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2004年3月のdiary

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2004.3.4 不覚というか間抜けというか/『新鋭艦長、戦乱の海へ 上 英国海軍の雄ジャック・オーブリー』
2004.3.7 月日が経つのは速い/『銀盤カレイドスコープ vol.2 フリー・プログラム:Winner takes all?』
2004.3.8 /『イゾルデの庭』
2004.3.10 /『キーリ 2 砂の上の白い航跡』
2004.3.12 「シービスケット」/『クリスピン』
2004.3.14 オープン戦観戦/『新鋭艦長、戦乱の海へ 下 英国海軍の雄ジャック・オーブリー』
2004.3.16 /『女神の花嫁 前編 流血女神伝』『女神の花嫁 中編 流血女神伝』『女神の花嫁 後編 流血女神伝』
2004.3.18 急転直下/『針は何処(いずこ)に 黄金の拍車』
2004.3.31 三月後半の虚しいわたくし/
三月後半の虚しいわたくし 2004.3.31(水)

 「なんとなく感想が書けない気分」がつづいているうちに、「なんとなく本が読めない気分」に移行してしまった三月後半。
 空白の二週間になにをしていたかというと、

 というぐあいで、かなり非建設的な日々だった。
 最近、おんなじところを一定周期でぐるぐるとまわっている気がするなあ。
 天候も不順だし。体調もあんまりよくないし。
 春だからかなー。そういうことにしておこう。
 と、自分をなぐさめていたら、仕事が入って本気で本が読めなくなってしまいました。目が疲れて。ドライアイのバカ。

 四月になったらもすこし前向きになりたい。……何度おなじことを願ったことだろう。

急転直下 2004.3.18(木)

 生暖かい風が吹き荒れる中、病院へ。いつもより少しだけ早く出たら、いつもより三十分くらいはやく着いてしまった(お腹がまったく空かないのに昼食をとらねばならない哀しさよ)。今回は飲み薬を出してもらわなかったので薬待ち時間も減って、予想外に早めにすべてが終わった。しかしそこで、まだ雨は落ちてきていないし、と少しばかり色気を出したのが私の運命を決したような。
 久しぶりにカメラ量販店をぐるりとめぐってパソコン関連本を眺め、ソフトを眺め、フォントを眺めした後に、やおら目当てのUSBフラッシュメモリを購入。その間、だいたい三十分くらい。その後、帰宅の途に着くために店を出ようとして、唖然。雨が降りだしていたのは、まあ、予報からいっても仕方ないかと思いましたが、なんでこんなに寒いんですか。おーい。

 薄着で出かけていたので、その後かなり悲しい思いを味わうことになりました。駅のホームで電車を待つときとか。バス停でバスを待つときとか。風邪ひき一歩手前でようやく帰宅。

 購入本↓。

 駒崎優針は何処(いずこ)に 黄金の拍車(講談社X文庫ホワイトハート.2003.204p.520円+税)[Amazon][bk-1]読了。十三世紀イングランドを舞台にした若者達の活躍をえがくシリーズ、第三弾。『白い矢』のつづき。

 ストックスブリッジの領主となったリチャードは、前任者の残した借金の精算に日々を費やしていた。そんなある日、リチャードは帰還途中に暴漢に襲われている黒衣の騎士を助けた。騎士はリチャードに礼を言うが名は名乗らない。しかし、人柄はよさそうに思えた。隠密の任務を帯びているのかもしれないと推測したリチャードは、とにかく怪我の手当と一夜の宿を提供したいと申し入れ、騎士もこれを受け入れた。夕食の席で騎士は楽しい客としてふるまったが、翌朝、馬を借りる代わりにと高価なサファイアの指輪だけを残して挨拶もせずに出ていってしまう。困惑するリチャードと城の人々の前に、リチャードの従兄弟ギルフォードがやってきて、小姓のトビーがここに来ていないかと尋ねる。

 トビー誘拐事件。かろうじて残された手がかりは謎の黒騎士の行方を追うことだけ。必死になって弟のような存在を探しまわるリチャードとギルフォードは、わずかな手がかりを求めてあっちうろうろ、こっちうろうろ。黒騎士に関わる裏の出来事にふりまわされたあげく、あまり活躍するところもないという、なんとも徒労感に満ちたお話。
 もとから文章に色気の少ない著者でしたが、最近ことにその傾向が強くなっているように思えます。出来事をたんたんとただ記述していくのはいいけれど、すべてがおんなじ調子だと、いつも似たような場面を読まされているような気持ちになってくる。人物描写には多少の変化や彩りが欲しいなと思ったり。このキャラクターたちには成長というテーマが課せられていないから、仕方ないのかもしれないが。
 精彩を放っていたのは相変わらずのジョナサン・ハワードと、そしてかれの兄。似たもの兄弟ですね……(笑。アンジェラおばあさまご健在で、嬉しかったです。

