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2002年10月前半のdiary

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2002.10.1 眼精疲労だけど/『ショコラ』
2002.10.2 掲示板まわり/
2002.10.6 移転作業中/
2002.10.7 ひきつづき移転作業中/『ケルトとローマの息子』
2002.10.8 作業終了!/
2002.10.9 移転あれこれ/『あてにならない六法全書 フルメタル・パニック!』
2002.10.10 /『エルフギフト 上 復讐の誓い』『エルフギフト 下 裏切りの剣』
2002.10.12 運動会/『マリア様がみてる パラソルをさして』
2002.10.14 歩く目的/『神々の憂鬱 暁の天使たち2』
2002.10.15 美術クラス/
美術クラス 2002.10.15(火)

 先日、荻原規子の『樹上のゆりかご』を読んだせいか、高校時代のことを少し思い出しています。
 あの話は合唱コンクールではじまるんだけど、私は合唱コンクールにそんなに思い出がありません。なんでだろう…と思ったら、私が所属していたのは美術選択クラス、通称「美クラ」だったのでした。

 高校で音楽と美術の選択制になったとき、それぞれに思い入れがあったり、得意だからと選ぶ人もいるだろうけど、片方をやりたくないという理由で決めてしまう人もいて、あの学校では美術を選択する生徒の方が音楽をやりたくない割合が高かったんじゃないかなあ、といまにして思う。合唱コンクールが、ぜんぜん、盛りあがらないんですよねえ。
 一年の時にはそれでも少しは真面目で、吹奏楽部所属のひとが一生懸命にひっぱったこともあって、ふつうの四部合唱をしましたが、二年の時には完全にウケ狙いに走ってました。こういう合唱コンクールをそれでもやる意味はあるのだろうかと思った記憶が。

 ところで私が美術を選択した理由は、やはり音楽をやりたくなかったからなのですが、それは「高校になっても、まだ、リコーダーの授業がある」と聞いたのが理由。
 私はリコーダーが下手で下手でどうしようもなかった。音痴ではないし、譜も読めるし、むしろ美術よりも音楽の方が成績がよかった位なのですが、リコーダーのテストがあった学期だけ、評価が下がってしまうくらいに下手だったんですね。音楽の実技テストというのはみんなの前で演奏しなければならないので屈辱感もかぎりなく、リコーダーのテストのときには授業をサボタージュしてしまおうかと思ったほど。

 どうしてあんなに苦手だったのか、いまは原因が分かってます。手が小さいからです。そして、指が細いからです。私の指ではリコーダーの穴がふさぎきれない。どんなにきちんと押さえようとしても透き間が空いてしまう。すると、澄んだ音が出ない。広い音域をすばやくカバーしようとすると、手を大きく動かさなければならなくなるのでミスが多くなる。
 これって努力でどうにかなることじゃ、ないとおもうんですけど。
 そういえば、小さなソプラノリコーダーを使っていた小学生の時には、こういうことはなかった。アルトリコーダーにかわったときに問題が発生したのです。当時はバカ正直だったので、そんなことにも気づかず、自分はリコーダーも吹けない無能だと感じて、とても苦痛でした。いまでは、生徒の体格も考えて、楽器を選んで評価をするべきなのにと怒ってますが(苦笑)。

 と、そういうわけで美術を選んだ私ですが、案の定、美術の成績はよくなかったです。合唱コンクールで一生懸命にハーモニーをつくっている音楽クラスが、ちょっと羨ましかったっけ。歌うことは大好きだったので。

 稲生平太郎『アクアリウムの夜』[Amazon][bk-1]読書中。

歩く目的 2002.10.14(月)

 運動会後、筋肉痛に。座っていただけでのこの状況に情けなさを覚えたので、ちらりと散歩をすることに。
 しかし、私って歩くための歩きができない。なにか目的がないとね。それは「体を鍛える」というような理由じゃなくて、「本を買いに行く」とか「子守りをしに行く」とかそういう、実利的な目的がないとだめ。出かけたときに、ひとつの用事をすませるだけでは我慢できないのとおなじかも。
 今回の理由は、「買い物」に行って、ついでに「姪を遊ばせる」でした。

