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2003.1.1 あけましておめでとうございます/『鳥姫伝』
2003.1.3 寒い三が日/『時の娘』『ロミオとロミオは永遠に』
2003.1.5 正月休みの終わりに/『サブリエル 冥界の扉 古王国記I』
2003.1.7 今年初めて/
2003.1.8 メールソフトとADSLとブラウザ/
2003.1.9 チューリップ三昧/『水晶のピラミッド』
2003.1.11 ADSL乗り換え/『錬金術師の魔砲 上』『錬金術師の魔砲 下』
2003.1.13 姪はやっぱりショートケーキ/
2003.1.14 迷惑な贈り物/『風姫 天を継ぐ者』
2003.1.16 マウスが嫌い/『夏休みは命がけ!』
マウスが嫌い 2003.1.16(木)

 しばらくぶりに図書館へ。年を超えて借りていた本を大量返却。おもかった。
 図書の検索システムが新しくなってましたが、Windows上で動くものになってて、マウスで画面移動するのがつらい。Mac用マウスすら使えない私に、どうやってツーボタンマウスを使えというの。しくしく。

 漆原友紀『蟲師 2』[Amazon][bk-1]を購入。

 とみなが貴和夏休みは命がけ!(角川スニーカー文庫.2002.330p.648円+税)[Amazon][bk-1]読了。男子高校生が夏休みにヤバイ事件に巻き込まれる話。

 夏休み。高校生の瓜生高明は、だらだらと毎日を送っていた。ある日、ファーストフードの店で中学同級生たちと昔話に興じていた瓜生は、昔なじみが不登校になった話の途中で強い視線を感じて顔をあげた。話のネタにされていた五郎丸諒の妹、綾が彼らを――とくに瓜生を強く睨んでいたのだ。綾は兄を笑い話にしたと瓜生を責め、家庭内の不安を訴えるとともに、瓜生に兄を励ますこと約束させる。中学にあがったころから疎遠になってしまった遊び友達の五郎丸は、県会議員の祖父を持つ、鼻持ちならない性格の少年だった。正直言って、瓜生にかれと会いたいという積極的な気持ちはない。しかし、瓜生は綾の心証を悪くすることを怖れて、五郎丸と会うことにした。

 群馬の中途半端にひなびた都市から大都会東京にやってきた男子高校生が、自殺をほのめかし、キレてしまって何をするかわからない幼なじみの少年を追いかけて、さまざまな困難にあいながら大追跡をつづけるひと夏の大冒険。かなり物騒な。
 主人公の瓜生高明は、ごく健康な精神を持ったふつうの少年。かれが美少女綾の機嫌をとるためにと自分に理由をつけて、必死になって五郎丸を追いかけているところは、やくざが出ようが不法就労者がいようが怖い中国人が出ようが、とにかく健全な青春ものという雰囲気です。
 が、祖父に支配されて育ってきた五郎丸のほうはかなり病んでます。自分をとりまく世界に恨みを持っていて、世間に仕返しをしてやりたいと極限で思いつめている、そのようすがやたらリアルで怖いです。五郎丸の行為にふりまわされる裏社会の人間たちも、みょうにリアルだし。さすがに『EDGE』の作者。物語世界に厚みが感じられます。
 そして、この話、たんなる和解と再生の話ではありませんでした。読後感は不安な感じ。『EDGE』シリーズの行く末まで不安になってしまった。

迷惑な贈り物 2003.1.14(火)

 一週間くらい前からウィルス付のメールが頻々と舞い込むようになりました。
 見知らぬアカウントから、英語の件名で、サイト用に公開しているアドレスへとやってくる。
 これはやっぱり、当サイトへお越しになった方がウィルスに感染なさったと考えた方が妥当でしょう。ページに載せてあるアドレスの書き方も考えなくちゃいけないな。とりあえずこのページの下の分は、一部を全角にしてみました。他のページも変えなきゃ、意味ないんですけどね。

