2001年9月前半のdiary
■2001.9.2 /『叛逆 キル・ゾーン』
■2001.9.3 通院/『GLASS HEART 冒険者たち』
■2001.9.4 子持ちの気分
■2001.9.5 『Amii-Phonic』
■2001.9.9 /『骨のささやき』
■2001.9.11 /『魔女の結婚 運命は祝祭とともに』
■2001.9.12 近所の本屋
■2001.9.13 現実感がない/『プロ野球 問題だらけの12球団 2001年版』
■2001.9.14 /『ちょー夏の夜の夢』
野梨原花南『ちょー夏の夜の夢』(集英社コバルト文庫.1998.248p.457円+税)[Amazon][bk-1]読了。ファンタジーコメディー「ちょー」シリーズの四冊目。『ちょー囚われの王子』のつづき。
怪盗ダイヤモンド伯爵が捉えられた。処刑を決定したロゼウスは、ダイヤモンドをたすけたければ自分のものになれとジオラルドに迫る。一方、ロゼウスの背後にある魔法使いの存在を知ったスマート・ゴルディオンは、それが自分の過去につながる、とある人物ではないかと疑い始めていた。二人を救うために、トードリア国宰相のライーが発見した女神コリアムの召喚法を手に、司祭の娘ミナは洞窟の奥へとすすんでゆく。
第二部、完結巻。
なかなか中身の詰まった一冊でした。ダイヤモンドを失う恐怖に苛まれながら、ロゼウスの要求を受け入れることの屈辱と嫌悪に引き裂かれるジオラルドの心中、とか。
死の瀬戸際に立たされながらも救出してくれる仲間の気配を感じ取り、せめて自分にできる最大の努力をしつづけようとするダイヤモンドのすがた、とか。
友情を裏切らせる命令を下したあるじと、下された下僕の、互いを思いながらも正面から向き合えなかったふたりの再会、とか。
ふだんはまったく緊張感のない魔法使いスマート・ゴルディオンの過去と、その御歳、とか。
すべて「決めゼリフ」「殺し文句」のような文章でつづられる、インパクトの強い一冊でした。このあたりがこのシリーズが受ける要因なんだろうなあと、納得。読んでいて気分がいいのです。かっこいい言葉で核心をズバリ、という感じ。
異世界の雰囲気だの魔法の気配だのを求めなければ、楽しめます。ただ、会話ならいいけど、地の文ではやって欲しくない言葉の使い方がちらほらあるのが、気になりますねー。
昨日のお昼から何度も高層ビルの崩壊やら、航空機の激突の瞬間やらの映像を見ているのですが、なんだか、本当のこととは思えない。とくに飛行機の突っ込んでいく瞬間の映像は、意図して撮影されたかのようにいろいろな角度の画があって、まるで編集前の映画みたいな気持ちが。
でも、やっぱりこれは現実で。実感はわかないけれど、うすらさむいような怖さを感じます。
中近東あたりの歴史をかじったことのある人間としては、いろいろ思うことはあるのですが、ようするに、どの国も自国の利益ばかりを追求していくと平和にはならない、というところにいきつくのかなー。国家が無くなりそうな気配はないから、やっぱりどれだけ協調していけるか、それにはどれだけ相手の立場になれるか、互いに妥協できるか、妥協を敗北とはみなさない価値観をもてるか、考えるだけでいまのところは不可能そうなところへと思考がむいて、暗〜くなってしまった。
小関順二『プロ野球 問題だらけの12球団 2001年版』(草思社.2001.230p.1400円+税)[Amazon][bk-1]読了。『プロ野球 問題だらけの12球団』につづく第二弾。
今春のキャンプ前に書かれたという本書は、文字通り「今季のプロ野球を占う」つもりで発行されたものでしょう。奥付の発行日は「2001.2.20」。それを今頃読むなんて時機を逸しているというか、遅れているというか。パ・リーグは熾烈な首位争いが熱くつづいておりますが(おもしろい)、セ・リーグはマスコミが無理矢理もりあげているといった感がなきにしもあらずですからねえ…。
第一弾は十二球団のフロントとドラフトについて考察している部分が多かったのですが、今回は野球のテクニカルな部分にも目を向け、ドラフトの上位にあがる選手と下位の選手の違いはどこにあるのか。大成する可能性のあるいい素材(つまり選手)はどのように育ってきているのか。育成に力を入れている「ファームからの輩出スピードのはやい」球団はどこか、といったことまで踏み込んでいます。
