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2004年12月のdiary

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2004.12.1 今年もあとひと月/『魔女の結婚 乙女は一角獣(ユニコーン)の宮に』
2004.12.3 驚き、困惑。/『レイチェル』
2004.12.6 カレンダーと人体模型/『彩雲国物語 黄金の約束』
2004.12.9 ラッキーデイ(?)/『スペース』
2004.12.16 /『マリア様がみてる バラエティギフト』『カルチェ・ラタン』
2004.12.17 外出+めった斬りブックガイド既読調査/
2004.12.20 /『オーバー・ザ・ホライズン 僕は猫と空を行く』
2004.12.24 ウルトラの母とムーミンママ/『風の王国 天の玉座』
2004.12.25 生涯くじ運何分の一/『マリア様がみてる チャオ ソレッラ!』
2004.12.28 /『キーリ 6 はじまりの白日の庭(下)』
2004.12.30 買い出し+2004年のあれこれ/『砂漠の花 3 夢幻泡影』『砂漠の花 4 流砂放浪』『砂漠の花 5 砂塵乱舞』
買い出し+2004年のあれこれ 2004.12.30(木)

 今年ももうじき終わりです。歳をとると月日のたつ速度が速くなるって、ホントなのですね〜。立てた目標はことごとく達成できないままに、もう年の瀬だ。一年ごとの完結性がどんどん薄れていくのが哀しいです。
 ところで、年賀状もまだできあがっていないのに、出かけてました。ストーブが壊れてしまい、寒くてなんにもできなかったから。
 ついでに年末に出た新刊を大量にゲットしてきましたが、それよりも! 「炎と氷の歌」が読みたくて、ついに手をつけてしまいました。貸出期間もあと一週間だしと理由をつけて……根性なしめ。

 ということで、今年の私のあれこれ。

パソコン購入

 使用していたPowerBookG3の液晶が昇天してしまったので、iBookを購入しました。五年前にPowerBookG3を購入したときと比べるとかなり安かったのですが、OSが9.2からXへと移行したことで、本体以外にもアプリケーションや外付け装置などが必要となりました。おかげでそれからずっと緊縮財政に突入しています。やっぱりパソコンというものは高い買い物です。なのに、五年で壊れてしまうなんて、なんて耐久性のない道具なのだろう。しくしく。
 OSXには最近ようやく慣れてきました。でも、いまだにすべての機能を触ってみたわけではないんだよな。来年はもうすこしをお勉強しよう。

脳内一時記憶メモリ、崩壊寸前

 昨年から物忘れが多いなあと感じてはいたのですが、今年は一週間に数回は大ボケ小ボケを連発するようになってしまいました。出先で忘れ物をかますのはもう日常茶飯事。落とし物で警察のお世話にまでなってしまいましたよ。目の前で自分のしていることが信用できなくなる日が来るなんて、思わなかったわ〜と思わず節をつけて歌ってしまいたくなったり(汗。
 どうしてこんなことに……と原因をちょっと探ってみたのですが、加齢もまあこの歳になると考慮のうちとは思いますが、それよりも深く思い当たるのは、創作を再開してから常日頃のぼんやり度が以前に比べて数倍くらいあがっているようだということでした。なにかの情報が入るとすぐに関連思考にうつるようスタンバイしている状態なので、たぶん、脳内メモリの三分の一くらいはつねにそれ用にキープされているんだと思います。ただでさえ性能の悪いメモリなので、容量不足でフリーズをおこしているのかもしれません。
 なので、今年の私は、作業効率が著しく落ちました。このサイトがときおり放置状態になってしまったのは、そのためです。本は読めても感想書けない状態はまだいいのだけど(いや、よくはないのです。感想がたまってしまうから)、下手をすると本も読めない状況だったりするので、しかたないですね。来年は、せめて日常生活への影響くらいは最小限で止めておかないと、と思います。まずはメールへのレスポンスをもっとすばやくしなくては。サイトのほうは、まあ、義務ではないのでこれからも適当につづけるつもりです。もともと感想は忘れる自分のために書いてるものなので。

『指輪』再読

 映画『ロード・オブ・ザ・リング』の完結を受けて刊行された文庫新版の追補編を読んでいるうちに、どうせなら最初から最後まで読み直してみようと始めたのが三月のことでした。が、じつはいまだに最後まで読めておりません。超のんびりペースで読んでいたのと、夏の猛暑の時期は不快感を指輪の世界に結びつけたくなくて遠ざかってしまったことと、その後、どこまで読んだかわからなくなって、丸々一冊、二度読みしたりしたことが影響しています。読みながらメモをつけていたのも、様々な理由で時間と能力の限界を超えてしまったため、ものすごくいい加減なことになってしまいました。
 それでも楽しみながら読んでいたことは間違いなく、第三部に入ったら就寝前に一章ずつ、という取り決めを破ってつづけざまに三章読んでしまったりしました。おかげで残すところは『王の帰還 下』のみとなったのですが、どうやら年内の読了は不可能ということに。ううん、残念。
 読んだ感想については、2004年ベストにちょっとだけ書こうかなと思っているところ(現在準備中)。

クラシック音楽に開眼?

 二ノ宮知子のマンガ『のだめカンタービレ』にはまったおかげで、今年私はクラシック音楽のCDを購入するようになりました。これをどうやって聴いてるかというと、ポップスの時とおんなじで、プレーヤーに入れたままエンドレスでBGMとしてかけつづけているんですね。正統派のクラシックファンからするとかなり邪道な聴き方なんだろうなあ、と思いますが、純粋に音楽だけ音だけ楽しめるような機器じゃないし、部屋も雑音だらけだし、聴いてる本人も素人なので、楽しければいいやと思うのでした。
 ということを繰り返しているうちになじみの曲が増えたらしく、テレビで流れてる曲がわかるとおおっと思ったりして嬉しいです。名曲アルバムだけじゃなくて、N響アワーもときどき聴いてます(風呂上がりにストレッチをしながら;)。フィギュアスケートのバック音楽は音が薄っぺらだということもわかるようになりました。もっとも、これは会場の設備のせいだろうと思いますが。
 いまのところ、ピアノソナタなんかはBGMとしては邪魔にならなくて文章書いていても大丈夫です。でも、このつぎにねらっているベートーベンの「運命」は、ちょっと、いやかなり、思考の邪魔になりそうなのでどうしようかと悩んでいるところです。
 CD屋のクラシック売り場はこれまでほとんど縁をもたなかったので、見るものすべて目新しかったんですが、なんか、アイドルっぽい弦の人たちのポスターが貼ってあったりするかと思うと、年輪を感じさせる(しかもぜんぜんあか抜けない)おじさんの顔写真があったりして、ちょっとおもしろいです。平日に行くとほとんど客がいなくて、うろうろ探すのが恥ずかしいんだけどさ。

