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2003年6月後半のdiary

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2003.6.19 梅雨前線北上/『魔女の結婚 星降る詩はめぐる』
2003.6.22 体力低レベル人間の嘆き/『ダークホルムの闇の君』
2003.6.25 やっと完成/『砂漠の花』
2003.6.29 /『プロフェシイ―大地の子― 上』
 2003.6.29(日)

 エリザベス・ヘイドン(岩原明子訳)プロフェシイ―大地の子― 上(早川文庫FT.2002.527p.920円+税 Elizabeth Haydon "PROPHECY",2000)[Amazon][bk-1]読了。異世界ファンタジー。『ラプソディ―血脈の子― 上』『ラプソディ―血脈の子― 下』のつづき。三部作の中編。

 フィルボルグの王国を築きあげたアクメドとグルンソル。かれらを手助けして大きな役割を果たしたラプソディは、発見されたドラゴンの爪を所有者であるドラゴンのエリンシノスへ返却するための旅に出る。ドラゴンの住まいまでの案内役を買って出たアシェと名乗る男との道行きは、不信と緊張に彩られた奇妙なものとなる。アシェはつねにマントのフードで顔を隠し、自分をさらけださず、それでいて執拗にラプソディの素性を探ろうとするのだ。
 いっぽう、アクメドとグルンソルは王国を築いた山中の遺跡の奥に、かつての王国の〈伝承保管所〉を発見し、探検に出かける。

 物語の初めにある大きな仕掛けに言及しないでは、あらすじを書くこともままならなかった、前巻。ひきつづきネタバレを避けて書こうとすると、話の本質から遠ざかっていくようです。
 ともあれ、この巻は前作よりもかなり読みやすかったです。地中の旅がどれほど閉塞感をもたらしていたのかがわかったような気がする。そうえいば、私は閉所恐怖症なんでした。ということは私は大空の子どもか(笑。
 風を感じ、音を感じての旅の描写がとても魅力的でした。ラプソディが歌い手としての能力を発揮しているシーン。この物語の世界はすべて音を通して表現されていくのですね。擬音がいつも「ぶーん」なのはちょっと芸がない感じですが。リリングラスの剣の師匠オエレンドラの語る世界の成り立ちは、幻想的であると同時にちょっとだけ科学風味な感じでした。音も光も電波の一種なんだよね、とか。

 と、世界の描写はとても好きなんですが、ラプソディは相変わらずだし、アシェもなんなのコイツはという感じで、あと、ドラゴンのエリンシノスは物わかりよすぎませんかね。グルンソルの出番が恋しかったです。

やっと完成 2003.6.25(水)

 装具通院、やっと終わりました。当たって痛むところにはパッドを貼りつけ、パッドのせいで狭くなった部分は作り直してありました。装具屋さんは応対が丁寧で、なんどもわかりにくい注文を付けているのに快くわがままを聞き入れてくださいました。とても感謝しています。
 これで毎週外出にもようやく区切りが。うれしい。あー、長かったあ。あとは区役所に行って、還付手続きですな。

 午前中どしゃぶりのときに外を歩いていたので、足下ずぶ濡れになりましたが、開放感に浸りつつ、以下を購入。最近、早川は「○○氏、大絶賛」とかいう帯のアオリが多いような気が。

 金蓮花砂漠の花(集英社コバルト文庫.2003.263p.495円+税)[Amazon][bk-1]読了。異世界ファンタジー。

 覇王とうたわれた父の突然の崩御にあい、王女カリュンフェイは大国カナルサリの女王となった。生まれたときに受けた神託のために父親に疎まれ孤独に育ったカリュンだが、たぐいまれな武術の才と人の心をつかむ資質にめぐまれていた。彼女は即位前に軍隊を掌握し、年若くかよわい少女とあなどる有力貴族には病弱を装って、父親を暗殺した叛乱分子をあぶり出そうとする。彼女のそばには、つねに宰相の息子であり従兄弟でもあるレンソールがいて、熱いまなざしで見守っていた。
 ある日カリュンは、王宮の一画で迷っていた青年と出会い、侍女と間違えられる。かれはカナルサリの属国シルヴァスから人質として派遣されてきた公子シリスだった。

