2001年2月前半のdiary
■2001.2.2 二日遅れで/『砂の覇王 4 流血女神伝』
■2001.2.3 つづきを読みたいといわれても
■2001.2.4 いろんな顔/『ファンタジイの殿堂 伝説は永遠に 2』
■2001.2.5 /『螺旋階段のアリス』
■2001.2.6 /『罰 キル・ゾーン』/『時をわたるキャラバン』
■2001.2.7 頼りにならない/『上と外 3 神々と死者の迷宮(上)』
■2001.2.8 FF9その6
■2001.2.9 春季キャンプ/『神殺しの丘』
■2001.2.10 「e-hon」
■2001.2.11 /『オーディンとのろわれた語り部』
■2001.2.12 のりこえられるか/『海猫宿舎』
■2001.2.13 FF9その7/『復活、へび女』
■2001.2.14 気になるささいなこと
駅の売店で大量に縦に差してあるスポーツ新聞の見出しは、一部分しか見えないときに好奇心を刺激されます。
きょう気になったのは、「城」「弟」そしてすこし小さく「俊輔」…?
めずらしくG関係でない文字が小出しに見えて、どうやらF・マリノスがらみ。だけど「弟」ってのはなんだろう。状況からして話題になっているのは城選手の弟らしいけど、するとあとにくっついてる「俊輔」というのはなに。うーん、気になる。
ホームを見渡してみたけど、新聞を読んでいる人はナシ。
図書館にたどり着いてから新聞コーナーに行ってみましたが、あそこはいつもおじさんたちがすばやく占拠しているから、のんびり出かける私は滅多なことでは現物を手にすることができない。スポーツ紙って見出しと写真がほとんどなんで、見出しがわかればそれでいいんだけど。
そこで本探しに夢中になるうちに見出しのことなど忘れ去っていましたが、あとでニッカンスポーツのサイトをみて「ああ、これだったんだ」と思い出しました。ふーん、なるほどね。わかってみるとどうということはない内容。スポーツ紙っていつもこう。見出しのつけかたはほんとうに上手だなあと思います。
朝のひとときに楽しむ、ちいさな推理ゲームでした。
樹なつみ『獣王星 2』(白泉社)を購入。
ようやくディスク4までやってきた、FF9。
しかし、ここではたと気づいた。まだチョコボに一度も会っていないということに。
チョコボの森を探しあて、それからはずっと宝探しにいそしむ私。わーん、また進まないやんか。
池上永一『復活、へび女』(実業之日本社.1999.220p.1600円+税)読了。
題名から受けるのとはだいぶ違う印象の幻想短編集。八編を収録。前半四編は沖縄が舞台で、後半はどことは特定できないけど沖縄ではない日本が舞台。
どれも独特の語りで普通ではない出来事を普通に受け止める、やはり普通ではない人々が出てくるお話。文章がとてもおかしいのだけれど、そのおかしさの中には哀しさが含まれていて、その微妙さが陰影のある風景を描き出しています。
そして、沖縄が舞台のものより、日本が舞台のもののほうが、哀しさの割合が少し多いような気がする。気温の低さに関係しているのでしょうか。とてもおもしろかったです。
今月始めから、服用しているステロイド剤の量を減らすべくチャレンジを継続しています。
先々月に医者から、「もうそろそろ減らしてもいいでしょう」と言われたのだけど、一月はあまりの寒さに三日で挫折したのでした。寒いと痛みが増すのでこわくなっちゃって。
しかし先月診察にいったときにも、「やっぱり、減らそう」と念押しされましてね。
医者は「もうほとんど飲んでいないのとおなじだから(簡単だ)」と気安くいうけれど、他人事だからって…と恨みがましい気分になるのも仕方ないと申せましょう。
しかしステロイドを飲みつづけるといいことはない、というのも理解できるし、さいわい最近は体調もそれほど悪くはない。それでしぶしぶと挑戦は始められたわけであります。