Amazonでサーチ>>「黄金の拍車」既刊

 2004.3.16(火)

 須賀しのぶ女神の花嫁 前編 流血女神伝(集英社コバルト文庫.2003.246p.476円+税)[Amazon][bk-1]
 須賀しのぶ女神の花嫁 中編 流血女神伝(集英社コバルト文庫.2003.285p.514円+税)[Amazon][bk-1]
 須賀しのぶ女神の花嫁 後編 流血女神伝(集英社コバルト文庫.2004.333p.571円+税)[Amazon][bk-1]読了。大河ロマン小説「流血女神伝」シリーズの外伝。

 流血女神の異名をとる女神ザカリア。大神タイアスの母にして妻なるザカリアはタイアスとの争いに敗れて封印された。ザカリアを信奉するザカール人は虐げられし民となり、岩山の上に築いた集落で女神の復活を待ちつつ、ほそぼそと命脈を保ちつづけてきた。女神の血をひくザカールの長は「女神の娘」を妻とし「神の子」である息子を生ませ、ザカリア女神の血脈を伝えるのが役目。千代目の神の子の誕生が女神復活の約束のときである。そして、九百九十九代目の神の子、次代の長として生まれたのが、ラクリゼだった。子どもが女であることを認められない長は彼女を男と偽って育てるが、それはラクリゼにとっての苦難の人生のはじまりだった。

 後編が出たので待ってましたと一気読みしました。
 ともに孤独な人生を生きることとなるラクリゼとサルベーンの成長と愛と苦悩を、日々の戦いの中に描いてゆく、厳しくて強くて、鮮やかな血のような印象が残る物語。
 本編では謎の存在だったラクリゼですが、特殊な生によって生まれ持った超人的な能力ゆえに苦悩する生身の女性の成長が生々しく描かれて、とても感慨深かったです。サルベーンたら、ただのへたれ君じゃなかったんですね(苦笑。
 本編ではほのめかされていただけの女神の存在感が、百倍くらいパワーアップしていますが、相変わらず、どの登場人物も人間的な厚みを持った存在として描かれていて、物語世界に血が通っています。
 傭兵王ホルセーゼやギウタ皇帝一家など、本編では過去の背景として出てきた部分が詳しく出てきて、本編を読み返したくなりました。ちっちゃいカザリナちゃん、かわいいし。エドの知られざる過去まで出てくるし。地下水道ってあのとき出てきた地下水道かなーとか。ラクリゼをただ見守るアデルカみたいなキャラクターは、ちょっと出来過ぎみたいな気がしますが、ホルセーゼの奥方(?)アリシアさんは存在感抜群。
 全体的にストーリーは走り気味で、もうすこしじっくりと描いて欲しいというところもありましたが、それは一気読みをしたからかも。後編の雰囲気は『砂の覇王』の最後の巻と似ている気がする。
 とにかくハードで情け容赦がなくて、熱い物語。厳しい時代に厳しい生まれを背負って生きぬく人々の、妥協を許さない、許したら生きていけない、そういう人生のお話です。ほんと、弱い人物ってほとんど出てこないんですよねー。この物語を読んでいると、私はこんな世界ではとうてい生きてゆけないよ……と思います。さすが「激動のサバイバル・ファンタジー」です(笑。

 このあと、本編はザカール編となるらしいですが。カリエちゃんはいったい何歳でどうなって登場するんだろう。ラクリゼの弟はどんな人物なのか。ラクリゼの見た夢の通りの展開になるんでしょうか。どきどきです。

Amazonでサーチ>>「流血女神伝」既刊

オープン戦観戦で気になる一曲 2004.3.14(日)

 横浜スタジアムでおこなわれた北海道日本ハムファイターズ×横浜ベイスターズのオープン戦を見てきました。そこで非常に気になったことがひとつ。

 試合は一方的に日本ハムのペースで進みまして、毎回日ハムの選手が活躍し、そのたびにスタンドからは日ハム応援団のよろこびのテーマが流れる、という具合でした。
 何度も聞かされる、日ハム応援団よろこびのテーマ。それが嫌だったというわけではなく、なんだかどこかで聞いたようなメロディーなんですよ。こういうのって気になりだすととまらない。ううー、この旋律はどこで耳にしたんだろう。ずいぶん昔のような気がする。それもこの威勢の良さから行くと、子供番組かアニメのテーマだった可能性が大だ。なんだっけ、なんだっけ。
 日ハム選手が塁に出て、ヒットを打ち、加点してゆくあいだにも、幾度もくり返されるおなじメロディー。私はだんだんイライラしはじめ、しかし、とうとう思い出しました。

 トライダーG7のテーマだ!

