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2005.1.4 あけましておめでとうございます/『王狼たちの戦旗 上 氷と炎の歌2』
2005.1.6 うう、寒/『風の王国 女王の谷』
2005.1.10 /『王狼たちの戦旗 下 氷と炎の歌2』
2005.1.13 /『星界の戦旗 4 軋む時空』
2005.1.16 ホーンブロワー/『彩雲国物語 花は紫宮に咲く』
2005.1.18 うわ、やばい/『カオス レギオン 05 聖魔飛翔篇』
2005.1.20 /『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 3』『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 4』
2005.1.23 /『終の神話・地号の章 封殺鬼シリーズ27』
2005.1.26 『ターミナル』/『いにしえの残照 月光界秘譚4』
2005.1.28 /『銃姫 1 〜Gun Princess The Majesty〜』
2005.1.29 /『魔の都の二剣士 ファファード&グレイ・マウザー1』
2005.1.31 /『詩人(うたびと)たちの旅 デイルマーク王国史1』
逃避行動 2005.1.31(月)

 PMSで気力低下中。こういうときにしきりとやりたくなるのが、サイト構成の見直し。イライラしているので更新作業も面倒になり、もっと気楽に更新できるようにならんもんかと気持ちが爆発するというわけ。
 前回はその流れでnicky!設置を試みましたが、ログがフォルダ内にバラバラと生成されるのがなんとなく気に入らないのと、リストがつくりにくいので頓挫。
 今回はrNoteに手を出してみましたが、簡単に更新という最初の目標が達成できないことに設置後に気づいて、また放置になりそうな気配。集中力がないのでやることすべて見込み発車となり、別途対策を講じないとオンライン更新ができないことに気づかなかったのです。そして、私のスキルではその対策が実現できなかったわけです。
 あーあ。
 けっきょく、一番簡単なのはこうしてhtmlに直接書くことなんだよなあ……。楽をしようとするのもいろいろと大変です。

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(田村美佐子訳)詩人(うたびと)たちの旅 デイルマーク王国史1(創元推理文庫.2004.286p.660円+税 Diana Wynne Jones "CART AND CWIDDER",1975)[Amazon][bk-1]読了。少年の成長を家族の危機とふしぎな楽器を通して描く。異世界ファンタジー「デイルマーク王国史」シリーズの一作目。

詩人(うたびと)たちの旅―デイルマーク王国史〈1〉

 自由な気風の北部ときびしい身分制度の南部とが敵対しているデイルマークでは、その行き来に厳しい制限が課されていた。楽器を携え、音楽とともに旅をつづける吟遊詩人クレネンの一家は、北と南の双方に手紙や知らせを運び、ひとびとに社会情勢をつたえる役割も果たしていた。家族は一見こともなく日々を過ごしていたが、次男のモリルはいつもぼんやりとしてクィダーの練習にも身が入らずにいた。母親の決めた衣装が赤毛にまったく似合わず派手すぎるのも、悩みの種だ。ある日、北へむかうクレネンの一行にはひとりの少年が加わった。クレネンの子どもたちはキアランという名の少年にあきらかな敵意をいだき、馬車の旅は気詰まりなものになるが……。

 言葉巧みにひとびとの心をつかむ吟遊詩人の父親と、無口で無表情だが芯の強い母親。ふたりの個性をそれぞれに受け継ぎながらもひとりひとり違う三人のきょうだいたち。きびしい社会統制におかれている南部で、監視の眼をくぐり抜けるようにして活動していた一家にふりかかった最悪の事態。とつぜん現実という名の世界にほうりだされた子ども達の、さまざまな苦難を乗り越えて成長する過程を、皮肉に満ちたユーモアたっぷりに描いた音楽ファンタジー。
 同著者の他の作品に比べるとストーリー運びが素直で、とてもよみやすかったです。吟遊詩人の伝説や、その吟遊詩人から伝えらたものだという力を持った楽器、資質はあれども自覚はなしの主人公といった、定番にちかい設定もなじみやすさの原因か。
 しかし、やっぱりDWJだと思うのは、登場人物それぞれにとても癖があり、家族ものとしてはぶっとんだ展開が待っていたところ。読み手が期待し、主人公が認識していた家族像を破壊してゆく驚愕の転換点が、主人公が親の庇護を抜け出して現実と対峙するという、成長のための大切な一過程となっているところが心憎いです。
 そして、これは音楽ファンタジーです。音楽の、ひとびとの心をうごかす力がいきいきと描き出されていて、とても楽しい。クライマックスで伝説の詩人オスファロメンのクィダーを受け継いだモリルが、音によってつくりだすスペクタクルに感動しました。
 馬車の旅の日常と、音楽の神秘。すてきなお話だったと思います。

Amazonでサーチ>>「デイルマーク王国史」既刊

 2005.1.29(土)