一日一錠飲んでいたステロイドを、一日おきに一錠というふうに間隔をあけて飲むことにしました。が、やっぱりというか、それでもというか、なんだか体調がヘンです。
異常にだるかったり、眠かったり。やる気がなかったり、かと思うとなにかがとてもやりたくなったり。もっとも心配された痛みは、強くなっているけどまあ予想の範囲内かなという感じなんだけど…。意欲が減退しているので本を読むスピードもかなり落ちている。ここ数日の更新が如実に語っているとおりです。
このままつづけてあとどれくらい経てば、ふつうの生活に戻れるのかなー。
長野まゆみ『海猫宿舎』(光文社.2000.164p.1200円+税)読了。近未来風無国籍ファンタジー。
海のそばにある小さな療養施設、通称《海猫宿舎》。そこではアレルギイなどで都会では通常の生活を送ることが困難な少年たちが暮らしている。指導しているのは町医者も兼ねるヒバ先生と、先生の息子のショウマさん。ある日、宿舎のそばにあるうち捨てられた灯台に見慣れない青い目をした男の人がやってきた。とまどう少年たち。男の人は海猫宿舎にあたらしく赴任した教師だった。
住環境が悪化した原因は隕石がおちたため。それで病がちな少年たちは環境のよいところで療養生活を送っている。という設定が作品世界にくらい影を落としているものの、お話自体は透明な空気に満ちたファンタジーです。
少年たちの諍いや和解とはべつに、アンブローズ先生をしずかに見守るイヴァン船長と夜中の海猫の訓練のシーンなどが印象的。
この本のうしろに同社発行の著者の既刊本が載っていますが、このなかの『耳猫風信社』と『月の船でゆく』は、とても好きなお話。光文社が注文する傾向が私の好みと合っているのか。というわけで、この本も好きな感じの仲間(?)。
スーザン・プライス(当麻ゆか訳)『オーディンとのろわれた語り部』(徳間書店.1997.120p.1200円+税
Susan Price "ODIN'S MONSTER",1986)。アイスランドを舞台にした北欧神話ベースのものがたり。
遙か北にあるというテューレの女王が伴侶を求めているという噂を聞いた、邪悪な魔法使いのクヴェルドルフ。かれは自分の物語を美しく飾り立てて女王の前で披露しろと、アイスランド一の語り手である「ネコのトード」を脅す。だが、正直なトードはこれを断り、クヴェルドルフの怒りを買ってしまった。魔法使いは、死と詩と恐ろしい魔法をつかさどる神オーディンの力を借りて、トードと彼の家族へと化け物を送り込み始める。
たしか荻原規子の『薄紅天女』か、ジョーンズの『空中の城』を読んだときに広告を見て、「プライスの本が出る」ということを頭にメモしたはずなのに、図書館に行くたびに借りるのを忘れているうちにすっかり存在自体を忘れていた本。
最近『ゴースト・ドラム』の題名をウェブで目にしたおかげで思い出して、借りてきました。とはいえ、『ゴースト・ドラム』の内容はもう、ほとんど覚えていない。すごい本読んだぞ、という感触だけは残っているのですが。
この本は題名に「オーディン」と大きく出ているわりにオーディン自体は出てこない、信仰の対象としての抽象的な存在として書かれています。北欧神話にくわしくなくても支障なく楽しめます。
魂をあつめてつくられた化け物のこととか、醜い老婆の正体とか、「魔法とはことばである」とか、定番のあれこれと作者の感性がうまくあわさって、おもしろい読み物になってると思う。アイスランドのサガから児童向けの一話を選んできたような感じ。ヒントとなった話はあっても、ほとんどオリジナルらしいのですが。荒々しい北欧神話のちいさな、でも濃縮された一部分。
ただ、短い話を相当のページ数にふくらませるためか、字が大きくて読みにくかった。
オンライン書店とはほとんど縁なくすごしてきたワタクシ(リアル書店ですらそれほど買っているとはいえないが)。
カードを持っていないということは、IT社会ではかなりなハンデです。
