほかにも自動受付機とか自動精算機とか、いろいろと自動になってるんですが、患者の手間は余計に増えてるような気がします。
予約票だの診察券だのをクリアファイルに入れて、自分であちこちに運んでいかなきゃならないのも、ベルトコンベアーで振り分けられている荷物のようで、気分が悪い。
古いシステムがよかったなんて言わないけど、新しい病院のシステムも、患者のためのシステムではないようです。
最先端の病院なんて、だいっきらいだー。
それからずっと、腰回りの筋肉が張ってます。たぶん、座りつづけすぎた後遺症。
ケビン・クロスリー=ホランド(亀井よし子訳)『ふたりのアーサー III 王の誕生』(ソニー・マガジンズ.2005.575p.2400円+税
Kevin Crossley-Holland "KING OF THE MIDDLE MARCH",2003)[Amazon][bk-1]読了。中世イングランドに生きる少年の成長物語。三部作の完結編。『ふたりのアーサー II 運命の十字』のつづき。
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十六歳になったアーサーは、ロード・スティーヴンとともに十字軍の一員として旅立った。ヴェネツィア共和国のサン・ニッコロ島にかまえた宿営地で、一行は戦支度をととのえるための時間を過ごす。十字軍はヴェネツィア商人に船と糧食の準備を依頼したが、支払い能力がないため物資の引き渡しを受けられずにいたのである。聖地を開放する目的を前にして、いたずらにすぎてゆく時間に軍の士気は低下する。アーサーの実の父親サー・ウィリアムが突然訪れ、十字軍に参加することを表明したころ、ヴェネツィアとの交渉に行き詰まった十字軍の先行きには、暗雲がたちこめるようになっていた。
読み終えてからずいぶん時間が経ってしまいましたので、簡単に。
中世イングランドで支配者階級に生まれた少年の、成長物語。詩人らしいこまやかな表現が随所にちりばめられた描写がよみどころですね。日常のなかに人間のさまざまな面をていねいな筆致で描き出しています。精緻なつづれ織りをいくつもとじ合わせてつくった物語、といった雰囲気。そういえば、登場人物の中に夫の人生をタペストリとして織りつづけている女性がいたような。
今回のメインは十字軍ですが、実態から背景までをかなりことこまかく書いてあって、臨場感がありました。こんなに借金してたんじゃ、そりゃあ債権者の言いなりになるしかないよなあ。借金を棒引きする代わりにザーラを占領させるヴェネツィア商人は、したたかというか悪辣というか。現実的だけど、身も蓋もないですね。だからといって、信仰のためにイスラム教徒を殺しに行こうとするひとびとがすばらしいとも思えないし。信仰の志と現実感覚というのは両立できないものなのでしょうかねえ。十字軍の話を読むといつも暗澹とします。
という過酷な状況を経験して、アーサーは苦い現実を知り、成長するわけですね。ようやく帰り着いた故郷で自分がもう汚れのない子どもではないことを知るシーンは、とても感慨深かったです。
そのときどきの状況と絡み合うように展開されるアーサー王の物語が、この話はハッピーエンドじゃないと主張しつづけるので心配だったのですが、予想ほど悲惨な事にはならなかったのはよかったなと思います。
しかし、マーリンがアーサーに黒曜石をあたえた物語世界的な意味って、結局なんだったのでしょうね。
私は途中で、この世界はアーサー王の伝説のない並行世界なのかもしれないと思ったりしたのですが、それもどうやら違ったようだし。たんに、少年の人生を象徴化し、支えるためのアイテムだったのかなー。私は深読みをしすぎたのでしょうか(汗。
4/11日の日記で「bk1リニューアルでリンク張り替えが面倒」と愚痴ったら、親切な方に「そのうち対応されるかもしれないので、早まらない方がいい」と教えていただきました。検索窓がダメだったから全部ダメなんだと思ってましたが、その検索窓も一部だけはちゃんと使えていたらしいです。まあ、ほかのページは端から書きかえする意欲は低かったですが……あんまりたくさんありすぎてねえ。
そんなわけで、検索窓は一度取っ払ってしまったのですが、つかえる機能もあるらしいので、たまたま残っていたデータ(「サイトらくらく更新実験」の一環としてひそかに設置していたCGIのデータ;)を拾ってきてふたたび設置し直しました。ISBNでの検索にご使用ください。キーワード検索などはダメですが。
