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2005年7月のdiary

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2005.7.7 Book Baton/『魔女の結婚 アヴァロンの陽はいつまでも』
2005.7.10 /『霧の日にはラノンが視える』
2005.7.12 ちょっと涼しくてうれしい/『ぶたぶた日記(ダイアリー)』『捨て犬少女の夜想曲 スクラップド・プリンセス5』
2005.7.23 夏休み、なのだよ/『霧の日にはラノンが視える 2』
2005.7.26 台風ですが/『蒼路の旅人』
2005.7.28 /『GOSICK 3 青い薔薇の下で』『風の王国 竜の棲む淵』『魔女の結婚 虹は幸せのために』
 2005.7.28(木)

 桜庭一樹GOSICK 3 青い薔薇の下で(富士見ミステリー文庫.2004.302p.560円+税)[Amazon][bk-1]読了。美少女探偵と助手のキャラクターにほのぼのとする、謎解きはライトだけど背景は重厚なミステリー。シリーズ三作目。『GOSICK 2 その罪は名もなき』のつづき。

GOSICK〈3〉ゴシック・青い薔薇の下で

 第一次大戦後のヨーロッパ。小国ソヴュールの聖マルグリット学園に留学中の九条一弥は、日本の姉から〈蒼い薔薇〉を購入して送れと手紙で命じられた。セシル先生によれば、〈蒼い薔薇〉とはソヴュール王国の至宝であるブルーダイヤモンドで、大戦中の混乱にまぎれて消失していた。しかし、いまは〈蒼い薔薇〉を模したガラス製のペーパーウェイトが女性のあいだで大人気なのだという。そのペーパーウェイトは有名デパート〈ジャンタン〉でしか扱われていないらしい。怪談好きの女友達アヴリルは〈ジャンタン〉にまつわる現代の怪談をしこたま教えてくれたが、姉にくわえ、セシル先生やアヴリルにまで〈蒼い薔薇〉を頼まれた一弥は、風邪をひいたヴィクトリカを残し、首都ソヴレムへと単身旅立った。ソヴレムへむかう列車の個室で、一弥はヴィクトリカの異母兄グレヴィール・ブロワ警部と鉢合わせする。

 硬質な文章で描かれる豪華なヨーロッパを舞台に、愛らしいキャラクターが活躍するライトなミステリシリーズ。風邪をひいたヴィクトリカの悪戦苦闘ぶりがかわいくておかしい、三作目。
 一弥くんが一生懸命にはしりまわって情報を収集、電話越しのヴィクトリカが平然と事件を解決。今回のヴィクトリカは完全な安楽椅子探偵ですね。事件そのものは始まったとたんに私でもわかったくらいの、まっとうに簡単なものだったようですが、このシリーズはトリックが主ではないと思われるし、だから私でも楽しめるので、これくらいがキャラクター小説としてはちょうどいいのかなとも思ったり。
 とにかく、ヴィクトリカが意地を張ったり、弱音を吐いたり、もたもたしていたりするのに、一弥くんには全然つたわっていないシーンが楽しかったです。

 そういえば、ブロワ警部の過去があきらかになり、小さな妹に散々翻弄された実態にはたいへんな哀れを感じました。なんであんな言葉を真に受けるんだろう、と思うのは野暮なんでしょう。しかも、思い人は手のとどかないひとですか。可哀想な男だなあ、グレヴィール・ブロワ(苦笑。

 毛利志生子風の王国 竜の棲む淵(集英社コバルト文庫.2005.262p.495円+税)[Amazon][bk-1]読了。チベットの王に嫁いだ唐の公主の姿を描く、少女向け歴史ロマンス小説の四作目。『風の王国 女王の谷』のつづき。