数年前にトーハンの「本の探検隊」というのに入会したことはあるけれど、結局一度も利用しませんでした。
ここの特徴は、加盟書店で受け取れば、カードはいらないし配送料がタダという点にありましたが、一番近い加盟書店が電車で五駅目という状況では、利用しようと思う方が奇特。その駅をよく利用しているなどの付加価値もなかったし。
先日「本の探検隊」が「e-hon」としてリニューアルオープンしましたというメールを受け取ったときも、特に感想はなかったです。だいたい、サービスを停止していたことすら、忘れていた。
にわかに風向きが変わったのは、うちから徒歩圏内の唯一の書店が「e-honに登録しました」ということをチラシで知ってから。
その本屋さんは書店なんていうのはおこがましいくらい小さい。狭いのに文房具が売り場面積の半分を占めている。よって品揃えにかなり難があり、高校生になって駅前へ出るようになってから、私はほとんど利用しなくなりました。ときどき、どうしても欲しい本が大きな書店でも見つからなかったときに、注文を頼む程度。それも五年に一回くらいの頻度でした。だって、ものすごーくトロいんだもん。注文してから何ヶ月もかかっちゃって、下手するとその間に別の本屋でめあてのもの見つけて、でも買えなくて、とても口惜しかったりして。
しかし、オンライン書店とつながったとなれば、なにかが変わるかもしれない? だけど、いまなにが何でも欲しい本なんてないから、そのうちになにか頼んでみようかな。
と思っていたら、家族がさっさと入会して、その日のうちに注文を出していた。世帯主はやることがはやい(考えなしともいう)。
注文したのは
NHK「街道を行く」プロジェクト『司馬遼太郎の風景 10』(日本放送出版協会)
NHK「街道を行く」プロジェクト『司馬遼太郎の風景 11』(日本放送出版協会)
の二冊。
どうやら「司馬遼太郎」で検索して在庫があったものを選んだらしい。
すぐに注文確認のメールがきた。(このメールの管理を任されているので、利用状況が筒抜け。仕事中にこんなことやってるんだもんな。自由業者は)
二日後の朝早く(というより午前零時過ぎだから一日後の真夜中か)に、「My書店への商品手配完了のお知らせ」メールがきた。書店に到着したらまたメールが届くと書いてある。けっこう早いものだなと感心していたら、
メールの前に商品が届いた。
「e-hon」では宅配を選ぶこともできますが、今回は選んでません。目的は、近場の本屋に歩いて取りに行けば、配送料がタダ、なんですから。
しかし、ここが地域密着近所の本屋さんのおそろしい、というか知られざる便利さ。
古くからのお得意さんには、雑誌の宅配サービスの特典があるのですね。発売日に手に入れたいと思わなければ、とっても便利なこのサービスは、契約しているわけではなく、まったくの無料。本屋の営業活動の一環なのでしょうが、どういういきさつで始まったのか、うちがいつその中に取り込まれたのか、私は知らない。そして顔見知りの気安さなのでしょうか、注文した本もこのルートでやってきたのでした。何冊かの雑誌とともに。
受け取ったのは私。ええーっ、もう来てるよーと驚いたそのときに「インターネットに加入してくれてありがとう」と言われました。どうやら本屋さん自身もあんまりインターネットには詳しくなさそう。「苦労してがんばっているのだなー」「さっそく持ってきてくれたんだ。もしかすると利用第一号かもしれない」ちょっとしみじみしてしまった。
「My書店への商品到着のお知らせ」は、あとでチェックしたところによると、ほぼ同時に届いていたらしい。メールには、「本メールをプリントするか、出荷ナンバーを控えて、書店で提示してください」と書いてありましたが、今回、この手順はスキップされたことに(笑)。
顔馴染みの本屋さんがある人には、存外使いでのあるサービスかもしれない。その本屋さんが「e-hon」登録書店でないと、利用できないのが難点ですが。
