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2001.2.15 思わず吹き出す/『奇跡の少年』
2001.2.16 読書傾向を知る一助として
2001.2.17 のんびりするはずが
2001.2.18 Netscape6/『ハンニバル 上』
2001.2.19 生産性の低い日
2001.2.20 FF9その8/『赤い予言者』
2001.2.21 休店日/『ハンニバル 下』
2001.2.22 /『疑惑の月蝕 グイン・サーガ77』
2001.2.23 ひさしぶり
2001.2.24 ひきつづき/『疾風魔法大戦』
2001.2.25 中途半端/『盤上の敵』
2001.2.26 FF9その9
2001.2.27 こっそり/『昔むかしの物語』『DIVE!! 2 スワンダイブ』
2001.2.28 春の嵐のなかを
春の嵐のなかを 2001.2.28(水)

 ものすごい風が吹き荒れている。前線に向かって吹き込んでいる南風ってやつですね。

 図書館に行ったら『週刊ベースボール』がみあたらないのでかわりに『SFマガジン』を見る。書評にビジョルドのファンタジーが載っていて、そういえば買ったのだったと思い出す。買った本より借りた本を優先して読んでいると、買ったことをコロリと忘れたりするので困ります。

 妹が姪の服を買ってきてくれというので、帰りに足をのばして繁華街まで出る。
 駅ビルの本屋の真向かいにある店は、基本的にはファンシーショップ。洋品店ではないので品揃えはつつましやかだった。頼まれたのはトレーナーだったけど、フリースのジャケットを980円で安売りしていたほかには、らしきものが見あたらないので、そのまま本屋へ。

 を購入。
 佐々木倫子『Heaven? 2』を見つけて買おうかどうしようか悩む。一巻が期待はずれだったからなあ。もう少し考えることにして保留とする。
 サトクリフも買おうかどうしようか、悩んだ。表題に「サトクリフ・オリジナル」なんてつけ加える出版社のセンスに一抹の不安を感じて。けっきょくこちらは購入しましたが。
 今月はあまり大きな本屋に行かなかったので、あちらを見てもこちらを見ても、「ああ、もうこれも出ていたのか」というふうにため息をつくことが多かったけれど、荷物が重かったのでこれ以上うろつくのはやめて帰宅。
 強風になぶられて、あたまぐちゃぐちゃになりました。ああ、へろへろ。

こっそり 2001.2.27(火)

 提出したカラー原稿が合格したので、出力のため一日プリンタをうごかしていた。
 印刷しているときは本を読んでいるので、ほとんど働いている意識はない。
 昼食後はせっせと働くプリンタをほったらかしたままだったので、いつのまにやら停止していることになかなか気づかなかった。しかも、印刷は終了していたわけではなくて、インクが足りなくなったせいで止まっていたので、いったい何十分が無駄に費やされたかもわからない。いいかげんな勤務態度です。
 そのうえ、インクカートリッジを取り替えるときに、誤ってべつの機種用のものの包装を破いてしまった。ちょっとびっくりしつつ、誰も見ていないので、素知らぬ顔をして箱に戻しておきましたが。(おいおい)

 アリサ・クレイグ(宮脇裕子訳)昔むかしの物語(創元推理文庫.2000.354p.660円+税 Alisa Craig "THE WRONG RITE",1992)読了。カナダ騎馬警官隊警部のマドックとその妻ジェネットのユーモアミステリシリーズ五作目。

 マドックとジェネットは、リース家の準男爵でマドックの大伯父にあたるサー・カラドックの九十歳の誕生日を祝うため、先祖伝来の地ウェールズを訪れた。
 親類縁者が多数集うなか、そもそも修道院としてたてられた館から発見された「司教杖」やドルイドにゆかりのものかと推察される「黄金の鎌」が披露される。サー・カラドックの誕生日がいにしえのケルトから伝わるベルテイン祝祭とおなじ日であったこともかさなり、親類のメアリーとボブの兄妹はさかんに呪術的なことを口走って皆のひんしゅくを買っていた。
 ジェネットが偶然に見かけてしまった「修道士の幽霊」の話が、かれらを勢いづかせることになり、聖堂の祭壇に血塗れの羊の頭が捧げられるという事件が発生する。