 フリッツ・ライバー(浅倉久志訳)魔の都の二剣士 ファファード&グレイ・マウザー1(創元推理文庫.2004.295p.580円+税 Fritz Leiber "SWORDS AND DEVILTRY",1970)[Amazon][bk-1]読了。金髪大男のファファード、魔法使いの弟子だったグレイ・マウザー、コンビヒーローのヒロイック・ファンタジーシリーズ、開幕編。定訳版。中短編を三編収録。

魔の都の二剣士 <ファファード&グレイ・マウザー1>

 以前にも書きましたが、途中で翻訳が止まっていたシリーズの、定訳版になって再刊行されているもの。ヒロイックファンタジーのふたりヒーローものとしては草分け的なシリーズなんだそうです。ジャンルの歴史には疎いので、そういうことは意識せずに読んでました。
 この巻は、ファファードが故郷を飛び出したいきさつ(「雪の女」)、グレイ・マウザーが魔法使いの修行をやめたいきさつ(「灰色の魔術」)があって、最後にふたりの出会い(「凶運の都ランクマー」)が描かれるという、まさに開幕編です。

 読み返してみて、私がこのシリーズに感じていた魅力というのは、主役がふたりというのももちろんなんですが、不思議な出来事への距離感だったのかなと思いました。異様な出来事を目に見えるがごとく鮮やかに描いていくのですが、文章に突き放したような印象がある。暖かみのなさ親しみのなさが、かえって幻想的な雰囲気を高めているというか。たしかに感情移入はしにくいんだけど、この話は感情的に共感したり翻弄してもらったりするものじゃなくて、異様な出来事を「こんなことがありました」と伝え聞くようなものなんじゃないかと思うので。
 というわけで、不思議な出来事をちょっとふるめの雰囲気で読みたいときにちょうどいい本じゃないかと、私は思います。長編じゃないのも、息切れせずに読めて嬉しいところ。
 個人的にはマウザーの過去の話「灰色の魔術」がいちばん面白かったです。魔法使いの庵の描写がとくにお気に入り(それが無惨な焼け跡であっても;)。

Amazonでサーチ>>「ファファード&グレイ・マウザー」既刊

 2005.1.28(金)

 高殿円銃姫 1 〜Gun Princess The Majesty〜(メディアファクトリーMF文庫J.2004.295p.580円+税)[Amazon][bk-1]読了。魔法を銃で発動する、異世界ファンタジーシリーズ、開幕編。

銃姫〈1〉Gun Princess The Majesty

 太古の昔、人間は魔法の力を自分で発動させる力を持っていた。しかし、数百年前に起きた大戦以降、その力は神によって奪われ、人間達はかわりに魔力を浸透させた銀を弾丸として放つ火器を使うようになった。銃や大砲によって武装する魔法使いは魔銃士(クロンゼーター)と呼ばれ、ひとびとに恐れられている。十四才のセドリックとアンブーロシアも、幼いながらその一員であった。セドリックの姉でシスター見習いのエルウィングとともに旅をする三人は、銃姫と呼ばれるとてつもない破壊力を秘めた伝説の銃の行方を追っていた。

 あちこちのサイトで書名を見たのを思いだして借りてみた本です。けっこう面白かったので得した気分。
 最初、いかにも萌えを意識したキャラクター造形(素直じゃないスレンダー亡国王女、資質だけは高い素直なシスコン少年、天然音痴巨乳シスター少年の姉)にかなり不安を覚えたのですが、文章のテンポの良さと描写の切れ味にそれは払拭されました。ところどころ、ちょっと危なっかしいかなと感じる表現もあるんですが、生きがいいのであまり気になりません。
 目新しいとはいえないけれど、読んでいて面白いと思える描写というか、話運びなのですね。まだ幼い主要人物ふたりの成長ものとしても、お約束だけど期待を外さない展開。わりと人間描写はシビアです。ひとつだけ、私にはギャグをむりやり書いてるように思えて、それがなければもっと自然に読めたのではと。
 設定はちょっとフクザツというか、魔法を発動するのにどうして銃なのという感覚的な疑問は残るけど、とりあえずアクションシーンがかっこいいので許します。
 物語世界の雰囲気としては『鋼の錬金術師』に近いような気がします。というか、その路線を狙ったのかもしれないですね。「鉄の文明」の時代――つまり産業革命が起こった後の世界には、剣と魔法の世界の天真爛漫さとは違う、精神的な翳りみたいなものが生まれたような気がするんですが、この話もまさにそんな感じ。魔法が人間のおろかさを映し出す武器であるってところが、魔法にひとの手のとどかないものを象徴させる幻想物語とちがうのかも。うーん、このあたりの話はまだ考え足りないのでこの辺でやめておきます。
 とりあえず、暗めのシリアス成長ものにキャラ萌えのギャグがくっついた話、でしょうか。おもしろかったので、つづきも借ります。