 思い出したおかげであとはすっきり、後腐れなく帰宅することができました。
 しかし、昨日、横浜スタジアムの観客でこんなことで悩んでいたのは私くらいのものだろう…。

 蛇足。スタジアムでは「ブルーライト・ヨコハマ」上原多香子バージョンが流れてました。
 新庄くんがお休みだったのが残念。

 パトリック・オブライアン(高橋泰邦訳)新鋭艦長、戦乱の海へ 下 英国海軍の雄ジャック・オーブリー(ハヤカワ文庫NV.2002.367p.720円+税 Patrick O'Brian "MASTER AND COMMANDER",1970)[Amazon][bk-1]を読了。十九世紀のイングランド海軍を舞台にした帆船小説。『新鋭艦長、戦乱の海へ 上 英国海軍の雄ジャック・オーブリー』のつづき。

 腕利きの英国海軍海尉ジャック・オーブリーは焦っていた。同僚の海尉達は着々と昇進し、航海長兼海尉艦長(マスター・アンド・コマンダー)になったものも稀ではないというのに、かれは乗る船もなく無為な日々をメノルカ島のポート・マオンで過ごしていたからだ。ポート・マオン海軍防衛司令官であるハート艦長のパーティーでドクター・マチュリンと諍いを起こしてしまったのもそのイライラのせいだ。だが、その夜、宿に帰るとオーブリーに書簡が届いていた。海尉艦長としてソフィー号へ乗り込むよう命ずる、提督からの手紙だった。ソフィー号はブリックでたいした船ではないかもしれない。しかし、やっと自分の船を任されるときがきたのだ。オーブリーは任務を果たし財産を手にするために勇み立つ。

 敗北しました。この一冊読み切るのにかかった膨大な時間に対して、この話を理解できた度合いの甚だしい低さときたら。お話になりません。私にはこのシリーズを読むための読解力がありませんです。しみじみと感じました。
 帆船の構造がわからないという前巻で悟った敗因の他、そのわからない構造によって生みだされる出来事を極力無駄を省いた言葉で正確に描きだす、作者の文章の緻密さにも参った。描写といっても形容詞がつらなるような感覚的なものじゃなくて、ほんとうに起きていることだけ、書いてある。でも説明はまったくない。描写の文章でこんなに手こずったのは初めてだ。きっとこの作者は絶対に必要だと判断したことしか書きたくないんだろう。客観的な三人称の視点なのに、外側から傍観しているとわけが分からなくなる。海戦のようすが詳細に描かれていたかと思うと、いつのまにかあれっと思うほど時間が進んでいたり。読んでいる間中、大海原に翻弄される木の葉のような気分でした。
 教訓。わからない世界の話に門外漢を引き込むためには、多少なりとも説明が必要です。

 そういう、半ば朦朧とした読書のあいだになんとか読みとった話は、巨漢の海尉艦長、出世欲と財産欲をたっぷりと持ったオーブリーが偶然知り合った内科医スティーブン・マチュリンとおなじソフィー号に乗り込む。優秀な副長ジェームズ・ディロンとの確執、ソフィー号乗組員の信頼を得るまでの道のり、華々しい活躍。しかし、社会的に不器用なため海軍内では不遇なまま、苦労の多く得るもの少ない任務に就かされて、しまいには船を失ってしまう――というもの。
 書きだしてみると失礼ながらけっこうありきたりな話なんですが。しかし、この文章を隅々まで理解して読めば、リアリズムで描きだされる海の男の世界がくっきりと浮かび上がってくるのでしょう。甘さのない展開は重要な登場人物と読み手が目していた人物すらあっさりと退場させてしまいます。この話を読んでいてもっとも「ええっ、ここでこうなるの」と思ったのはけっこうひいきにしていたジェームズ・ディロン副長の運命でした。
 それから個人的にはドクター・マチュリンも好きでした。楽しいんだもん、この御方。確固とした医師としてのプライドを持ちながら、博物学に夢中で海戦中にコレクションを気にかけたりするところがかわいいです(笑。