 つ、つかれた。
 こんなに疲れる「ユーモアミステリ」を読んだのは初めてかもしれない。
 クレイグは別名義の「シャーロット・マクラウド」でも親戚一同が大挙してうろつきまわるミステリを書いていますが、今回のはそれに輪をかけて登場人物の「うろうろ度」が高かった。
 つねに何人ものヒトが動いている。だれそれがなにをして、だれそれがどうそれを受けた。そしたらだれそれがやってきて…。という調子で延々と描写がつづいていくのです。まるで生中継のテレビドラマを実況しているみたいに。
 なんだか落ち着かないんですよ、静止しているシーンが一個もない。
 さらに大勢の登場人物の関係の正確なところをヒロインのジェネットが把握していないこともあって、続柄はなかなか頭に入ってこない。
 そのうえ、事件らしい事件が、本の半分に至るまで起きてくれないことも、忍耐の限界を試されているような気分になりました。
 いえ、冒頭に殺人事件は起きてるんですけど、そのことと現時点での関わりというのもなかなか提示されなかったので。

 舞台がウェールズでベルテイン祝祭がでてくる、というので借りてみたのですが…はあ…。

 森絵都DIVE!! 2 スワンダイブ(講談社.2000.196p.950円+税)読了。青春ダイビング小説。『DIVE!! 1 前宙返り3回半抱え型』のつづき。

 中国で開かれるアジア合同強化合宿に参加する選手を選抜する大会の日がやってきた。大会を運営する日水連への不審から参加者はそれほど多くはない。だが、MDC所属の選手たちはクラブの存亡をかけてこの試合に臨んでいた。
 青森からやってきた沖津飛沫。かれは天才といわれながら不遇の選手時代を送り、田舎で馬鹿にされていた祖父の、二の舞をする気はなかった。クラブのコーチである夏陽子と契約をしてMDCに所属することになったが、断崖で飛び込みをつづけてきたかれにとって、プールでのそれはお遊びのようにも思えていた。だが、試合当日、かれは思いもよらない自分の状態にとまどっていた。

 前巻で衝撃的にあらわれた野性のダイバー、沖津飛沫が今回のメイン。
 坂井知希くんは中一でしたが、今度は高三。見ている世界はだいぶ大人びてきています。
 思いがけず苦渋の選択を迫られたかれは、村では人生の敗残者のようにさげすまれてきた祖父のほんとうの姿にようやく気がつきます。かれをとりまく周囲はけしてあたたかくはないけれど、どこか信頼できるところもちゃんとある。これが現代をリアルに書くということかなと思いました。美化することなく、地に足をつけた、平熱の世界というかんじ。

 このつぎは富士谷要一くんがメインだと嬉しいな。かれの怜悧さは物語のスパイスです。

FF9その9 2001.2.26(月)

 「チョコボと宝探し」をあきらめて、本筋に戻ろうとした私に、記憶力という名の大きな壁が立ちふさがった。
 えーと、どこへ行くはずだったんでしたっけ?
 進行状況をメモったりしないので、なんでもないことが深遠な謎にまで発展してしまいます。
 世界中をぐるぐるとまわって小一時間。こんなことしていたら、二月中に終わらせるなんて夢のまた夢だ…。とぼんやりしていた目の前に、あれ、なにやら変な樹が…。ながめながらなおも無意識に進んでいたら、突如画面が転換。げ、ここだったのか。

 無計画に進んだバチは、それからイヤというほど私に襲いかかってきた。なんでこんなに強いの、ここのモンスター…。

 アリサ・クレイグ『昔むかしの物語』を三分の一弱読む。

中途半端 2001.2.25(日)

 オープン戦がはじまり、ひさびさの野球観戦(もちろんテレビ)。
 最初は日本テレビ。出だしを見落としたおかげでカープのオーダーがいっこうに判明しないのに、ジャイアンツのオーダーは何度も映されるのは、あいかわらずです。広島の二年目の投手に、去年の生きのよさがなくなったようでちょっとさびしい。