風の王国―竜の棲む淵

 唐の公主として若き吐蕃王リジムの元に嫁いだ翠蘭は、土地の生活にも慣れ、持ち前の親しみやすさと情の深さからひとびとの信頼と尊敬を受けるようになっていた。ながらく唐に留め置かれていた宰相ガルは、帰還して見た翠蘭のツァシューへの溶けこみ具合に目を見張る。リジムの父ソンツェン・ガムポ大王の命令で、リジムとともに大王の膝元西吐蕃の都ヤルルンへ赴くことになった翠蘭は、ガルが自分が偽公主ではないかとを疑っていることに気づき、動揺する。ヤルルンへの道中に立ち寄った小国コンポには、翠蘭が降嫁する原因となった戦いで婚約者を失った王女リュカがいた。リュカは吐蕃王夫妻の仲むつまじさにやり場のない怒りと憎しみを覚える。

 読みやすい文章で、勢力争いに翻弄されるひとびとを背景に、ヒロインとヒーローの絆を描く、歴史ロマンス小説。
 今回は記憶喪失です。作者にとっての舞台には、新鮮味がなくなったということなのでしょうか。
 わたしとしては、まだまだ吐蕃の日常生活をいろいろと見聞きしたいのですが、人間関係がフクザツになってきたため、そちらの説明やら陰謀やらに多くを裂かれて、翠蘭のいるチベットの風景が遠のいたように思われます。ページ数の関係もあるだろうし、ターゲットにとってのテンポを考えると仕方ないのかなあとおもいますが、さみしいです。

 谷瑞恵魔女の結婚 虹は幸せのために(集英社コバルト文庫.2005.231p.476円+税)[Amazon][bk-1]読了。中世ヨーロッパのあちこち(時代も場所も)を行ったり来たりする、ケルトの巫女と黒魔術師のロマンティック・ファンタジー。シリーズ14作目は番外編と後日譚の短編集。三編収録。『魔女の結婚 アヴァロンの陽はいつまでも』のつづき。

魔女の結婚―虹は幸せのために

「聖夜は歓びの翼を広げ」
 神秘の謎を秘めた生命の樹。そのひと枝から育まれた丘の上の大樹には、聖誕祭が近づくと天使が舞い降りるという――。エレインが恋を自覚する前の、クリスマスの物語。

「道化の王に花冠を」
 すべてのものが逆さまになる万愚節。エレインは無礼講の王だと名乗る道化の仮面をつけた人物に出会った。依頼を受けたマティアスが訪れた王城で、ふたりは国にあらわれる殺人鬼の話を聞かされる。殺人鬼は道化の仮面をつけている国王の姉だという――。恋を自覚したエレインが、女としての自分を否定して男になりかける話。

「虹は幸せのために」
 数百年の眠りから覚めたエレインは、ケルト式の婚礼を挙げようと、マティアスとともにドルイドの聖地虹の島を訪れた。ところが“ゆめみの森”の番人である最後のドルイドは姿を消していた。ふたりを迎えたのは領主のシリー卿で、かれは驚くべき事をふたりに告げる。マティアスはかつてここに住んでいたことがあり、かれの妻と息子はいまだにかれの帰りを待っているというのだ――。本編の後日譚。

 というわけで、これで全巻完結、でございますね。
 三編のなかでもっとも興味深かったのは、やはり最後に収録された後日譚でした。
 黒魔術師としての人生を捨てたマティアスが、その後どうやって生きていったのかを知ることができたのはよかったです。いや、これでめでたしめでたしになるとはとうてい思えないんだけど、ちゃんと役割があってよかったね、ということで。
 個人的には、一番不遇だったあのかれに、ふたたび出会えたことが嬉しかったです。

台風ですが 2005.7.26(火)

 台風七号が近づいていますが、我が家はほっと一息ついてます。妹の連れ合いがお休みで、甥と姪がうちにいないから(汗。

 あーー、こんなに静かなの、何日ぶりだろう。

 と、静けさを満喫したいのに、外で動いている芝刈り機が非常にうるさいです。窓を閉めると地獄の蒸し暑さだし……。部屋の湿度が90パーセントもあるのです。まじめに、カビが生えそうだ。体調も、熱中症になりかけてるのか、あまりよくありません。せっかく平和だったはずなのに〜。

 上橋菜穂子蒼路の旅人(偕成社.2005.365p.1500円+税)[Amazon][bk-1]読了。過酷な運命を背負った少年のすがたを豊穣な世界を舞台に描く異世界ファンタジー。「守人」シリーズの姉妹編(姉弟編?)、「旅人」シリーズの二作め。『虚空の旅人』のつづき。