Amazonでサーチ>>『銃姫』既刊

『ターミナル』 2005.1.26(水)

 月曜日にタダ券消費に映画に行って、ついでに気になる『残酷……』のつづきを買ってきました。
 映画は、そこそこ楽しめました。トム・ハンクス主演のヒューマンコメディー。ただ、最近ストーリーの流れとテンポを異常に気にする精神状態になっているため、二時間という時間はすこし長すぎるように感じられました。もっと切りつめてもよかったんじゃないかとか。つまらないシーンがある訳じゃないのに、なぜだかだれてくるんですよね。楽しいエピソードでもやりすぎると逆効果ということか。

 麻城ゆういにしえの残照 月光界秘譚4(新書館ウィングス文庫.2002.246p.543円+税)[Amazon][bk-1]読了。界渡りファンタジー「月光界」シリーズの一冊で「月光界秘譚」の完結編。『滅びの道標 月光界秘譚3』のつづき。

いにしえの残照(新書館ウィングス文庫)
麻城ゆう著

出版社 新書館
発売日 2002.09
価格 ¥ 620(¥ 590)
ISBN 4403540554

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 太陽よりも月の光のほうが強く、月光を糧にする生き物たちが生息する月光界。しかし古代のいいつたえによると、月ではなく太陽が大空に君臨していたこともあったという。ジョーロウの主宰代行は、陽光魔道により月の力が弱める政策を国の外にまで推し進めようとしていた。その背後にはジョーロウの副主宰であるショッキング・ブルーを仇とつけねらう、妖魔の長、暗黒丸の思惑があった。ジョーロウの滅びの予言を受けて、ショッキング・ブルーたちは呪器により古代の太陽を召還しようとする儀式を阻止するために行動する。

 出ていたことを忘れてました、第二弾。
 これだけ遠ざかっていても話の背景がすらすらと理解できるのはすごいなと、素直に感心します。とにかく、説明がていねい、というか多い。世界設定にも物語の経過にも、まったくとまどうことはありません。
 しかしです。登場人物の人間的なドラマのほうは、はっきりいってほとんど思い出せませんでした。かろうじて、暗黒丸がショッキング・ブルーを仇と思っていることだけは思い出せたけど、緑魔なんかは、なんでここにいるんですか、状態(汗。普通の話だと、キャラクターの人となりやこれまでの状況のほうが印象つよくて、世界設定なんか忘れました、となる方が多いのですが、この著者の場合はみごとに逆です。連作短編であるために、余計に説明が多くなるということもあるかもしれませんが、月光界という世界のほうが、そこに住んでいる人間(+妖魔)よりも存在感がある。なんか、月光界に生きるキャラクターを描いているというより、月光界の変遷を追うためにそれに関わるキャラクターのうごきを描いているという印象なんですね。最初の頃は月光界の設定がユニークなこともあって、説明ばかりでもおもしろかったんですけど、最近ちょっともたれ気味かもしれない。情の部分が少なくて、理が勝っているというか。話に感情を移入するのがむずかしくて、傍観者気分で読んでしまうんですよね。そのため余計に人物が印象に残らないらしい。もうすこし人物の感情描写が濃くなってくれる私としては読みやすいと思うんだけど、著者の持ち味はあっさりなのだろうなとも感じます。

 ということで、このシリーズはここでいったん完結して、ストーリー的には角川の「月光界シリーズ」につながるそうです。しかし、この騒動で生きのびた人たちを中心に据えた話がまたあらたなシリーズとして控えているらしい。きっとそれが『月光界・逢魔が時の聖地』なんだろうなー。つづきは読もうか読むまいか、とりあえず検討中。

Amazonでサーチ>>「麻城ゆう」既刊

 2005.1.23(日)

 霜島ケイ終の神話・地号の章 封殺鬼シリーズ27(小学館キャンバス文庫.2004.263p.543円+税)[Amazon][bk-1]読了。『終の神話・天泣の章 封殺鬼シリーズ26』のつづき。

終の神話・地号の章(小学館キャンバス文庫)
霜島ケイ著

出版社 小学館
発売日 2004.04
価格 ¥ 570(¥ 543)
ISBN 4094305777

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 本家と中央の亀裂は決定的なものとなったが、崩壊しかけた本家の信頼関係は修復され、跡取り達はそれぞれに決意を固めた。柿色の異形の正体が明らかになり、羅ごうによって引き起こされる災厄を阻止するため、本家と鬼たちは決死の行動を開始する。

 出たことを忘れていました……(汗。というわけで大変に久しぶりに続きを読みました。作者も後書きで書いておいでですが、なかなか話が進みませんね。今回は柿色の異形と羅ごうの関係を整理するためにかなりの枚数が費やされておりました。複雑な状況を無理なく自然に説明するのって大変ですねえ。あいだに挟まる小ネタは楽しいです。
 で、ようやく作戦が開始されるわけですが。無外の細目のひとって、どこまでいってもこうなの? と思いかけた矢先の意外な展開に言葉を失いました。さらにつらさを増す鬼たちの境遇に、クライマックスでの解放を願います。でもまだつづきは出ていないのか……。