 その後、テレビ朝日の二元中継へ移行。しかし、二元というのは実に中途半端な中継方法ですね。有名どころをおさえたつもりなのでしょうが、この時期に知りたいことって新戦力とか若手のことなので、松坂君が連続五奪三振してもあまり感慨がわかないのですが。石井一に打球が当たったのはちょっと心配ですが、横浜の先発投手はだれだったのでしょう。結局さいごまでわからなかった…。

 あとでラグビー日本選手権の大熱戦を知って、選択を誤ったと思いました。あっちを見てたほうがずっと楽しそうだった。

 北村薫盤上の敵(講談社.1999.302p.1600円+税)読了。すこしかわったサスペンス小説、かな?

 友人に誘われて初めての鴨猟に出かける途中で、瀬川章一郎は思いもかけぬ事件に遭遇する。なぜこんなことになってしまったのか。そもそも、自分が散弾銃をもって猟をすることを、積極的に思い描いたことはいちどもなかったのに。
 彼女はかれに、幼いころからの日々を、ことこまかに話す。これまで、彼女には話し相手がだれひとりとして存在しなかったのだ。
 テレビ製作会社に勤める末永純一は、帰宅途中で自宅に強盗犯がたてこもり、妻が人質になっていることを知る。携帯電話の犯人は、かれに取引をもちかけてきた。

 緻密に組み上げられたパズルのようなおはなし。
 出だしの思いがけないバイオレンスな雰囲気が、「あれ、いままでとちがう」というとまどいを生みます。実際、取り扱っている出来事は、北村薫にいままでいだいてきたイメージとはかなりかけ離れたものではあるのですが、読み終えてみると、話の構成の仕方が「北村薫」だったのねと納得。
 特徴である日常の出来事をこまやかによみがえらせる文章は、友貴子の回想に十分に生かされています。
 表題は物語をチェスになぞらえたもの。各章に同様の題名がつけられています。が、私はチェスを知らないので、お飾りとしか受けとめられませんでした。もしかして、ストーリー進行にもチェスの特徴が取り入れられていたりするのでしょうか。

 一年半ぶりに読む北村薫は、ちょっと予想外な感じでした。

ひきつづき 2001.2.24(土)

 お仕事。
 ずいぶんほったらかされていたものなので、わからなくなっちゃったところがたーくさんあるのですが、担当に尋ねてもやっぱり忘れているので困ったものです。
 とりあえず、プリンタで出力して、一段落。

 トム・ホルト(古沢義通訳)疾風魔法大戦(ハヤカワ文庫FT.1998.348p.640円+税 Tom Holt "WHO'S AFRAID OF BEOWULF?",1988)読了。現代イギリスに甦ったヴァイキングの英雄たちの巻き起こす騒動を描く、ユーモアファンタジー。

 パイプラインを通すための下検分をしているときにあらわれた地下の室。そこで発見されたヴァイキングの船棺葬らしき物体を調べるために、アメリカ人考古学者ヒルディ・フレデリクセンはスコットランドのなにもない田舎ケイスネスにやってきた。世紀の発見をする自分を心に描きつつ、興奮気味に地下におりた彼女は、研究書に描かれるままの姿のロングシップで、無数の財宝のほかに見事に保存された人間の死体を十体ほどを目にして動揺する。
 その夜、ヒルディが思わずひろいあげ、そのままポケットに入れて持ち帰ってしまった金のブローチを手に思案しているころ、地下のヴァイキングの船では十二人の英雄たちが長き眠りから覚めていた。

