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2006.2.7 /『オートマート』
2006.2.9 /『風の王国 月神の爪』
2006.2.12 /『竜とイルカたち パーンの竜騎士9』
2006.2.17 /『燃えるワン・マン・フォース フルメタル・パニック!』
2006.2.19 /『ライラエル 氷の迷宮 古王国記II』
2006.2.26 ブログ変更/『彩雲国物語 光降る碧の大地』
2006.2.27 /『アゴールニンズ』
 2006.2.27(月)

 ジョー・ウォルトン(和爾桃子訳)アゴールニンズ(早川書房.2005.382p.1900円+税 Jo Walton "TOOTH AND CLAW",2003)[Amazon][bk-1]読了。ヴィクトリア朝風の異世界でドラゴンたちが泣き笑い怒り恋をする、ウィットの効いたユーモア小説。2004年度世界幻想文学大賞受賞作。

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 ボン・アゴールニン啖爵の臨終が迫り、血族は食堂に集まっていた。慣例に従い、遺骸は遺族によって分けられることになっていたからだ。ドラゴンは身体の大きな同族を食べることでより大きく成長する。そして身体の大きさはかれらのステータスを大きく左右するのである。ボンの遺志によれば、かれの遺骸はまだ年若の子供たちにより多く分けあたえられるはずだった。ところが、長女の夫デヴラク士爵が合意分を大幅に超えて遺骸を食べてしまうという事件が発生。その場は険悪な雰囲気につつまれたが、ある事情により子供たちはデヴラクに強行に抗議することができなかった。その後、当主のいなくなったアゴールニンの一家はばらばらになり、仲のよいセレンドラとヘイナーの姉妹も、姉の婚家デヴラク士爵家と教区牧師の兄の家に分かれて身を寄せることになった。姉妹に持参金として残された黄金はたいしたものではなく、良縁は期待できそうもない。ふたりは、どちらかが嫁ぐときには持参金をひとつにまとめて一緒に暮らそうと約束して、あらたな生活へと旅立つが……。

 まさにヴィクトリア朝小説。登場するのがドラゴンなだけに遺産の取り分が遺骸だったりして(しかも食用だ)物騒度はかなり増してますが、それでもこの本の雰囲気は、人間の出てくるヴィクトリア朝小説と変わらない。家格とか身分とか体面とかが何よりも大切で、女性は守られて慎み深く出しゃばらずという厳格かつ不自由な風潮と、かならずしもそうとは限らない実態との齟齬が生み出すてんやわんやのあれこれが、最後に痛快な展開で収束する群衆劇です。

 中で軸となるのは、ボン・アゴールニンの遺骸の取り分をめぐるアゴールニン一族とデヴラク士爵の対立と、娘たちがそれぞれに身を寄せた先で出会う恋の行方でしょうか。娘たちの世話を焼くかわりにちゃっかり自分の身の保証をとりつける乳母とか、しっかりもののだけど茶目っ気のある牧師の妻とか、放蕩息子を自分の意にかなう申し分のない娘と結婚させようと画策する貴族の未亡人とか、専横的な夫に追従するばかりの姉とか、登場人物……じゃない登場ドラゴンも、こうした時代小説によくあるパターンを踏襲していて、期待された行動を期待通りに演じて楽しませてくれます。あんまり意外性はないですが、こういう話が好きで、それをドラゴンで読むのに抵抗がないむきにはたいへんおもしろいのではないかと思いました。私は好きです、こういうの。ドラゴンが信仰生活を送っているというのがどうも感覚的にヘンだなあとか思ったり、それをいうならファンタジーであるという気分もまったくしなかったけど、なかなか楽しく読みました。

 ただひとつ、残念なのは訳文がどうも私の呼吸に合わないということで、原文はどうだかわからないけれど、同じ訳者のべつの翻訳本の時にもおなじような違和感がつきまとったことを思うと、どうやら私とこの訳者は相性が悪いのかもなあという結論にいたってしまうわけですが。句読点の位置とか語順とかのごく些細なところなんですが、なんか気になってしまうんですよね……。文章のリズムって、ひとそれぞれなんだなあとあらためて感じたことでした。