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「シービスケット」 2004.3.12(金)

 上映が今日までと気がついて、大慌てで『シービスケット』を見に行く。映画館はものすごく混んでいたが、目当てのところだけが別世界のように静かだった。

 映画については、競馬映画だからあたりまえですが、馬がたくさんでてきてそれだけで嬉しい。始まってからしばらく人物の見分けがつかなかった(洋画はいつもこれ;)ためにかなり長いこと話が理解できないままに過ごしてしまいまして、なかなか物語に入り込めませんでしたが、シービスケットが登場してレースに入ってからはけっこう楽しかったです。恵まれないスタートを切った馬と人が栄冠を勝ち取った後に挫折を味わうが、努力の後にふたたび復活する。そこにアメリカの大恐慌という時代背景がオーバーラップする。そういうお話です。騎手役のトビー・マグワイアがものすごく痩せていて、以前の姿が思い出せないくらいだった。落馬のシーンは痛くて見てられなかった。レースのシーンは迫力。疾走する馬はかっこいいなー、としみじみ感じる映画でした。レース場より自然の中を走っている姿が好きだ。

 ところで、映画館の混雑の原因は、やはり本日最終だった『ゴシカ』のためだった模様。『王の帰還』よりも行列が長かったです。

 以上、書き忘れていた分含めて購入本。二月我慢した分、はじけてしまった(苦笑。
 とうとう買っちゃいました、指輪の文庫新版。あんまり文字は大きくないんですね……たしかに古い版よりは大きいが。先日観たばかりの『王の帰還』からにしようかとも思ったけど、やっぱり物語は最初から味わうべきだと思うの。積み上げていったあげくのクライマックスが好きなのよ、私。だからやっぱり一巻からにしちゃいました>何げに私信。
 『「中つ国」のうた』は、アラン・リーの絵に捕まった。
 しかし、今回の一番はずばり、『のだめカンタービレ』です。もう五回も読み返しちゃったよ。「千秋にカニを貢がせる」、コンクルの鬼火のだめがサイコー。

 つい先日リニューアル開店した本屋に行ったのですが、またもフロアで迷った(以前とぜんぜん配置が違うぞ)。

 アヴィ(金原瑞人訳)クリスピン(求龍堂.2003.310p.1200円+税 Avi "CRISPIN:THE CROSS OF LEAD",2002)[Amazon][bk-1]読了。アメリカ人作家の2003年ニューベリー賞大賞受賞作品。

 1377年イングランド。ストロームフォード村に住む小作農の十三歳の少年は、母親にただ「息子」と呼ばれ、村人達には母親の名前から「アスタの息子」と呼ばれていた。父親は黒死病によって死んだという。母親の死により天涯孤独になってしまった少年は、衝撃のあまり葬儀の後で森の中に迷い込み、眠ってしまった。真夜中、目覚めた少年は、荘園主の執事であるエイクリフが見知らぬ男と隠れて会っている姿を目撃してしまう。その場で殺されそうになった少年はなんとか逃げだすことに成功したが、翌日教会へ行くと、唯一親身になってくれる神父から自分が身の覚えのない罪を着せられて賞金首にされたことを聞かされ、村から出て逃げろと助言される。

 図書館の新着棚にあったのを凝った装丁に惹かれて借りてきた本。
 装画は加藤俊章。タロットカードみたいな栞まで入ってる。そこで私は中世の光と闇に幻想の香りを期待して読みはじめたのですが……、はっきりきっぱり裏切られました(笑。
 物語は中世イングランドのリアリティーに満ち満ちております(個人的に細かい描写がものすごく楽しい)が、幻想はナシです。むしろ少年が主人公のミステリ仕立ての冒険もの。求めるものは自由、といった健康的な現実指向の話だった。やっぱり作者がアメリカ人だからかな。「修道士カドフェル」の児童書版といったらいいのか。とっても面白かったんですが、最初の期待が期待だっただけに、そこはかとなく裏切られたような気が。装画が繊細すぎるんだよー。この表紙を見たら美少年が云々する話みたいじゃん>やつあたり(笑)。

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 2004.3.10(水)

 肩が痛いです。本を読んでると、腕が痺れる(本の重みで。文庫なのに)。

 壁井ユカコキーリ 2 砂の上の白い航跡(メディアワークス電撃文庫.2003.325p.570円+税)[Amazon][bk-1]読了。遠未来SFファンタジーシリーズの二冊め。『キーリ 死者たちは荒野に眠る』のつづき。