防滴ラジオ購入

 プロ野球のナイター中継があるたびに生活時間が狂ってしまうのをなんとかしようと、防滴ラジオを購入してみました。いや、これはかなり使えましたよ。今年買った道具の中では一番のヒットでした。ラジオ中継があるのはほとんど対読売戦だけなんですが、それでも六分の一はテレビに貼りついていなくてもよくなったので、かなり時間に余裕が生まれたのです。
 ただ、シャワーを流していたりするとなんにも聞こえないのと、電気仕掛けのボタンの付近におくとやたら雑音が入るのと、位置関係のためかどんなに頑張ってもニッポン放送がうまく入らないのが難点。しようがないので風呂場ではTBSを聴いてました……ひいきチームの親会社なのにあんまりなじみのなかったTBSに、すこしだけ親しみがわいた瞬間(苦笑。
 とはいえ、チーム自体は三年連続最下位、なんですよね。来年こそ、野球で頑張る選手達が見たいです。牛島監督、期待しております。
 ところで、調子に乗ってJリーグチャンピオンシップもこれで聴いてみたのですが……私には、音声情報だけでサッカーのゲームを脳内に再現するスキルはありませんでした。そういえば、アテネオリンピックのサッカーのラジオ中継も、わけわかんなかったしな〜(苦笑。

 と、2004年はこんな感じでした。今年は去年よりは家庭内も落ち着いたので、すこしは前向きになれたかなと思います。しかし猛暑でダイエットが頓挫してしまったし、来年はもうすこし身体を動かさねばダメでしょう。甥っ子の自転車を押しながら坂を上ったら、当日から重度の筋肉痛におそわれています。この痛みを抱えて年を越えるのか……。ちょっと哀しい。

 金蓮花砂漠の花 3 夢幻泡影(集英社コバルト文庫.2003.245p.476円+税)[Amazon][bk-1]
金蓮花砂漠の花 4 流砂放浪(集英社コバルト文庫.2004.254p.476円+税)[Amazon][bk-1]
金蓮花砂漠の花 5 砂塵乱舞(集英社コバルト文庫.2004.252p.476円+税)[Amazon][bk-1]読了。孤高の若き女王の愛と運命を描く異世界戦記ロマンス? 『砂漠の花 2 青海流砂』のつづき。完結。

砂漠の花(5) 砂塵乱舞
金 蓮花

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 一度に読んだわけではないのですが、図書館で冊数あわせにふらふらしているときに書架に残っていることが多かったため、ついつい借り続けて最終巻まで来てしまったので、いちおう「読みました」と報告がてらすこしだけ。
 珠黎皐夕さんの表紙カバーと挿画はどの巻もうつくしくて、ためいきものです。Amazonの画像ではかなり細部が飛んでしまってよくわからないかもしれませんが。画像はbk1のほうがきれいだなと、いつも思います。
 内容はというと、お話のスケールに中身がついて行っていない、という印象が最後までぬぐえませんでした。登場人物にも筋を進めるためだけに出てきたような生かしきれていない人がたくさんいたように思うし、そのため不必要と感じるエピソードが多すぎた(「ヴァレンチーノ・シリーズ」の錬金術師みたいなひと、もっと活躍させて欲しかったし)。私は夢見の神官セイランダをヒロインに据えた方が著者の持ち味がもっと生かされたのではと思ったのですが(彼女の父親のエピソードはよかったと思う)。あらたなヒロインを生み出そうという意気込みは感じたけど、どうも成功したようには思えなかったのでした。あと、文章的には、巻数を追うごとに改行が増えていくのが印象的だった。もしかして、作風を変えたいと思ってらっしゃるのだろうか。わたしとしては、ちょっと残念なお話だったです。

Amazonでサーチ>>『砂漠の花』既刊

 2004.12.28(火)

 壁井ユカコキーリ 6 はじまりの白日の庭(下)(メディアワークス電撃文庫.2004.287p.550円+税)[Amazon][bk-1]読了。『キーリ 5 はじまりの白日の庭(上)』のつづき。

キーリ 6 はじまりの白日の庭(電撃文庫 0982)
壁井ユカコ〔著〕

出版社 メディアワークス
発売日 2004.09.10
価格 ¥ 578(¥ 550)
ISBN 4840227799

bk1で詳しく見る  オンライン書店bk1

 前巻の思いっきりつづき。よって以下はネタバレを多少含んでおります。

 ウエスタベリの街で興行団に身を寄せていたキーリは、ハーヴェイのかつてを知る不死人クリフトフを尋ねた帰りに暴漢に襲われ、意識を失った。気がついたとき、キーリは過去のウエスタベリにいた。見覚えのある少年に導かれて両親を失った子供達の暮らす学校にたどり着いたキーリは、エイフラムと呼ばれる少年だった頃のハーヴェイに出会う。

 不死人というのはやっかいな問題を抱えた存在なのだなと、つくづくと思い知らされる展開でありました。しかし、ハーヴェイって、少年のころも幸のうすい生活を送っていたのですねえ……。すでにかなりの実際家であるエイフラムは、さすがにあのハーヴェイの過去だけあって無愛想そのものの少年ですが、その性格形成の過程がこんなに過酷なものだったとは。戦時中ということで、こういう悲劇はたくさん転がっていたのだろうなとは思うのだけど、たくさんあるからって悲劇の重みが軽くなるわけではないので。

 けど、エイフラムくんはときに年相応な柔らかな部分がのぞくのが可愛いですな。すっかりひねくれたハーヴェイとほとんどおんなじ言動をしているところから、急にふっと素直な顔を見せてくれたりすると、どきりとします。ハーヴェイを読んでいるよりも楽しかったような気がする……(苦笑。

 相変わらず視覚的で淡々としていて、じわじわとしみいるような文章が独特の雰囲気を生み出しています。が、この文章でアクションシーンをつづけられると、視覚化にかなりの集中力が要求されるらしく、私はすこし疲れました。あー、歳を感じるわ。