ブログ変更 2006.2.26(日)

 近況メモとして使用しているブログを変更しました。こんどは無料レンタルもの。いままでは自力設置していたのですが、サーバー残量が不安になってきたので思い切って決行しました。
 引っ越し先はこちら→【Reading Diary-MEMO(仮)
 いままでのログはそのまま置いておきますので、引っ越し先にも移しておりません。移そうと思ってやってみたのだけど、ところどころ文字化けするんでやめました。

 雪乃紗衣彩雲国物語 光降る碧の大地(角川ビーンズ文庫.2006.255p.476円+税)[Amazon][bk-1]読了。立派な官吏をめざすしっかりものの女の子とくせ者揃いの臣下たちの、中華風異世界ファンタジーシリーズ、九冊目。『彩雲国物語 心は藍よりも深く』のつづき。

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 蔓延する伝染病と女州牧への悪意ある流言に茶州は混乱していた。王都におもむき、考え得る最良の手段を全力で整えた秀麗は、救援の医師たちとともに一路茶州をめざす。だが、たどりついた虎林郡で病に追いつめられたひとびとは、秀麗を生け贄にしなければ病は終わらないと詰め寄る。いっぽう、ひとり山奥の村に入った影月は、こつぜんと姿をしていた。かれは、最愛の恩人の華眞のすがたを追っていった先で邪仙教によって拉致されていたのだ。邪仙教の目的は、影月の片割れの陽月だった。

 影月編その三は完結編。
 怒濤の展開でぐわーっと一気読みしました。読み終えて、ああおもしろかった、充実、満足。出てくるみんな、大好きだよー、秀麗も影月もけなげで頑張りやでかわいいうえに有能だし! と楽しく終わりたかったのですが、だったらさっさと感想書いておけ、忘れる前に! という感じです。

 というわけでふたたび読み返してみたわけですが、ものすごくテンポがよいのとキャラクターの心情が痛いくらいつたわってくるのでなんとも思わないのだけど、描写とか説明とかはかなりシンプルなんですよね、この話。あらためて考えてみると、名前と役職と官僚機構からイメージが中国である以外に、この物語の舞台が具体的にどんなところなのかを書いてあるところってあんまりない。ストーリーに関係ない些末なことは極力削ってシンプルにというスタンスなんだと思う。

 そしてさらにつよく思うのは、世界だけでなく物語の根幹にかかわってくるのではと思われる彩八仙関係の文章が、たぶん意図的なんだろうと思うけどものすごく断片的だってこと。明確なのは感情だけで、出来事の輪郭はぼかしているような遠回しな描き方で、雰囲気はあるのですが、下手をすると前作のできごとを全部忘れていることもありうる私のような読み手にとってはちょっと辛いような。盛りあがってるときにその意味が理解できないのって寂しいです(汗。いや、ちゃんと覚えてりゃいいだけなんだけど。

 つまり、この話のメインは秀麗の成長と彼女を取りまくひとびとの心理なんですよね。はっきりきっぱり、少女小説だなあとおもうのはこういうところです。理詰めなようでじつは物事が感情で動いていく世界。庶民的だけれど、情に厚く、志の高い秀麗が象徴するように、じつにひたすら純粋な理想の物語。王様の辛いのも根っこは多分この部分。この潔癖な世界の中では、状況に流されての安易な妥協なんてゆるされないなーと感じます。どうなるんでしょうねえ、結末は。

 ともかく、このシリーズ、とてもつづきを楽しみにしております。ネオロマンス風世界設定だけど、大方の読み手と違って私はおにーさんたちとの恋愛はどうでもよく、秀麗がひとつずつ階段を上がっていくさまが楽しみ。ひとつのエピソードが終わるたびに、未来からの視点で秀麗のこれからが暗示されるのに煽られます。このあとはまた王都が舞台になるのなら、あわれな王様の出番が増えるでしょうか。私が待っているのは黎深さんの出番ですが(笑。

 2006.2.19(日)