Amazonでサーチ>>「封殺鬼シリーズ」既刊

 2005.1.20(木)

 渡瀬草一郎空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 3(メディアワークス電撃文庫.2004.319p.590円+税)[Amazon][bk-1]
 渡瀬草一郎空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 4(メディアワークス電撃文庫.2004.307p.570円+税)[Amazon][bk-1]読了。SFファンタジーシリーズの三巻と四巻。『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 2』のつづき。

空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 3(電撃文庫 0934)
渡瀬草一郎〔著〕

出版社 メディアワークス
発売日 2004.05
価格 ¥ 620(¥ 590)
ISBN 4840226865

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 御柱(ピラー)と呼ばれる巨大な柱を祀る神殿が大きな権力を持つ世界。
 御柱からあらわれた来訪者(ビジター)によって国王と皇太子を殺害されたアルセイフ王国では、第二王子のレージクが強引に実権を掌握し、邪魔者とされた政府の実力者たちはことごとく暗殺の汚名を着せられて捕縛された。同様に追われる身となった第四王子フェリオは、外務卿ラシアン・ロームからレージクが隣国タートムと内通していることを知らされ、自国を売ろうとする兄と対決する意志を固める。かれはいったん王都から出奔したと見せかけて王宮に忍び込み、とらえられた王宮騎士団団長と内務卿を救出しようとする。

 息をつかせぬスピーディーな物語と同時に、次第に明らかになる物語世界の勢力図が興味深い展開でした。
 レージクへの対抗勢力の旗頭となるべき王子様としては、フェリオの行為はかなり無謀と思われましたが……(苦笑。動乱を描くストーリーにおいて、つねに主人公を中心に据えて物語をうごかすのもいろいろと大変かもしれません。とはいえ、フェリオくんはしだいに埋没しかけていた資質を発揮して、周囲にその存在を強烈にアピールしはじめましたね。自分のなすべきことにつねに迷いを抱いていたかれが目標を得て輝きはじめたことで、物語はますますおもしろさを増した感じ。けれど、天然朴念仁ぶりはあいかわらずだったです(苦笑。
 これまでも感心していた戦闘シーンの切れ味鋭い描写にくわえ、今回は戦争のシーンも本格的になり、これもかなりおもしろかったです。
 大がかりなうごきが描かれると同時に、いままでわからなかった登場人物の内面があきらかに。その強烈な壊れっぷりで悪を印象づけてきた第二王子レージクは、それなりにいろいろとあってただお馬鹿なわけではなかったのねーと印象づけられました。もうすこし悪あがきするかと思ったのですが……。そういえば、レージクを上回る破滅キャラかと推測していたクラウス・サンクレットに関しては、ちょっと釈然としないところが残りました。まあ、理解のできない人物というのはいるものです。
 個人的には、王宮騎士団のフェリオのお付きのふたり、ディアメルとライナスティのうち、ライナスティが出てくるシーンが楽しみでした。大勢に影響しない脇役の、ちまちまっとした活躍って好きなんですよね。

 今後、物語の舞台はさらに広がり、陰謀のスケールもどんどん大きくなっていくようです(正直言って、まだ広がるんかと思わないでもなかったが;)が、それと御柱と来訪者がどうからんでゆくのか、興味は尽きません。

Amazonでサーチ>>『空ノ鐘の響く惑星で』既刊

うわ、やばい 2005.1.18(火)

 珍しいことに、つつがなく読書をすすめていた一週間でした。……なのに、読み終えた本の感想をぜんぜん書いてなかった!
 現時点で四冊ため込んでます。はやく書かないと忘れちゃう(汗。

 冲方丁カオス レギオン 05 聖魔飛翔篇(富士見ファンタジア文庫.2004.378p.620円+税)[Amazon][bk-1]読了。『カオス レギオン 04 天路哀憧篇』のつづき。