 茅田砂胡神々の憂鬱 暁の天使たち2(中央公論新社C・NOVELS Fantasia.2002.252p.900円+税)  [Amazon][bk-1]読了。『暁の天使たち』のつづき。

 この話、なんといって紹介すればいいのか本気でわからない…。このシリーズだけで見れば、「SFコメディー」のような気もするけど。ううむ。
 著者の二大シリーズ『デルフィニア戦記』と『スカーレット・ヴィザード』の直接の続編であるこのシリーズ、単独での読書はお勧めしません。こうも変則的なシリーズものって、私も初めてのような気がするわ。始めから読んでも意味が分からないシリーズって、ううむ。

 前二作とのつながりと間隙をきれいに埋めるのに苦労しているのでしょうか。きっと作者の頭のなかではストーリーはダイナミックに連続しているのでしょうけど、その物語環境を上手にきりまわしている、もしくはきりとっているようには思えない。一冊目のラストで興味を持たせた学校生活から、なぜか時系列が過去に戻ってしまい、またもや状況説明が延々とくり返されて、「あのつづきはどうなったのよ」状態が続くのが苦痛です。
 それでも、登場人物が動きだすと楽しいし、最後にまた次への興味を強烈に持たせて終わるところは、あっぱれでしたが。

 すごく後をひくラストのあとで「次は十一月刊行」なんて記されていると、またしてもううむ。この巻が出たときに、友人に「もうつづきは買わない。借りて読む」と宣言してしまったのでねえ…。立ち読むか(いつ、どこで)。

運動会 2002.10.12(土)

 姪の幼稚園の運動会に、なぜだか、つきあわされて、朝の九時から午後二時過ぎまでを、延々とほこりだらけの運動場で過ごしました。
 園児の人数も、少子化を叫ばれる昨今としては多かったような気がするのですが、その園児たちを上回る保護者たちの人混みに圧倒。園児一人に父母、祖父母と参観者が殺到する現実を目の当たりにした思いです。オバの分際で参加していた自分に、何が言えるわけでもないですが。

 今回はカメラマンを免除されたので、ただ座っていたのですが、場所はグラウンドに直に敷いたシートの上。これだけで体力のない私は疲労困憊。長居するつもりではなかったので、帽子は被っていたものの日焼け止めクリームを塗っていなかったため、あとで悲惨なことになりました。手の甲は夜には赤くなっているし。

 今野緒雪マリア様がみてる パラソルをさして(集英社コバルト文庫.2002.212p.438円+税)  [Amazon][bk-1]読了。由緒正しいお嬢様学校リリアン女学園でくりひろげられる少女たちの物語。シリーズ十一冊目。『マリア様がみてる レイニーブルー』のつづき。

 紅薔薇さま(ロサ・キネシンシス)小笠原祥子は車で行ってしまった…瞳子と一緒に。たびかさなる行き違いにとうとう祥子から逃げだしてしまった紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)福沢祐巳は、雨の中、置き去りにされたまま、その姿を見送るしかなかった。ずぶぬれになった傷心の祐巳は、元・白薔薇(ロサ・ギガンティア)佐藤聖に助けられる。

 ああ、やっとつづきが読めた……。
 まだ未熟で自分のことで精一杯の妹たちを、さりげなく支えてくれる元・白薔薇さま、元・紅薔薇さま。こんなお姉さまたちがわたしも欲しかった…(笑)。
 ものすごくへこんだ祐巳ちゃんに訪れるいろいろな出会いのエピソードが優しい。お姉さまはとても大切な心の支え。でも、それだけで毎日が明け暮れて行くわけではないし、出会いがあれば別れもある。でも、それはまたふたたび出会うためのプロセスでもあるのだなと。
 なにより、すれ違いから波立っていた祥子と祐巳のあいだが元通りになってよかったです。

 2002.10.10(木)