 ガース・ニクス(原田勝訳)ライラエル 氷の迷宮 古王国記II(主婦の友社.2003.669p.3200円+税 Garth Nix "LIRAEL",2001)[Amazon][bk-1]読了。現実と似た世界と魔法に満ちた世界をゆききしつつ、邪悪なネクロマンサーと少年少女の戦いを描く異世界ファンタジー。「古王国記」の第二巻。『サブリエル 冥界の扉 古王国記I』のつづき。

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 女ばかりの先視の一族クレア族のなかで、ライラエルは孤独だった。父親は不明。母親は遠い土地で客死をした。金髪ばかりのクレアのなかでただひとり黒髪をもち、種族特有の先視の力もあらわれない。血の繋がった叔母ですら彼女には冷ややかだった。年下の少女たちがつぎつぎと成人するなか、十四才の誕生日を迎えても目覚めを迎えられなかったライラエルは、失望のあまり死を考える。ところが、自殺しようと向かった〈星の門〉で古王国の王とその妻であるアブホーセンの来訪に出くわし、かれらとクレアの実力者である九日守たちの切迫したやりとりを聞いてしまう。その後ライラエルはみつかって盗み聞きを咎められるが、不運な境遇を憐れまれ、図書館で見習いとして働くように命じられる。
 それから五年後。古王国から壁を隔てたアンセルスティエールで、古王国の王子サメスがクリケットの試合の帰りにネクロマンサーのあやつる奴霊たちに襲われるという事件が起きる。

 異世界のディテールをこまやかに魔術的に再現する、臨場感たっぷりの異世界ファンタジー。氷河の下に暮らすクレア族の大図書館とか、チャーター魔術によるスキンのつくりかたとか、いろいろとわくわくさせられる舞台や小道具がてんこもりです。魔法の気配もさることながら、音の響きが聞こえてくる。雰囲気的にはとても好きなお話でした。

 というものの、細部に力が入っているいっぽうで、ストーリー展開にはちょいと難あり。669ページも使って話が佳境にも入らないというのはどうなのかと、ディテール大好きの私ですら思います。私は借りて読んだから懐は痛まないけれど、ハードカバー3200円の価値があるかと問われると答えに窮する。私的にはものすごく楽しいんだけどストーリー的にはなんとなく脇道っぽいところがけっこう多いんですよ……このあとの巻を読んでから考えるとさらにそう感じる。この魅力的ないろいろを削れなかった気持ちはわかるけど、そのいろいろがもっと意味のあるものになる構成はなかったもんかしら。このいろいろとそのあとの話が上手く結びついていない気がするんですよね。前日譚というより、ここだけ別エピソードみたいな雰囲気。なんだかすごくもったいないなーと感じてしまったお話でした。

 2006.2.17(金)

 賀東招二燃えるワン・マン・フォース フルメタル・パニック!(富士見ファンタジア文庫.2006.302p.520円+税)[Amazon][bk-1]読了。SFアクションラブコメディーシリーズ「フルメタル・パニック!」の長編第七作。『つづくオン・マイ・オウン フルメタル・パニック!』のつづき。

フルメタル・パニック! 燃えるワン・マン・フォース

 シリーズものにつき、既刊のネタバレをたくさん含みます。

 東南アジアの一都市ナムサク。政情は不安だが商業都市として活気づくこの街では、アームスレイブによる賭けプロレスが不法におこなわれていた。〈アマルガム〉に護衛していた少女千鳥かなめを奪われ、〈ミスリル〉の皆は消息不明。ただひとり生き残り、つてをたどってナムサクにたどり着いた相良宗介は、少女ナミの所有するアームスレイブの操縦者として、賭けプロレスに出場することになる。

 コメディーというにはちと重たくなってしまいましたが、長編第七作。
 ひとりになってしまった宗介の、それでも前へ進もうとする孤独な戦い。ちょっとだけ過去が明らかになったりして、今回は宗介ひとりの物語でした。たぶんこうなるだろうなあとは思っていたけれど、葛藤と焦燥と渇望に満ちたハードな展開でありました。いやー、傷心の宗介はかっこよかったですね。それもかれと彼女の住む世界の違いを表現しているわけで、可哀想といえば可哀想、つらいといえばつらいのですが、それすらもが読み手を煽るための仕掛けのようで、ああ憎たらしい。というか楽しすぎだ〜。ずっと麻痺して不感症のように描かれていた宗介の心情が、最後の最後にきて吐露されるところにはぐっときましたです。