きちんとした眼力で素質を見極めて獲得し、その選手にあった育成をすることも、球団のよしあしにかなり結びついてくるものなのですね。選手個人の人生にも関わってくることだから、いい加減なことはして欲しくないと思います。
ところで、横浜の今シーズンについての記述。
「他球団を見てもわかるように2人の外国人が高いレベルで活躍するというのは稀で、総取り替えの横浜なら外国人選手がスターティングメンバーに入らない最悪の事態も想定しなければならない。」p.56より
まさに。その最悪の事態が毎日のように繰り広げられておりましたよ。そのほか、他球団についてよりも当たっていた部分が多かったような気がします。「ファームからの輩出スピード」が12球団一と誉めてくれたのはうれしい。でも、期待の神田君はちっとも台頭してくれなかったよ〜。怪我でもしていたのかなー。
今朝の新聞は台風のことばかりかと思っていたら、超弩級の事件ですっかりかすんでいた。
ゆうべ十時に床についた私は、この大事件のことを朝までまったく知らずにいたのでした。夜十時のニュースぐらい見てから寝るべきか…。とりあえず、新聞を読む。
夏がぶり返したかのような暑さにひるみつつ、外出。
延滞回避と新刊購入が目的でしたが、めあての「封殺鬼」シリーズ最新刊が、みあたらない。
一軒めに入った本屋は、いつもは行かない穴場の本屋(通勤通学動線上から離れているため、新刊が残っていることがよくある)だったのですが、そこのハヤカワ文庫の品揃えを見て、思わず吹き出してしまいました。
「ペリー・ローダン」シリーズに「グイン・サーガ」「時の車輪」ときて、「星界」シリーズ。これだけ。
二軒目のいつも行く本屋は、たぶん代替わりして息子が取り仕切るようになってから、目に見えて売場に活気が出てきているのがわかるので、入るのも楽しいんですけど。書棚や平積みなんかも工夫されているし、昔は新刊が二、三日後に入ってきていたけどそんなこともなくなったようだし(それは普通か)。夏には恩田陸と京極夏彦のフェアなども独自に展開していたし、TV化作品はどんどんポップをたてて宣伝しています。
でも、どっちにもなかった「封殺鬼」…。
暑さに負けず、繁華街まで出ればよかったか…と後悔したものの、すでに最寄り駅まで戻ってきてしまっているのに引き返す気にもなれず、しくしくと帰宅。
を購入。『輝夜姫18』は頼まれもの。
台風が直撃しているらしい。
蒸し暑いのに風雨が強くて窓が開けられません。
「国内配送料無料」とAmazonで宣伝していた。無期限?
谷瑞恵『魔女の結婚 運命は祝祭とともに』(集英社コバルト文庫.2001.294p.533円+税)[Amazon][bk-1]読了。中世ヨーロッパに甦ったケルトの巫女の、結婚願望ファンタジーコメディー。『魔女の結婚』のつづき。
千五百年後の世界で目ざめたケルトの巫女エレインは、なりゆきから黒の魔術を操るドルイド、マティアスの弟子となり、自分の中にひそむ「流星車輪」の力をあやつる訓練をつづけていた。
ベルティン祭―キリスト降誕祭をむかえるころ、司祭の依頼を受けてエメラルド鉱山をかかえる都市にやってきたふたり。ここでは、とある魔術師の出現により鉱山からエメラルドがとれなくなってひどく困っているという。エレインは、そこで自分の「運命の人」と出会う。ダイルという名の榛色の瞳の人物は、くだんの鉱山を我がものにしているという魔術師そのひとであった。
なんか、あらすじを書いていて、まったく別の話の事を書いている気分になってきた…。
やはり、このシリーズはキャラクター。ぶっとび魔女のエレインと自己中心的冷血魔術師のマティアスの、超、鈍感二人組のにぶすぎる恋愛模様(と書くとあまりにも大げさ)が読みどころ。
破天荒な行動に飛びつくことの多いエレインちゃんの心の内のさりげない描写とか、ラストあたりのマティアスのひねくれ者の面目躍如といった感のあるふてくされ加減が、くちもとを緩ませてくれます。たのしい。
そして、さりげなくファンタジーしているところ。いきなりまた千何百年も時を移動したり、地精の国が出てきたり、こちらも波瀾万丈なわりにあくまでさりげなくストーリーの背後に静かに存在している。それでいて、しっかり魔法の気配を漂わせているところがすきです。