 なんだか最近せわしないと思ったら、日記を当日にアップしようとしていたせいでした。
 ここから元のペースに戻りたいと思います。

 スーザン・プライス(金原瑞人訳)エルフギフト 上 復讐の誓い(ポプラ社.2002.301p.1500円+税 Susan Price "ELFGIFT",1995)[Amazon][bk-1
 スーザン・プライス(金原瑞人訳)エルフギフト 下 裏切りの剣(ポプラ社.2002.392p.1600円+税 Susan Price "ELFKING",1996)[Amazon][bk-1]読了。いにしえのイングランドを舞台にくりひろげられる骨肉の愛憎と、猛々しくもうつくしい創造力の物語。

 ブリテン島にあるサクソン人の王国で、ひとりの国王が死の床についていた。王の三人の息子たちが母親である王妃の影響でキリスト教徒となっていたために、多神教を奉ずる王族は王弟アセルリックただ一人となり、王の位は彼が継ぐものと思われていた。ところが、王はいまわの際に「次の王はエルフギフトだ」と言い残す。それは王とエルフの女とのあいだに生まれた私生児の名だった。王の死後、エルフギフトを亡き者とするために、第一王子アンウィンは弟王子ハンティングを送りだした。

 うわー。すごかったー。
 訳者が「この話はファンタジーを越えて神話にせまっている」と手放しで誉めていますが、大げさではないと思います。とくに下巻の後半部分は圧巻。幻想的なんて生やさしい言葉では表現できない、
ごうごうと流れるちからの奔流にのみこまれて、最後は彼岸の岸辺にうちあげられたような感慨が。

 始めのうちは、王位を巡る愛憎劇の様相を呈していますが、エルフギフトの育った農家の描写からしてただ者ではない感じ。こんなに悲惨な農民の暮らしを描いたファンタジーはめずらしいと思います。歴史小説を読んでいるみたいでした。貧しくて不潔で殺伐としたつらい生活のなかで出会う、美しいもの、不思議なもの、力あるものに対する愛憎どちらにも簡単にふれてしまう想いが、奴隷娘エバの心を通して伝わってきます。

 キリスト教が受容される過程での北欧の神々との相克が、女神の視点から見ると人間による地上支配の過程と重なっているようなのが興味深かった。
 現世利益のみを優先するアンウィンのような生き方は、厳しい時代にあっては普通のものだと思うけれど、視野の狭い共感能力に乏しい生き物として、貧しい一生を送ることでもあるなと感じました。

 そうした小説としての奥深さと同時に、不可解で不気味でおそろしくもあり慕わしくもある異界の力があふれだしたような神話的なシーンの連続…エルフギフトが戦士となる異界でのできごとや、異母弟ウルフウィアードとの出会いのシーン。ユルの祭りの夜、兄弟神の剣の舞など…が、ファンタジーを読む楽しさを満喫させてくれました。
 お腹いっぱい。満足です。

移転あれこれ 2002.10.9(水)

 今回の大事業(私にとっては)に関する。ささいなあれこれ。

 最初は無料サーバーを探していた。しかし、目をつけたところは募集停止中だった。それが申し込みメールフォームをサーバーごとに送信してみないとわからないという、非常に不親切な仕組みになっていたので、いちいち送信して不快になっていった。

 つぎに安価な有料サーバーをめぐり、容量が大きいことから某サーバーに申し込みをしようとした。ところが、無料会員になったあとで行う有料会員の申し込みページに、何度クリックしてもアクセスできない。「暗号エラー」と表示されてしまう。パスワードを入力するところはないのに。結局、短気な私はここに見切りをつけ、現在のサーバーに申し込んだ。

 移転するのにわざわざHTMLの書き換えをはじめたのは、もちろんキレイにリニューアルして引っ越したかったというのもありますが、「容量無制限」から「50MB」に移行するに当たって、少しでも無駄を削ぎ落としたかったというのが大きい。できるだけシンプルにというのは、そういうこと。
 一度つくった日記用テンプレートを使いまわしてすべてのページを構成したのだが、いくつものファイルをコピーペースト、検索置換しつづけているうちに、あちこちもっと簡単にできたのではないか…という疑惑がもちあがった。途中で仕様を変更するとまたやり直しになってしまうので、今回は見送り。