あわてものに助言をくださった有里さん、どうもありがとうございます。
しばらくbk1の動向に注意しておかなければなりませんね。
ロード・ダンセイニ(中野善夫,中村融,安野玲,吉村満美子訳)『夢見る人の物語』(河出文庫.2004.368p.850円+税
Lord Dunsany "THE SWORD OF WELLERAN AND OTHER STORIES",1908)[Amazon][bk-1]読了。幻想短編集。
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何ヶ月かかったのかわからないほど長い間ほそぼそと読みつつづけて、ようやく最後までたどり着きました。既刊の短編集『世界の涯の物語』の時にも書きましたが、ひとつひとつがかなり短く、ひたすら幻想のかなたへ飛んでいくような作風を楽しめて、後をひかないし感情的に波だって興奮することもないという、不眠症の私でも「寝る前に読んでもOK」なありがたい本でした。
全部で28篇。題名の通り、神の世界から人間世界へと焦点は移りましたが、不思議と驚嘆、無情と追想に満ちた話の群れを堪能。よみおえたあとで「もう明日から寝る前に読む本はこれではないのだ」と思うと寂しい気持ちになりました。
……うう、やっぱりひとつひとつに関しての感想は、書けないわ(汗。訳者あとがきにあるように、伝説の都市の話は印象に残りましたね。あと、海賊の話は壮絶な法螺話というかんじで、肝が冷えるような結末なのに読後感が陰惨じゃなくて、おもしろかったです。
帯に2005年春刊行予定と記してある『時と神々の物語』は、まだ出ていない模様です。
オンライン書店bk1がリニューアルしました。それはよいのですが、ブリーダーのリンクアドレスが全部変わってしまいました。とりあえず、検索窓は使えないので取り払いましたが、残りはどうしようか。ほとんど利用されていないようなんですけど、削除するだけでもそうとう手間がかかりそう。うーん、うーん。このまま放置かなあ。同時に新しいバナーにはりかえようと思ったのですが、何が原因なのかバナー作成ページでバナーがぜんぜん表示されません。解決策を考えるのもめんどくさいのであきらめました。しょうきょくてき。
追記。サイトトップページの直接リンクだけ、書き換えました。
タモラ・ピアス(本間裕子訳)『冒険のはじまりしとき 女騎士・アランナ1』(PHP研究所.2003.325p.1500円+税
Tamora Pierce "ALANNA:THE FIRST ADVENTURE",1983)[Amazon][bk-1]読了。アメリカの女の子向け異世界ファンタジーシリーズ全四巻の第一巻。
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地方貴族トレボンド家の双子の兄妹トムとアランナははやくに母親を亡くし、父親には放置されて育った。教育係たちはふたりに剣術と魔法をしこんだが、それぞれの興味はおたがいの性別にふさわしい方向には向かわない。十三才になったふたりは、父親をあざむいて入れ替わり、夢をかなえるためにそれぞれ修道院と王都へ旅立つ。騎士になることを夢見るアランナはトムの弟アランを名乗り、王宮で従者見習いとして受け入れられた。性別をいつわっての、アランナの過酷な鍛錬と勉学の日々がはじまった。
すっきりとまとまった、スピード感のある物語。女の子が男装して騎士をめざすという話ですが、ジェンダーの葛藤とかフェミニズムとかの問題はさらりとながして、とにかくヒロインの活躍にポイントをしぼったストーリー進行で、がんがんエピソードがすすんでいきます。従者見習いとなった後は、ちょっとした学園ものの雰囲気ですね。仲間や敵や教師たちにかこまれての日常が興味深い。ひと息に読めました。面白かったです。
雰囲気的にはハードカバーじゃなくて文庫ででたほうがしっくりする感じです。装飾を切りつめた分、背景描写も心理描写も物語世界の説明も、すべてがあっさり風味。印象を言えば、大作ファンタジーを二時間半の映画にして、それをあらためてノベライズしたらこんな感じなのではないかと。たぶん、ふつうに大人向けの異世界ファンタジーとして書かれたならば、そうとう分厚い一冊か分割して出すくらいの分量になるのでは。それを思うとこの内容をこの分量でまとめあげたということにはひたすら感心してしまいます。