 千二百年の眠りから目覚めたヴァイキングの英雄たちと、宿敵である魔法使いの王の戦いを、コミカルに描いた楽しいおはなし。なんといっても英雄たちの言動がおかしい。時代錯誤なだけじゃなくて、キャラクターの個性もゆたかに書き込まれているのです。
 文章も客観的で皮肉の効いた、コメディーらしいもの。ときどき「クス」と笑いがもれてしまいます。
 物語の基本となる北欧の伝説については、エッダやサガの専門家であるヒルディが案内役を果たしていて、「伝説」に語られていることと「現実」のギャップも楽しめるようになっています。
 魔法使いの王が千二百年のあいだにIT産業界で成功しているという設定が、最後のほうにはあんまり生かされていないのがちょっと残念ですが。
 ゲーム好きな電気を操る地霊二匹(?)がなんとなく好き。
 ロルフ王の高潔で懐の広い人柄が、読んでいてとてもきもちのよい一冊でした。

ひさしぶり 2001.2.23(金)

 とっても久しぶりに仕事。
 本当は去年の四月にやらなければならなかったものですが、なぜかこんなにのびのびになってようやく資料がそろった。原因は私じゃないし、延ばしているのも私じゃないので、ま、どうでもいいことですが。しかしこんなんでよくやっていけるな、この会社は。

 仕事の内容は、またもスキャニング。原稿のゴミ・シミ取り作業がつらいですー。目が疲れる。
 あと、手が痛いので装具をつけたままタイピングしようとしたら、それは無謀だということがよくわかった。デスクトップのキーボードは、いつも使ってるノートパソコンのより深く押さなくちゃならないんですよ。こういうときに音声入力ソフトがほしいなーと思う。マシンの性能が高くないと使いものにならないらしいけど。

 ネットをまわっていて、漫画家・紫堂恭子の公式ホームページ テスト公開版を発見。このかたの作品では、『グランローヴァ物語』がいちばん好きです。『完全版 ブルーインフェリア 4』は、やっぱりまだ出ていないのですね。ほっ。

 2001.2.22(木)

 栗本薫疑惑の月蝕 グイン・サーガ77(ハヤカワ文庫JA.2001.296p.540円+税)読了。『魔の聖域 グイン・サーガ76』のつづき。

 いつものペースで読む機会を逸したので、なるべくはやいとこ片づけておこうと思って読みました。(そうしないと何ヶ月も積んでおいたまま、つづきが増殖しそうなので)

 それにしても…いつもにも増して想像の余地を少しも残さない書き込みよう。ここまで丁寧に、執拗に説明されると、誤解しようとしてもできませんね。
 翻訳物は人物の置かれた物理的状況をこれでもかと説明するものが多いけど、心理的状況に関してはかなり読み手に預けている部分があって、それはけっこう物語世界の厚みに寄与しているように思うのですが、こちらの場合は、人物に謎がないせいで底が浅く感じられる気がするのです。
 マリウスなんかの描写はその典型。かれはこの巻でこれからのストーリーを動かすかなりの要因になりそうな行動をしていますが、その理由がああいうふうにおおっぴらにされてしまうと、マリウスの登場人物のとしての格を疑いたくなりますです。
 マリウスだけじゃなく、登場人物は心理面をさらけだすほどに、「サーガの登場人物」めいた特別な存在感、威厳とでもいうのでしょうか、を失っていってます。グインでさえ、聖域ではない。開始当初の格調高さはどんどん親しみやすい娯楽小説にスライドしていってる。長く続いているだけに、いろいろな紆余曲折はあるだろうし、おんなじ調子で書き続けるというのも難しいとは思うのですが、でももう少し、きりっとしたおはなしであってほしいなと思ってしまうのでした。

 ところでこの巻の感想。マリウスの頭をはたいてやりたい!

休店日 2001.2.21(水)

 図書館帰りに樹なつみの『獣王星』のつづきを買おうと思っていたのに、置いてある本屋が休みでした。ちぇ。

 トマス・ハリス(高見浩訳)ハンニバル 下(新潮文庫.2000.466p.743円+税 Thomas Harris "HANNIBAL",1999)読了。『ハンニバル 上』のつづき。サイコサスペンス小説。

