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last update 2003.1.20

ごく個人的な2002年ベスト

読了本リスト著者名索引
2000年ベスト2001年ベスト2003年ベスト2004年ベスト2005年ベスト

管理人が2002年に読んだ中から選んだお気に入りの本。
「2002年に読んだ」というだけで、出版されたのは大昔の本もあります。順番にはとくに意味はありません。
下の著者名をクリックすると、その項目についての雑文に飛びます。

妹尾ゆふ子『異次元創世記 赤竜の書』角川スニーカー文庫、『真世の王』エニックスEXノベルス

 1995年刊行の「異次元創世記」の物語が完結。押し入れから『異次元創世記 赤竜の書』を発掘することに成功したので、薄れた記憶に悩まされることなく、物語世界に没頭できたのがしあわせでした。
 まったく現実とは異なる法則でうごいている異世界の、滅びへのとむかう中にあらわれる、かすかな透明な空気を体感しながらの読書はまさに至福。と同時に登場人物たちのせつないまでに真摯な生に、胸が苦しくなった。結末にいたるまでのどこまでもぎりぎりなやりとりに手に汗にぎり、静寂に満ちたラストシーンに哀しさと希望を両方感じつつ、そっと本を閉じました。いまでもジェンのことを考えるとじんわりきてしまいます。

スーザン・プライス『エルフギフト』ポプラ社

 荒々しい幻想の力を感じた本。中世イングランドをモデルとした世界を舞台に描かれる、甘さのまったくない荘厳なまでにきびしい、神話伝説のようなものがたり。鮮烈な愛憎劇であり、人間の手の及ばない異界との交渉の物語でもあります。きらびやかな宮廷生活と、極貧の農奴の生活の対比もすごかったし、神々の理解しえなさ加減も半端ではなかった。下巻のクライマックスでは、原始の力の噴出に鳥肌が立つような気分を味わいました。

松井千尋『めざめる夜と三つの夢の迷宮』集英社コバルト文庫

 ファンタジー短編集。2002年のコバルト文庫の個人的収穫。読みながら「ああ、この話はとても好きだー」と感じる本に出会えるのは幸せです。それがあんまり有名な作家でないと、さらにお得な気持ちになります。

ローズマリ・サトクリフ『辺境のオオカミ』岩波書店

 一昨年あたりからサトクリフの本がつぎからつぎへと刊行されて、読むのが追いつかないほどになりました。岩波書店の児童書で少しずつ出ていたころには考えられなかった事態。あたらしい物語が読めるのは嬉しいことですが、数を読んでいるうちにだんだんサトクリフにもパターンのようなものがあるとわかってきてしまったのは、ちょっと寂しい。Amazonで著書(原書)を検索すると膨大な数がヒットするので、勝手にも持っていた寡作というイメージは誤りだったのだということにも気づきました。
 そんなわけで、今年はサトクリフを五冊読んだわけですが、なかで一番ぐぐっときたのが『辺境のオオカミ』。
 ローマ帝国支配下のイングランドが舞台。無駄のない簡潔な文章で、苛酷な状況を打開して成長してゆく若者の姿が描かれています。ケルトの部族民との交流のシーンが印象的でした。

中野美代子『カスティリオーネの庭』文芸春秋

 宣教師カスティリオーネが遭遇する、清代の中国宮廷がスリリングに謎めいていておもしろかったです。歴史のお勉強にもなりました。宣教師はただ信仰に篤く人間関係を築くことに長けているだけではなくて、一芸に秀でていないとダメなのだなーと感じたり、乾隆帝に王子が十五人いた、というところに個人的ツボを感じてしまったり(笑。

古川日出男『アラビアの夜の種族』角川書店

 この話は、学生時代に東洋文庫の『アラビアン・ナイト』を読んでいたときの気分を思い出させてくれました。「千夜一夜」は説話文学なので、かなりあちこちに破綻があって、とんでもない方向に話が展開したり、それまでの筋がうやむやになってしまったり、かと思うとはるか昔に消えた(と思っていた)伏線がとつぜん復活したりと、それはもうてんやわんやなのです。破綻のない現代小説としてここまで似た味わいをもつ話に出会おうとは、正直考えもしてませんでした。そして、「千夜一夜」めいた語りを内包しつつ、展開される「現実」の物語もスリリング。細部までアラブ世界の雰囲気が再現されていたところも、たいへん楽しみました。ほんとうにこんな写本があってもおかしくないんじゃないかと思ってしまったくらいです。

アンジェラ・カーター『夜ごとのサーカス』国書刊行会

 本から離れてみると、まったく非現実的な話なのに、中に入り込んでいるときには世間話のようなリアリティーを感じる物語。荒唐無稽なストーリー展開と登場人物がたのしかった。いま思い出すと、ジョン・アーヴィングと印象が似てるような。うねうねとつづくエピソードの連続が。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『トニーノの歌う魔法』徳間書店

 いつもはイギリスが舞台の「大魔法使いクレストマンシー」ではめずらしくイタリアが舞台。そのせいか、青い空のイメージが残ってます。魔法使いの大家族がてんやわんやのにぎやかな冒険物語。

酒見賢一『陋巷に在り 13』新潮社

 長きに渡ったシリーズが完結。古代中国の精神世界をふまえた異形の描写は読んでいてとても新鮮なのに、ひとつひとつの概念が矮小化されたり曲がったりしながらも現在の普段使いのことばに繋がっていたりする。漢字の奥深さも感じました。このシリーズのおかげで、しかつめらしい印象しかなかった孔子と儒教についてのイメージがちょっと変わった。礼の最初の意味を考えると、現在の失礼千万な世の中は、無秩序で混乱した世界なのかもしれません。

矢崎存美『ぶたぶた』徳間デュアル文庫

 山崎ぶたぶた。自立した成人男性。職業さまざま。ただし、からだはピンクのぶたのぬいぐるみ。かわいい。ぬいぐるみが人を幸せにする話といってしまうと身も蓋もないけれど、適度に毒のある文章と登場人物に、誠実に向き合うぶたぶたの姿勢がここちよいシリーズ。ひとがぶたぶたと出会ったときのリアクションを読むのが楽しみ。

そのほかの印象に残った本 順不同

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