こんなに移動しているのにほとんどアイデンティティーの危機を感じないキャラクターたちなので、これくらいのバランスがちょうどいいのかもしれません。魔女としてのエレインがまったくなんの危機感も抱かず世界を闊歩していても、それで充分楽しいお話なんだから、いいじゃないか(笑)。
ダリアン・ノース(羽田詩津子訳)『骨のささやき』(文春文庫.1999.662p.905円+税
Darian North "BONE DEEP",1995)[Amazon][bk-1]読了。ロマンティックサスペンスミステリ。
マヤ遺跡発掘チームに所属する形質人類学者であるアイリス・ラニアは、カリフォルニアにいるはずの父親が危篤であるという電報を受け取った。発掘現場から急遽、父親の入院するニューヨークへ飛んだアイリスは、父親が銃撃されて昏睡状態であること、撃たれたのは強盗の仕業ではないらしいこと、事件現場は売春婦や薬の売人がうろつくリバーサイド・パークであることを、聞き込みに来た刑事から知らされる。果樹栽培業者である父親が地元を離れること自体、信じがたいことだったが、事件にまつわる情報はどれもアイリスの知る父親の姿とはかけ離れていた。
幼い日に母親が家出をし、行方不明になったことで心に深い傷を負い、かたくなに人生を過ごしてきた女性が、父親の事件と向き合ううちに恋をし、自分を解き放ち、母親の事件にも決着をつけて前向きな姿勢を取り戻す物語、かな、大筋では。
子守のあいだに許される限り、一気に読み通しました。おもしろかった。
謹厳実直な父親の行動の謎を追いながら、父親が借りていたアパートの人たちとのやりとり、事件担当のやり手風女性刑事キズミンと次第にうちとけていく過程、アイリスの専門形質人類学(骨の専門家)が現実の事件に役立つところ、などなど、一見無関係と思われた出来事ひとつひとつが、じつはストーリーにきっちり絡んでくるところがすごい。
この作家はつくった設定でできるすべてのことを盛り込もうとしているような、一作品で物語世界を最後まで使い尽くすというか、できた枝葉をまったく刈り取らずに、なおかつきちんと読めるものがたりをつくろうとしているような気がします。たしかに、あんまりたくさんエピソードがあるので、読み終えた後でのひとつひとつのインパクトはかなり薄れてしまうのですが。
そのなかで印象に残るのは、アイリスが事件の直前まで携わっていた発掘現場の、夫と子供を置いたまま、いなくなってしまったと記されている女王ムーンスモークの遺骨が、アイリス自身の過去と密接に絡みつつ、幻想的になんどもたちあらわれてくるところ。この部分だけをとりあげて書いたら幻想小説になりそうな、ふんいきたっぷりのシーンがうれしい。他の部分と色合いがかなり違っているため、齟齬をきたしているような気もするけど。でも、好きだ。
アイリスと上階の住人サックス奏者のアイザックとの恋の行方も、ストーリーへの興味をひっぱる大事な軸。謎めいた男に惹かれていくアイリスの心情に一緒になってドキドキしました。以下、ネタバレ。しかし、最後はなんなんだー。ギャグですか。たしかに、途中であんまりもったいぶる態度が胡散臭くて、てっきり敵側のアイリス監視要員かと勘ぐっていたのだが、まさかこんな奴だったとは。シャロン・ストーン主演の映画を思い出しましたよ。うえ〜ん。あまりに晴れ晴れとしたハッピーエンドは胡散臭いけど、こんな風におとさなくても良かったんじゃないの、と言いたくなりました。キズミン刑事との友情が救いでしょうか。
いろいろと文句をつけたいところもありましたが、おもしろいことに変わりありません。
スケルトン探偵の代名詞、アーロン・エルキンズ作「ギデオン・オリヴァー教授」シリーズと比べると専門性は薄めですが、それ以外の要素がてんこ盛りです。
図書館をさぼり(返却できる本がない)、美容院へ。
朝から頸の調子が悪かったのが、これで決定的に悪くなった。しかし、カラーをつけたままカットしてもらうのは不可能であるし…。
もさもさとしていた髪を「軽く見えるようにするために」削ぎ落としてもらった。ただのカットに四十五分もかかった。
美容師さんが「今日はちょっと凄いですよ」と興奮気味に言うので、床を見たら、それだけでカツラが作れそうなくらい大量の髪が小山になって落ちていた。