カオス レギオン05 聖魔飛翔篇

 聖地シャイオンとその少年領主の(含ジークの復讐者達の)物語は、これで完結です。そして、お話はふたたび『カオス レギオン 聖戦魔軍篇』へとつづく。

 というわけで、怒濤の勢いで書き継がれてきた物語も、ついに最終巻。シリーズ完結、というふうに締めくくらないのは、これが前日譚であって、最終局面はすでに提示済みだからです。しかし、勢いだけで読み通した最初の巻のことを、私はあんまり思い出せない……(汗。これから再読したら、どういう感想が出てくるのかな。やってみたいんですけど、本がどこかに紛れてしまった……。
 あらためて考えてみるに、この前日譚はレオニスの話でした。病弱で父親に蔑まれていたレオニスが守るべき思いと戦うべき敵を得て、自分の力で立とうとし、失敗し、挫折し、傷つきながらも成長して、最後には大局的な目標=大切なものを守るために、すべてをなげうつ覚悟と勇気を獲得する、という成長のものがたりだったなあと。
 レオニスのノヴィアへの思慕はノヴィア側からほとんど認識されなかったために、ややドラマ的盛り上がりを欠いた感がありましたが、最後にたすけあうふたりの姿はなかなか感動的でした。
 それにくらべて、最後の復讐者レティーシャとジークの関係は、ストーリーを進めるための道標としか感じられませんでした。というか、全体的にジークというのは完結したキャラクターとして描かれていて、内的葛藤が表面に出てこないから、ちょっとつまらないんですよね。ジークのまわりで周囲が勝手に一喜一憂しているというか。シーラさんの存在もそれほどかれの心を揺さぶっているようには感じられない(ドラクロワのほうは大げさというか無理やり葛藤させてるように感じるが)。戦闘シーンでは圧倒的にかっこいいんですれど、もうすこし弱みが見えるとたのしかったのに(?)。

 個人的にはレオニスのお付きのトールとアリスハートのコンビが、とってもかわいくて好きでした。

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ホーンブロワー 2005.1.16(日)

ホーンブロワー 海の勇者 DVD-BOX1
ホーンブロワー 海の勇者 DVD-BOX1


 このところ、正月にBS-2で再放送していたイギリスドラマ『ホーンブロワー 海の勇者』をビデオ録画したのをちまちま見てました。原作を読んで十数年。さらに最初の放送から数年。原作も全部は読んでませんが、ドラマも最初からきちんと見られた試しがなく、さらに途中が歯抜け状態でとてもファンとはいえないんですけど、見ているとたのしーのです。調べてみるとDVDが出ていたり、立派なファンサイト(→【順風満帆】)があったりと、結構人気があるのですね。主役のホーンブロワーを演じている役者さん(ヨアン・グリフィズ)が『キング・アーサー』[Amazon]でランスロットをやっていたなんて、全然しらんかったです。見なかったんで(汗。

 ところで、今回はせっかく録画することを思いついたのですが、やっぱりぼんやりしていたのでところどころ予約を忘れ、またまた歯抜け状態になってしまいました。しかも、録画できた半分くらいは前回見た分だったりして。さらに、最後の話はテープの残量を見誤って、ブレースガードル艦長と海岸を逃げているところでぶっちぎれ(涙。うわあ、このつづきはどうなったんだよう、といくら叫んでもすべては自分のせいなので文句が言えないのでした。こういうときには、近所にレンタル屋がないことが非常に悔しいです。ハードディスクレコーダーがにわかに欲しくなったぞよ。

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 雪乃紗衣彩雲国物語 花は紫宮に咲く(角川ビーンズ文庫.2004.255p.520円+税)[Amazon][bk-1]読了。夢をめざしている女の子と、彼女にほれた子犬のような王様と、美形でくせ者ぞろいの臣下たちの中華風異世界ファンタジーシリーズ三作目。『彩雲国物語 黄金の約束』のつづき。

彩雲国物語 花は紫宮に咲く
彩雲国物語 花は紫宮に咲く


 国の人びとのために自分のできることをしたい。国王とその側近の尽力により実験的に女性の受験がみとめられた国試で、秀麗は第三位の探花として及第した。ところが、それまであたたかかった街の人びとには敬遠されるようになり、配属された礼部では嫌がらせとも思えるしごきが待っていた。前例のない女性官吏であるうえ、優秀な成績にたいするやっかみも加わり、男性官吏達の圧力は高まるばかり。身の安全のため、国王劉輝がひそかに護衛につくありさまとなってしまう。いっぽう、裏では反逆者として死去した茶家の当主の証をめぐって、ある陰謀が進行していたが……。

 今回、ようやく夢にむかって一歩を踏み出した秀麗が出会うのは、出世物語にはつきものの、下積み時代のしごきです。鬼のような上司に足を引っぱり放題の同僚達、おなじ差別される境遇で助け合う仲間に、あとから加わる有能な同僚。そして影ながら支えてくれる導き手たち。課される仕事が便所掃除というのが微苦笑もの(笑。お約束の展開ですが、テンポよく過不足ない文章で飽きさせません。
 王様のとんちんかんはだいぶ薄らいで、まともな成人男性としての存在を秀麗に印象づけてます。が、まだ恋には至らない(苦笑。それよりも、これまではずっと影で秀麗とは関係なく進行していた陰謀劇が、今回初めて彼女と直接の接点をもったところが新鮮でした。ずっと秀麗だけが蚊帳の外だったのが不満だったのですが、それにはちゃんと意味があったんですね。なるほどなるほど。辞令を受けて茶州へ赴く秀麗の今後がたのしみです。
 ところで、国試を第二位で及第した人物。かれはこれからも出てこないのでしょうかね。なんだか気になります。そしてじーちゃんズの暗躍は?(笑。

