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2002年11月後半のdiary

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2002.11.17 段階を踏んで/『DIVE!! 4 コンクリート・ドラゴン』
2002.11.19 折り紙/『グラン・ヴァカンス 廃園の天使I』
2002.11.21 腰痛に湿布/『鵺姫真話』
2002.11.22 /『ぶたぶた』
2002.11.25 薬がかさばったが/『魔女の結婚 永遠の夢見る園へ』
2002.11.29 財布も体も疲れた一日/『ふたりのアーサー II 運命の十字』
財布も体も疲れた一日 2002.11.29(金)

 友人とタダ券消費のために映画にいった。なんと、今月はこれで三本目。疲れるはずです。それでもって、三本目が一番つまらなかった。友人が主演男優のファンということで見たのだけど、中途半端なリアリティーとご都合主義が目について。ああ、ハリウッド映画だ。
 座席のまわりじゅうで涙をぬぐっている感動シーンで、私がハンカチを握りしめながら考えていたのは「いつ、お手洗いへ駆け込むべきか」(最近冷えるとすぐに行きたくなるのです)。自分が冷血漢になったような気がしました。でも、つまんなかったんだもーん。

 駅ビルの改装で、めあてのイタリア料理店がなくなっていて、場所を決めるのにうろうろしてしまいましたが、昼食を食べながらたのしく二時間ほどおしゃべり。
 喉が痛くなったけどストレスが解消されて、気分は晴れ晴れ。「さあ、NHK杯フィギュア!」と思って帰宅したら、甥と姪(+妹)がやってきてて、テレビどころではなかった。涙。

 以上購入。緊縮財政は月末にきて補正予算を組むことになりました(汗)。
 すでに持っている本の再出版(?)を二冊も購入するのはどうかと思ったけど…見てしまうとダメだ。

 ケビン・クロスリー=ホランド(亀井よし子訳)ふたりのアーサー II 運命の十字(ソニー・マガジンズ.2002.566p.2000円+税 Kevin Crossley-Holland "AT THE CROSSING-PLACES",2001)[Amazon][bk-1]読了。中世イングランドに生きる少年の成長物語。三部作の第二作。『ふたりのアーサー I 予言の石』のつづき。

 育ての両親のいるコルディコット荘園から離れて、ロード・スティーヴンの従者をつとめることになったアーサー。かれの目標は十字軍に参加すること、そのために十字章をさずかること、そして、ほんとうの母親について知ることだ。公正で懐のひろい主のもと、アーサーはホルト荘園での生活に次第に慣れてゆく。

 一巻の終わりでは、「さあ、十字軍遠征に旅立たん」という雰囲気だったのですが、そんなに簡単には話は進みませんでした。アーサーはまず従者としての修行をはじめなければなりません。というわけで、今回はところを移し、ホルト荘園での日々が描かれています。
 アーサーの意志的なふるまいに力強さを感じ、いい男になりつつあるなあと思いましたが、ロード・スティーヴンの姪ウィニーへの手紙には、男ってそんなものよねといいたくなるようなのらりくらりの無責任ぶり。これも成長しているということなのだろうか。
 個人的には、騎士の従者の生活がことこまやかに描かれているのが、かなり嬉しかったです。それから、修道院の写本室に行ったシーン。細部の描写が楽しい。羊皮紙のこととか。背骨のところの皮でつくるとでこぼこになるらしい。なるほど。

 それと並行して、マーリンからもらった黒曜石の中に、円卓の騎士たちが集まり、探索へ出ていく話が延々とうかびあがります。そのひとつひとつは読み応えがあり、イングランドのアーサー少年が影響を受けるのもよくわかるのですが、やっぱり、ふたりのアーサーが登場する物語世界的な意味はわかりませんでした。
 おもしろい本だとは思うけれど、そこのところがどうもすっきりしない。たぶん、次も読みますけど。

薬がかさばったが 2002.11.25(月)

 雨の降るなか、病院へ。外科の結果とすり合わせ。検査の結果が好転していたので、副作用が増しつつあった薬をもとの量に減らすことになる。はあ。これで肌荒れが少しは改善してくれるとよいのですが。
 次回、四週間後も五週間後も休診日ということで、医師が「三週後・六週後どちらがいいですか」と尋ねてくれたことに感動。いままでの医師は機械的に四週分の処方箋を書いてくれてたので、会計後に予約を取るときに休診に気づくものの、薬が足りないから絶対に三週後しか選べなかったのに(それで薬がだぶついていた)。六週分の処方箋を書いてくれたので来月は行かなくてよくなりました。うれしー。ありがとう、M先生。