 サーバーに申し込みをして試用期間を経、料金の銀行振り込み、サブドメインの設定までは、あいだに日曜を挟んで五日間でした。

 その後、別サイトの移転が二日間で終わったのは、夏頃から移転を想定してファイルの整理をはじめていたからです。なんにも手を着けていなかったこちらの方は、正直言って手と腰が死ぬかと思うほどパソコンに貼りついてようやくなんとかなりました。

 何とかなったあとで、はたと気づいてbk1とAmazonのプログラム規約を確認に。そこでまたもうかつな自分を発見。サーバーの場所確認は、借りる前にしろ。
 あわてて送った質問メールフォームへの返事は、土曜日だったにもかかわらずその日のうちに返ってきた。ありがたや。

 最終的なファイルの容量はこちらで2.2MB。別サイトは4.8MB(頂き物画像が大きかった)。CGIを加えて、現在すでに7.6MB使用中。まだ余裕なのか、もうこんなになのか。

 旧サーバーでの最終的なアクセスカウントは、トップページが9955、日記ページが13867でした。どっちを引き継ごうかと考えたあげく、設置する場所と、開設時からの数字に未練があったのとで、トップページの数字を、昨日までに増えた数字に足しました。

 旧サーバーに残した移転告知は、一ヶ月後をめどに削除するつもりでいます。
 もうすこし長く残した方がいいような気はするのですが、しかし、ブリーダーやアソシエイトのプログラムのからみもあってファイルそのものをサーバーからほとんど削除してしまったし、付属で送信されてくる広告メールの山ですね、あれとはやく縁を切りたいのです。解除したら、すぐにもアドレスが削除されてしまうのだろうか…。

 賀東招二あてにならない六法全書? フルメタル・パニック!(富士見ファンタジア文庫.2002.310p.520円+税) [Amazon][bk-1]読了。学園ミリタリー・コメディー「フルメタル・パニック!」短編集の六冊目。『どうにもならない五里霧中? フルメタル・パニック!』のつづき。

 久しぶりに行った図書館に届いていた、予約本の一冊。たのしく読んだのですが、なぜか内容が頭に残っていない…疲れのせいでしょうか。稲葉瑞樹が椿一成にひとめぼれする「的はずれのエモーション」の、宗介が瑞樹を説得するシーンは、電車の中で読んでいて吹き出しそうになった。テッサが休暇を取って陣代高校に編入してくる「女神の来日(受難編)」が一番可笑しかったかな。

作業終了! 2002.10.8(火)

 きのう、もう自分は移転作業に倦み疲れたかと思っていましたが、予想外に元気だったので、掲示板の設置をしました。シンプルをめざしたサイトデザインにあわせて、掲示板もシンプルイズベスト。
 これで、旧サーバーに告知を出して、このファイルをアップしたら、移転作業は終了です。
 途中で前回移転したときと画面の色合いが酷似していることに気づいてしまいましたが、まあ、いいさ。

ひきつづき移転作業中 2002.10.7(月)

 ひきつづき移転作業。
 だいぶ形になってきたのと、作業が長びいているのとで、ダレてきています。
 bk1とAmazonの登録URLが変更できたので、バナーと検索窓を設置。
 bk1の登録情報も自動で変更できることに気づかず、メールで依頼を出してしまいました。ああ、恥ずかしい。申し訳ない。

 ローズマリー・サトクリフ(灰島かり訳)ケルトとローマの息子(ほるぷ出版.2002.430p.1800円+税 Rosemary Sutcliff "OUTCAST",1955) [Amazon][bk-1]読了。ローマ帝国時代にブリタニア人に拾われて育ったローマ人の少年が苛酷な境遇を生きていくさまを描く、歴史小説。

 ゲイル風の吹き荒れる夜。ブリタニアの海岸で難破したローマの船からたすけられた赤ん坊は、地元の民に拾われた。ベリックと名づけられた彼は、部族のドルイドの反対をうけながらも戦士となる訓練を受けることを許された。しかし、かれが一人前の戦士として認められたのち、部族を不作と疫病という不幸が襲い、ベリックは元凶として部族を追放される。