 それと今回のもうひとりの主役は、おんぼろアームスレイブのサベージですね。サベージの時代遅れの部分と今でも通用するタフさが相まって、宗介の並はずれた能力がクローズアップされるという、おいしいシーンがてんこもり。最新鋭機のガーンズバックがどれだけ凄かったのかもよくわかるし、それになんとか勝ってしまうシーンは、これはもう判官贔屓にはたまらない爽快さでした。

 発売日にわざわざ本屋に行って買ってきたんですが、これを書くのにあたってまた読み返してみたりしてました。この本、ツボ過ぎ。始めのほうの例によって侮られる宗介のエピソードはやっぱりおかしいし。三人でホテル住まいをするあたりはいつもの調子だし。全編どシリアスというわけではないところがまた好きだなー、と思います。ああ、つづき読みたい!

 2006.2.12(日)

 アン・マキャフリイ(小尾芙佐訳)竜とイルカたち パーンの竜騎士9(ハヤカワ文庫SF.2005.472p.820円+税 Anne McCaffrey "THE DOLPHINS OF PERN",1994)[Amazon][bk-1]読了。惑星パーンに入植して2500巡年。ドラゴンと心を通わせる竜騎士とひとびとの活躍を描くシリーズ、第九作。『竜の挑戦 下 パーンの竜騎士8』のつづき。

竜とイルカたち バーンの竜騎士9

 シリーズものにつき、既刊のネタバレがたくさん含まれています。

 人工頭脳アイヴァスがもたらした過去の技術は、退行していたパーンのひとびとの生活を大きく向上させてゆく。そんなおり、パラダイスリバー城砦太守の幼い息子リーディスは、伯父のアレミと釣りに出かけた海で遭難しかけ、ひとの言葉を話すイルカたちに救われた。かれらは人類が入植するときに同時に連れてこられたイルカの子孫だった。アイヴァスにより、かつては人間とイルカがパートナーとして支えあっていたことがわかり、人間たちはふたたびイルカとの交流を試みることになった。しかし、リーディスは危険を恐れた母親によって、イルカに近づくことはおろか、ひとりで海に行くことさえ禁じられてしまう。

 前作と同じ時期のパーンを別角度から描いた作品。長い年月を経て再会した人間とイルカたちの、あらたなパートナーシップの物語です。人間の言葉をあやつるイルカたちのさまざまな能力にわくわくし、人間をずっと見守ってきていたことに感動します。雰囲気的にはすっかり未来SFになりましたですねえ。

 このお話の主人公はたぶん、海とイルカに魅せられたリーディス君。子供の熱意と才能が保護者の無理解にくじけそうになる、というのは以前描かれたかれの叔母メノリのお話とおんなじパターンですが、艱難辛苦乗り越えて自分の人生を切りひらいていくすがたがじつに爽やかでした。こういうストーリーを書かせるとマキャフリイはほんとに上手いなあ、と思う。いつものことですが、物語の展開がおおらかで明るいので大変読みやすかったです。

 残念だったのは、パーンの物語の大枠がかなり大きくなっていて登場人物も多くなり、ほとんど群像劇の様相を呈していること、かな。古くからの読み手にはそれが楽しいのですが、リーディスの物語としてはもうすこしいろいろとかれだけのエピソードとかふくらみが欲しかった。ポイントは押さえているので、物足りないと言うことはないんですが。

 あと、驚いたのはベンデン大巌洞の女王竜ラモスがすっかり大人になっていること。言葉遣いがなにやらお上品ですよ。最近出番が少ないですが、あのおちゃめな感じはもう読めないのかなと思うとちょっと寂しい。

 2006.2.9(木)