 少年クリフトフと不死人クリフトフの葛藤は、ちゃんと決着がついたのだろうか。そして、ベアトリクス探しはどうなったのだろう、と思いつつ、次巻をお待ちしています。

Amazonでサーチ>>『キーリ』既刊

生涯くじ運何分の一 2004.12.25(土)

 甥っ子が特等を当てました。近所の商店街のくじ引きで(笑。
 景品は、某演歌歌手のコンサート。どうやら商工会議所かなんかの主催らしく、もしかしたら周辺の商店街ではみんな特等がこのコンサートなのかも知れない…(苦笑。某歌手の人には申し訳ないけれど、だれも行きたがらないのでチケットは無駄になりそうです。くじ引きの景品は、もっとだれにでも楽しめる物にして欲しいなあ。

 気が利かない福引きの景品といえば、妹自身が小学生の時に「与論島旅行」を当てたことがありますが、「お一人様ご招待」だったので父親がひとりで行ってしまったという過去があります。子どもひとり分の旅費くらい出してやればいいのに。けちだなあ。子どもが当てた景品を親がなんの返礼もなく独り占めするか? もとい、フツー、こういう場合は「ペアでご招待」なんじゃないでしょうか。最寄り駅の商店街で、財源に限界があったということなんだろうけど、それならもっと相応な近場にすりゃいいのに。
 そのときの不幸な一件ののち、妹は「自分の生涯くじ運はすべて使い果たされた」のだと信じているらしいです。

 もっとも、いままでウン十年間生きてきて、一度も特等どころか一等すら当てたことがない、私のような人間もいるわけですが。だいたい下から二番目か三番目の賞を当てるのが得意で、一番よくて二等賞。それも大がかりなくじ引きではないことが条件で、もらった景品の一番いいのは二千円の商品券だというたぐい(汗。なんだか私の人生を象徴しているようなくじ運だなあ……。

 だれにも喜ばれない特等を当てて、すでに生涯くじ運の何分の一かを使ってしまったこと確実、な甥っ子のこれからに幸あることを祈ります(笑。

 今野緒雪マリア様がみてる チャオ ソレッラ!(集英社コバルト文庫.2004.205p.419円+税)[Amazon][bk-1]読了。『マリア様がみてる バラエティギフト』のつづき。

マリア様がみてる チャオ ソレッラ!
今野 緒雪 ひびき 玲音

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 ようやく文化祭が読めるのかと思っていたのに、まだまだつづきます、学校行事。それでも話がおもしろければいうことはないのですが……。
 今回は「リリアン女学園の修学旅行はイタリアよ」の巻でした。みごとにそれだけ。
 言い方悪いかも知れないが、ここまでつまらない「マリみて」は初めてでした。ほんとうにイタリアを移動しているだけの話なんだもの。作中に『ローマの休日』の舞台となった場所を訪れて楽しむエピソードがありますが、このお話には「祐巳ちゃんが○○したどこそこを見てみたい」と思わせるようなところがほとんど感じられなかった。祥子様ご所望の「ローマ饅頭もしくはフィレンツェ煎餅」を探してかけずりまわる祐巳ちゃん、とか、読んでみたかったんですけどね〜。途中、由乃さんとロザリオの話とか、ロサ・カニーナとか、元白薔薇の聖様の噂とか、いろいろとエピソードはあるんだけど、いまひとつインターバル的な雰囲気がぬぐえませんでした。もしかしたら、この話は続編にむかって種をまくだけのお話だったのかも知れません。ということで、つづきに期待。

Amazonでサーチ>>「マリア様がみてる」既刊

ウルトラの母とムーミンママ 2004.12.24(金)

 最近、またなかなか寝付かれない状態に入りつつあるのですが、おかげで布団の中でやくたいもないことを考えてしまう時間が増えてます(汗。
 きのうはまた「ウルトラの母の個人名って、なんなんだろう?」という疑問を思いついてしまい、しばらく関連事項に思いをさまよわせることになってしまいました。

 どうして突然ウルトラの母なのか、自分でもさっぱりわからないのですが、疑問はどんどん生まれていきます。
 ウルトラマンはほんとうにウルトラマンという名前なのだろうかとか、ウルトラセブンやウルトラマンエースは英語なのに、どうしてタロウは日本語なんだろうとか。そういえばゾフィーはドイツ語?とか。ウルトラの母という名前の付け方はムーミンママとおんなじだな、とか。そういえばそういう命名方法はアラブにもあるし、北欧にもあるなあとか。そういう、誰かを起点に名前をつける場合では、起点を選ぶのにどういう基準があるんだろう。物語の場合は主人公だけど、現実にはむずかしくないのか、とか。

 書いてみるとじつにとりとめがなくて、しかもくだらなく、ほんとうに馬鹿だなあと思うのだけど、いったん考え出すと止まらないんですよ。しかも、答えは一個も出てこない! それでよけいに眠れなくなって、悪循環です。

 ああ、だれか私の馬鹿な脳みそを止めて。

 毛利志生子風の王国 天の玉座(集英社コバルト文庫.2004.269p.495円+税)[Amazon][bk-1]読了。唐の時代の西域を舞台に、チベットの王に嫁いだ偽公主の愛と成長を描く、歴史ロマンス小説。『風の王国』のつづき。

風の王国 天の玉座
毛利 志生子

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 唐の皇帝李世民の姪でありながら、公主として吐蕃王リジムの元に嫁いだ翠蘭は、若き王と心を確かめ合い、覚悟を決めて王城ツァシューへと赴いた。しかし、来るべき『聖寿大祭』と議会のためリジムは忙しく、翠蘭はひとり異国での慣れない日常に立ち向かわねばならなくなる。また、リジムの亡き前妻との息子ラセルには近づくなと命じられて、心細い思いを抱いていた。そんなおり、大王ソンツェン・ガムポからの使者がツァシューにやってきた。

 少女小説も結婚後を書くようになったのねー、と感慨深かった一冊。

 物の考え方から生活習慣からなにからなにまで違う世界での新しい生活で、翠蘭のとまどいがていねいに描写されていて共感できます。とくに食べ物が口に合わないのがかわいそうでした。かよわそうな朱瓔のほうがさっさとなじんでしまうのは、いかにもというかありがちというかですが、文化風俗に優劣はなく、環境適応能力には個人差がある、ということがわかる描写があるのは、よいことだと思います。それに、翠蘭が失敗だと思っていたことがそうでもなかったりするのもおもしろいし。