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 2005.1.13(木)

 年末からちょっと買いすぎですね。『のだめ』を読み返しすぎて眼精疲労になり、頭が重い私は馬鹿者です(汗。

 森岡浩之星界の戦旗 4 軋む時空(ハヤカワ文庫JA.2004.248p.520円+税)[Amazon][bk-1]読了。壮大なスケールと緻密な設定で描かれるスペースオペラ「星界」シリーズの七冊目。『星界の戦旗 3 家族の食卓』のつづき。

星界の戦旗 (4)
森岡 浩之

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 〈アーヴによる人類帝国〉と〈三カ国連合〉との戦争は七年目を迎えていた。アーヴ帝国皇帝の孫娘であるラフィールと、地上民でありながらアーヴ貴族となった若者ジントは、襲撃艦〈フリーコヴ〉に艦長と書記として乗り込み、作戦の一端をになっていた。おりしも、帝都ラクファカールでおこなわれた宰相の葬儀に出席した皇帝ラマージュのもとに、ハニア連邦大使が接触してきた。ハニア連邦はアーヴに協力的な態度を示しているが、内部の意見は統一されているわけではないらしい。アーヴ寄り勢力の一員である大使は、自分たちの勢力維持もかねたある取引を皇帝に提案してきたのだった。

 前巻からもう三年経つんですか。はやいですねえ。しかし、この巻はあらたなエピソードのはじまりといった趣で、状況説明とキャラクター紹介シーンが連続。ストーリーはあんまり進んでないです。しかも宇宙での戦闘シーンと特殊用語がたくさんなので、門外漢にはあんまりやさしくない導入部かなあと。以前の話を読んでいないでここから読み始めるひとには「なんだこりゃ」ということになるでしょう。これは四巻なんだからそんなことをする人はいないだろうと思いますが……じつはいままでの話を忘れ去っていた私はかなり初心者レベルに戻っていたので、みごとにその状態に陥ってしまったのでした(苦笑。でも、ビシバシでてくるルビを見ているだけで「ああ、星界シリーズだなあ」という感慨が抱けますねえ。こういう、漢字熟語にルビで読ませる特別な言葉って、見た目にはとてもかっこいいけど、音声だけで伝えようとしたらとっても難しいだろうなあ。アニメは見たことないけど、どうやって処理していたんでしょうか。
 ともあれ、個性的なキャラクター同士のにやりとさせられる会話は健在。エクリュア前衛翔士の変人ぶりも健在。ジントとラフィールの出番は少ないですが、ラフィールの弟とその周辺もやっぱり癖があるひとたちばかりで楽しいです。はやくちゃんとしたストーリーが読みたいよ、ということでつづきを待ってます。

Amazonでサーチ>>「星界」シリーズ既刊

 2005.1.10(月)

 ジョージ・R・R・マーティン(岡部宏之訳)王狼たちの戦旗 下 氷と炎の歌2(早川書房.2004.516p.2800円+税 George R. R. Martin "A CLASH OF KING",1999)[Amazon][bk-1]読了。重厚長大にして繊細緻密な異世界ファンタジー「炎と氷の歌」シリーズの第二部の下巻。『王狼たちの戦旗 下 氷と炎の歌2』のつづき。

王狼たちの戦旗 (下) 〈氷と炎の歌 第2部〉
ジョージ・R・R・マーティン 岡部 宏之

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 なにを書いても上巻のネタバレになりそうなんであらすじはパス。
 重厚な物語を堪能いたしました。読み終えたあと、しばらく虚脱してしまった。ものすごくおもしろかった。けどとても疲れました。普通の本の五冊分くらいのスケールと複雑さがあって、生半可な気持ちでは太刀打ちできない凄い本でした。

 これを書いている作者の人の脳は、私の1000倍くらいのスペックがあるんじゃないかしらん……と愚にもつかないことを考えてしまった。視点人物、ひとりひとりの人生を著者はもしかしたらすべて生きながら書いているんじゃないか。そんなことを思わせるほど現実感のある、物語世界の量感、情感です。大人数なうえに多岐にわたる視点人物はそれぞれが別の場所にいるわけですが、孤立しているわけではありません。かれらの運命は当人のしらぬまにも他の人物達のそれと絡み合い交差して反応しあい、とりまく状況もどんどんうごいていくんです。それを把握して破綻なく描き出すだけでも大変だと思うのに、ひとりの視点人物の周囲にはその十倍くらいの周辺登場人物がいて、かれらにもきちんと個性と背景が感じられるんだからなあ……。伝説と神話に日常の些末だけれど重みのある出来事がかさなりあい、人の人生とともに時代の波をも肌で感じさせる。まさに圧巻、です。