 贈られて…じゃない、送られてくるウィルスは、添付されてくるファイル名を見ると、どうやら悪名高いKLEZのようでございます。
 こういうときにWindows用ウィルスの感染しないMacを使っていてよかったと、心底思うのでありますが、マシンに入れているアンチウィルスソフトはこのKLEZにまったく反応しないのですよ。感染しないから、いーじゃん、ということなのか。読み終えたメールを捨てるのと一緒にやってるから手間はそれほど変わらないのですが、なにか釈然としないです。

 もうひとつ。デマウィルスというのもあるんですね。Winマシン内に当然組み込まれているファイル「jdbgmgr.exe」をウィルスだと偽って警告してくる、知識があればどうということもない、ウィルスというのもなんだかなチェーンメール。
 先日、家族がこのいんちき警告メールを真に受けた知人から警告を受け、さらに真に受けました。そして慌てて私のマシンも調べるようにせっついてきました。いったい何のウィルスですかとトレンドマイクロで調べてみたらデマ。デマだから放置するようにと注意しにいったら、すでにWindowsのファイル「jdbgmgr.exe」を削除していました。あーあ。
 ウィルス対策をソフトだけに頼っていてはいかんという、見本のような出来事でした。

 七尾あきら風姫 天を継ぐ者(エンターブレイン.ファミ通文庫.2002.287p.640円+税)[Amazon][bk-1]読了。山育ちの退魔師の少女が主人公の、「青春アクションファンタジー」。

 退魔師の鳳一族の宗家の一人娘ちはやは、十六歳。山で物の怪たちとともに生活していた彼女は、憧れの高校生活を送るため、都会へ出た。ところが、まず祖父から挨拶にいくよう命じられた桜の宮のヌシとの会見で、鳳一族と妖狐との命がけの契約をしらされる。その後、迎えに来るはずの親戚筋の少女、日菜のかわりにやってきたという少年は、敵意に満ちたまなざしでちはやを睨み、言い放った。「今すぐ、この街から出ていけ」

 もの凄く強くて、綺麗で、あかるい女の子が主人公で、あっけらかんとした楽しい話なのかなと思いきや、かなりハードで痛くてせつないお話でした。
 そしてとても密度の濃い、中身の詰まった話だった。
 どこをつまんでも餡がつまっていて、なおかつ皮にも砂糖が入っているお饅頭のようでした(どういう例えだ)。読んでいると充実感がありまして、歯切れのよい文章での描写のいちいちに感心しておりました(とくに、ちはやの戦闘シーンなど臨場感たっぷり)が、欲をいうともう少し肩の力をぬいてほっとできるようなところが欲しかったです。ずーっと緊張感が持続するので、少し肩が凝りました。ともあれ、面白かった。続編があるらしいので、また借りてきます。

姪はやっぱりショートケーキ 2003.1.13(月)

 妹と姪と私の三人で、先月とおなじケーキ屋に行って、ケーキセットを食べてきました(甥はじじばばと留守番)。福引きで当てた千円券二枚を消費するためです。先月は昼食後に頼んで食べきれなかったため、今回はすこし早めにかるい昼食を済ませて出かけるという念の入れよう。私たち、ずいぶんと無念だったのですね、あの食べ残しが(笑。

 誤算だったのは成人の日だったこと。
 1月15日じゃなくなってから、この日は、新成人以外にはただの祝日になりつつあるような気がするのですが、私も例外ではなく、気づいたのは前日に約束をしたあとでした。
 混んでるんじゃないかなと予想はしていたけれど、ケーキ屋は他の場所とくらべても一段と混んでました。式典を終えたあとにやってきたと思われる振り袖率の高いこと。さすがに全国一成人の多い式典の催される政令指定都市です。なんか、新成人自体の振り袖率そのものが、ずいぶんと高い気がしたのですが、ともかく、席に着くのに四十分も待たされることになろうとは。姪がいるからと禁煙席を希望していたため、よけいに待たされることになって、喫煙席で手をうっときゃよかったと後悔しました。

 後悔といえば、ケーキは美味しかったけど、記憶以上に胃にもたれまして、胃薬を持参しなかったことをのちに悔やみました。私の胃も、ずいぶん弱くなったものです。二十数年痛み止めを飲みつづけた結果だからしかたない。レアチーズケーキを頼むのは、もうやめよう。