 ところで、王宮内の複雑な人間関係でドロドロかと予想した雰囲気はそうでもなくて、メインは吐蕃内での権力抗争というか、政治的な策謀陰謀のたぐいにおかれており、結果として感情的には意外にさらりとした(?)話だったという印象。だって、リジムに色香で接近してきたかにおもわれたジスンの正体が、こんななんですもん。リジムは翠蘭にメロメロだしねえ。この分だと、翠蘭は当分、リジムに命の心配はしても浮気の心配はしなくてもすみそうですね。

 全体的に前作のパワーは感じないけれど、手堅くまとまったお話でした。『聖寿大祭』がもうすこし詳しく描かれていると個人的にはもっと楽しかったのだけれど、そういうひとはごく少数だと思うし(苦笑。ストーリーと舞台装置がどちらかだけ主張しているのではなくて、きちんとバランスがとれているのがいいと思う。
 後味もよかったです。ほのぼのとして。ラセルと翠蘭を取り合うリジムがおかしい(笑。今後はむしろ、歴史家族物語になっていったりして?

Amazonでサーチ>>「風の王国」既刊

 2004.12.20(月)

 橘早月オーバー・ザ・ホライズン 僕は猫と空を行く(メディアワークス電撃文庫.2004.323p.590円+税)[Amazon][bk-1]読了。異世界戦時成長小説?

 かつては飛行機乗りの国として勇名をはせた砂漠の国イェジ。戦争のために疲弊し、軍によってすべてが統制される窮屈な日々で、整備工の若者トウジは飛行機乗りだった父親の形見をたいせつにしていた。十七歳になり育ての親から一人前の男としてみとめられたその日、トウジは隣国の貴族に飼われていたというしゃべる猫と出会う。イワノフと名乗る尊大な猫は、故国に帰還するための足として飛行機乗りを求めていた。ただの整備工であるトウジは、いつかは飛行機乗りになる夢を語るが、実現するあてはない。だが、翌日美少女がかれを訪ねてきた。国境警備隊に来てほしい、そこでパイロットになるための世話をする用意もあると告げる彼女は、トウジの父親の知り合いだという軍人からの遣いだった。

 デビュー前の作品を読んだことのある作家さん(ネットで。かなり楽しませていただいた)は珍しいので、期待して読みました。
 文章に少しばかり力みを感じたのと、もったいなかったなあ、という読後感の残る作品でした。
 もったいないのは、地道な描写で世界設定と人物、しゃべる猫にまである程度のリアリティーを持たせることに成功しておきながら、肝心要のクライマックスで積み上げてきたリアルをぶちこわしてしまう展開になってしまったところ。
 ラストまでを一気に盛り上げるために派手なアクションシーンを持ってくることには異論はないのですが、その行き着いたところには「ええっ、なんで?」という疑問符が飛びかってしまいました。当人達がこの展開に当然な顔をしているのも問題だと思う。前向きなのと無謀なのとは違うのでは。なんだか、それまで読んできた繊細な心の動きやままならない現実といった話とは別の話になってしまったようで、私としてはちょっとがっかり〜なのでした。
 あと、アクションシーンでは、別視点が混ざるときの説明がテンポを滞らせているのも気になった。
 キャラクターの描き方は手際がよいと思います。しゃべる猫イワノフのキャラクターは、たいへん楽しかったです。もうすこし悪役に厚みがあればな。

 おもうに、飛行機というメカ、現実社会にあるものとおなじ存在原則を持つメカを出した時点で、話には大きな制約が課せられるのではないでしょうか。それを重荷としてしまうか魅力とできるかは、作家としての資質に関係しているのではないかと。
 というわけで、世界設定にここまでのリアルを必要としないような舞台設定で、群像劇を書いて欲しいなあと思うのでした。

 (それからこの本、ちょっと誤植が目につきます。間違い方がヘンだったので笑えたけど。)

外出+めった斬りブックガイド既読調査 2004.12.17(金)

 以上、購入。
 ようやく『王の帰還』だ……。

 図書館で本を返却して、いろいろと買い物をして帰宅。デジカメのバッテリーパック(よんせんえん弱也)がふところに非常に痛かった。
 そろそろ年賀状をつくらねばならないのですが、予約してあった〈氷と炎の歌〉が届いたので気もそぞろです(どうでもいいことですが、私、いつも「氷と炎の歌」と逆の順序で思い浮かべてしまうので困ります)。そのほかにも色々と楽しみにしていた本が一度に。年末で時間がないのになあ……。これは私に「年越しなんてサボってしまえ」という天の声なのでしょうか。