 十四歳の少女キーリには、霊が見える。大戦争の後の荒廃した惑星で、心臓の代わりに核を埋め込まれた〈不死人〉ハーヴェイと、ラジオに宿った幽霊・兵長と旅をするキーリは、〈砂の海〉を渡る客船〈砂もぐらの七番目の息子〉号に乗ることになる。

 もういない人間といま生きている人間とがおなじだけの存在感を持っている不思議な世界。もういない人間の過去と、生きている人間の現実とが交差する幻想的な物語。
 今回はキーリの過去がほんの少し明らかになる連作。過去の謎と現在の危機がからみあって進むストーリー。淡々と進む文章でさりげなく描かれる、キーリとハーヴェイとのつかず離れずの関係が心地よいです。

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 2004.3.8(月)

 伊神貴世イゾルデの庭(白泉社My文庫.2002.373p.752円+税)[Amazon][bk-1]読了。「トリスタンとイゾルデ」を下敷きにした幻想的な雰囲気のミステリー。

 第二次世界大戦中、私、深大寺耕助は従軍した先で外国人から奇妙な匣を買わされた。戦争末期を南洋の島で迎えた私は、絶望的な状況で生きることを願い、匣に封印されていたそれ――人喰い悪魔としかいいようのないもの――を呼び覚ましてしまう。戦死した親友若槻馨の肉体に入り込んだ「悪魔」自称タンゴは、若槻を装って暮らしはじめ、私はかれが存在をつづけるために必要な食糧(つまり人間)を調達しなければならなくなった。私がかれを居るべき世界に戻す約束を果たせなかったため――入り口でもあった匣を失ってしまったからである。匣を取り戻すためにタンゴは骨董屋を始めることになり、最初の仕事として若槻のかつての恩師の家を尋ねることになった。周囲とはそぐわない洋風建築の屋敷に、見事な貴婦人の図柄のステンドグラス。及川邸には独特な雰囲気が漂っていた。

 図書館のヤングアダルト棚で見つけた本。たしか、ずいぶん前にネットのどこかで書名を見かけたのが頭に残っていたので、借りてみました。
 雰囲気としては、講談社系。篠田真由美に少し似ているけど幾分あっさりとしていて、しつこくない感じ。人物関係がトリスタンとイゾルデの伝説に絡めてあるからか、奇怪な洋館で起きる愛憎事件というわりにはどろどろした生々しさがなくて、しかし筆致が落ちついていて大人っぽいせいか、底が浅いと感じるところもなくて、読みやすかったです。(及川家の男達の性癖にはかなりウッときましたが。)第七回創元推理短編賞、佳作入選、という著者の経歴になるほど、と思いました。「私」とタンゴの関係がなければ、普通の推理ものですね。枠組みの方が魅力的なので、シリーズになれば面白いんじゃないかなあと思いました。

 ところで。こんなレーベルがあったんですねえ。もう最近はいろんなレーベルがありすぎて、把握困難な状況です。白泉社の以前出していたノベルズは文庫化されないのかなあ。

月日が経つのは速い 2004.3.7(日)

 最近、有里さんが石けんシャンプーの体験を書いてらっしゃるのを見て、そういえば私がネットで最初にはまったのは「石けん情報漁りだった」なーと思い出しました。
 あれはまだベイスターズが優勝する以前のこと。ダイアルアップ、288、しかも週一回しか接続できない環境で、あちこちリンクをたどっていっては虱潰しにしたものです(ブラウザはネットスケープナビゲーター2)。そのころ回ったサイトへのブックマークも何度かあったマシン交換やクラッシュのせいでほとんど消えてなくなりましたが、唯一リンク集が充実しているからと残しておいたサイトを久しぶりに尋ねてみたら、更新が止まってもう一年以上も経っておいででした。リンク集の中身もずいぶん古びてしまい、リンク切れも散見され。ネットの新陳代謝は速い。以前から速いと思ってはいたけれど、六年以上経ったらもう、太古の昔ですな。

 ところで私の石けん生活は、世間での隆盛と反比例するように熱がしぼみ(苦笑)、現在は石けんでの洗髪(石けんシャンプー液ではなく、固形石けんで洗う)とお酢リンス、無添加クリームでのお肌の保湿が痕跡として残っているだけ。手作り石けんに憧れたこともありましたが、独力でつくる体力がない(普通の体力があれば作れると思うんだけど、私は並はずれて体力ナシなんで)ので断念。やっぱり生活一般を牛耳る権限を持ってないと、こういうのは長続きさせられないです。私が根性なしなのが大きな一因であるのはたしかだが。