 漆原友紀『蟲師 1』[Amazon][bk-1]を購入。

ADSL乗り換え 2003.1.11(土)

 ADSLを乗り換えました。料金はほとんどおなじで1.5Mが8Mに。さらにプロバイダ料金が不要に。モデム設定とルーター設定に、いつものごとく半日費やしましたが、なんとか無事に接続できました(それにしてもうちにはモジュラージャックが存在しなかったなんて、初めて知った。前回はNTTのひとがやってきて接続してったので)。
 動作保証外のOpenTransportですが、ルーターが介在しているせいか、いまのところちゃんと繋がってます。もし、これでPowerBookがイカレたりしたら困るけど、とりあえず様子見。

 J・グレゴリイ・キイズ(金子司訳)錬金術師の魔砲 上(ハヤカワ文庫FT.2002.351p.720円+税 J.Gregory Keyes "NEWTON'S CANNON",1998)[Amazon][bk-1
J・グレゴリイ・キイズ(金子司訳)錬金術師の魔砲 下(ハヤカワ文庫FT.2002.367p.720円+税 J.Gregory Keyes "NEWTON'S CANNON",1998)[Amazon][bk-1]読了。
 18世紀のヨーロッパを舞台にした歴史改変ファンタジー。

 十八世紀初頭のニュートンが錬金術を実現した世界。黒い天使の加護を受けたフランス王ルイ十四世は、「ペルシャの秘薬」によって死の病から生還した。イギリスとの戦争で劣勢に立たされるようになった彼は、ニュートンの弟子であったという科学者ファシオ・ド・デュイリエの進言する兵器、ニュートンの大砲の開発を決定する。
 自然科学に並々ならぬ関心を抱く若い女性アドリエンヌは、ファシオの秘書となり、ニュートンの大砲がいかなるものであるのかを探り出そうとするが、ルイ十四世に見初められ、宮廷内の陰謀にまきこまれてしまう。
 一方、新大陸アメリカのボストンでは、ベンジャミン・フランクリン少年が貧しい生活や兄の仕打ちにめげずに向学心を燃やしていた。

 ニュートンとルイ十四世とフランクリンて、同時代人だったんですか。
 というのが素朴すぎる感想。
 ルイ十四世は本来死んでるはずのところで生き延びたので、同時代人とはいいきれないかもしれないが。
 たとえば国が違うだけで、同時代の出来事と認識するのが困難だったりするのは、歴史の勉強を一面的にしかしてこなかったからだと思う。一国の流れだけを追いかけていると、まわりの状況は見えません。あと、科学史だけ別立てて学んだりすると、科学が時代の中で果たした役割が実感できないし。

 物語はフランスのマドモワゼル・アドリエンヌを焦点とした宮廷絵巻と、アメリカのベン・フランクリン少年の科学的・将来的試行錯誤の末の破綻を、ニュートンの大砲にまつわる謎をやりとりする<エーテルスクライバー>(親和力によって動くファクシミリのようなもの)でつなげて進んでいきます。
 フランスパートはマッキンタイアの『太陽の王と月の妖獣』を彷彿とさせるロマンス要素有りの陰謀劇。アドリエンヌの護衛のスイス兵の出自も凝ってます。
 アメリカパートは、ちょっとホラーめいている気が。ベンがイギリスへ渡ったあとではニュートンの弟子たちがでてきてにぎやかになりますが。
 二分冊されていますが、最近ハヤカワ文庫は活字が大きいのでそんなに分量は感じませんでした。むしろ、ふたつのパートが入れ替わるのが充分の一歩前で行われている気がして、もうすこしじっくりと読ませて欲しいような気分だった。全体的に明るくて湿度がないのは、このテンポの速さのせいだったのかも。ニュートンの大砲の正体が明らかになったあとでは、さらに加速。ラストのあたりではとある映画を思い出しました。題名を出しただけでネタバレになるので明言しませんが。

 四部作のはじまりの一冊。謎だらけで終わってます。ロシア皇帝もスタンバイ中。つづきが気になりますが、出るんでしょうね?