というわけなので、異世界のディテールに魅力を感じる私にはすこし物足りないと感じる部分もあり、ストーリーに起伏を持たせたうえで簡素にするためと思われますが、そりゃないだろうという展開もときに出現しました。とくに十三才までは女の子として育ったアランナに月経の知識がないというのは、どうかと思う。それに、クライマックスまでおなじ調子であっさりと進むため、ラストのもりあがりがいまひとつでした。
話自体はかなりおもしろいので、あともうすこし書き込めばさらに好みなのになあとちょっとばかり残念なのですが、とりあえずつづきが気になるので予約することにします。
前日、無駄に追いついて四時間を超えた試合を聴きつづけていたため、寝不足気味のまま通院。
なぜか病院も薬局も空いていたため予想外にはやく用事が済みまして、サンドイッチとコーヒーを売店で購入し、ビル内の吹き抜けのロビーで昼食をとっていたときのこと。
「……!」
ウルトラマンの声が聞こえたような気がして、私はいっしゅん食べるのをやめました。
より正確に言えば、ウルトラマンのかけ声のような声が、真ん中がふきぬけのビル内で反響して聞こえたんですが。
まさか、こんなところにウルトラマンがいるわけないし、とビル内のCDショップをみましたが、ウルトラマンのビデオを流しているようすはなし。
へんだなあ。空耳かなあ。
と思いながらまたサンドイッチにかぶりついたところで、ふたたび、
「………! ………!」(←あまりに微妙な発声で文字に出来ない)。
耳をそばだててよーーく聞いてみたら、それは男性のくしゃみの音でした。くしゃみがどうしてウルトラマンに聞こえるのか、よくわからなかったけど、やっぱり反響のせいでしょうか。
それからもしばらくのあいだ、ウルトラマンもどきのくしゃみは響いてました。最後までご本人の顔は見えなかったのですが、花粉症の方だったのかなあ。それにしても豪快なくしゃみだった。記憶に残るくしゃみです(汗。
そういえば、今年は街を歩いているとマスク姿の人の多いこと。山火事の煙と見まごうほどの花粉が飛んだところもあったそうで、ほんとうに大変ですね。
幸い、私はまだ花粉症になってません。
薬局のひとには、いいですねえ、と言われましたが、喜んでいられるのはいつまでかなあ……。
ジュード・デヴロー(幾野宏訳)『時のかなたの恋人』(新潮文庫.1996.608p.777円+税
Jude Deveraux "A KNIGHT IN SHINING ARMOR",1989)[Amazon][bk-1]読了。タイムスリップロマンス小説。
アメリカの大富豪の一家に生まれ、出来のいい姉妹のなかで物笑いの種として育ったダグレス。山ほどつかんだハズレの後にようやく出会った見栄えのする男、ロバートとの結婚を夢見ていたが、かれは煮え切らないうえにしみったれで、前妻の娘はことあるごとに嫌がらせをする。イギリスへの婚約旅行は旅費を折半にされたあげく、直前になって“家族旅行”だったことが判明する。最悪の旅の果てについに両者は決裂。とある教会でロバート親子に手ぶらのまま置き去りにされたダグレスは、そこにあった中世の伯爵の墓の前で泣きだした。「助けて。輝く鎧を着たわたしの騎士を見つける手助けをして」気がつくと、目の前にひとりの男が立っていた。銀製の鎧を着た、おそろしくハンサムな男。かれは真面目な顔で魔女よ、と呼びかけてきた。「そなたは呪文で余を呼び出した。何用あってのことか?」
アメリカのロマンス小説を読むのはひさしぶりです。あんまり読まないんですよね、現実が舞台の現実的でないロマンス小説は。少女小説は読めるんですが、それから映画とかマンガだとそれほど抵抗ないんですが(あ、でも『ブリジット・ジョーンズ』は駄目だった)、さらにSFロマンスとかファンタジーロマンスとかミステリーロマンスとか歴史ロマンスだったらかなり平気――というよりも好きなほうですが、小説で大の大人が主人公で現実が舞台だと「ロマンス以外にもやることがあるだろう」って気分になって、素直に楽しめないらしいです(汗。
この本は、理想の恋人を求めるヒロインの元に、なんの因果かとつぜんぽんとハンサムな男がふってくる、しかもすでに墓に入ってるはずの伯爵が中世からタイムスリップをして、という、かなり臆面なくご都合主義なラブストーリーでした。私としては、中世と現代を結ぶからくりにもうすこし理屈をつけてみたらどうなのさ、と突っ込みたいのですが、そういうこまかいところにこだわる人間だから、ただのロマンス小説がだめなのかも。そういえばかの大作『王家の紋章』も、何度もタイムスリップしてるのに一度も時系列が前後しないのが納得できなくてですねえ……。