 ケルトの民として育ったローマ人であるベリックが、艱難辛苦の果てに心にふるさとと呼べるところを見いだすまでの物語。
 とにかく、主役の陥る境遇が苦難の連続で、ここを抜けたらなんとかなるのではという希望がことごとくうち砕かれるさまは、読んでいて胸が苦しくなるほどでした。
 暗い状況で見いだされるわずかな光は、無力なひとびとのささやかすぎる思いやり。暗黒の中でひっそりと灯される蝋燭の火というか、出口のない地下から見上げる青い空のようなというか、わずかな善意が印象的な話です。
 心に深い傷を負ったベリックが自分を守るために身につけた頑なさが、しだいに癒されてほぐれていくようすが淡々と描かれているのが心にしみました。

移転作業中 2002.10.6(日)

 日記ファイルの書き換えからはじめた移転作業も、ようやく最終段階に。

 これまでにしたこと。
 すべてのファイルの仕様変更を終了(たぶん)。
 リンクページの廃止と、最新日記をトップページに掲載することが一番大きな変更。そのほか、著者名索引を二ファイルに分けたりもしました。
 「bibliophiles/書評家組合」リングから脱退。
 bk1ブリーダープログラムとAmazonアソシエイトプログラムに、URLの変更を申し込み。
 
 これからすること。
 読んだ本の感想を書く。
 ブリーダーとアソシエイトへのリンク(バナー)をはって、検索窓をつける。
 元サーバーに移転案内ページをアップする。
 掲示板を設置する。

 掲示板の設置はしばらく遅れるような気がします。もう、だいぶん疲労が増してきて、気力がつきかけているので。
 その間に管理人にご連絡を取りたい方は、別サイトの方の掲示板に書き込んでいただければと思います。雰囲気が違って、戸惑われるかもしれませんが(笑)。もちろん、メールでもけっこうです。
 リンクの不備など教えていただければ、管理人は泣いて喜びます。

掲示板まわり 2002.10.2(水)

 別サイトの移転完了。以前のサーバーに告知をアップして、ファイルを削除。その後、リンク先のサイトへ移転を知らせてまわっているうちに、半日過ぎておりました。
 ゆえに、こちらの作業はまたも持ち越し。

眼精疲労だけど 2002.10.1(火)

 とうとう有料サーバーと契約してしまったため、移転作業を本格化させてます。
 先週は、けっきょく別サイトの方に絞ってファイルの整理をしていたので、こちらはほとんど手つかず。あちらはなんとか目処がたったので、明日からは日記ファイルの山に突撃します。しばらく更新できないかもしれません。

 ジョアン・ハリス(那波かおり訳)ショコラ(角川書店.2001.356p.1005円+税 Joanne Harris "CHOCOLAT",1999)(文庫版[Amazon][bk-1])読了。フランス南西部を舞台に、流れ者の母娘のひらいたチョコレート屋によってかわってゆく地味な田舎町の四十日あまりを描く、マジカルな物語。

 謝肉祭(カーニバル)の日。二十代半ばのヴィアンヌ・ロシェと娘のアヌークは、フランス南西部のランスクネ・スー・タンスという小さな村にやってきていた。住民は二百人くらい。通り過ぎられてすぐに忘れ去られてしまう、現実には存在しないかのようにめだたない町。ふたりは目抜き通りに店舗を借り、チョコレート屋をひらいた。もしかすると、ここにはとどまれるかもしれない。そんな期待を抱きながら。

 マジックリアリズムっぽい、不思議な雰囲気のおはなし。
 舞台は現代なのに、みょうに時代がかっている。教義に厳格な教区の主任司祭フランシス・レノーとその偽善的なとりまきたちと、レノーからすれば教え導くのに苦労ばかりさせられている魅力的な老婆アルマンドのようなひとびととの間にあった対立が、流れ者であるヴィアンヌたちへの応対により一気に顕在化させられて、村には不穏な空気がただよっていく。そのようすが、手作りチョコレートの店「ラ・セレスト・プラリーヌ」のさまざまな風味のチョコレートと、ひとの心を感じとる魔女ヴィアンヌのふしぎな力とに彩られて、雰囲気のある解放の物語になっているとおもいます。

 チョコレート屋を盗み見つつ断食をエスカレートさせていく、フランシス・レノーの頑なぶりがひとつ突き抜けていて可笑しいくらいでした。


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