 そして物語の流れそのものも波瀾万丈で、息つく暇がありません。第一部もそうでしたが、第二部も様々な経緯が積みかさねられたのちに最後には戦争にいたります。この戦争シーンがまた、怒濤の迫力で。苦渋に満ちた厳しい日常を描いてきた筆致はそのまま様々な視点から戦争の悲惨さ、過酷さ、汚さを冷徹に描き出していきます。そして決定的と思われていた勢力図が、あっというまに書きかえられる戦記物のおもしろさ。

 ううーん、このあとは一体どうなるんだあ。すごくすごく気になる〜。スターク家の子ども達の行く末ももちろん心配ですが、レディ・メリサンドルとその宗教集団、デーナリスとドラゴンたち、夜警団のその後がとても知りたい。それに彗星はなんの象徴だったのかな。うう、知りたいことが多すぎます。

 ところで、シオン・グレイジョイはけっきょく帰属するところを失った、哀れな人物だったのですね。ほかにはサーセイと並ぶ悪役ジェイム・ラニスターの、異様ともおもえる人格が興味深かった。ある意味じゃサーセイよりも複雑な人物なのかも。このつぎにかれはどんな歌を歌うのでしょう。この、ときおり出てくる物語特有の言い回しがとても気に入っています。

Amazonでサーチ>>「氷と炎の歌」既刊

うう、寒 2005.1.6(木)

 ↑とうとう買ってしまいました。やっぱり、一巻目は全部既読でした。だから再読なんだけれどそれでも言葉が見つからないほど痛々しいお話で、読みながら息苦しくてつらくなってしまった。でも今度は最後まで読むつもり。なにより、全10巻と区切られたのが大きいです。最近の連載マンガは、いつまでつづくかわからないのが二の足を踏む大きな原因なので。

 本日ははやくも今年第一回目の通院日でした。冷え込んだのちにすぐに曇ってしまったため、一日中底冷えのする寒さでした。いつも汗だくになる電車の中でも暖房があまり効いておらず、足元は冷えたまんま。何十年かぶりに霜焼けになるかという不安に襲われました。こういうときには濃厚な豆スープがおいしいです……が、食べ過ぎには注意しましょう(汗。

 毛利志生子風の王国 女王の谷(集英社コバルト文庫.2004.262p.495円+税)[Amazon][bk-1]読了。チベットの王に嫁いだ唐の公主の姿を描く、歴史陰謀ロマンス小説。『風の王国 天の玉座』のつづき。

風の王国 女王の谷
毛利 志生子

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 唐の公主として吐蕃王リジムの元に嫁いだ翠蘭は、若き王との絆も深く、ツァシューでのあらたな生活になじみ始めていた。そんな折り、ツァシューに吐蕃の東に位置するスムパの『女王の谷(ゲルモロン)』の女王カウラが突然訪れる。彼女は東吐蕃の議会に参加するとの名目を立てていたが、実際は夫であるヤルモタンの王タシバールを倒すように働きかけにきたのだった。翠蘭を戦勝品として粗略にあつかい、スムパに乱を起こそうとするカウラの要請を、リジムは拒絶する。数ヶ月後、スムパからの遣いがカウラの突然の訃報を告げた。新女王の即位式に吐蕃王夫妻の列席を請われ、翠蘭はリジムの代理としてゲルモロンへむかうことを決意する。。

 気分は『王狼たちの戦旗 下』なのですが、ハードカバーをもってうろちょろするのは困難なのでコンパクトな本を持っていきました。じつは通院用にとってあった一冊。

 前巻よりも力みの抜けた翠蘭とリジムは、もうこれでもかというほどラブラブ状態。リジムが翠蘭に吐蕃の内情を理解させるためにあちこちにつれていくところなど、舞台となっている吐蕃の実情と気候風土を理解させながら新婚さんらしきほのぼの感も演出され、さらに翠蘭の政治的なセンスもうかがわせるという、なかなかおいしいシーンでした。リジムが短期間でこんなに翠蘭のことを理解しているのが、できすぎ、という気がしないでもないけれど、たぶんこういうヒーローの理想的な資質がこの話の乙女小説としての肝なのではないかと思います。読んでいてちょっと気恥ずかしかったりもしますが、楽しかったです(笑。

 ゲルモロンに舞台を移して、次期女王のラトナが出てくるあたりから話は急展開。ゲルモロンとヤルモタンの複雑な関係や、女王制度のしくみなどをきちんと織り込みながら、陰謀劇の進行を描いてゆく手際には危なげがなく、ドキドキしながらも安心して読めました。こんな複雑なことを書きながら、ゲルモロンの自然や王城のようすなども描いているあたり、すごいなあと思います。ちゃんと吐蕃とゲルモロンの違いがわかるし、城の違いはきちんとストーリーに生かされているものな。無駄はそぎ落とされているけれど必要なものは十分に詰められている、中身のつまったお話という読後感でした。