・「e-hon」
http://www.e-hon.ne.jp/
プロ野球十二球団の春季キャンプがはじまって、九日。
久々に見る選手たちの姿がうれしくて、スポーツニュースを楽しんでおりますが、毎日流れるのはG情報。横浜の映像がないかとあちらこちらをハシゴする毎日です。
午後6時台のスポーツニュースを制覇しても、ひとつも見られなかったということもよくありますが、パ・リーグ球団にくらべればマシ。それに監督が代わった話題性もあって、今年はいつもよりたくさん流れているような気がします。それは監督ばかり映ってるという状態になりやすいということでもあるけれど。
そんなこんなで、今年になってはじめてショートストップのご尊顔を拝したのが今日。応援番組でのことでしたが。
髪の色がかわったとか、日に焼けているとか、そんなこと以前に、なにやらやつれているような。
もともと多かったしわが、深くなったような気もする。
声にも張りがなくて、全体的におつかれモード。
こんな姿は、いままで見たことなかったので、ちょっと不安になりました。練習のしすぎで疲労がたまり、怪我、なんてことのないようにしてほしいなあ。練習後のインタビューだったせいなのかもしれないけど。
日向真幸来『神殺しの丘』(ソノラマ文庫.2001.330p.552円+税)読了。ローマ帝国がキリスト教を国教にした後の、ブリテン島を舞台にしたファンタジー。
キリスト教を国教とした皇帝により邪教としておとしめられ、迫害を受けて破壊された神殿から、女神に捧げられた竪琴を持って逃亡した覡巫(シャーマン)カノンは、放浪の果てに帝国の辺境ブリテン島の海岸にうちあげられた。
彼を救ってくれたのは、ケルトの伝統を受け継ぐ森の巫女ミネルヴァだった。ローマ人のもたらした女神による土地の荒廃を救うため、ケルトの女神をめざめさせる儀式を行おうとしていた彼女は、カノンをかくまうかわりに協力を求めてきた。
そのころ、高額な賞金をかけられた異教徒の反逆者を追って、ローマ人の巡察官一行もブリテン島にやってきた。
ローマの神々とケルトの神々、そしてキリスト教。
ことなる民族と宗教の出会うとき、そこに諍いが生まれる、というわけですが、ストーリー自体に異を唱えるようなところはないし、カノンやミネルヴァのこころが癒される課程や、儀式の描写など、けっこうよみごたえがあります。
が、なんか居心地が悪い。
読みながら、どこにひっかかっているのだろう、と色々考えたのですが、ストーリーを語っている視点の高さが一定しないところが、原因なのではという気がする。
吟遊詩人が語り歌うという枠の中で物語がつづられていく中で、語りかけている対象が、炉端を囲む人々であると感じる場面と、本を読んでいる人であると感じる場面とがあるのです。
登場人物はラテン語を話しているとあとがきでは書かれておりますが、それは徹底されていないような感じもします。説明文に「シーザー」なんて名前を見ると、それは英語読みなのではと思うし、「パラス・アテーナー」ってギリシャの女神名なのでは、とも思うし、基準はどこにあるのだろうと混乱する。読者にてっとりばやく理解してもらうために、一般に普及した名称を使おうという方針なのかもしれないけど。
こういうことにいちいちひっかかってるのは、多分私だけのような気もするのですが…。
なんだかだといいつつ、ちゃんと進んでいるのでしょうかFF9。
今日はグルグ山の中をぐるぐるとまわりつつ、時間がどんどん経過してしまいましたが。
二月中に終わらせようと思っているのですが、このペースで果たして大丈夫なのか。ちょっと心配です。
日向真幸来『神殺しの丘』を読みかけ。
図書館帰りに駅の北口側を歩いていたら、年輩のご婦人に道を尋ねられた。
タクシー乗り場はどこですか?
はて。南口ならわかるんだけど、北口は?