 懸賞金めあてのイタリアの警察官を惨殺したレクター博士は、潜伏先のフィレンツェを出てついにアメリカへと向かっていた。
 復讐を夢見る大富豪のメイスン・ヴァージャーは、レクター博士をおびき寄せるための生き餌として使用するため、賄賂で操っている司法省監察次官補クレンドラーにクラリスの虚偽の罪を告発させる。休職扱いとなったクラリスの車には発信器が取りつけられ、彼女の誕生日にやってくるであろうレクター博士の生け捕り作戦がはじまった。

 ハンニバル・レクター博士は、不滅です。とちょっといいたくなってしまいました。
 メイスンの復讐計画を軸に描かれていく下巻。物語はときに荒唐無稽、ときにシビアに展開していきます。息もつかせず、ページを繰るのがじれったいくらい。
 おもしろいです、が、読み終えてすっきりというふうにはならなかった。とても複雑です。
 <以下、多少ネタバレ気味なので伏せさせていただきます。>
 そりゃ、クレンドラーやメイスンにくらべるとその悪の格はものすごく高いとは思うけど、なんだか釈然としないです。レクター博士もクラリスも心の平安を得て、悪人もそれなりに制裁されて、一見めでたしめでたしにみえるのですが。ちょっと待て、レクター博士って悪じゃなかったのと思ってしまう私は、小市民なんでしょうか。読んでいる途中、レクター博士に感情移入しなかったとは言いませんけどね。
 これでレクター博士が人食いをやめれば、救済のものがたりといえるのかもしれないけど、そんな気はしないですし。なんというか、これで決着がついたような気がしない。それが釈然としない理由の大半かもしれません。善人が割を食っているような気がするのも。
 あと、行動科学課の課長、ジャック・クロフォードの描かれ方が、わびしいです。
 現実はこうなのかもしれないけど、それを娯楽小説で読むとよけいにつらいよ、というシーンが多くて、下巻のほうがきつかった。

 それから、教養に満ちたフィレンツェでのシーンから推し量るに、ほかにもいろいろと暗喩がちりばめられているような気がしましたが、私は「気がした」だけで通り過ぎてしまうような人間なので、こういうのが豚に真珠というのだなととも思った。
 アメリカの娯楽小説らしからぬ読後感のお話でした。

 ところで上巻に出てきた「東ヨーロッパふうの髪型」ってどんな?

FF9その8 2001.2.20(火)

 久しぶりのFF9。ひきつづき、チョコボのチョコといっしょに宝探し。お宝を見つけてチョコボの夢の世界へ行き、なんと浅瀬を進めるようになって、めでたいとよろこんだのもつかの間。
 うう、気持ち悪い。
 浅瀬で進路を探してぐるぐるとしているうちに、目がまわって気分が悪くなってきてしまいました。これはチョコボ酔いとでもいうのでしょうか。
 しばらく中断して、再度トライしてみましたが、けっきょくまた気分が悪くなってストップ。
 ああ、宝探しに未練が残る…。

 オースン・スコット・カード(小西敦子訳)赤い予言者(角川文庫.1999.402p.838円+税 Orson Scott Card "RED PROPHET",1988)読了。改変世界を舞台にしたファンタジー、「アルヴィン・メイカー」シリーズの二作目。『奇跡の少年』のつづき。

 十八世紀末、アメリカ大陸はヨーロッパ大陸からやってきた開拓者、侵略者、原住民のあいだに軋轢がたかまり、険悪なムードが漂っていた。
 カーティッジ・シティの総督でアメリカ軍の将軍であるハリソンは、悪辣なやり方で原住民を根絶やしにしようとしていた。インディアンのチーフ、タクムソーは、信用ならないと知っていながら、アメリカ軍に敵対するフランス軍と共闘しようとする。
 粉ひき職人の息子アルヴィン・ジュニアは、鍛冶屋の徒弟となるために兄のメジャーとともにハトラック・リヴァーへの旅に出るが、抗争のなかでたくらまれた陰謀に巻き込まれ、囚われの身となってしまう。