 由良さん経由で知った『ライトノベル☆めった斬り! Official Site』より、「めった斬りブックガイド既読調査」をやってみました。

チェックした項目数は、100冊中56冊でした。

* 001 (1977-p121-d),《クラッシャー・ジョウ》高千穂遙(1977〜)
* 002 (1980-p121-d),《クララ白書》《アグネス白書》氷室冴子(1980〜1983)
* 003 (1980-p122-d),《ダーティペア》高千穂遙(1980〜)
* 004 (1981-p123-d),《星へ行く船》新井素子(1981〜1992)
* 005 (1982-p124-d),《キマイラ・吼》夢枕貘(1982〜)
* 006 (1982-p125-e),《銀河英雄伝説》田中芳樹(1982〜1988)
* 007 (1983-p126-c),《トレジャーハンター》菊地秀行(1983〜)
* 008 (1983-p126-e),『少女小説家は死なない』氷室冴子(1983)
* 009 (1984-p128-c),《なんて素敵にジャパネスク》氷室冴子(1984〜1991)
* 010 (1984-p129-c),《丘の家のミッキー》久美沙織(1984〜1988)
* 012 (1986-p131-d),《アルスラーン戦記》田中芳樹(1986〜)
* 013 (1986-p131-b),《ガルディーン》火浦功(1986〜)
* 015 (1987-p133-c),《創竜伝》田中芳樹(1987〜)
* 016 (1988-p134-d),《エフェラ&ジリオラ》ひかわ玲子(1988〜)
* 017 (1988-p135-e),《ロードス島戦記》水野良(1986〜1993)
* 021 (1988-p138-c),《風の大陸》竹河聖(1988〜)
* 023 (1989-p139-c),《ハイスクール・オーラバスター》若木未生(1989〜)
* 024 (1989-p140-a),《フォーチュンクエスト》深沢美潮(1989〜2003)
* 025 (1989-p141-e),『ゆらぎの森のシエラ』菅浩江(1989)
* 026 (1989-p141-c),《破妖の剣》前田珠子(1989〜)
* 029 (1990-p168-b),《炎の蜃気楼》桑原水菜(1990〜2004)
* 031 (1990-p169-e),《星虫》岩本隆雄(1990〜)
* 034 (1991-p172-f),『ヘルメハイネの水晶の塔』井辻朱美(1991)
* 036 (1992-p173-b),《ヴィシュパ・ノール変異譚》水杜明珠(1992〜)
* 037 (1992-p174-c),《十二国記》小野不由美(1992〜)
* 038 (1992-p175-e),『六番目の小夜子』恩田陸(1992)
* 039 (1993-p176-c),《デルフィニア戦記》茅田砂胡(1993〜1998)
* 043 (1993-p180-c),《封殺鬼》霜島ケイ(1993〜)
* 048 (1995-p184-d),《風の白猿神》滝川羊(1995〜)
* 049 (1996-p184-d),《ブラックロッド》古橋秀之(1996〜2000)
* 050 (1996-p185-b),《楽園の魔女たち》樹川さとみ(1996〜2004)
* 051 (1996-p186-c),《星界》森岡浩之(1996〜)
* 052 (1996-p187-d),《電脳天使》彩院忍(1996〜1998)
* 054 (1997-p189-c),《カナリア・ファイル》毛利志生子(1997〜2001)
* 055 (1997-p189-c),《ちょー》野梨原花南(1997〜2003)
* 056 (1997-p190-d),《月の系譜・桜の系譜》金蓮花(1997〜)
* 057 (1997-p191-e),《星のパイロット》笹本祐一(1997〜)
* 058 (1997-p191-c),《西の善き魔女》荻原規子(1997〜1999)
* 059 (1997-p192-f),『天夢航海』谷山由紀(1997)
* 060 (1997-p193-c),《都市》川上稔(1997〜)
* 061 (1998-p193-a),《ブギーポップ》上遠野浩平(1998〜)
* 062 (1998-p194-b),《フルメタル・パニック》賀東招二(1998〜)
* 063 (1998-p195-e),《ペリペティアの福音》秋山完(1998〜1999)
* 064 (1998-p195-d),《マリア様がみてる》今野緒雪(1998〜)
* 067 (1999-p198-e),《EDGE》とみなが貴和(1999〜)
* 070 (1999-p200-c),《スカーレット・ウィザード》茅田砂胡(1999〜2001)
* 071 (1999-p201-c),《流血女神伝》須賀しのぶ(1999〜)
* 075 (2000-p236-b),《キノの旅》時雨沢恵一(2000〜)
* 076 (2000-p237-b),《まるマ》喬林知(2000〜)
* 078 (2000-p238-f),『骨牌使いの鏡』五代ゆう(2000)
* 079 (2000-p239-c),《猫の地球儀》秋山瑞人(2000)
* 083 (2001-p242-c),《イリヤの空、UFOの夏》 秋山瑞人(2001〜2003)
* 089 (2001-p247-e),『失踪HOLIDAY』乙一(2001)
* 092 (2003-p250-d),《マルドゥック・スクランブル》冲方丁(2003)
* 093 (2003-p251-d),《銀盤カレイドスコープ》海原零(2003〜)
* 094 (2003-p251-d),《七姫物語》高野和(2002〜)

 借りたことは借りたけど結局一冊読み切れなかったというものもあるのですが、さすがにそれは入れてません。だいたい半分と言うところですか。当然といえば当然だけど、年々読んでる比率が下がってますね。とくに近年はついて行けてないって気がする……って、べつについて行く必要はないのだけど。
 最後についてる「ライトノベル度」というのの基準を知りたいです。あ、本を買えばわかるのか(苦笑。

 2004.12.16(木)

 今野緒雪マリア様がみてる バラエティギフト(集英社コバルト文庫.2004.199p.419円+税)[Amazon][bk-1]読了。由緒正しいお嬢様学校に通う少女たちのゆれうごく心を描く、シリーズ十六冊目。番外短編集。

マリア様がみてる―バラエティギフト
今野 緒雪

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 薔薇の館に届けられていた包装されたお菓子の箱。それを前・黄薔薇様である江利子からの贈り物としった現・黄薔薇のつぼみ由乃は、お姉さま方の許しも得ずに勝手に開封してしまう。果たして前・黄薔薇様はお菓子になにかを含めたのか、否か――。「バラエティギフト」を枠物語に四つの短編「降誕祭の奇跡」「ショコラとポートレイト」「羊一匹がさく越えて」「毒入りリンゴ」を収録。

 雑誌『Cobalt』に掲載された季節ものなどの短編をあつめたもの。山百合会が直接は出てこない、リリアン女学園ものといった趣の話も入ってます。個人的にはリリアン部外者だった乃梨子ちゃんの回想が一番奇想天外で印象的でした(笑。

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 佐藤賢一カルチェ・ラタン(集英社.2000.437p.1900円+税)(文庫版[Amazon][bk-1])読了。十六世紀パリの大学街カルチェ・ラタンを舞台に、夜警隊長となった弱虫の若者が美貌の天才学僧とともに事件に挑む、ミステリふう歴史小説。

カルチェ・ラタン
佐藤 賢一

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 ドニ・クルパンはパリでは名の知れた水運業者の次男坊。親の威光により夜警隊長に就任したものの部下には相手にされず、“泣き虫ドニ”とよばれた子どもの頃からの弱虫が治らない。行方不明の靴職親方の捜査が暗礁に乗りあげたかれは、大学時代に親にあてがわれた家庭教師として出会った美貌の学僧マギステル・ミシェルに助けを求めるため、パリの大学街カルチェ・ラタンを訪れる。