駅の改修工事があったせいで、北口の位置関係に不案内になってしまった私には、適切な答えを返すことができなかった。
念のために行く先を聞くと、どう考えても北口からのほうがずっと近い。これでは南口の乗り場を教えるわけにも行かない。大回りになって、料金がかさんでしまう。
どうしよう。
けっきょく、謝りながら逃げることになった。ごめんなさーい。私は方向音痴なんですよー。
というふうに、私に道を尋ねて目的を達した人は、あまりいない。
にもかかわらず、私はよく道を尋ねられる。なにゆえ?
地元ならともかく、大都会に行ってこちらもうろうろしているときにも聞かれる。こういうとき、一緒に悩むぐらいしかしてあげられることはない。とても心苦しい。
外見の押しが弱いから、話しかけやすいのだろうか。
でも、それは誤った選択だということに、気づいてもらえないものかなと、後味悪さにひたりつつ、いつも思うのであった。
いつも行かない本屋に行ったので、なんとなく樹なつみ『獣王星 1』を購入。
恩田陸『上と外 3 神々と死者の迷宮(上)』(幻冬舎文庫.2000.160p.419円+税)読了。『上と外 2 緑の底』のつづき。
G国のクーデターに巻き込まれ、両親とはぐれてジャングルを歩き続けていた楢崎練と千華子のきょうだいは、ようやくめざす巨大遺跡にたどり着いた。しかし、近くで見るピラミッドは、どうやら思い描いていたティカルのものとは違うようだ。自分たちがどこにいるのかわからない不安をかかえつつ、とりあえず生き延びることを考えていた矢先、千華子が体調を崩してしまう。
あいかわらず混沌として先が見えない。あと二冊で終わるはずだから、もうだいぶ話は進んでいるはずだと思うのだけど。今回、日本の家族が出てこなかったのがさびしいです。
須賀しのぶ『罰 キル・ゾーン』(集英社コバルト文庫.2000.244p.476円+税)読了。未来を舞台にしたミリタリー風味の陰謀ロマン。「キル・ゾーン」シリーズの十八冊目。途中、番外編などが含まれているので本編としてはたぶん十五冊目(ちがっていたらごめんなさい)。
二十三世紀。地球は月政府を後ろ盾とする政府軍と、火星政府を新たに味方につけたレジスタンスとの内戦が長引き、荒廃していた。
傭兵でありながら政府軍治安部隊で分隊長をしていたキャッスルの元に、新兵として配属された孤児のラファエルは、部隊では一、二の技量を争うキャッスルにしごかれながら、彼女の強固に鎧った外見にかくされた心に惹かれていく。
キャッスルは過酷な生い立ちにより人を寄せつけない生活を送っていたのだが、ラファエルの開けっぴろげな感情表現の前に心を開いていく。分隊は幾度も死線をくぐり抜けたことによる絆で結ばれるようになるが、ラファエルがキャッスルを救うために顕在化させた力は周囲を驚かせる。それはあまりにも非人間的なおどろくべき力だったのだ。
かれは「ユーベルメンシュ」とよばれる火星で人工的に開発された強化人間だった。政府軍敗退の混乱に乗じて、レジスタンス軍の背後にいた火星の保安部隊に捕らえられたラファエルは、忘れていた自分の素性を教えられることになる。
むずかしい…あらすじ書くの。
でも、シリーズ始めは未来を舞台にしたミリタリーもの、という印象だったのが、途中から変容していまではすっかり陰謀ものになっているのが、これを書いててよくわかりました。
「ユーベルメンシュ」という存在をぬきとってしまえば、べつに未来でなくとも展開できそうなお話ではありますね。作者の書きたいものはおそらく「歴史の陰にある人間の個人的な感情」だったのだろうと思います。
このシリーズはべつに「ブルー・ブラッド」という平行したシリーズとかなり密接な関係を持っているのですが、両シリーズの関連性が舞台がおなじというだけではないと判明してきたあたりから、「キル・ゾーン」の陰謀小説度が増してきたような気がする。
はじめから方向性がはっきりしている「流血女神伝」とちがって、苦しいなと思わせるところがけっこうあるのですが、人間がちゃんと生きているのでそのあたりは割り切って読むことができます。
人間ドラマはとてもおもしろいです。
各巻の題名があまりに簡潔なので区別がつきにくいのが、個人的に困るところ。『罪』だの『罰』だの『罠』だの、ディック・フランシスの「競馬シリーズ」並だ。巻数も振られていないので、カバー折り返しを見ないとどちらが先なのかわからない。借りるときは検索画面で出版年月日までたしかめなくちゃならないんで、とても面倒です。表示を入れると売り上げが落ちるからという理由らしいけど、長いシリーズの途中から読んで、ほかのも読みたくなる人ってそんなにいるのだろうか。
ところでこの巻の内容についてほとんど書きませんでしたが…あと二冊でほんとうに終わるのか?