 発売から一週間以上経っていた本と、発売後三日で現物を見てから購入を決めようと思っていた本は、店頭になかったので、栗本薫『宝島 下 グイン・サーガ外伝17』[Amazon][bk-1]を購入。

 谷瑞恵魔女の結婚 永遠の夢見る園へ(集英社コバルト文庫.2002.270p.495円+税)[Amazon][bk-1]読了。中世によみがえったケルトの巫女と陰険魔術師のロマンティック・ファンタジー「魔女の結婚」シリーズの六冊目。『魔女の結婚 月蝕に時は満ちて』のつづき。

 森のなか、柩から目覚めたエレインは、ホリータという美しい少女に迎え入れられて、自分は永き眠りより目覚めたばかりなのだと告げられる。巫女として自分たちを影裏の国へと導いてほしいというホリータ。それでは、マティアスたちと過ごした日々は眠っているあいだに見た夢だったのだろうか。マティアスと喧嘩をしてミシェルと森に入ったのは、つい昨日のことだったはずなのに。混乱するエレインの前に、前世で親友の女戦士だったミシェルがふたたび姿を現した。初対面の硬い表情で自分を見るミシェルに、エレインは衝撃を受ける。

 わたくし、何を勘違いしていたのか、前作を「四作目」などと日記に記しておりまして、間違いはさらにその前の巻から始まっていたことに、この度ようやく気づきました。勘違いのせいでアンカーもおかしかったのですべて直しました。なにやってんだろ…。
 というわけで、前巻は五作目、この巻は六作目です。

 つねづね思っていたのですが、マティアスとエレイン、このふたりの仲が進展しないのは、ふたりともやたらと自分の感情に理屈をつけるからじゃなかろうか。というか、感情描写がとても理屈っぽいような気がするのですが、私が感じているだけかしらん。理屈っぽさが延々とつらなったうえで、読んでいる私もエレインとおなじに、わけのわからない状態に陥っていくのがとても臨場感があるなあと。ほんとうに一段階ずつステップアップしてるんですよね。勢いあまって駆けのぼったりしないのです、全然。いつもの私ならいい加減にしろと思ってしまうはずなのに、楽しく読めているのはなぜなんだろう。やっぱり、理屈っぽいからか。感覚に流れていかないから、書かれていることが少しずつ変化しているのがわかるためか。
 これだけひとつひとつ感情の動きをフォローしつづけていると、ストーリーがおろそかになりそうなものなのに、きちんと話がまとまっていることにも感動してしまうのでした。ホリータの結末はかなり…でしたが。男爵の「そうとう鈍い」発言には笑いました。男爵のキャラは楽しかったです。

 今回はすこし、幻想色が薄めでした。ペルヒタ伝説はこのあいだ読んだ本に出てきたのでおおっと思いましたが。アヴァロンとか、歓びの野(マーグメルド)とか、単語や概念だけで出てきたものが今後どれだけ話に影響していくのか、期待しています。

 2002.11.22(金)

 矢崎存美ぶたぶた(徳間デュアル文庫.2001.318p.676円+税)[Amazon][bk-1]読了。ピンクのぶたのぬいぐるみ、ぶたぶたと出会ってしまった人々を描く、連作短編集。

 生きている、歩いている、食べている、働いている、バレーボール大のピンクのぶたのぬいぐるみ、山崎ぶたぶた。どうやら成人男性。人間社会でふつうに生活しているぶたぶたと偶然出会ってしまった(まさに「しまった」という感じで)老若男女さまざまなひとびとのいろいろな体験を、ときにこっけいにほのぼのと描く…ファンタジーというかSFというか。
 いまさらですが、はまってしまいそうです。
 話すときに「鼻がもくもくとうごいている」とか、ビーズの目なのになぜか喜怒哀楽が伝わってくるところとか、おきまりのフレーズが出るたびににんまりしてしまいます。これがマンガなら、一日に三回くらい、ピーク時なら五回くらい読み返してしまいそうなんですけど、ぶたぶたの魅力はマンガでは絶対に伝わらない。マンガにしたら、ただのぶたキャラクターになっちゃうもの。ぬいぐるみの質感をきちんと感じさせてもらわないと。
 あと、ぶたぶたの魅力は、自立して存在しているところでしょうか。出会った人々とはあくまでも対等。ぬいぐるみなのに、かわいいのに、きちんとした大人であるというところから、ひとはわが身を省みて、いろいろと感じるのでしょうね〜。ぶたぶたと出会った混乱から、これまでとは違った人生にほんのすこし歩みだそうとするところまでたどり着いてしまうのが、この話のほのぼのとした読後感を生んでいるのだと思います。
 なんて、そんなことはどうでもいいのです。読んでてたのしい。それだけ。