 テンポのよい語り口で、十六世紀パリの大学街カルチェ・ラタンの猥雑さと熱気とともに、主人公の若者の成長を描く、敷居の低い歴史小説でした。フランシスコ・ザビエルとかイグナティウス・ロ・ヨラとかカルヴァンとか、歴史で習った人物も出てきますが、それぞれキャラクターがかなりはっきりとして漫画的なので、その点も読みやすいというか興味津々です。
 坊さん達がたくさん出てきて、殺人事件があって、異端や神についての議論があったりで、題材からは『薔薇の名前』ばりのどろどろの陰惨な話になってもおかしくないのに、雰囲気的にはかなりあっけらかん。そしてずいぶんと下品……というかおおらかな話だったなあと(苦笑。

 佐藤賢一のこの雰囲気になれるのに、私などはいつも少し時間がかかります。導入部にどん、と事件が起きてくれればそこに目が向くからいいんですが、今回はまず登場人物の紹介から入るので、雰囲気ばかりをいきなりぶちまけられている気がしてしまう。ここいらへんで拒絶反応を抱くひとは、先に進まない方が幸せかと思われます。
 泣き虫ドニのワトソン役に対してホームズを演じる、美しくたくましく頭も切れる、若き学僧マギステル・ミシェルなんか、その過去もふくめて美形キャラとしてもかなりいけそうなのに、いちいち描かれ方が下品なのでいまいち陶酔できない(苦笑。でも、それが深みにはまりそうな題材をかるくしているのかな。
 かれについては、いま思うと、人生の半分は悩みつづけていたはずの、おそらくは自分の存在の根幹に関わるであろう深刻な問題を、どうして公衆の面前であっさりと告白できるんだろうとか、どうしてそのあとカトリックの強硬派の人々によって追求されないのかとか、不思議なところがいくつかあったのだけど、語り口の勢いによってあっというまに踏み越えさせられてしまったような気がします。そのあたりは、素朴な俗人のドニ・クルパンくんを語り手に据えた時点でそんなに突っ込んだ話にはならないのかなあという雰囲気はありましたけど。でも、すこし物足りなかったかも。
 おかげで、小難しいことは考えずにストーリーに没頭して読むことはできました。歴史的な背景を詳しく知るには浅いかも知れませんが、創設時のイエズス会やカルヴァン派の生まれるいきさつなど、なんとなく雰囲気はわかるという感じ。ドニの恋の顛末を含めて最後までたのしく読めました。しかし、個人的にはやはり、マギステル・ミシェルの救済が欲しかったなあと思います。

Amazonでサーチ>>「佐藤賢一」既刊

ラッキーデイ(?) 2004.12.9(木)

 十二月に入ったばかりの頃、お昼の番組で星占いによる十二月の運勢、などというものをみまして、それによると蠍座は十二月は可もなく不可もなく、しいていえばあまり運気はよくなく、一番ラッキーなのは九日、ということでした。いつも占いなんかまったく気にかけないのですが、そのことを覚えていたのは「九日って、次の通院日じゃん。一番ラッキーな日に通院かい。ラッキーもたかがしれてるわ」と思ったせいでした。

 その当日。
 前日まで体調がわるかったので心配していたのが、出かけられるくらいまでは回復していたので一安心したのもつかの間。
 腕時計の電池が切れて、止まっていた。

 代えの時計などもっていないので電池は出先で交換することにして、止まったままの腕時計を締めて家を出る。バスに乗って最寄り駅に到着。ホームに停止していた電車に飛び乗って乗換駅でもすぐに電車に乗れた。今日は接続がうまくいきそうだと喜んでいたのに、乗った電車の中で「踏切事故のため、途中駅から折り返し運転中」のアナウンスが。

 折り返しされたら困るので途中、T線と接続している駅で降りる。T線は滅多に乗らないので勝手がわからない。電車に掲げられている行き先にも覚えがない。でも、降りる駅名だけは超有名なのでわかるはず……とおそるおそる急行に乗ったらば、めったやたらに混み合っていて、押し寿司にされているのかと思うほどぎゅうぎゅうと締め付けられた。混んでいるのに暖房が効いていて汗がだらだら、気分が悪くなりそう。そういえば、隣のおにいさんはドアにうつぶせに伸されて呼吸困難に陥っていたな。かわいそうだったけど、どうしようもなくて黙ってみていた;

 S駅で乗り換えのため降りる。この駅も五年に一回くらいしか利用しないし、それもだいたい電車事故で振り替え運転のときのこと。だから経験値が上がるはずはなく、頭上に出ている案内板を確かめつつ、ふらふらと歩く。実際に迷っているわけではなくても、気分はすでに迷子です。やけに人が多いと思ったら待ち合わせで有名な○公口に出てしまったせいだった。JR線の改札を探し当てるまでにそれほど時間はかからなかったが、精神的にはもうぐったり。

 山○線に乗る。どちら回りかなんて知らないままです。どうせいつかは着くだろう。さらに、ここまで一体どれくらい時間がかかっているのか。腕時計が止まっているのが徒となってさっぱりわからないが、予約時間をオーバーしているかもしれないのに時計を探そうともしない。かなり投げやり気分です。そして、ようやくいつもの駅にたどり着いたのであるが、いつもの駅のどのあたりに出てきたのか、線が違うので見当がつかなくなっていた。つまりまたしても迷子?

 人の流れに乗ってとりあえず地上に出る。すると見覚えのある光景が。H○LCだー。ああ、よかった知ってるところで。そして東口に出てこなくて。気持ちが悪いままだったので昼食をとっている気分ではなく、それからとにかく病院をめざして歩く。歩く。途中でカメラ量販店の時計売り場で電池交換コーナーの場所を確認。しかしそのまま病院まっしぐら。

 結論から言うと、いつもより三十分と遅れずにたどり着いた模様。しかし、そのあと、レントゲン撮影と診療と血液検査をすませるまでに、ただでさえ削られていた体力はどん底に。しかも血液検査では針を神経ど真ん中に刺されて猛烈に痛かったし。
 会計の前にひといきついて、ふと自分の腕時計を見る。ことの始まりはこれだった……とびっくり、なんとうごいてる!