蒼路の旅人

 南半球の大国タルシュ帝国の侵攻は、新ヨゴ皇国にとっても現実の脅威となりつつあった。矢面に立たされている隣のサンガル王国からは使者が援軍をもとめてやってきた。皇太子のチャグムは近隣国との同盟を勧めたが、息子を疎んじる帝はこの進言にとたんに機嫌を損ねた。宮廷は成長したチャグムと帝のあいだでふたつに割れそうになっていたのだ。しかし、いまだチャグムは成人前で権力は帝のものだ。サンガルへ海軍を送ることは決定された。指揮を執るのはチャグムの数少ない擁護者で、祖父の海軍大提督トーサである。サンガル王の親書に不審を抱いていたチャグムの元に、サルーナ王女からの書簡が届いた。王女の言葉は不明瞭だったが、先の親書がタルシュとサンガルの罠であることはあきらかだった。しかし、帝はこれを受け入れようとしない。挑発に乗ったチャグムは激高して帝を罵り、サンガルへの援軍に加わるよう命じられてしまう。

 読み終えて思いました。ああ、はやく続きが読みたい!!!
 安らぐことの少ない境遇であっても、まわりに支えられて育ってきたチャグムくんが、とうとう守られる日々と決別し、みずからの運命を選びとったラストシーンにぐぐぐっと泣けてきてしまいました。なんという物語でしょう。
 ものすごく重厚な戦乱ものを読んでいるみたいだけど、それよりももっと肌にじわじわとめりこんでくるものがあります。
 濃密な世界の空気感とでもいうのでしょうか。いつも思いますが、においまでがつたわってくるような描写なのですね。とくに南へと移動してゆく船のシーンに、あらたな世界への驚きがたくさん感じられて楽しかったです。ラッシャローのひとたちがまた出てきてくれたのも嬉しかったし。

 しかし今回はなんといっても、チャグムくんの前につぎつぎと用意される運命の過酷さに、翻弄されました。異界とのはざまに立ち、異界を見ることのできるかれには、簡単に逃げ込むことのできる場所があるのに、なぜそんなにつよく現実を見据えて進むことができるのでしょう。この気高さ、前向きさ、着実さには、サトクリフの作品と似たところがあるなあ……。私は想像したくもないです、こんなに厳しい現実に直面することなんて。というか、すでに最初の場面で死んでる気がします。サバイバル能力ゼロですから。
 大人になるってこんなにつらいことなんですか。なのに少年は顔をあげ、たちあがり、前進してゆくんですね。つよいというのは、つらくて寂しいことだなあと、しみじみ感じてしまいました。これからかれのまえにどんな運命が待ち受けているのかはわかりませんが、孤独な旅を始めたチャグムくんによきパートナーとの出会いをせつに願います。

夏休み、なのだよ 2005.7.23(土)

 夏休みが始まりました、小学校と幼稚園で。
 ここ数年、学校的なものとも社会的なものとも夏休みとは無縁で過ごしていた我が家ですが、今年は大津波となって襲いかかってきたという実感があります。甥と姪が、いりびたっているから。
 ずーっと体調を崩していた妹が、とうとう家事ができない状態になってしまったので、しばらくちびたちの面倒を見ることになったのです。泊まらせるのはさすがにきついので夕食後に送っていくのですが、それまでは戦争状態。もう、朝から晩までなんにも思惑通りに運びません。
 まだ始まって三日しか経たないのに、就寝前には「疲れた」のひとことしか口から出てこない(汗。
 はやく元気になってくれ、妹よ。

 というわけで、ますます更新が滞っています。読んだ本のタイトルは極力メモのほうに挙げていくつもりです。感想はぼちぼちと「書けたらいいなあ……」という感じ。

 縞田理理霧の日にはラノンが視える 2(新書館ウィングス文庫.2004.210p.476円+税)[Amazon][bk-1]読了。ほのぼのテイストの現代ロンドンフェアリィテイル連作。『霧の日にはラノンが視える』のつづき。

霧の日にはラノンが視える (2)