腰痛に湿布 2002.11.21(木)

 二日ばかり、腰痛による不眠に苦しんだあげく、就寝時に湿布薬を貼ってみることにしました。手元にあるのは関節用なので冷湿布。それを風呂あがりにべたりと貼りつけたときの冷たさといったら、とびあがって悲鳴をあげるほどでした。
 しかし、これが効いたのです。
 貼ったところを中心にして、じわじわじんわりと薬効成分がしみこんでゆく。そのようすが、まるでまなうらに描かれてでもいるかのように想像できるくらいに。
 おかげで、横たわってからしばらく寝つけませんでした。だってずーっとじわじわぞわぞわ感じてるんだもん。
 ところで痛みはだいぶ治まったようです。

 岩本隆雄鵺姫真話(ソノラマ文庫.2000.367p.571円+税)[Amazon][bk-1]読了。『星虫』の続編。タイムトラベルSF。

 本を返却してしまったため、正確な用語がわからないので、あらすじが書けません。
 ひらたくいうと、夢への挫折を味わった女子高生が、ふとしたことから戦国時代に迷い込み、現代へ戻ろうとする過程でさまざまな試練を経て成長する話。
 女子高生が戦国時代に、というところで私は高橋留美子の『炎(ファイヤー)トリッパー』を連想したのですが、いまなら『犬夜叉』なのでしょうかね。

 この話は、宇宙からやってきた異生命体との出会いを描く『星虫』と世界を同じくする物語なので、たんにタイムトリップするだけではなくて、もっと壮大に話がひろがります。そのあたり、『星虫』を読んでいないと、つながりがわかりにくい気がする。広がった世界が、ストーリーが収斂するために不可欠な要素となっているから、なおさらです。こういうふうになるのかと感心しましたが、それがちょっとしっくりと馴染んでいない感じがする。伝奇的な鵺姫さまの部分と、科学的な説明がもうすこし溶けあうといいのにと思いました。なんというか、ムードがどっちつかずなんです。私は基本的にムードで読む人なのでこだわってしまう。全体的にはとてもおもしろかったのですけどね。
 星へとつながる空間のひらけた感じが、ともすると閉塞感を感じがちなタイムトラベルものに大きな余白をあたえてくれるような、そんな印象が残りました。

折り紙 2002.11.19(火)

 姪が折り紙にハマっています。
 とつぜんやってきて「トンボを折ってくれ」と言われたりするのですが、折れません。
 もっと普通の、常識的なものを注文して欲しい。
 と思っていたら、『ママといっしょにおりがみ遊び No.2』[Amazon]という本を持ってきて、「鶴の基本形までできたから、あとをつくってくれ」と言う。
 姪のつくった「鶴の基本形」は表にしか折りめがなくて、後ろはのっぺらぼうでした。これでは足も首も作れない。仕方ないので作り直しをしようとしたのですが、鶴の作り方が思い出せません。考えてみると、最後に鶴を折った(折らされた)のは高校三年の七月。それから一度も折り紙に触っていない。鶴も兜も舟も飛行機もなんにも覚えておりません。
 折り紙って、自転車に乗るようなわけにはいかないのねと、本を眺めつつ鶴を折り、しみじみしたことでありました。

 飛浩隆グラン・ヴァカンス 廃園の天使I(早川書房.2002.310p.1600円+税)[Amazon][bk-1]読了。うちすてられた仮装リゾートを舞台に、AIたちの残酷な運命を端正な文章で描く、哀しくも美しく官能的なSF。