チューリップ三昧 2003.1.9(木)

 喉風邪が鼻風邪に移行。
 呼吸困難と胃腸の違和感をおぼえつつ、折り紙と格闘しました。折り紙パッケージに同封されていた作り方を見て、チューリップを作れと姪が命令するのです。あんた、どうしていつもそんなに威張っているの。
 花と思って折りすすんでいたら、茎と葉っぱだったというのは頭酸欠状態をものがたるエピソード。できあがった葉っぱを花に作り替えろという姪は、非効率この上ない横暴園児です。できあがった折り目がたくさんついた銀のチューリップ(茎と葉は金)をいそいそとテレビの隣に飾ったかとおもうと、ピンクと赤の折り紙を持ってきて「あとふたつ作って!」

 島田荘司水晶のピラミッド(講談社文庫.1994.742p.895円+税)[Amazon][bk-1]読了。ミステリー。エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドをめぐって起きる怪事件。

 アメリカ。メキシコ湾沿岸のビッチポイントで怪物が目撃された。いっぽう、おなじビッチポイントの岬で、奇怪な死に方をした男性の遺体が発見される。地上三十数メートルの塔の最上階で、兵器で財をなしたアメリカ有数の実業家リチャード・アレクスンは溺死していた。塔のある岩島はエジプト島と呼ばれており、ギザの大ピラミッドを模してつくられた大ピラミッドがあった。それは死んだリチャードの兄、エジプト学者のポールが建てたものだった。

 トリック小説。探偵御手洗潔シリーズの一冊であるらしい。著者の本を読むのは初めてなんですが、いつもこういう感じなのでしょうか。だとしたら、私には合わないと思いました。延々説明される密室の状況とか、エジプト島のピラミッドの描写が、あたまのなかでぜんぜん絵になってくれない。まあ、そういうところは読み飛ばしても、あとで何度も繰り返されるので状況がつかめないということにはならなかったんだけれども、奇抜なピラミッドの謎解明部分と、肝心の殺人事件が乖離しているのに違和感を覚えてしまう。
 やっぱり、私には本格推理ものは向かないんだな〜。しみじみ。
 もともと古代エジプトパートを読むために借りたようなものだし、ピラミッドの謎のところはううむとうなったので、まあいいか、という気分ではありますが。
 気になったのは、御手洗が住んでいるという横浜馬車道から歩いていける映画館のある街といったら伊勢崎町ではなくて伊勢佐木町じゃないのということでしたが、考えてみればこれはフィクションだからパラレル馬車道のそばにあるのは伊勢崎町であっても別にかまわないわけです。読んだのは2000年の第13刷だから、その可能性はけっこう高いかも。

メールソフトとADSLとブラウザ 2003.1.8(水)

 朝っぱらから「うわあ」と悲鳴をあげたくなる出来事発生。
 私はEudora 4.3Jというメールソフトを広告を表示することで使用料が無料となるスポンサードモードで使用していたのですが、最近、広告表示がうまくいかないのか、エラーが頻発。そのたびに「開発販売元のサイトへ飛ぶ」というダイアログに従っていちいちサイトを開く必要に迫られるようになっておりました。そこのFAQには、「あらためてスポンサードモードを選択」すれば大丈夫、と書いてあったので、エラーが出る度に「スポンサードモードを選択」していたわけです。

 ところが、忙しいときにサイトへ飛ぶ過程を省いていたのがまずかったらしく、本日、最初に立ち上げたときに突然「ライトモードへ移行します」と宣告されてしまいました。ライトモードというのは機能制限バージョンですね、つまり。
 「ええっ、うそ」とびびりつつも、また選択し直せばいいんでしょと高をくくっていた私は、「スポンサードモードが選べない」という事態に青くなりました。選択するボタンが押せないようになっているのです。FAQには、こんな事例は書いてありません。

 古い雑誌付録のCD-ROMからインストールし直してみましたがだめ。初期設定を破棄しようかと思いましたが、機能拡張フォルダに初期設定ファイルがみつかりません。書類フォルダの中にあるEudora Folder(メールデータやアドレスデータなどが一括収納されている)のなかのそれらしきデータをフォルダから外してみると、デフォルトの起動画面が出てきましたが、複数あるアカウント情報もまっさらになってしまったので却下。