「妖精たちの午後」
 正式に《在外ラノン人同盟》の準会員となったラムジーは、傘下の生花店で働きはじめた。同僚の半妖精の少年ケリにライバル意識をいだかれつつも、無邪気で純朴なラムジーは生き生きとしている。ラムジーの同居人ジャック・ウィンタースは、そんなラムジーを心にかけつつも同盟への参加は拒みつづけ、盟主から危険分子とみなされつつあった。そんなある日、同盟の葬儀社で遺体が霊柩車ごと盗まれるという事件が発生する。――盟主ランダルの片腕でありながら、孤高の元王子ジャックに親しみを覚え始めた、世話好きレノックスのあわただしい日常と非日常。

「ネッシーと《風の魔女》」
 クリップフォード村からふたたびロンドンへ行ってしまった、幼なじみの少年ラムジー。別れのときに叫んでしまったひとことを、ネッシーことアグネス・アームストロングははげしく後悔していた。あの言葉をラムジーは聞きとったのだろうか。聞きとったとしたら、どう思ったのだろうか。悩んだ末に決意を固めてロンドンへやってきたネッシーだったが、同盟のビルで彼女を出迎えたラムジーに答えを迫ることはできなかった。かれは、人間の言葉を話せる状況になかったのだ。同盟を飛び出したネッシーは、若い男にからまれている少女と出会う。少女は外国人らしい変わったイントネーションでシールシャと名乗った。――追放された風の魔女を追いかけるラムジーたちと、行方不明になったネッシーのロンドン観光。


「キス&ゴー」
 けっきょくなんにもわかっていない、お子様&わんわんなラムジーと、徒労感いっぱいのネッシーのほのぼの後日譚。

 以上、三編を収録。
 ほのぼのした雰囲気の現代妖精譚。その場の雰囲気をシンプルにつたえてくれる文章が馴染みやすいです。それに、前回は書きませんでしたが、妖精と呼ばれるだろうラノン人のキャラクターたちがそれぞれに個性的で魅力的。レノックスの描写には愛を感じます。オッサンだけど、心には詩がある(笑。あと、ジャックの存在感がほかを圧倒するシーンが好きですが、一本すっぽり抜けてるところがさらに好き。それから、ラムジーの形態変化後のひたすらにわんわんな性格がかわいくて。読んでいると、犬の飼い主の気持ちってこんなんかしらと、うっとりしてしまいます。ネッシーの乙女な恋心はいつ通じるんでしょう。

 狂った魔術師フィアカラという敵があらわれて、この先はかれとの対決を軸にストーリーが展開するのかなあ、という雰囲気。殺伐とせずにこのままの雰囲気でつづいて欲しいものです。
 それにしても、カエルの大発生には笑った……。

ちょっと涼しくてうれしい 2005.7.12(火)

 本日は天気予報が外れて、とっても涼しくなりました。こういうハズレかたは大歓迎です。
 しかし、だらけモードからなかなか復活できません。もとはといえば体調を崩したせいなんだけど、気力が低下してぼんやりしているうちに日々が過ぎていく……。
 やりたいことはいろいろあるんだけど、集中力がつづかないのでできるところから手をつけてます。ここ数日間でやったのは、【霜月書房】のテンプレート変更と、記事の追加くらいですが。
 しかし、ためてしまった感想だけはなんとか書いておかねばなー。ぜんぜん読めてないから、これ以上追いかけられる心配だけはないのが救い(救いなのか;)。

ケルト事典
 ひさびさにAmazonで買い物。『ケルト事典』[Amazon][bk-1]。ちょっとなじみの表記と違うけど、どこから眺めても楽しいです。

 そういえば、ずいぶんと本屋にも行ってないような。今月は買いたい本が目白押しで嬉しい悲鳴。

 矢崎存美ぶたぶた日記(ダイアリー)(光文社文庫.2004.210p.476円+税)[Amazon][bk-1]読了。ちょっとシビアでとってもほのぼのな、ピンクのぶたのぬいぐるみ「ぶたぶた」をめぐるひとびとの連作短編集。シリーズの……何作目なんだろう?