新藤悦子『時をわたるキャラバン』(東京書籍株式会社.1999.340p.1600円+税)読了。現代から十三世紀のトルコへ、絨毯を追って旅する女の物語。
偶然に立ち寄ったギャラリーで、友香はいままで嗅いだことのない心地よい芳香を放つ十三世紀のトルコ絨毯と出会った。香りにとりつかれた友香は、オーナーの「匂いは追わないと消える」という言葉に背中を押されるように、絨毯を求めてイスタンブルへと旅だった。
到着翌日、今度は強い香りの漂う男に出会った友香は、かれの後を追って入り込んだバザールの絨毯オークションで、あの芳香と再会する。友香に頼まれた男は絨毯を競り落とすが、かれの叔父が経営するという店から絨毯が盗まれる。犯人はオークションで競り合った謎の女だった。女を追いかけてギリシャ人の住む地区へ入っていったふたりは、教会の願いが叶うという泉に足を踏み入れた。謎の女はふたりに、もとの時代へ戻れなくなってもいいのかと尋ねる。ふたりは十三世紀にやってきてしまったのだ。
去年、『SFマガジン』のファンタジー書評で取りあげられていたのを、いまごろ借りてきた。
十三世紀のアナトリアにタイムスリップしてフィールドワークする話。というと乱暴でしょうか。
作者が書きたかったのは、ルーム・セルジューク朝のスルタンとビザンティン帝国の女間者との秘められた恋と、ふたりの恋にからんだ絨毯のはなし、だったような気がします。それと、この時代のアナトリアの情勢と人々の暮らし。それは作者が実際に体験したことに歴史を考慮した分をつけ加えたものなのではないかと。
日本人の友香の「自分探しの旅」は、そんな話に読者を導くための枠というだけでなく、作者の姿も投影されているような気がする。
ともすると情熱ばかりの説明ばかり、になりそうなお話を救っているのは、友香がものの匂いに非常に敏感で、人の心の内でさえ嗅ぎ分けられる、という設定と匂う絨毯の神秘性。これがなければ、たんなる学習マンガの時間旅行記みたいなものになっていたんじゃないかと思います(タイムマシンでなんとかの時代に行ってみようってやつ)。ジュースキントの『香水 ある人殺しの物語』ほどに匂いに固執した話ではありませんけれどね。
恋と冒険の物語としてけっこう楽しく読めました。友香が出会うトルコの十三世紀が、とてもリアルでわかりやすく、おかげで学生時代に受けたトルコ史の授業が有機的に結びついてくれたのが思わぬ副産物だった。バイアスがかかっていることは考慮に入れなければならないけれど、歴史に興味と理解を持つにはやはり物語が一番効果的だなと思います。
加納朋子『螺旋階段のアリス』(文芸春秋.2000.272p.1524円+税)読了。連作短編ミステリ。
著者の八冊目の単行本…だと思う。この方の話はミステリのようでいて幻想小説のような、そういったボーダーレスの作品(『いちばんはじめにあった海』)が私は好きです。
この作品は、リストラの一環として社員が個人事業を興すのを援助する、という会社の方針を利用して探偵事務所をひらいた五十五歳の男性が主人公。その事務所に「迷い込むように」やってきた謎の美少女が探偵の押し掛け助手になり、事件の解決を手助けするという枠のある連作。あちこちに『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』がちりばめられています。
探偵事務所が出てくるあたり、ミステリですよと宣言しているような気もするのだけど、謎解きとしては驚きがすくなく、お話もいまひとつの気がしました。リアリティーがないようであるような、独特の雰囲気が生きていないような気がします。