 ライトモードで何が困るといって、アカウントが複数設定できないことが一番困ります。自分のプライベート用、サイト用、メールマガジン用、家族用、プロバイダ用…数えてみたら、私ひとりで十個以上アカウントを管理しているじゃないですか(多すぎです)。

 最後の手段として販売元のサポートへ問い合わせメールを送ってみました。が、必要だと書かれている登録情報が見つからなかったので、答えてもらえるかどうかわからない。いちおう、メールチェックだけは複数アカウントできるようですが、サイト用のアカウントでメールを出せないことには変わりなし。
 それにしても、どうしてスポンサードモードの選択ができないのだろう。そういえば、最近、やたらフリーズするようにもなっていた。もしかして、スポンサードモード終了のための布石?

 最悪の場合でも、Outlook Expressに戻ればいいんですが、使い勝手が著しく下がるかと思うとげんなりします。それに、メールデータをどうしよう。インポートするのか。うう。

 一日のはじまりにへこみました。
 予兆として(?)前日にADSLサービスを乗り換えようと物色していたら、私のメインマシンでは動作保証しないという文章にぶち当たったりしていたし。パソコン関係のショックって来ると立てつづけなのね。ハードディスクは相変わらずカタカタ鳴ってるし、バッテリも壊れちゃったし、OSXもメジャーになっちゃったし、どうやってもXを載せられそうもないPowerBook G3はもうダメなのかも〜。
 ふらふらと(仕事中に)ネットをさまよっていたら、ちいさなPowerBook G4(12インチモデル)が発表されたとか。そうか、Mac World Expoの季節だったんだ。どうりでAppleサイトに繋がりにくいと思った。あたらしいブラウザSafariに興味がわきましたが、OSXじゃないと動作しないのよ。けっきょく先立つものが必要なことには変わりなし。しくしく。

 うつうつとしつつ、島田荘司『水晶のピラミッド』[Amazon][bk-1]とキイズ『錬金術師の魔砲 上』[Amazon][bk-1](両方とも図書館本)を読んでます。

今年初めて 2003.1.7(火)

 昨日は今年初めての通院日でした。
 寒いぞという予報が出ていたので着膨れて出かけたら、ビルの中では過剰暖房で汗だくに。夏も冬も、体温調節には苦労します。

 以上を購入。

 本日から仕事再開です。暮れから引きずってるのはまだ終わらないのに、また次のをやらなければならなくなって、区切りがつかないのでイライラする。
 気分転換に、仕事場のMacにiTuneでSEAL『II』[Amazon]をリッピングしました。単調な作業は音楽を聞きながらするとはかどります。

正月休みの終わりに 2003.1.5(日)

 正月休みも今日で終わりです。本も読んだし、感想も書いたし、正月番組も見たし、でもなにか忘れているような気が。なんだっけ、と考えていたら、2002年ベストのページを作りかけたままでした。タイトルを抜き出してリンクをはるところまではできてるんですが、肝心のコメントが手つかず。年を越してからファイルを開いてもいなかった事実に今頃気づいて、がっくり。これから少し忙しい予定なのですぐには無理だなあ…。頭のネジを巻く必要がありそうです。

 ガース・ニクス(原田勝訳)サブリエル 冥界の扉 古王国記I(主婦の友社.2002.470p.2500円+税 Garth Nix "SABRIEL",1995)[Amazon][bk-1]読了。現実と似た世界と、壁で隔てられた魔法の世界とで繰り広げられる異世界ファンタジー。

 アンセルスティエールと呼ばれる科学技術の発達しつつある国。ワイヴァリー学園の寄宿舎でもうじき卒業を控えた十八歳の少女サブリエルは、新月の夜の父親の訪問を待っていた。サブリエルはアンセルスティエールとは壁で隔てられた、古王国の出身。父親のアブホーセンは、古王国の権威あるネクロマンサー、チャーターの忠実な下僕であり、死者を眠らせるものだ。サブリエルは迷っていた。大学にいかないかと誘いを受けていたが、そうすると古王国との関わりがうすらいでゆき、魔術の力も衰えてしまうだろう。父親に相談したい。しかし、やってきたのは父親本人ではなく、父親に操られた死者だった。死者が携えてきた袋には、父親のアブホーセンの使用しているネクロマンサーの道具がすべておさまっていた。父親の身になにかが起きたのだ。サブリエルは決心した。古王国へ戻って、父親を捜すことを。