だれか買ってくれないだろうか…(笑)。
ひきつづき、子守おばさん営業中(へろへろ)。
心のオアシスは月曜日に買ってきた『Amii-Phonic』。すでにエンドレス、ループ状態。
尾崎亜美デビュー二十五周年記念アルバムで、細野晴臣、奥田民生、福山雅治、SING LIKE TALKING、宇崎竜童、デーモン小暮、ANRI、大貫妙子、高橋幸宏、THE DELTA-WING with 真矢が、それぞれ一曲ずつ参加しています。
アーティストの個性がそれぞれの曲にあらわれてておもしろいのと、合う声質とそうでないのの差がけっこう大きいのがわかったりした。合わないとデュエットしてても曲が二つに分裂してしまうのですね。で、どっちも存在感あるヴォーカルだったりすると、まったく別の曲を聴いている感じがする。まあ、記念アルバムということで…。
先日検索したときになかった『メタルバード 1』のbk1とAmazonのデータを下に追加しときました。
本の感想、三冊一度に書いたらぐったり(笑)。
うしろには甘ったれ六ヶ月児(別名・甥)が「だっこしろ〜だっこしろ〜」と泣きわめいているし(八キロ以上もあるお荷物を、この細腕に抱けというのか)(おとなしくだっこされているならともかく、ちんまい足でどかどか腹を蹴ってくれるし)(けっこう痛い)、こまっしゃくれた三歳児(別名・姪)がちょくちょく話しかけてくるし、突進したあげく頭突きを食らわせてくれたりするし(呼吸が止まるほど痛かった)(切れた唇が二倍に腫れあがってるぞ)、全然落ち着きません〜(泣)。
保護監督責任者は低血圧で沈没…。
な〜んに〜も読めないの〜(壊れた)。
病院に行く〜。雨の予報が出ていたので折り畳み傘を携帯。重い。
- 吉田秋生『YASHA(夜叉) 10』(小学館フラワーコミックス)[Amazon][bk-1]
- 若木未生『GLASS HEART 冒険者たち』(集英社コバルト文庫)[Amazon][bk-1]
- 若木未生『メタルバード 1 さあ、どこへ飛びたいか?』(徳間書店デュアル文庫)[Amazon][bk-1]
- 谷瑞恵『魔女の結婚 運命は祝祭とともに』(集英社コバルト文庫)[Amazon][bk-1]
- 紫堂恭子『姫神町リンク1 神KAKUSHI』(角川書店あすかコミックスDX)[Amazon][bk-1]
- 尾崎亜美『Amii−Phonic』(フォーライフレコード)[Amazon]
を購入。
もっと買う予定だったのだが、予定外のものも買ったので、重量がありそうなものを次回まわしに。予定外は『メタルバード』。『YASHA』は頼まれもの。
病院まで一緒に行きたがる姪をふりきるために「ご本を買ってきてあげるから」と約束したので、絵本コーナーで三十分以上さがしたのだが、これはと思えるものが見つからずに断念。何のめあても指標もなく、ひたすらに売場にあるものだけを手当たり次第にとって探すのって、無謀です。絵本の勉強をしたほうがいいかも。
その他、ジョーンズの『九年目の魔法』[Amazon][bk-1]が新刊と一緒に平積みしてあるのを見たり、久美沙織のドラゴンファーム・シリーズをあらためて売場で見たりとか、テリー・グッドカインドの『魔道士の掟1』[Amazon][bk-1]の装画が羽住都さんであるのを見たりしていろいろとよろめきそうになりましたが、とにかく、「この次」と思い決めて立ち去りました。
若木未生『GLASS HEART 冒険者たち』(集英社コバルト文庫.2001.214p.467円+税)[Amazon][bk-1]読了。青春バンド小説「グラスハート」シリーズの六冊目にして最新刊。番外編を含めると七冊目。
診察待ちと薬待ちのあいだに読み終えてしまった読みやすい本。
本当に読みやすいかというと、ちょっとわだかまりが残る本ですが。文章がすいすいと頭の中に入り、状況がとまどいなく浮かんで、何にもひっかからずに読める、という読みやすさではないから。
感覚的というか、感情的というか、そのあたりの波長にあってしまえば、すいすい読めるのですが、「待てよ。ここでこの人たちはどういう立ち位置でどういう上下位置で、さらにどういう環境にいるの」などと思いついたが最後、ひっかかりまくってどうにも進まなくなります。