 海原零銀盤カレイドスコープ vol.2 フリー・プログラム:Winner takes all?(集英社スーパーダッシュ文庫.2003.286p.571円+税)[Amazon][bk-1]読了。自分にとりついた少年幽霊とともにフィギュアスケートでオリンピックをめざす少女の成長物語。『銀盤カレイドスコープ vol.1』のつづき。

 美少女スケーター桜野タズサは、起死回生をかけて挑んだ新プログラムを成功させて五輪代表の座を手に入れる。しかし、勝ち気な上に超・減らず口が災いしてマスコミを敵に回し、すっかり悪役としての評判が定着してしまった。日本中からバッシングされる毎日を、タズサは五輪へむけての練習に没頭することできりぬけてゆく。リンクにはつねに彼女をなごませ励ましてくれる、幽霊ピート・パンプスが一緒だった。

 息抜き読書。ラブストーリーとしては大いに物足りないですが、少女の成長もの+フィギュアスケートものとしては、けっこう楽しんで読めた一冊でした。vol.1の冒頭こそ上滑りな印象を受けた文章にも、ずいぶん馴染んできたようで。タズサの減らず口と五輪の競技シーンはなかなか楽しかった。競技関係はもっと手に汗握る展開でもいいかなあと思ったりしましたが、この話で競争相手とのかけひきよりピートとのやりとりをとるのは当然です。だからもっと恋を盛り上げてもよかったんじゃないかと思うのは、少女小説読みの無い物ねだりか。
 これで完結かと思っていたのですが、なんかつづきがあるみたいですね…。どういう話になるのだろう。

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不覚というか間抜けというか 2004.3.4(木)

 夕食後、歯を磨いていたら、突然喉がつまりまして、思いっきりえづいてしまいました。
 そんで……つまり、戻してしまったのですが。
 そのとき、ぎょっとなったのは食べたばかりの夕食のことではなく、飲んだばかりの痛み止め薬のことでした。タイミングからいって、一緒に出してしまった確率はかなり高いはずなのですが、小間物を目を皿のようにして眺めてみても、らしき固形物が発見できない……。
 もう一度、飲むべきか、否か。
 風呂に入っている間中悩みつづけました。
 『エースをねらえ!』を見ながらまだ悩んでましたが、その間もそれほど体に変調はないようす。
 これは……もしかして、大丈夫なのか?
 食後の薬を飲むためにはまた何かを口にしなければならず、それが嫌で逡巡していた私は、一晩くらい目をつむってくれと祈りつつ(>誰に向かって?)、薬は飲まずに寝ることにしました。
 その後どうなったかは、また別のお話。

 パトリック・オブライアン(高橋泰邦訳)新鋭艦長、戦乱の海へ 上 英国海軍の雄ジャック・オーブリー(ハヤカワ文庫NV.2002.328p.720円+税 Patrick O'Brian "MASTER AND COMMANDER",1970)[Amazon][bk-1]を読了。十八世紀〜十九世紀にかけてのイングランド海軍を舞台にした帆船小説。

 うがー。進まない〜。ずーっと読んでいたんですが、毎日読んでいたんですが、進みません〜。数日かかってようやく上巻の終わりがやってきた……。
 話はですね、けっこう面白いんですよ。海軍が海賊とそれほど変わらなかった時代の、荒っぽい男たちの話です。途中で読むのをやめたいとは思いませんでした。しかし、進まない。
 思うに、進まない一番の原因は、私が帆船の構造をまったく分かっていないところにあるようです。専門用語がばしばし出てくるのをぼんやりと追っているだけでは、登場人物が何をしているのかを脳裏に描けず、お話が感覚としてわからないのです。一番の読みどころである海戦のシーンが一番専門用語だらけのところなので、苦心惨憺しています。帆船ものは好きなんだけど、一度離れて忘れてしまうと世界に馴染むまでが一苦労です。映画で見た方が、きっと楽だ。
 かつて読んだはずの、「ホーンブロワー」シリーズの内容をほとんど覚えていない原因もこのあたりにあるのかも。
 読んでる途中で巻頭についてる船の概念図を参照するようになったら、ようやくぼんやりと視界がひらけてきた感じです。ところで、この図、なんと訳者の方のお手製のようです。
 ぜんぜん感想になってませんが、話自体については下巻を読んでからということで(汗。

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