 強大な力を持ち、チャーター魔術を破壊する死者ケリドールと、行方不明の父親の跡、アブホーセンの称号を継いだ少女のたたかいを描く物語。
 死者を操る敵は強大な死者。死と破壊がいたるところにあらわれる、暗い話なのですが、雰囲気には透明感があって、くずれたような死者の描写もそれほど気になりませんでした。腐敗臭を感じなかったためか。死者の通り抜けていく冥界の道筋や、アブホーセンの館を護る川、光の射さないうすぐらい地下の貯水池など、つねに水が流れているようだったのが印象的。
 チャーター魔術とフリーマジックの関係は、けっきょく白魔法と黒魔法なのか、原始の力は良くも悪くもないはずなのにとか、チャーターとはそも何物であるのかとか、アンセルスティエールと古王国は、地続きなのにどうしてこんなに違うのかとか、いろいろと疑問が残りましたが、それを覆い隠すほどにサブリエルのふるうネクロマンサーのベルの描写が好き。力を秘めた音の響きというのが好きなんですね。私、音ファンタジーマニアなのかもしれない。
 サブリエルと、よみがえった二百年前の王国の近衛兵タッチストーンとのロマンスは、もう少し書き込んでくれてもいいような…児童書だからしかたないのか(最後ぐらい、名を明かしてくれてもいいのに)。
 キャラクターでは、普段は白猫のモゲットがお気に入り。

寒い三が日 2003.1.3(水)

 あまりの寒さに何をする気力もなく、暖房器具にはりついたまま、本を読みつづけておりました。
 ぜんぜん動かなかったので、体中こわばってます。でも積読が減ってるのが嬉しい。

 ジョセフィン・テイ(小泉喜美子訳)時の娘(ハヤカワミステリ文庫.1977.290p.600円+税 Josephine Tey "THE DAUGHTER OF TIME",1951)[Amazon][bk-1]読了。安楽椅子探偵によるイギリス歴史ミステリ。

 犯人追跡の際にあやまってマンホールに落ちて重傷を負った、スコットランドヤードのグラント警部。入院生活に働き盛りの知力体力を持てあまし、友人の見舞い品である通俗的な大衆小説にあきあきしていたところ、知り合いの女優マータが持ってきた、リチャード三世の肖像画に心を奪われた。リチャード三世は薔薇戦争とよばれるイングランドの内乱時に、王位のために兄の遺児ふたりを殺害したと教科書にも載っている悪人だ。しかし、犯罪捜査のベテランであるグラントの目にはその顔が、行ったとされている悪事にはそぐわない、良心的すぎて不幸になるタイプの人物として見えたのだ。俄然好奇心を刺激されたグラントは、マータに紹介された歴史研究家のアメリカ人青年とともにリチャード三世による甥ふたりの殺人事件を調べ始める。

 お薦めいただいた本第二位。おもしろかったです。このおもしろいは「知的好奇心を刺激される」ほうのおもしろいですね。同時代に常識だったことも、ひとの悪意や思惑によって、こんなに簡単に別の「事実」にとってかわられてしまう。あきらかになった本当の出来事よりも、そのことのほうが印象に残りました。

 歴史ミステリーは現存する資料のみを使用して推理を組み立てるのが規則らしいのですが、それってふつうの歴史家のしていることとどこが違うのでしょうかね。私は歴史は詳しくないのでわからないけど。資料の取捨選択から解釈まで、あつかう方の視点と知識とで事実とされているものにどれだけバイアスがかかってしまうか、ということのひとつの見本のような気がします。自分の都合の悪いことは隠すかなかったことにするというのは、古くから支配者たちが行ってきたことですね。現在も広告会社を使って自国の「正義の主張」を広めている国があるほどだし。だから真実を知りたいならば、先入観は捨てなければならないのだなあと思いはするけれど、いまこの瞬間の現実についてそれをすることはとても難しい。生きている人間には利害関係がつきものだから。せめて、何百年も前の歴史については、できるかぎり、よけいな粉飾や隠蔽はなくして欲しいものだと思います。そのゆがみをふくめて歴史なのだということもできるけど。
 この本は半世紀前に書かれたものですが、現在のイギリスにおけるリチャード三世像というのはどうなっているのかなあ。