 五時間遅れてたけどうごいている時計を病院の時計で合わせ、一時間後に再び見たら、まだきちんとうごいているので、結局電池は替えずに帰ってきました。
 さらに、途中から振り替え切符で通過したため、帰りの自動改札でカードが警報を発して通り抜けできなかったのを駅員さんが処置してくれたのですが、残高を見たら行きは一駅分しか引かれていなかった。

 はたして、今日はラッキーだったのか、そうでなかったのか。
 ……やっぱりラッキーじゃないと思う。ラッキーな日に何でこんなに疲れるんだ〜。

 傷心をいやすため、以下を購入。

東京物語 1(ハヤカワコミック文庫)
ふくやまけいこ著

出版社 早川書房
発売日 2004.12
価格   ¥ 798(¥ 760)
ISBN   415030775X
[bk1の内容紹介]

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 文庫版『残酷な神が支配する 1』[Amazon][bk-1]とどちらにしようか迷ったのですが、『残酷……』は一巻の内容をだいたい連載で読んでいたし、癒されるという目的から大きく外れてるのでやめた。いずれ読みたい気はあるのだが、また途中で耐えられなくなって逃げてしまうかも、というおそれが多分にあります。

 加納朋子スペース(東京創元社.2004.241p.1700円+税)[Amazon][bk-1]読了。日常にひそむ謎を解き明かす、ほんのりとあたたかいミステリシリーズの三作目。

スペース
加納 朋子

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 大晦日、正月のための買い物を頼まれた駒子は、デパートで警備員のアルバイトをしている瀬尾さんと再会する。そして駒子が瀬尾さんに送った謎は、ひとりの女の子が書きつづった大量の書簡からなっていた。

 『ななつのこ』『魔法飛行』につづく、駒子シリーズの三作目。著者の前書きに「ぜひ三冊をセットで読んで欲しい」というようなことが書いてありまして、私もそうしたいのは山々だったんですが諸処の事情からそれはかなわず、単独で読むことになりました……が、やっぱりつづけて読んだ方がよかったかなあとかなり後悔しております。この一冊だけでも謎はわかるようになってはいるんですけど、私のようにシリーズを読んだことしか覚えていない人間(ほんとうに覚えてなかった。駒子と瀬尾さんの名前を見覚えがあると感じる程度だった;)はほんとうにこの話だけのことしかわからないんで、謎と話の背景にあるはずのいろいろな事情がぜんぜんわからなかったのですね。そして、著者の作品の良さはそうしたところから感じる味わいにあると思うので……なんだか、無性にもったいないことをした気分です。

 だからといってつまらなかったわけではなく、読書好きの女子大生の日常生活のリアリティーあふれる描写にいろいろとにやりとさせていただきました。とくに、ヒロインの提示した手紙の書き手の行動範囲にみょうに覚えのある場所が多くて、こういうことは出不精の私には非常にめずらしいことです。県立図書館のふるびた本の独特なにおいとか、思い出してしまったわ。それにしても、石川町だの桜木町だの一日でよくこんなに歩きまわれるものだ。やはり健康な人は違う。

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カレンダーと人体模型 2004.12.6(月)

 お歳暮を送るために繁華街へ出まして、ついでに来年のカレンダーを買ってきました。最近、もらえるカレンダーが減ってるのでどうしてもいくつかは購入しなければならないのですね。しかし、せっかく金を出して買うというのにあんまり気に入る物がなくて、気に入るとやけにお高くて。欲しかったのは日経から出てる東山魁夷[Amazon]の大判だったんだけど、価格面で折り合わずに却下したのでとたんに投げやりに。もうどうでもいいやと千円以下のを適当に二つ買いました。

 カレンダーを求めて書店から隣の画材屋(カレンダーも売ってた)をながめていたら、人体模型とか手の模型とか売ってるのをみつけて、なんだか欲しくなってしまいました。最近、自分のデッサン力のなさに激しく怒りを覚える機会がありまして(汗。しかし、一体3000円もするんじゃ、やはり見送りですね。一年に数回しかお絵かきしない人間がもっててももったいない(第一、置く場所もない)。二十年前に売ってたら、たぶん迷わず買っただろうが。

 雪乃紗衣彩雲国物語 黄金の約束(角川ビーンズ文庫.2004.219p.438円+税)[Amazon][bk-1]読了。夢をめざしている女の子と、彼女にほれた子犬のような王様と、美形でくせ者ぞろいの臣下たちの中華風異世界ファンタジーシリーズ二作目。『彩雲国物語 はじまりの風は紅く』のつづき。

彩雲国物語―黄金の約束
雪乃 紗衣

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 後宮を去って数ヶ月後。もらった礼金を家の修繕にほぼ使い果たしてふたたび困窮の日々を送っていた秀麗に、臨時の雑用係のお呼びがかかる。王がまともになって一時的に平穏を取り戻した彩雲国であったが、今度は猛暑に見舞われて朝廷は深刻な人手不足に陥っており、さらには茶州からやってくるという山賊の噂もあってなにやら波乱含みらしい。しつこく求愛してくる王には知らせないことを条件に、男装した秀麗が働きはじめたのは、人使いの荒いことで有名な“変人”戸部尚書のもとだった。

 のっけから王様の悪夢で吹き出しそうになって困りました(めずらしく外出先でコーヒー飲みながら読んでたもので)。足下にからみつく、もとあいじんたち……(大爆笑。そこかしこで繰り出される小ネタにわたし、めろめろ(?)です。読んでいてこれほど楽しい話、久しぶりだー。
 前巻で王道シンデレラストーリーをみごとに外してくれたこのシリーズ、じつはキャリアウーマンをめざす相手を見守りつつ、じっくりと愛を育てようとする男の苦闘の物語なのかも……と思います。よほど包容力のあるできた男でないとこういう役回りは務まらないよなあ……。でも、「餌づけされてしまった」王様はほんとにかわいくてとんちんかんで、がんばれーと応援したくなります。かれに思われている秀麗にも嫌みがなくて好感が持てます。
 ただ、朝廷の官吏達はじめ脇役の男性達がみょうに美形揃いなのがネオロマンスのゲームみたいで、一度だけ借りてやってみたときにこっぱずかしさのあまり途中で放り投げた私には少々恥ずかしいのと、話の軸になるはずの陰謀(?)がネタに押しやられてちょっとわかりにくいかな。個性派揃いなので脇役達のかけあいなどは楽しいです。
 なにより文章にリズムがあって読みやすく、しかも品があるのがよいです。ああ、つづきを読みたい……。

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驚き、困惑。 2004.12.3(金)

 本日の驚いたこと。
 バスの中で人が倒れた。
 若い女性が目の前で失神した。彼女はつり革につかまっていたのだが、カーブでぐらりとゆれたあとそのまま腰砕けになって、床に転がったのだった。寸前の顔が見えたのだけど、半眼ですっかり視界はブラックアウトしていた模様。幸い、つぎのバス停は消防署前。彼女はすぐに救急隊員にともなわれて下車していきましたが。
 びっくりしたなあ。
 デパートで、エスカレーターを逆走していく泥棒と鉢合わせしたとき以来の衝撃でした。