 アメリカ史がわからないという個人的な居心地の悪さをぬきにすれば、とてもおもしろくて感動させられるお話です。

 前巻で鍛冶屋の徒弟修行に旅立つことが決定したアルヴィン・ジュニアが、はじめのうちまったく姿を見せないので、いったいどうなってるのと気をもみましたが、延々とつづいたハリソン総督の周辺の描写、何でこんなところに出てくるの、というナポレオン。そしてウィスキーなしでは暮らせないろくでなしと周知されているインディアン、ローラ・ウォシキーと秀でた戦士であるその兄のタクムソー。すべてが収斂されてアルヴィンの運命に絡んでくるところは、お見事というしかありません。
 ハリソンの陰謀で、開拓者たちとインディアンが悲劇へとつきうごかされていく過程と、その運命を招く原因になってしまったアルヴィンに課せられた役割が、とてもせつない。アルヴィンとともに捕らわれたメジャー兄ちゃんに降りかかる災難なんて、ううっ、想像するだけで痛くてたまらない。
 そしてタクムソーと旅をつづけるうちにたどりつく、運命を織りつづける女性ベッカの家。世間とは離れた白人の集落でタクムソーが見せるいままでにない表情がとても印象的。まるで仙郷でうつくしい乙女に癒されていく騎士のよう。すべてに虚実が織りまぜられた世界にすっかりひたってしまいました。

 しかし、ほんとうにわからないんですよね、史実とどう違うのかが。不勉強なせいなのですが。
 ナポレオンがアメリカ大陸にいたという事実はなかったような気もするし、ラファイエット侯爵って名前は聞いたことがあるような…。あ、ありました。「アメリカ独立戦争に義勇兵として参加(『世界史用語集』より)」。ということは仏領カナダの総督というのが虚なのかな。歴史をよく知っていればこういうところでも楽しめそうなんだけど…。

 けっきょく、アルヴィン・ジュニアは鍛冶屋にはいけずに家に戻ってくるものの、母親が願った「かわいいアルヴィン坊や」のままというわけにはいかなかった。ということでこのあとどうなっていくのか気になりますが、つづきは翻訳されていません。がっかりー。

生産性の低い日 2001.2.19(月)

 重たい体をひきずって、大都会へでる。
 ゆうべは万難を排して休んだはずなのに…。
 調子が狂っているせいか、スムーズに物事が運ばなくて、さらに意気消沈。
 薬を減らすようにいったのはだれ。「減らしたいのはわかるけど…」なんて言われると、がっかりします。

 を購入。
 いつもなら「グイン・サーガ」を読みながら電車に乗っているのですが、きょうはオースン・スコット・カード『赤い予言者』を片手に持ちつつ、ぼーっと帰宅。アルヴィン・ジュニアがなかなか出てこないせいで、読むスピードが上がらなくて。

Netscape6 2001.2.18(日)

 先日、雑誌付録CD−ROMに「Netscape6」が収録されていたので、インストールしてみました。

 Macユーザーのはしくれとして、私も過去にはNetscapeを愛用しておりました。古いマシンはいまだNetscapeだし。
 そのNetscape。3まではなんの不満もなく使用していたのですが、去年だったか、プロバイダのほうで最新のブラウザにしないと困ったことになることがある(それがどうしてだか、は忘れた)といってきたので、4.7にバージョンアップしたところ、これが重くて重くて。
 マシンの性能のせいもあるのでしょうし、いきなり4.7にしたのもまずかったのかもしれないですが、ページがダウンロードされる時間長々と待たされたあと、やっと終わったか、というところでなぜかリロードを始めるのをどうしてもやめさせられなくて、キレました。

 現在はPowerBookの標準がIEなので、そのまま変更もせずに使ってます。Netscapeはサイトの動作確認に立ち上げるだけ。
 そうです。いまのメインはIEなのです。Netscape6は、サイト動作の確認をするためにインストールしたんです。

 なのに、なんで立ち上げるたびにいちいちネットに接続しようとするのだー。
 私はちゃんと「起動時に開くページ」を「空白」に設定しているぞー。
 あんまり何度も接続をキャンセルさせるから、エラーが起きたじゃないかー。
 どうやら「sideber」(なぜに英語)機能のなかの「ニュース」を表示するためにやっていることらしいんですが、よけいなお世話です。この機能を停止させることはできないものかと探してみましたが、私には見つけられなかった。とっても印象わるいです、Netscape6。