 恩田陸ロミオとロミオは永遠に(早川書房.2002.488p.1800円+税)[Amazon][bk-1]読了。21世紀。環境破壊のすすんだ地球に一国だけ取り残された日本でくりひろげられる…学園SF小説?

 カナザワアキラは、超難関の大東京学園の入学試験を突破した。化学物質で汚染された地球で日本だけが移住を拒まれ、産業廃棄物や化学物質の処理を受け持つ近未来。日本人として生きていくことは困難で、数少ない出世の道が大東京学園の卒業総代になることだった。ところが、苛酷を極めた入学試験の後にひらけた大東京学園の実像は、閉塞感と暴力に満ち、はけ口を前世紀サブカルチャーの遺物に求める、想像とはかけ離れたものだった。トップ合格者のアカシシゲルとの友情を育みながらも、アキラは脱落者の集団である「新宿」クラスとの接触を持ち始める。かれには行方不明の兄の消息を得たいという望みがあった。

 なんか…あらすじと中身の雰囲気がまるで違う。
 のしかかるような閉塞感とやぶれかぶれのような明るさの混在した、猥雑な感じなんですが。
 作品系列としては『ドミノ』が近いような気がしますが、もっとイメージはB級です。ストーリーよりもディテールを楽しむ話でしょうか。二十世紀のサブカルチャーてんこ盛りなので、ある年代(作者は1964年生まれ)の人間は非常に懐かしい気分になれます。大東京学園の入学式のイメージは、読んだことはほとんどないけど私にとっては永井豪。学園への道が中央フリーウェイなのにも笑いましたが、さいしょに吹き出したのは、「バローム・クロス!」でした。ちょっと、こんなの普段忘れてるんですけど、思い出させないでよ、というのの連続。よく覚えてるなあというのが感想です。自分はやっぱりぼんやり生きてきたんだなと再確認しました。あはは。
 逆にいうと、ディテールがわからないひとにはあんまりおもしろくないのではないかと思いました。どうなんだろう?

あけましておめでとうございます 2003.1.1(水)

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 というわけで2003年があけましたが、2002年の末から私以外の家族が風邪をひきこんで、それがけっこう症状が重かったため、散々な年末年始となりました。大掃除なんて「どこの話?」。あっちでもこっちでもゲホゲホ。呼吸困難になるくらい咳き込んでいるのもいれば、夕方になると三十九度付近まで発熱するのもいる。
 チビたちも風邪ひきになったため、年末買い出しに連れていけない妹からSOSが入って、二日つづけて子守りに遠征したり。
 今年の冬って妙に寒くないですか。風呂の給湯器から出てくるお湯がぜんぜん熱くならないので、私も風邪ひきそうとおもってたら、元日になって喉がおかしくなってました。大晦日に「プロ野球珍プレー好プレー」を見つづけていたのがまずかったのかもしれないです。家族の症状は峠を越えたようですが。

 なので今日はほとんど動かないで養生してました。本を読みつつ、あきるとテレビを見たり。サッカー天皇杯とか、スポーツマンナンバーワン決定戦とか。正月に見ようと思ってビデオ録画しておいた、フィギュアスケートの全日本選手権は、テープがイカレていてぜんぜん見られませんでした。すごく悲しい。

 「積読本を減らそう投票」は、締め切りました。ご投票くださった皆様、ありがとうございます。いただいたコメントもうれしく拝見いたしました。結果は以下の通りです。無得票の八位以下は割愛しました。

1位バリー・ヒューガート『鳥姫伝』6票
2位とみなが貴和『夏休みは命がけ!』
ジョセフィン・テイ『時の娘』
3票
4位ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『ダークホルムの闇の君』
ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』
ジェイムズ・ティプトリー・Jr.『星々の荒野から』
宮城谷昌光『沈黙の王』
1票