ぶたぶた日記

 出版社が変わってもぶたぶたは不滅です……なんちゃって。
 今回はカルチャースクールのエッセイ講座でぶたぶたと出会った人たちのおはなし。ぶたぶたが中年男性で妻子持ちなのは知っていたけど、姑さんもいたんだあ。このシチュエーションならいてもおかしくないんだけど、でもやっぱり驚いてしまう。するとぶたぶたの血縁てのもそのうち出てくるのだろうか。ぶたぶたの血縁……想像つかない。

 そんなやくたいもないことはおいておいて。ちょっとだけ現実的で、でもあたたかで、かなりおかしい物語を堪能いたしました。子供たちとお風呂に入るエピソード、ほほえましすぎる!


 榊一郎捨て犬少女の夜想曲 スクラップド・プリンセス5(富士見ファンタジア文庫.2000.312p.520円+税)[Amazon][bk-1]読了。異世界ファンタジー「スクラップド・プリンセス」シリーズの第四作。『半熟騎士の行進曲 スクラップド・プリンセス4』のつづき。

オンライン書店ビーケーワン:捨て犬少女の夜想曲bk1

 あらすじはパス。
 今回は血の繋がらないきょうだい関係のあやうさを描くおはなし。ひとりの孤児の少女の存在によってきょうだいのあいだに波風が立ち、すこしばかりいつもとは違う雰囲気でストーリーが進みました。意図的なのでしょうが雨降りのシーンが多くてどことなく重苦しく、先行きに不安を感じる展開だったためか、ちょっと読むのがかったるかったです。このシリーズ、アクションシーンのほうが断然面白いと思う。それも、笑いまじりのアクション。ラクウェルのおとぼけが少なかったのも寂しかったです。

 2005.7.10(日)

 縞田理理霧の日にはラノンが視える(新書館ウィングス文庫.2003.274p.600円+税)[Amazon][bk-1]読了。現代のロンドンとケルト風の異界がかさなりあう、ほのぼのテイストなファンタジー。

オンライン書店ビーケーワン:霧の日にはラノンが視えるbk1

 ラムジー・マクラブはなりたてほやほやの十六歳。高地地方の農民の第七子としてうまれ、愛されて育ったが、あるとき叔父の残したノートを頼りに意を決して家出を敢行する。ロンドンへたどりつくなり治安の悪い地区に迷い込んだラムジーは、柄の悪い若者たちにからまれてしまう。窮地に陥ったところを救い出してくれたのは、氷のような薄い瞳をした二十歳くらいの男だった。“雪と氷の騎士のような”印象の男――ジャック・ウィンタースは、頼りないラムジーを見捨てるに忍びず、駅で寝るよりはマシだろうという自室へと招いてくれた。裏町の空き家に近いうらぶれた建物で、ラムジーはロンドンでの生活をはじめることになる。

 うさぎ屋さんのとこでいくどかタイトルを見かけて気になっていた本です。図書館に一巻目がなかったのでつい購入してしまいました。
 呪われた自分の運命から逃れるために、一大決心をして故郷を飛び出した少年が、都会で善意とともに運命の大元にも出会い、みずからの出自を知って折り合うことを学んでいく……とこんな感じのお話です。出自といっても大上段に構えた「世界の救世主」とかそういったものではないので、悲壮感はなく、気楽に読めました。

 基本的には怪奇譚風ほのぼのファンタジーですかね。ケルト風の魔物がたくさん出演しており、ケルト風の言い伝えなどもからんできますが、異界そのものはケルト風文化をまとっているという設定の異世界であるらしいです。このへんの設定は、妹尾ゆふ子『チェンジリング』(『赤の誓約』[Amazon][bk-1]、『碧の聖所』[Amazon][bk-1])に似ているかもしれません。
 が、日常的な舞台で日常的な題材をめぐって進むストーリーは、それなりに厳しい現実などを提示しつつも、まずは穏やかといってよい展開。肩の凝らない、心温まる雰囲気を楽しみました。ロンドン好きの人にはどうなのかな。知っている人には楽しいかもしれません(私は知らないので;)。
 日本人としては、舞台が外国だとローファンタジーの気分がかなり薄れるけれど、翻訳物ばかり読んでいる自分にはぴったりの話かと思われたり(笑。
 文章は比較的あっさりとしてますが、日常と魔法が違和感なく存在して、でもきちんと不思議の雰囲気がつたわってくるのが嬉しいですね。異界が目の前にあらわれるシーンはすてきでした。