ビデオに録画していた「人間ドキュメント」広島カープのスカウトの方を追ったドキュメンタリーを見ました。
ドラフト候補の高校生たちが出てくるのですが、両親とのスリーショットなんてこの年頃の青少年ではあまり見られないのではという映像を見て、つくづく感じた。親子ってやっぱり似てる。片親だとよくわからなくても、三人並んでいると「この人たちは家族だな」とわかるんですよね。
それに日頃テレビや映画で見るのとはまったくべつの「いろいろな味のある顔」のひとたちがちゃんといるんだということも実感。ドラマなんかを見ていると世の中美男美女ばかりのようだけど、ふつうはそうじゃないって。自分を含めて。
これは映画で欧米人の姿を覚えた人間が、スポーツを見たときに「こんな顔の人もちゃんといるのね」と安心するのと似ているかも。スポーツ選手はまた別のオーラを持った存在ですけどね。
ロバート・シルヴァーバーグ編(幹遙子,等訳)『ファンタジイの殿堂 伝説は永遠に 2』(ハヤカワ文庫FT.2000.411p.760円+税
Robert Silverberg(ed.) "LEGENDS",1998)読了。英米ファンタジーの人気シリーズ外伝を集めたアンソロジー。三分冊の二冊目。
主な構成は『ファンタジイの殿堂 伝説は永遠に 1』とおなじで、この本には以下三作の中編が収録されております。
テリー・グッドカインド(佐田千織訳)「骨の負債」〈真実の剣〉
ジョージ・R・R・マーティン(岡部宏之訳)「放浪の騎士 七つの王国の物語」〈氷と炎の歌〉
アン・マキャフリイ(幹遙子訳)「パーンの走り屋」〈パーンの竜騎士〉
テリー・グッドカインドは1994年に発表したこのシリーズで有名になったらしい。邦訳は初めて。
この外伝は、シリーズ開始よりもずっと前に起きた出来事を描いているそうです。敵にとらわれた幼い娘をもつ女が、主席魔道師の助力を得るために、自分の母から受け継いだ「骨の負債」の支払いを要求するというお話。子供の命を救うためになりふり構わない女と、おなじ境遇にありながら地位と責任のためにすべてに公平であろうとする主席魔道師の葛藤が、戦時中の緊迫感の中で描かれる、重みのある物語。
ジョージ・R・R・マーティンも初めて出会う作家。解説によると始めはSFを書いていた人らしい。このシリーズの邦訳はやはり初めて。
あるじを持たない放浪の老騎士の従者をしていたダンクが、老騎士の死を期に騎士を自称し、馬上槍試合に出場する顛末を描いた中編。
この話は、やはりシリーズよりも前の時代を扱っているらしいのだけど、本伝依存度がけっこう高いように感じました。
馬上槍試合の会場でダンクが発見する名家や有名騎士の紋章の描写が、「もういいよー」といいたくなるくらい丁寧なのは、たぶん、本伝を読んでる人へのサービスなのでしょう。列挙される名前を後への布石かと一生懸命読んだのが無駄になって、疲れた。
西洋時代劇風のストーリーは途中で読めるのですが、予想したよりも重大な結末にちょっとおどろき。
アン・マキャフリイの「パーンの竜騎士」シリーズは、邦訳されたものは全部読んでいます。第一作の『竜の戦士』と「竪琴師ノ工舎」三部作が好きでした。既刊リストの中の"The Masterharper of Pern"というのがとても気になります。