これは、私が根本的に映像を描きながら読んでいるせいだと思う。それに本を読む修行期間(?)をおもに翻訳物(それもミステリがかなり)を読んで過ごしていたせいもあるような。客観的に俯瞰した現場の状況、みたいなのがちょこっとでも入ると、(私が)落ち着くと思うのですが。
今回は、読んでいたときの状況から「ふと我に返る」ことなく、ダーッと最後まで行ってしまったので幸せでした。
若いエネルギーがうらやましいぞ。病院通いでへろへろなとこだったので、よけいに。
挿画の方がかわったことについては、それほど違和感なかったですが、ヒロイン西条朱音ちゃんのキャラクターがおとなしげになったような気はしますね。
妹一家の四分の三が宿泊。
須賀しのぶ『叛逆 キル・ゾーン』(集英社コバルト文庫.2000.236p.476円+税)[Amazon][bk-1]読了。未来陰謀ロマン?。『罰 キル・ゾーン』のつづき。
月を支配するロスマイヤー家総帥を、火星の軍事工作員でユーベルメンシュのマックスが暗殺した。地球を挟んでの月面都市との戦いは、火星側有利へと大きく傾く。しかし、火星都市国家元首のユージィンはあくまでも月を叩きのめそうとする姿勢を変えず、ユーベルメンシュ部隊を預かるラファエルは同胞たちの消耗に苛立ちを隠せない。
キャッスルは、オブライエン救出作戦後、戦局の深刻化とオブライエンの病状のために地球にとどまりつづけ、その間、ありがた迷惑な護衛兼バディを押しつけられたまま、あちこちの作戦にかり出されていた。
書いてて空しくなるあらすじですねえ。このお話の魅力は登場人物の心のうごき、お互いの人間関係、その刻々と変化していくありさまだと思うのですが、そんなの、あらすじに書いても野暮というものだし。
やっぱり、本命はユージィンとヴィクトールの確執なのでしょうか。キャッスルの葛藤も彼女なりに深刻ではありますが、物語を動かしているのはどうみても、さきのふたり、ですよね。
で、もう完結編は先月発売されているわけですが。
ほんとうにほんとうに、この次で完結しているのー?
ダリアン・ノース(唐木鈴訳)『黒い未亡人 下』(文春文庫.1995.498p.631円+税
Darian North "CRIMINAL SEDUCTION",1993)[Amazon][bk-1]読了。「ロマンスの香りただよう好サスペンス」。『黒い未亡人 上』のつづき。
殺人の嫌疑を掛けられているリノーア・シーリアンの華奢で少女のように頼りなげなのに、神秘性を感じさせる東洋系の美貌となによりもその黒い瞳に魅せられていく、オーウェン。かれは犯罪実録本の執筆のためにリノーアの夫、被害者ブラム・シーリアンの背景を探ろうとするが、芸術家は見事なまでに過去を抹殺していた。ねばり強く調査をつづけるオーウェンは、リノーアに有利となるかもしれない過去の記事を発見する。リノーアの弁護人チームを訪ねたオーウェンは、引き換えになにを望むのかと問われ、「リノーアに会わせてくれ」と口にする。
上巻ではあれほど緊迫していた裁判の場面がずっとすくなくなり、ウエイトはリノーアの過去、その鍵を握るブラム・シーリアンの過去に移っていきます。そして、オーウェンとリノーアの、お互いに信用できず、胸の内を探り合いながらの恋。
一番面白い、というと語弊があるかもしれないけど、興味深かったのは、叔母ミリー・コーウィンの語るブラム・シーリアンの生い立ちですかね。救いのない環境というのは、どこも似たようなものですが、だからといって何の慰めにもなりはしない苦しさと痛みがあります。
しかしなー。それでも後年のブラム・シーリアンがどのように形成されたか、検証されずに残っている年代があるので、「わからん」と感じる部分がけっこう残りました。従兄弟アルとの関係もそうだし、リノーアがいかにしてアメリカにさらわれてきたのかという背景もよくわからなかった。私の読み方が悪いのかもしれませんけど。
ストーリーとしてはラストのあたりの展開がなんか唐突だし、それにも関わらず予想外という雰囲気もなかったので、はじめから中盤までの盛り上げがけっこう期待を抱かせていただけに、残念でした。
ただ、物語全体の雰囲気としては好きですので、つぎ、『骨のささやき』いってみます。