話を元へ。
理屈にこだわるのを棚上げして読めば、前半部分はコメディーとしてかなり楽しかったです。登場人物の性格付けがきちんとしているからかな。ヒロインの、自分に自信が持てない分を男で底上げしようとする卑屈なところとか、そこにつけ込んで搾取する男とか。それから、目の前にいる伯爵が中世人であると、どうしても認めたくないヒロインの現実逃避ぶりが笑えました。
ただ、ヒロインが中世にトリップする後半は、だれてしまいました。中世イングランドの生活についてはかなり詳しく描写されていて、興味深かったのですが。前半の、とまどいながらも好奇心いっぱいの伯爵のほうが魅力的だったからかなあ。後半の伯爵はせっかくホームグラウンドに戻ったのに頭硬いし、たいして活躍してくれないし、ヒロインはたいした窮地には陥らないし、なによりも陰謀が簡単に阻止されてしまうのがものすごく不満。読んでいておもしろいのは伯爵のお母様のほうなんだもん(汗。主役の恋の行方に興味を失ったら、ロマンス小説読者としては失格ですよね。
最終的には、ヒロインをコンプレックスから解放するためだけにストーリーが長くなったような感じを受けました。せっかく中世が舞台なのだから、そこで劇的に展開するストーリーを読みたかったです。
というわけで、前半の伯爵はかわいくて魅力的でしたが、前半だけでストーリーを締めくくるか、後半の陰謀をもっときちんと陰謀らしく描いてほしかったなあという気持ちです。それから、訳文。もうすこしロマンティックにならないものでしょうか(苦笑。
開幕サヨナラ二連敗でスタートした横浜ベイスターズにも、ようやく初白星がやってきました。
あーーー、ほっとした。このまま永遠に勝てないのかと思ったよ。
開幕戦後はあまりのショックで、『英国戀物語エマ』を予約録画するのをすっかり忘れてしまいました。しかも、本日まで思い出さなかったという……。当日の夕方までは覚えていたのになあ(涙。
しかし、なんで今頃風邪ひきが続出なんですかね。四番五番の中軸がそろって欠場では、得点力が半減するのもいたしかたありません。出場しても打つとは限らないけど、相手に対する威圧感がまったく違う。第三戦は先発投手までいなくなるし。体調管理がなってないよ、プロなのに……。
雪乃紗衣『彩雲国物語 想いは遙かなる茶都へ』(角川ビーンズ文庫.2004.224p.457円+税)[Amazon][bk-1]読了。立派な官吏をめざすしっかりものの女の子とくせ者揃いの臣下たちの、中華風異世界ファンタジーシリーズ第四巻。『彩雲国物語 花は紫宮に咲く』のつづき。
国王劉輝によって茶州州牧に任命された秀麗は、おなじく州牧の影月、護衛官の静蘭、元州牧で補佐となった燕青、侍女香鈴とともに、こっそりと茶州をめざしていた。茶州は彩七家のうち茶家の支配下にある土地である。旅は、州府と対立関係にある茶家の差し向ける追跡者をまきながらの危険なものとなっていた。それでもなんとか茶州に入った一行だったが、とうとう茶家の息のかかった役人に拘束されてしまう。機転により難を逃れた秀麗は、ただひとりであらかじめ定めた目的地金華をめざすことになった。はたして彼女は無事に新州牧の赴任期間内に州都にたどり着けるのか。
前巻を読んだときには、すぐにも話は茶州へ移るのかと思っていたので、まだ移動中だったのが意外でした。が、この巻を読み終えて、なんとなくシリーズの全体像がわかってきたような。つまりこのシリーズは秀麗たちが茶州の混乱状態を収めて、平和を取り戻すまでの話なのではないか、と思ったわけです。それに茶家の後継者争いと、茶家と王家との争いと、さらに王様と茶家の○○と秀麗の三角関係がからみあうと。シリーズタイトルの色名からすると、あと三巻で終わり……なのかも?
とかってな予想はおいておくとして、今回も秀麗はつよくたくましく、けなげでした。隠密の州牧赴任の旅で、倹約隊長として辣腕をふるう姿が楽しかった。燕青と静蘭の暗い過去と、現在のふたりの漫才のギャップに安堵したり。あいかわらず、会話が軽妙で文章のテンポがよくて気持ちよく読めました。
王都を離れて王様の出番は激減でしたが、しっかりと秀麗の援護をしているのが頼もしい。しかし、茶州でなにが起きているのかを知ったら、愕然とするでしょうね。さて、これからかれと秀麗との関係はどうなるのでしょう(笑。つづきが楽しみです。