 どうして『砂漠』なの、という疑問は置いておいて。
 なんだか焦点のはっきりしない話でした。あたらしい舞台とあたらしい人間関係を説明するために、話の流れが損なわれている気がするのと、ヒロインの性格がまとまっていない気がするのと。シリスとレンソールとの三角関係をもっと中心にすえて書き込んだほうがよかったんじゃないかなあ…。あと、レンソールが受けた神託の内容をいつまでももったいつけて伏せてるのは、あんまり効果的じゃなかったような。
 文章はすごいなあと思います。ところどころ、少女小説じゃなくて、歴史物を読んでいるような気分になるところもあった。三部作ということなので、これからに期待。

体力低レベル人間の嘆き 2003.6.22(日)

 土曜日に、また風邪をひいた妹のかわりに姪を習い事へ引率。その後昼食を姪と一緒に外で食べ、午後から母親と落ち合い、買い物をして、とやっていたら、あっというまに疲労の限界を超えました。暑くて人出が多かったのと、長時間外(というか、中。冷房が辛い)にいたせいかと思われます。
 もう、なんにもしたくない、という状態で帰宅。気力がなくて、いったん腰を下ろすと、そこに根が生えて動けなくなる。風呂にはいるのがやっと。お湯が熱めだったのでゆっくりつかることができず、失敗したと思う。
 その後、あんまり疲れたので、かえって眠れなくなったり、寝入りばなを夜中に帰ってきた人間の騒音に起こされたりした。

 きょうも、半日死んでいました。暑いしだるいし。まだ頭がうまく働かない状態。毎日の散歩で少しは体力があがったかなと期待してたんだけど…。あれっぽっちでは、ダメらしい。

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(浅羽莢子訳)ダークホルムの闇の君(創元推理文庫.2002.496p.980円+税 Diana Wynne Jones "THE DARK LORD OF DERKHOLM",1998)[Amazon][bk-1]読了。

 異世界の実業家チェズニー氏によって、「魔法の観光地」にされてしまった魔法世界ダークホルム。毎年パックツアーによって訪れる巡礼者(観光客)によって、甚大な被害を被りつづけてきた人々は、つもり積もった不満を手紙につづって魔術師大学総長のケリーダ宛に寄せてきた。チェズニー氏の決定は強大な魔物との契約に守られており、勝手に変更するわけにはいかなかった。大学の緊急事態委員会では事態を打開するために、今年の観光会を取り仕切る「闇の君」の決定を、白のお告げと黒のお告げにゆだねることにした。お告げによって闇の君に指名されたのは、かつて魔術師大学の問題児だった、魔術師ダークだった。

 魔術師やエルフ、ドワーフや竜の住む魔法の世界に大挙して押し寄せる観光客のために、住人全体でアトラクション興業をさせられているダークホルム。他人のお遊びに家と財産と命をかけさせられている住人の不満は爆発寸前。しかし、魔物に守られている契約相手のチェズニー氏に正面から対抗する手段はなく、今年も観光会の季節がやってきた。