ここでは「走り屋」とよばれる飛脚みたいな職業がとりあげられています。走り屋としての自分を磨きたいと願う少女が出会う困難と恋の話。ストーリーも物語世界の豊かさも、じつにマキャフリイらしいです。すでに馴染みのシリーズであるせいもあるでしょうが、この本の中では読みやすさ、親しみやすさでは一番でした。
走り屋が体を休めるフォート城砦の宿場の描写がたのしい。ヒロインのテナが大喜びした浴場のシーンには、一作目のヒロインが積年の垢を落とすシーンが思い出されました。マキャフリイってお風呂好きなのかも。
今回、物語世界の地図は〈真実の剣〉の分だけ載っていました。どうしてパーンのはないんだろう。
妹が三年前に貸した本を返してくれた。
そして、つづきを貸してくれという。
気持ちを尊重したいとは思うものの、その本は『覇王の道 グイン・サーガ59』。ホントにつづきを読む根性があるのか? すでに76巻まで出ているものを、一冊に三年かかって(いや、これは言い過ぎ)? しかも間に外伝まであるというのに?
答えは「読む」。素直に感心した。
しかし、問題は私が60巻をどこにしまったか思い出せないというところにありました。まさかホントに読むなんて思いもしないから、番号順に整理したりしていないし、適当にあいだにつっこんでいただけなのでした。家捜ししないと出てこないぞ、おい。
ロバート・シルヴァーバーグ編『ファンタジイの殿堂 伝説は永遠に 2』を読む。
図書館へ行って来ました。
天気予報は晴れだといっていたのに、曇ってて寒い。帰りに空から白いものがちらほら落ちてきたときには、目を疑った。さいわい、すぐに止んだけど。
以下の本を購入。
- 須賀しのぶ『砂の覇王 4 流血女神伝』(集英社コバルト文庫)
- 日向真幸来『神殺しの丘』(ソノラマ文庫)
『神殺しの丘』は、帯に「ローマ帝国辺境、ケルトの村。ストーン・サークルの丘に春の女神はよみがえるのか!? 壮麗なる歴史ファンタジー登場。」とあったのを見て陥落。ホントにその通りならいいんだが。
須賀しのぶ『砂の覇王 4 流血女神伝』(集英社コバルト文庫.2001.288p.533円+税)読了。『砂の覇王 3 流血女神伝』のつづき。異世界陰謀ロマン(?)。
表向き処刑され、またも素性を偽りバルアンの小姓となったカリエ。バルアンの人づかいの荒さと、理解不能な行動にふりまわされて、毎日を憤りつつ過ごしている。
ルトヴィアの皇太子の結婚式に出席するバルアンの供として、タイアークまで随行することになったが。
うーん。入り組んできたなあ。ドミトリアスとグラーシカのカップルがなかなかお似合いで楽しいのはよいとして、バルアンの底知れなさとサルベーンの陰険さが際だつこの巻です。こんなに思惑抱えた人物ばかりごろごろと出てきて、このあとどうなるんだろう?
あいかわらず、カリエちゃんとエドのかみ合わない会話がおかしい。
しかし、こんなふうに読むつもりじゃなかったのになー。もっとゆったりとした気分で、落ち着いて読むはずだったのに、帰りのバス内であとがきを読み始めたのがまずかった。すぐに本文に手を出して、もうやめられない。しばらく続巻は出ないらしいですが、それまでこの複雑な背景を覚えていられるかどうか、心配。
前日とばしたおかげで疲労が抜けない…。
よって動かずにゲームに専念。
はじめのころ新たな町を訪れるとくまなく見てまわったことも今は昔。怒濤のストーリー一本槍で、「魔法のつかえないところ」までやってきました。なんかこの名前には見覚えがあるような気がするが…。「ドッペルゲンガー」が出てくるたび、必ずひとり死に至るのが面倒です。