 トマス・ハリス(高見浩訳)ハンニバル 上(新潮文庫.2000.368p.705円+税 Thomas Harris "HANNIBAL",1999)読了。『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』につづく、サスペンス小説。

 事件から七年。当時FBIの訓練生だったクラリス・スターリングは、上司に睨まれたために不遇な職業生活を送っていた。応援に出かけた麻薬組織の摘発で、銃撃戦の末に犯人を射殺してしまったクラリス。「赤ん坊を抱いていた」容疑者を殺したとして世間の非難を浴び、窮地に立たされた彼女のもとに、行方不明のハンニバル・レクター博士からとおもわれる手紙が届く。

 ようやく上巻を読み終えた。べつに読みにくいわけではなくて、なんでこんなに邪魔が入るのだという状態。
 初々しかったクラリスがしたたかになって登場した冒頭シーンには、ずいぶん時間がたったんだなあとしみじみしましたが、彼女の繊細さはうしなわれてはいず、それではもっと苦しいよとつらい気持ちになりました。
 しかし、あれです。読んでいると変な気分になります。普通じゃない人ばかりでてきて常識がぐらぐらしてしまうのです。レクター博士への復讐に執念を燃やす大金持ちの犠牲者も、もと精神病院の用務員もかなり常軌を逸しているのに、なんだか慣れてきてしまうところがコワイ。レクター博士がぬきんでて(?)普通じゃないからでしょうか。なんだか「普通じゃないのが普通」ってかんじになってくるのです。
 そして、その運命が登場時から暗示されているフィレンツェ警察の捜査官を、読みながら「ほらほらほら、」と思ってしまうあたり、かなり感化されている自分を感じます。きゃー、やめて。

 さあ、下巻へGO、と行きたいところなのに、時間をとられたせいで返却期限の迫っている本を先に読まねばならなくなっていた。残念。

のんびりするはずが 2001.2.17(土)

 前日、すこしばかり夜更かしをしたら、体調が悪くなってしまったので、一日のんびりしていようとおもった。
 それで、フィギュアスケートのグランプリファイナルのビデオを見ているうち、きょうの分を録画するにはテープの残りが少ないということに気がついた。しかし、テープの前半分には、正月に録画したプロフィギュア選手権が、いまだ未見のまま残っているのだ。このまま後ろ半分ばかり使いつづけていると、テープが偏って消耗してしまうかもしれない。いっそこのまま見つづけてしまえ。
 このとき私は午後四時からグランプリファイナルのつづきが放送されることに気づいていなかった。その後、日が落ちるまでフィギュアスケートを見つづけることになろうとは。七時のニュース後の中継は、録画した。

 おやつの時間までには三十分ほどあろうかというころに、姪がやってきた。
 おやつを食べているあいだはおとなしかったが、そろそろ四時というくらいからぐずりだす。「おばけの(でてくる)ゲームをしたい」。ちなみに姪にとってRPGの敵モンスターはすべて「おばけ」。
 一度、おもしろ半分にやらせたあとで深く後悔した私は、姪にはあんまりゲームをさせたくないと思っている。それに四時からフィギュアスケートの中継が始まる。ゲーム機をつないだら、テレビが見られない。
 なんどか押し問答をくりかえしたあげく、おとなしくなったので、これ幸いと思っていたら、ごそごそと何事かをしていた姪が私を呼び立てる。これから入院ごっこをするのでつきあえというのだ。いってみると、病院のベッドとおぼしき体裁が干した布団によって整えられていた。
「はやく、痛いですかって、言って!」
 なぜ患者が命令する。
 なにかと「はやく!」を連発する注文の多い患者をあいてに、医者とナースと介護人(ときどき見舞い客も)の役をおおせつかってしまったせいで、延々としゃべりつづける羽目に陥った。テレビ(病室備えつけ?)をつけて、なんとかつづきを見ようとがんばったものの、スケート中継にはほとんど身が入らない。しまいには喉がおかしくなって、お湯をがぶ飲みする事態に。