 ケリーダの提案から今年の闇の君をすることになってしまった魔術師ダークと、その妻と子どもたち(グリフィン五頭含む)が、観光会をつつがなく成功させるという責務を負って、懸命に働きつづける物語。観光会の準備から実行へと休む間もなくつづく出来事の中、世界存亡の危機と家庭崩壊の危機が同時進行で語られる。せわしなくてあわただしくて、こっけいで愉快なおはなしでした。
 描写の少ない、きびきびした文章で、つぎからつぎへと発生する相当ヘンなトラブルがたんたんと書かれているところが面白かった。伝統的な異世界ファンタジーで遊んでいるかのような登場人物たちもおかしいし(ガラドリエルという名のドワーフとか)、魔術師ダークがつくりだした奇妙な家畜(?)たち(翼のある馬ビジンとキレイがかわいい。羊もヘンだけど私は鵞鳥が好き)も、ちょい役端役に至るまで個性的で存在感たっぷり。
 どこまで大騒ぎがつづくのかとちょっと心配になりかけた終盤も、ペースを落とすことなくそのまんまの雰囲気で大団円。そのうえ、現実でもシビアに響きそうな教訓が残っていたりして、やっぱりジョーンズはすごいなあと感心してしまいました。

 雰囲気は『トニーノの歌う魔法』に近い感じ。大家族の結束が難事を乗りこえる原動力であるところが。魔術師ダークが困難を目の前にしていつも心のなかで逃避しているところは、児童書ではありえないところでしょうか。妻に見捨てられるのではと弱気になったりするし。そんな父親を助けようとしていろいろと懸命に頑張っている子どもたち。魔術師大学では落ちこぼれだったけど、命に関する術を得意とし、生き物すべてに愛情を注ぐダークの人柄が、このお話の肝心なところかな。冷血なチェズニー氏とは最後まで対照的でした。

梅雨前線北上 2003.6.19(木)

 ひどく蒸し暑い中を病院へ。今回は診察なので、タダにはならず。血液検査のため注射針を刺されたとき、とっても痛かったのでかなしかった。そしてそのとき貼った絆創膏でかぶれるし。

 移動中の電車と待合室で、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『ダークホルムの闇の君』[Amazon][bk-1]を半分くらい読んだ。

 谷瑞恵魔女の結婚 星降る詩はめぐる(集英社コバルト文庫.2003.282p.514円+税)[Amazon][bk-1]読了。中世によみがえった古代ケルトの巫女と陰険魔術師のロマンティック・ファンタジー。シリーズ九作目。『魔女の結婚 熱き血の宝石』のつづき。

 アヴァロンにいるという伝説のドルイド、タリエシンならば、《流星車輪》を宿す最後の《巫女姫》エレインの未来についても助言してくれるのではないか――。
 一行はマティアスをドルイドとして育てようとした師の足どりをたどって、芸術家を気取る、とある貴族の屋敷にやってきた。美の延長として魔術に興味を持つ主人は、かつて「ドルイドと会いたい」と願う女を紹介するためにマティアスの師を屋敷に招いた。師がやってきたときには彼女はすでに死んでいたが、主人に地精の塚を案内されるうちにその女の墓で地精の力を秘めた石を発見したという。さらに師は地精と出会い、「地精の都へ行き、タリエシンに会え」という助言を受けていた。

 エレインの出生関連のあれこれが絡んできて、舞台はふたたび地精の国へうつります。時の流れと無縁な世界で、時代を遡ったり下ったりと大忙しの一冊。
 《流星車輪》をめぐる賢者たちの思惑に巻き込まれたあげく、すべてを失ったドルイドと、信仰を失いつつあるケルトの民の現状に反発する女戦士、ふたりの野心がエレインを捕らえ、焦点は《流星車輪》の力を従えるというドルイドの王にはだれがなるのかという問題へ。
 前作で、マティアスを好きだと自覚したエレインが、あくまでマティアスに《流星車輪》の使い手でいて欲しいと願うのに、自分が黒魔術師であることにこだわるマティアスは、ドルイドの王にはなれないとつっぱねる。エレインの想いにうすうす感づいていながら、どこまでも見なかったことにしようとする。なんともじれったいのですが、いままで散々彼の心の闇を読まされてきたので、そう簡単に素直になれるわけがないのもわかるわけです。ゆったりと感情の変化を(かなりしつこく)たどりながら進みつづけてきた話ですが、急展開の一冊というかんじでしょうか。このシリーズも終わりが近くなっているのかもしれません。


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