 ぜんぜん触れてきませんでしたが、翠蘭の唐からの随行員で護衛士の尉遅慧(うつち・けい)の、複雑な胸中と、ラトナとの微妙な間柄も、この話には欠かせませんでした。しかし、なんちゅーか、損な役回りだなあ、慧。このまま退場してしまうんでしょうか。それはそれで潔い引き際でかっこいいですけど。

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あけましておめでとうございます 2005.1.4(火)

 今年もぼちぼちと本を読み、たらたらと感想をつづる予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

 私の暮れと正月は、普段よりも忙しかったです。本を読む暇どころか、パソコンにも触れない日々でした。つい五年くらい前までは閑散とした年末年始だったのに。環境というものは変化するものですね。ようやく年賀状を出したのは31日でした。ちゃんと届いただろうか……不安。

 ジョージ・R・R・マーティン(岡部宏之訳)王狼たちの戦旗 上 氷と炎の歌2(早川書房.2004.485p.2800円+税 George R. R. Martin "A CLASH OF KING",1999)[Amazon][bk-1]読了。重厚長大にして繊細緻密な異世界ファンタジー「炎と氷の歌」シリーズの第二部。『七王国の玉座 下 氷と炎の歌1』のつづき。

王狼たちの戦旗 (上) 〈氷と炎の歌 第2部〉
ジョージ・R・R・マーティン 岡部 宏之

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 ロバート・バラシオン王の死去にともない、ロバートの息子ジョフリーが即位。しかし、王妃サーセイとその実家ラニスター家の正義を認めぬロバートのふたりの弟スタンニスとレンリーはそれぞれに王の名乗りを上げて挙兵し、七王国は群雄割拠の時代へと突入した。王の執政であった父親を謀反のかどで処刑されたロブ・スタークも〈北の王〉を名乗り参戦する。ロブの母親ケイトリンは、死の床にある父親と人質に取られたふたりの娘、領地に残した息子達のことを案じつつ、レンリーとスタンニスに同盟を呼びかけるための使者となる。
 北部の壁では連絡を絶ったレンジャー達の捜索に夜警団の司令官モーモントが直々に乗り出すことになり、ジョンもその行程に付き従うことになった。
 いっぽう、ドスラク人の夫を失った前王家の生き残りデーナリスは、生まれたばかりのドラゴンとわずかな供回りのものたちとともに荒野を放浪していた。

 暮れ正月とちまちま読み続けてようやく上巻を読了。
 期待にたがわない、骨太な物語がふたたび展開されています。
 複数の人物の目から望む物語世界が、それぞれの視点とそれぞれの人生、時間の流れを抱えて、より広く深く、力強くしかも細やかに描き出されています。

 印象的なのは人びとがそれぞれにあがめる神々への言葉の豊かなこと。この世界はけしてひとつの信仰ひとつの考えのみに支配されているわけではなく、たくさんのひとびとがたくさんの考えを持って生活しているのだと実感できる描写です。空にあらわれた帚星にいくつもの解釈が施されるくだりがそれを如実に表していたような気が。

 とくに強烈だったのは鉄諸島の神様かな。とにかく容赦なく救いがない、という感じ。これだけ荒涼とした信仰を持っていれば、相手に対する甘い感傷など持ちようもないなあと、シオン・グレイジョイのパートを読んでいると思うのでした。かれがスタークから離れて故郷になじんでいく姿は、善悪を超えた運命の流れと環境の恐ろしさを感じます。シオンのお姉さんがまた強烈でねえ(苦笑。

 スターク家の子ども達はさらに過酷な運命に翻弄され、しかし、懸命にあらがっている姿がけなげです。そして、かれらの母親ケイトリンの無力な自分に苛立ち、なげく姿がせつない。さらに、状況からするとどう見ても悪役であるサーセイ・ラニスターですら、母親として懸命な姿や、敵がたがいにつぶし合い始めた事を知ったときの大喜びする姿にかわいげを感じてしまうのでした。

 ひとつひとつのパートがそれだけ取り出しても読み応えのある短編といった趣を持ち、おなじ視点人物ごとにパートをまとめただけでも、大きなひとつのストーリーになりそう。それがいくつも同時に進行し、うねりのようにもりあがっていく。読みながら興奮を感じるものすごい物語です。

 個人的には、夜警団のジョンのパートが一番好きです。一番異世界ファンタジーらしい枠があるから安心できるということもありますが、大狼がたくさん出てくるし(笑、過酷な行軍の途中で朝を迎えたときの鮮やかな光景が胸に焼きつき、冷たい雨の降る様をあらわす言葉の選び方にしびれました。

 現在、つづきを読んでます。

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