 『鳥姫伝』圧倒的でした。予想としては『ダークホルム…』なんかもっと票が入るのかなと思っておりましたが…。意外だったのはミステリーである『時の娘』です。当サイトにお越しの方は、ファンタジー読みが多いのかと思っておりましたので。
 おかげさまで、読書意欲はかなり増進いたしましたです。正月休みはだらだらと読みつづける予定。
 今日はまず、一位に敬意を表してヒューガート『鳥姫伝』を読ませていただきました。すごく、おもしろかった〜。つぎは『時の娘』いきますね。

 バリー・ヒューガート(和爾桃子訳)鳥姫伝(ハヤカワ文庫FT.2002.397p.740円+税 Barry Hughart "BRIDGE OF BIRDS",1984)[Amazon][bk-1]読了。唐代をモデルにした架空の中国を舞台に繰り広げられる、奇想天外なほら話。

 琢谷の庫福(クーフー)村。蚕の飼育に大忙しの季節に、子どもたちが原因不明の病に次々倒れるという事件がおきた。十九才の少年十牛(じゅうぎゅう)は、おばのへそくりを手渡され、悪疫を撃退する方法のわかる賢者を連れてくるように頼まれる。にぎやかな北京の街でつてもなく断られつづけた十牛は、半眼の看板に目をとめる。そこにいたのはかなりの高齢のいまにも折れそうに痩せており、はげ頭に蝿をたからせた酔っぱらいだった。ところがこの老人は科挙を一番で合格し、皇帝よりじきじきに翰林学士の位をたまわったという李高(リーカオ)老師。話を聞いた老師は十牛の背中に乗って、庫福(クーフー)村をいそぎ訪れ、悪疫の原因は蟲毒であると喝破した。村の嫌われ者質屋の方(ファン)とうじ虫馬(マー)が金儲けを目論んで桑の葉に仕込んだのだ。解毒のためには伝説の“人参(じんせん)”、“大力参(だいりきじん)”を蒸留した薬液が必要だという。十牛は老師とともに、大力参を求めて旅立った。

 たのしい話でした。一番初めの、庫福(クーフー)村の紹介がちょっととっつきにくく、質屋の方(ファン)とうじ虫馬(マー)のやりとりが私には意味不明のところがあってそれで足踏みしそうになりましたが、いったん事件がおきてしまうとどんどん先を読みたくなるおもしろさ。奇想天外な話がつぎつぎとたたみかけるように連続。章のラストが「えっ、ど、どうなるの」というところで終わるヒキの強さもあって、ぐいぐいとひきずりこまれてしまいました。
 老師と少年が、子どもたちを救うために“大力参(だいりきじん)”を求めて冒険するお話なのですが、途中かなりの紆余曲折があります。金持ちになる話があったり、人妻に一目惚れしたり、怪物と戦わなければならなくなったり、迷宮を脱出しなければならなかったり。
 節目節目に村に戻って、新たなヒントをあたえられるのでそこで基本に立ち戻るのですが、いまにしてみると構成的にはRPGみたいな感じなんですね。読んでいるときには思いつかなかったわ。なんか、リズムが説話文学みたいだったので。主人公である十牛に力持ちであるという以外の個性があんまりないのもそのせいかもしれない。
 そのかわりといってはなんですが、ほかの登場人物は癖のあるひとばかり。とくに、李高(リーカオ)老師のキャラクターにはシビレました(笑)。「九十歳にもどれるなら、わしがやるんだが」が口癖。いったいおいくつなんですか。老師の人を食った存在感がこの話の一番のチャームポイントだと私は思います。あと、皇祖娘子の娘婿、候恐妻もヘンだった。永遠の恋する若者、学者バカ。一途で、人の親としてはどうなのと思わないでもないんだけど、親しみはあるひとでした。
 
 えらい遠回りをしていたようでしたが話はきちんと真ん中の謎に収斂し、それまで?だった題名とのつながりがあきらかになって、クライマックスはよろこびの上昇気流にのっていくような幸福感がありました。
 続編の刊行が決定だそうで、楽しみです〜。


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