 シリーズ化されていて、四巻で完結……だったのかな。かなり気に入ったので、つづきは予約済みです。

Book Baton 2005.7.7(木)

 由良さん@【ホンの愉しみ】に回していただいたBook Batonの解答はこちら→MEMO

 気がついたら、一週間以上更新してませんでした。下記の書誌情報をメモったのは6月28日のことだったのに(大汗。
 もし、またもや更新が滞って、いったいなにをしているんだろうと思われた方は、近況MEMOをご覧ください。直近の状況はこちらにメモっております。

 本日の夕方はものすごい雷雨でした。こういうとき、ノートパソコンは安心だなあ……。

 谷瑞恵魔女の結婚 アヴァロンの陽はいつまでも(集英社コバルト文庫.2004.291p.533円+税)[Amazon][bk-1]読了。中世ヨーロッパのあちこち(時代も場所も)を行ったり来たりする、ケルトの巫女と黒魔術師のロマンティック・ファンタジー。シリーズ13作目の完結編。『魔女の結婚 乙女は一角獣(ユニコーン)の宮に』のつづき。

魔女の結婚―アヴァロンの陽はいつまでも

 ついに結ばれたエレインとマティアス。しかし、十六世紀に戻るために訪れた浮石宮で妨害に遭い、離ればなれになってしまう。マティアスが流れ着いたのはローマが侵攻してきた時代のケルトの村。そこでは、《流星車輪》の黒魔術師との結びつきを否定するマティアスの師匠が、まだ永い眠りにつく以前のエレインに接触しようとしていた。いっぽう、十六世紀に戻ってきたエレインは、魔女として捕らえられた村人を救うためにヨセフ騎士修道会のフリードリヒの元に乗り込んでいくが――。

 読み終えてから二週間くらい経ってしまったのでしょうか(汗。そのときはしみじみとラストシーンを楽しんだのですが、こんなに時間が経過するとあらすじもうろ覚えです。もし間違っていたらすみません。

 《流星車輪》を抱いた巫女が、原初のちからをゆだねる相手はだれなのか。巫女(魔女)とドルイド(黒魔術師)のじれったいロマンスものでありながら、巨大なちからをどう扱うのか、ちからによってもたらされる未来をどう選択していくかの話でもあった、長大な物語が完結しました。

 いろんな意味で、直前に読んだ『彩雲国物語』とは対照的な物語だったなーと感じました。『彩雲国』で私は、物語を大づかみにまとめて、なおかつきちんと読ませる力に感心したのですが、この話はとにかく、出来事が順々にていねいに積みかさねられていって、キャラクターの心情の移り変わりも懇切ていねいに説明されていく。とにかくプロセスをたいせつにしたこまやかな話でした。
 恋もファンタジー要素も等価値で扱われたためか、ともすると物語の焦点があいまいとなり、ロマンス部分がだぶつき気味だったり、頭の悪い私などはなにが起きているところだったか読んでいる最中に忘れかけるという部分もあったりして、不満もかなり感じたシリーズでしたが、最終巻はなかなか綺麗にまとまったと感じました。
 ラストで語られる魔法使いの物語は、なんだかとっても素敵なふんいきのおとぎ話でしたね。この話からは絶対にマティアスの人となりは想像できない……と思います(笑。

 あと、マティアスの、恋を自覚する感覚が堕落だというのがなんともかれらしくて、おかしかった。自分も結局は普通の人間だったのか、という感じなのでしょうか。このまま本当に落ち着いてくれるのかと考えるとかなり疑問な気がするんだけど、それはまた別の話でしょう。物語って終わりがあるから救われるというところがありますね(苦笑。

 番外短編集が残っていますが、シリーズはこれでおしまい。つぎは『伯爵と妖精』シリーズですね。こっちのほうは今のところかなり好みです。


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