 私ののんびりした一日はどこへ。

 夕食後、妹から頼まれてオンラインの花屋を探す。しかし、オンライン注文では翌日の配達には間に合わないことが判明。午前中までに注文すれば当日午後に配達可能のフリーダイヤルの番号をメモして手渡す。

 トマス・ハリス『ハンニバル 上』、一文字も読めなかった。

読書傾向を知る一助として 2001.2.16(金)

 やっぱりあった方が親切かなと思われたのでプロフィールのページに「読書遍歴」の欄をつくってみました。だけどつい最近読んだ本すら忘れる人間に思い出せることって、ものすごく限られている。あんまり参考にならないような気がするけど、いちおう「幼稚園編」をアップ。「小学校編」以降は、またおいおいにということで。

 ようやくトマス・ハリス『ハンニバル 上』を読み始めるも、レクター博士の初期の犠牲者ひとりがでてきたところで中断。

思わず吹き出す 2001.2.15(木)

 思いがけず、ネット接続の時間がとれたので、谷山浩子のプライベートサイトでコンサートの感想を読む。

 オースン・スコット・カード(小西敦子訳)奇跡の少年(角川文庫.1998.340p.720円+税 Orson Scott Card "SEVENTH SON",1987)読了。独立戦争の起きなかった魔術の存在するアメリカを舞台に描かれるファンタジー。「アルヴィン・メイカー」シリーズの第一作。

 粉ひき職人のアルヴィン・ミラーは事業の失敗から開拓農民となり、西をめざして旅をしていた。かれには六人の息子と六人の娘、そして身重の妻が同行していた。妻の出産は今日明日にでもやってきそうだった。かれらははやく休めるところにたどり着こうと、ハトラック川の横断を決意する。
 ハトラック川のそばにあるちいさな町の宿屋の少女リトル・ペギーは、透視者だった。彼女は、とつぜんの大雨がハトラック川に注ぎ、増水した川が幌馬車に襲いかかるのを視て、助けを求めにとびだした。

 アンソロジー『ファンタジイの殿堂 伝説は永遠に 1』所載の短編がおもしろかったので借りてきた本。
 清教徒革命を分岐点とした「改変世界」が物語の舞台。
 アメリカに独立戦争は起きず、ヨーロッパ諸国の植民地として分割されていた18世紀末。しかし、アメリカの歴史にそんなに詳しくない私としては、あんまり現実の歴史との違いがわからないので、細部の違いがわからず困ったものなのですが。幌馬車で旅をする開拓農民などの生活やなにやらにはめだった違いは感じられないけど、それも無知ゆえのいい加減な感想なのかもしれないし。
 はっきりとわかる違いは、ひとびとが魔術を現実のものとして受け入れており、なおかつ、現実として存在していることです。
 (テレビシリーズじゃない原作のほうの)『大草原の小さな家』風の景色が描かれていながら、もっと重層的な深みのある世界が感じられるのはそのせいかなと思います。
 七番目の息子の七番目の息子、とくべつな力を持って生まれたアルヴィン・ジュニアが、自分の力を認識し、使い方を決め、自分の敵を知っていく過程は酷だけど(まだ十歳だよ)、放浪の語り部テイルスワッパーのキャラクターと、ミラー一家のあたたかな存在感のおかげで印象はかなりやわらいでいます。家族の結びつきをしっかりと描くという点では、かなり『大草原の小さな家』に近いような気もする。息子を脅かす力に利用されそうになっている父親の苦悩も、泣けます。ただ、キリスト教の信仰に「かぶれている」母親のヒステリックな態度は読んでると苦しい。全面的に信じられないことに、どうしてあんなに一生懸命になれるのか、たぶん、彼女なりの理由があるんだろうけど、どうも共感できなくて。

 でも、とてもおもしろかった。アメリカの本にしては描写が少なく、そのぶん骨太な印象をうける文章もけっこう好き。
 つづきも読もう。


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