 ネットワークのどこかに存在する、会員制の仮装リゾート<数値海岸>。ある日突然訪れる人間がいなくなって千年間、仮想空間の住人であるAIたちは、おなじ夏の日々を延々とくり返しつづけていた。ジュール・タピーは十二歳の少年としての夏休みを千年間を過ごし、今日もまた十六歳の少女ジュリーと鳴き砂の浜へ、ふしぎな力を秘めた硝視体(グラス・アイ)を探しにいく。それはふたりだけの楽しみであり、愉しみだった。ところが、美しい砂浜に突然の脅威があらわれる。底なしの飢えに突き動かされる<蜘蛛>が、<数値海岸>を喰らいはじめたのだ。蜘蛛は喰らったプログラムを無にしてしまうらしい。逃げのびたジュールとジュリーは、鉱泉ホテルに集まった生き残りのAIたちとともに、反撃の計画に参加する。

 面白かったです。なによりも文章が好き。硬質な強化硝子のような文章で描かれる、残酷で悲惨で鮮烈でせつなくて哀しい出来事。夏の海岸の眩しいような輝きが、目に焼きつきそう。リアルな感覚に満ちあふれるネットワーク上のAI同士の攻防戦の描写がすばらしいです。
 人によってつくられたプログラムであるAIたちの哀しい存在意義、つくられた過去の記憶でも確かに血肉として感じられる空しさが、とてもせつない。プログラムであるはずのAIたちの傷は、やっぱりプログラムでしかないのかもしれない。でも、たしかに痛みとして存在している。かれらは傷ついている。千年のあいだに痛みは癒されることなく増幅している。不可解な蜘蛛たちの黒幕、ランゴーニは、AIたちのそうした傷までも利用して、なにをしようとしているのか。それは謎のままです。つづきが気になりますね〜。

 先日観た『サイダーハウス・ルール』のせいか、読みながらアーヴィングの『ホテル・ニューハンプシャー』が浮かんできて困惑しました。内容的には一カ所しか重なるところはないように思うのですが。だいたい、私は『ホテル・ニューハンプシャー』を(も)ほとんど覚えていないというのに。うーむ。支離滅裂だわ。

段階を踏んで 2002.11.17(日)

 サイト移転後一ヶ月が経過したので、以前のサーバーに残した告知ページを削除しようと思いました。が、未だに前サーバーよりお越しの方がいらっしゃるようなので、とりあえず、サーバーレンタルの必須条件となっていたオプトインメールから退会してきた。一日に六、七通来ていた広告メールから解放されると思うと、あーすっきり。
 これで、規約上ただちにアドレスが削除されても文句の言えない状態になりました。以前のアドレスからお越しの方は、おはやめにブックマークを変更してくださいね。

 日米野球もスケートアメリカも中途半端にしか見られなかった。生中継は仕方ないとしても、中継録画は録画して見たほうが賢いなと、あらためて思う。『おかあさんといっしょファミリーコンサート』ビデオ独占再生状態をなんとかしてやめよう(一本のビデオをこんなにくり返し見るのは初めて。もう十数回という段階は越えて、何十回というレベルに達しつつある。甥が来るたびに見ているので、記録はつねに更新中)。新しいテープも買わなくては。

 森絵都DIVE!! 4 コンクリート・ドラゴン(講談社.2002.234p.950円+税)[Amazon][bk-1]読了。『DIVE!! 3 SSスペシャル’99』のつづき。

 シドニー・オリンピックダイビング代表は、内定者、富士谷要一みずからの要望で白紙に戻った。あらためて行われることになった選考会で、坂井知希、沖津飛沫、富士谷要一は、ダイビングクラブの存続とオリンピック代表をかけて争うことになった。試合前夜、コーチである夏陽子のアメリカ行きのニュースが三人を動揺させる。

 青春ダイビング小説の完結編。ひとりの人物にスポットを当ててきたいままでとは変わり、今回は三人のダイバーに加え、脇を固めていた人たちの視点も交えて、緊張感漂う選考会のようすが描かれてます。
 三人の少年たちがダイビングに賭けているそのかたわらで、彼らを見守るひとびともそれぞれのやり方でかれらを案じている。そんな影の存在にもしっかりとした人生が感じられます。世界の隅々にまでゆきとどいた視線と、役割だけで終わらせない温かみのある描写が、物語にリアリティーを持たせているのだと思います。結末は予想外にマンガ的なものでしたが、お話の行き着いたところは、ひとつの階段を上った少年たちの新たな旅立ちだったのだと思う。読後感はとてもよかったです。
 余談。ピンキー山田の愛称がどんどん変化していくのに笑った。


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