 本日の困惑したこと。
 シリーズものの途中を飛ばしてつづきを借りてしまった。
 図書館で到着している予約本を出してもらったら『空ノ鐘の響く惑星で』が入ってて、「わーい」と借りたのはいいんだけど、その後館内で他の本を物色している間に「あれ? これ四巻? でも私、まだ三巻を読んでいないんじゃなかったっけ?」と疑問が浮かび、貸し出しカウンターにひきかえして調べてもらったら、三巻の予約もきっちり入れてあったことが判明。四巻は返却してもう一度予約を入れ直してもらいました。なんだかもったいないけど、すっ飛ばして読んでもしようがないしなー。ちょっと哀しい。

 ダフネ・デュ・モーリア(務台夏子訳)レイチェル(創元推理文庫.2004.502p.1100円+税 Daphne du Maurier "MY COUSIN RACHEL",1951)[Amazon][bk-1]読了。『レベッカ』の作者のミステリーサスペンス。

レイチェル
ダフネ・デュ モーリア Daphne du Maurier 務台 夏子

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 フィリップは幼い頃に両親を失い、年の離れた従兄アンブローズによってひきとられた。アンブローズはコーンウォールの豊かな荘園の領主であったが女嫌いの変人で、フィリップを風変わりなやり方で愛し、育てた。フィリップにとってアンブローズは従兄以上の存在であり、ふたりはとても親密だった。フィリップが成人するとアンブローズは留守を任せ、持病の療養のためにイタリアへと向かった。そこで“従妹のレイチェルさん”と出会い、恋に落ちたアンブローズは、フィリップになんの相談もせずに結婚までしてしまう。嫉妬に身を焼かれるフィリップの元に、とぎれとぎれに送られてくるアンブローズからの幸せな手紙。しかし、その内容は次第に恐ろしいものへと変質してゆくのだった。とるものもとりあえず駆けつけたイタリアの地で、フィリップは衝撃的な事実と対面する。

 じんわりじわじわと深みにはまっていく若者の悲劇の物語。読んでいて、おもしろいのだけどかなり苦しかったので、つい、途中でラストに飛んでしまいました……。ダメです、私。もう読書のストレスにすら耐えられないらしいです。同著者の『レベッカ』を読んだときにはこんなことはなかったのですが(あれは何年前?)。
 女に耐性のないフィリップくんはあっというまにレイチェルさんにコロリ。なにかっちゃ喉の奥で笑う女がそんなに魅力的なのだろうか、という疑問はさておいて、骨の髄まで抜かれたフィリップがふとしたことから疑心暗鬼に陥った、そこからがさらにサスペンスなのですね。思わせぶりでなかなか正体をつかめないレイチェルさんとその周辺。なにを信じてよいのかわからずに右往左往するうちにどんどん感情は追いつめられていく。翻弄される若者のせっぱ詰まった想いがついにたどりつくのが衝撃のラストシーン。ああ、やってしまった、という感じです。救いようのない話だなあ……。
 陰鬱なイングランドのコーンウォールと光と影のイタリアの対比が、定番と思いつつも効いてます。イギリス人にとって、イタリアは手っ取り早く異世界を体験するところ、なのだろうか。

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今年もあとひと月 2004.12.1(水)

 はっと気づいたらもう十二月。師走です。だからなのか、突然に寒くなってあわてふためいてます。やっぱり冬は来るのですね。あんまり暖かい日が続くものだから、もう永遠にこのままなのかもとなんとなく思い始めていた。毎日豆乳を飲むのがつらいです。だからって温めた豆乳なんか、絶対に飲みたくないけど!

 布団を暖かくするのと、パジャマを暖かくするのをどちらか選ぶとしたら、災害なんかを考慮に入れてパジャマにするべきなのだろうかと、ぼんやり考える今日この頃。

 谷瑞恵魔女の結婚 乙女は一角獣(ユニコーン)の宮に(集英社コバルト文庫.2004.273p.514円+税)[Amazon][bk-1]読了。中世ヨーロッパのあちこち(時代も場所も)を行ったり来たりする、巫女と黒魔術師のロマンティック・ファンタジー。シリーズ12作目。 『魔女の結婚 女神の島よ眠れ』のつづき。

魔女の結婚―乙女は一角獣(ユニコーン)の宮に
谷 瑞恵

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 ローマ支配後の小国乱立状態のブリテン島で、女神の島の崩壊を見たエレインとマティアスたちは十六世紀に戻るために浮石宮と呼ばれる遺跡をめざしていた。しかし、黒髪のドルイドと卵色の髪の巫女姫が災いをもたらすという噂と、旅の神官が相次いで殺されるという状況にあって、エレインとマティアスは王国のウーゼルという武将に拘束されてしまう。マティアスを想いながらもかれの言葉を信頼することのできないエレインは、国王の側近であるドルイドに出会い、《流星車輪》の力を悪用させないための方法があると説得される。

 このシリーズも残るところあと一冊だそうです。うーん、長かった、と思うのはエレインとマティアスの恋愛進行速度から感じることで、《流星車輪》と水辺の王関係は着実にハードルを越えてここまでたどりついたもののような気がいたします。いやほんとうに、ここでマティアスの○○が出てくるとは正直予想してなかった。それが唐突に感じられてしまったところはちょっと残念かなあと思います。それと、これだけきちんと構成があるなら、もうすこし物語世界にふくらみがあってもよかったような気がしてしまう。でも、さらりとした作風が著者の持ち味でもあるからなー。あちらを立てればこちらが立たずなのか。
 さらりといえば、この巻のクライマックスはシリーズ中においても相当なクライマックスだと思うんだけど、かなりさらりと流されてましたね。でも、こちらのさらりはわりと余韻があってよかったと感じました。ダイルがいつまでも出張ってきた理由も判明し、かなりすっきり……かどうかはよくわからないが(苦笑。あとはアートの正体と、ステファンとの決着か。かわいそうなのはミシェルですよ。私がいつまでもかれの名前を覚えないのはともかく(宮澤ミシェルを連想するのもともかく)、かれはいつまでエレインの騎士をつづけるのでしょう。

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