 毛利志生子風の王国 月神の爪(集英社コバルト文庫.2005.302p.533円+税)[Amazon][bk-1]読了。チベットの王に嫁いだ唐の公主の姿を描く、少女向け歴史ロマンス小説の五作目。『風の王国 竜の棲む淵』のつづき。

風の王国 月神の爪

 唐の公主として吐蕃の王に嫁いで一年。王リジムの愛を受け、異国の土地にも馴染んできた翠蘭だったが、心は不安なままだった。彼女は自分が偽公主ではないかと疑われていることを知っていた。そして、それは事実なのである。リジムの父ソンツェン・ガムポ大王に召喚された翠蘭は自分が偽公主であることを正直に告げようと心に決める。ヤルルンをめざすリジムたちの一行に出迎えの使者が訪れた。温厚誠実な執務補佐次官ガクレキュンはリジムとは旧知の間柄であり、その息子セデレクは幼なじみだった。王の命令で、一行は静養中だという王妃をともなうためにリゥの谷に立ち寄ることになった。

 勢力争いに翻弄されるひとびとを背景に、ヒロインとヒーローの絆を描く、歴史ロマンス小説。

 ひとつの国をまとめて維持するのはとってもたいへんなのねえ、というお話がひきつづき。内部の争いにもれなく外国とのかけひきがくっついてくるのが面倒ですね。地方騒乱に翠蘭が巻き込まれる話はいったいいつまでつづくのかと思うけど、それがなくなったらこのシリーズはおわってしまうのかなとも思う。つまり私は、歴史への無知も手伝ってこのシリーズの行く先が皆目わからないわけですが、波乱の展開を見せられても目標が定まらないと居心地が悪いというか、おなじところをぐるぐるとまわっているような気分になっている。結末はどうなるのでしょう、このシリーズは。といって、知ってしまったらそのまま興味が失せてしまうような気もするしなー(汗。

 翠蘭とリジム以外の登場人物があまりふたりの感情に深く食い込んでこないのも、淡泊な感じを受けます。お話自体はよどみなく展開し、たいへん読みやすく、ハラハラドキドキさせてもらいましたが。翠蘭が死にそうな目にばかり遭うのに、これじゃあいくら若くても身体が持たないよなあ、ちゃんと子供が産めるのかしらんと思うのに、そのことがあんまり身近に迫って感じられない。どうも作者の人物への距離感は私の期待するものより遠いみたいです。少女小説というより、歴史小説の視点なのか。だから話はあっさりとした雰囲気で感情をひきずらず、一冊ずつの独立性は高い。鳥頭でもこうして読み続けられるのはそのおかげかもしれないというわけで、痛し痒しなのですよね。うーん。

 今回は、ようやくご登場のソンツェン・ガムポ大王の貫禄と迫力を楽しみました。リジムとの会話に萌え。今後のご活躍を期待しています。

 2006.2.7(火)

 七瀬砂環オートマート(講談社X文庫ホワイトハート.2005.222p.550円+税)[Amazon][bk-1]読了。近世ヨーロッパ風異世界ファンタジー。

オートマート

 “皇帝の心臓は機械、心は歌、体は城でできている”
 皇帝の病を『直す』職人を求める触れに応じ、時計職人の弟子アルトリッツは帝都へと旅立った。両親亡き後そだててくれた伯父には感謝していたが、自分の腕と運を試したかったのだ。街はずれの皇帝の居城では、気鋭の宮廷建築士カロディノがかれを迎えた。皇帝のために城を造るカロディノに認められておかかえ職人となったアルは、驚くべき歌をうたう美少女リザメアと出会う。

 距離を置いた硬質な文章で描かれる、帝国の斜陽と少年の成長物語。
 きらびやかなイラストと舞台装置に小道具に美形の登場人物をみて、はじめ私は闇にうごめくダークな錬金術の話なのかと思っていたのですが、皇帝の謎を解明するようなことにはならなくて、意外にもよりどころを求める若い魂のまっとうな自分探しの話だった。この分量で、それなりにひろがった話がきちんとまとまっていて、破天荒さはないけれど、端正なお話だったなあと思います。読後感が爽やかでした。イメージとしてはオーストリア。都はウィーンかな。


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